コロナ労災:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災補償について/会社証明なくても・会社が労災保険に未加入でも、労基署は受理。申請は積極的に

仕事や通勤での感染を疑っているのであれば積極的に労災請求しましょう

仕事や通勤が原因で感染したと思っている、または疑っているのであれば、積極的に労災請求をしましょう。労災保険制度では、会社が労災保険に未加入であっても、被災労働者に対して労災保険が適用されます(強制適用原則)。また、会社が労災保険の用紙に証明をしなくても、労基署は受理します。

会社が「未加入でも」「証明なし」でも労基署は必ず受け付けます。

1.新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)厚生労働省

私たちが4月27日に「新型コロナウイルス感染症と労働安全衛生および労災に関する緊急声明」を出した翌28日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」新たな考え方を示しました。
→「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」の「4 労災補償」参照
ここでは、以下のような考え方が示されています。

① 医療従事者等=患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

② 医療従事者等以外の労働者であって、感染経路が判明し+感染が業務によるもの=感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となる。

③ 調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断する。
(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務(請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定。なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらない)
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務(小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定)

④ 海外出張労働者については、出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断する。

⑤ 海外派遣特別加入者については、①~③に準じて判断する。

以上の考え方が具体的な事例にどのように適用されるかはまだわかりません。

私たちはさらに、③に、具体例として「公共交通機関を使って通勤していた場合」等を追加するとともに、具体例として掲げられていない場合も含め、「積極的な反証がない限り」、できるだけ幅広く「内在する危険が具現化」したものみなとして労災保険給付の対象とすることを求めています。

ですから、上記のどれに該当するかよくわからない場合も含めて、積極的に労災請求を行いましょう。テレワーク中の労働者であっても、労災認定される可能性はあります。

2.労災請求書の提出について

労災請求は、労働基準監督署に休業補償給付請求書または療養補償給付請求書(患者さんが亡くなってしまわれた場合にはさらに遺族補償給付請求書等)を提出することによって行います。

請求人(患者本人またはご遺族)のほかに、診療担当者(医師)、事業主の証明が必要な書式になっていますが、事業主証明が受けられない事情がある場合には、事業主証明なしでも労働基準監督署は請求書を受け付けることになっています。私たちは今回、「事情」にとらわれずに、 事業主証明なしでも受け付けることを明確にして、請求を促進・迅速化するよう求めています。

また、厚生労働省から労働基準監督署に対して、「相談又は問い合わせがあった場合には、感染経路が特定できないことをもって直ちに 保険給付の対象とならない旨を説明するなど予断を持った対応を行うことのないよう徹底」することが指示されていますが、不適切な対応があった場合にはぜひお知らせください。

最寄りの地域安全センターの相談窓口にご相談ください。また、お問い合わせフォームもご利用ください。

■【決定版】情報公開で入手した「新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領」(2021.5.11 厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室長事務連絡)
■情報公開で明らかになった「新型コロナウイルス感染症の労災保険給付請求に係る調査等に当たっての留意点」/「調査要領」(令和2(2020)年5月1日付け職業病認定対策室長補佐事務連絡)
■情報公開で明らかになった「『新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて』に関するQ&A」(令和2(2020)年5月22日版 職業病認定対策室)
■情報公開で明らかになった「新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性)事案の当面の取扱いについて」(令和2(2020)年10月20日 職業病認定対策室)
■新型コロナウイルス感染症発症後に診断された精神障害の労災認定が2020年度に2事例(2021年4月9日 衆議院厚生労働委員会)
■医療労働者等の新型コロナワクチン接種による健康障害、針刺し事故によるコロナ発症も労働災害・公務災害-厚生労働省・地方公務員災害補償基金(2021年4月27日)
■令和2(2020)年に事業者が届け出たコロナ労災6,041人、労災請求は2分の1未満、労災認定は4分の1-対策の一層の改善が必要(2021年5月9日
■情報公開で明らかになった「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いに関する質疑応答集について」(令和3(2021)年2月16日付け職業病認定対策室長補佐事務連絡)
■【コロナ労災で新通達】令和4年5月12日基補発0512第1号「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」
■【決定版!】新型コロナウイルス感染症の労災補償/厚生労働省補償課対応の経過と現状-2022年9月15日までに入手できている情報から

なお、地方公務員の公務災害についても、労災保険と同様の取り扱いをすることが示されています

カナダ労働安全衛生センター(CCOHS)作成の「リスク管理のヒエラルキー(対策の優先順位)にしたがった職場における新型コロナ感染症(COVID-19)対策」を促進するポスターを日本語版にしてみました。

3.当ウエブサイト上にある関連情報

日本におけるCOVID-19と安全衛生・労災補償に関する情報
特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償①-2020年4月27日の緊急声明に至る全般的背景
2020年4月27日の全国安全センター緊急声明
特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償② (2020年5月27日)
特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償③ (2020年7月1日)
特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償④ (2020年8月31日)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑤(2020年9月18日)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑥(2020年10月23日)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑦(2020年12月17日)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑧(2021年1月8日)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑨(2021年2月5日)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑩(2021年3月31日)/労災請求8千件超、認定4千件超、例年の職業病認定件数の半数-2020年度のCOVID-19労災
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災補償/情報公開で明らかになった立ち遅れた厚生労働省の対応-天野理(東京労働安全衛生センター)
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑪(2021年5月4日)/ついに労災請求1万、認定5千件突破
新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑫(2021年6月25日)/昨年の請求は届出の半数未満、請求・認定件数の急増続く
・新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑬(2021年9月3日)/請求1.7万、認定1.2万件突破、ビデオシリーズ、開示資料等公表-厚生労働省交渉でも取り上げる
・新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑭(2022年1月18日)/2021年末までの労災・公務災害認定2万件突破-認定率は労災保険98.4%、公務員100%
・新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑮(2022年5月10日)労災請求3万件、認定2万件突破/急増で処理率急落、認定率98.5%-2021年度認定数は前年度の4倍
・COVID-19と安全衛生・労災補償⑮[補足](2022年5月19日)新型コロナウイルス感染症の公務災害請求千件超、初の公務外も
・COVID-19と安全衛生・労災補償⑮[補足](2022年5月31日)2021年は届出件数が労災請求件数を大きく上回る状況は逆転、都道府県別情報も開示を!
・COVID-19と安全衛生・労災補償⑯(2022年10月10日)新型コロナウイルス感染症の労災補償/厚生労働省補償課対応の経過と現状-2022年9月15日までに入手できている情報から
・COVID-19と安全衛生・労災補償⑰ 2022年9月請求2万、認定1万/認定率99.3%、処理率71.5%-上半期だけで前年度の2倍
速報を含めたすべての関連情報

COVID-19に対する安全衛生対策に役立つ情報

国際労働機関(ILO)「パンデミックに直面して: 労働安全衛生の確保」
欧州労働安全衛生機関(EU-OSHA)「COVID-19:職場への復帰-職場の適応と労働者の保護」
国際労働機関(ILO)「2019年ILO暴力・ハラスメント条約(第190号)/COVID-19対応・回復を支援することのできる12の方法」
EU/EEA及びイギリスの職業環境におけるCOVID-19クラスター及びアウトブレイク/2020年8月11日 欧州疾病予防管理センター(ECDC)

世界におけるCOVID-19と安全衛生・労災補償に関する情報

国際労働機関(ILO)はCOVID-19を職業病として認知
世界の労働組合はCOVID-19の職業病としての認知を求める
世界におけるCOVID-19安全衛生・労災補償に関する取り組み
米・カリフォルニア COVID労災補償で労働者の大きな勝利
中国:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下の労働安全衛生/現地からの報告 中国労働支援ネットワーク(CLSN) 2020.4.15
誰が知ってる?WHOの労働ウイルスリスクに対する無関心は世界規模の災害-ハザーズ・マガジン第150号、2020年4-6月
海外における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災補償状況/日本の状況は欧米と比較しても十分というにはほど遠い(2020年9月18日)
イギリス:管理情報/コロナウイルス感染症(COVID-19)報告 2020年4月10日以降使用者からHSE(安全衛生庁)・地方当局になされたもの
オーストラリア連邦雇用教育関係省の外局であるセーフワーク・オーストラリアが2020年11月4日、2020年7月31日までのCOVID-19(新型コロナウイル感染症)に関連した労災補償請求の状況を公表
職業病としての新型コロナウイルス感染症-どこまで把握・補償されているのか?
世界の2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)/労災請求・認定 各国で激増-長期的影響等の監視が必要(2021年3月31日)
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)と職業:ポジションペーパー 48-2021.3.25 労働災害諮問委員会(イギリス)
ILOは将来の緊急事態に備えて回復力のある労働安全衛生システムを求める-2021.4.28 仕事における安全と健康のための世界の日