国際労働機関(ILO)はCOVID-19を職業病として認知-「ILO基準とCOVID-19(コロナウイルス)」

国際労働機関(ILO)は早くも3月27日に公表した「ILO基準とCOVID-19(コロナウイルス)」で、「労働安全衛生」のタイトルのもとで、次のような設問と回答を提供している。

〇アウトブレイクの間使用者は何をなすべきか?

  • 使用者は、職業リスクを最低限にするためにあらゆる現実的な予防・保護対策がとられていることを確保する全般的責任を負っている(1981年労働安全衛生条約(第155号))。使用者は、必要かつ合理的に実行可能な限り、労働者に費用を負わせることなしに、適切な保護衣及び保護機器を提供する責任がある。
  • 使用者は、労働安全衛生に関する適切な情報及び適切な訓練の提供、労働と関連した労働安全衛生面についての労働者との協議、緊急事態に対処するための対策の提供、及び職業病事例の労働監督官への通知の責任がある。

〇アウトブレイクの間の労働者の権利と責任は何か?

  • 労働者は、使用者によって課せられた労働安全衛生義務の全面順守における協力、規定された安全対策の順守、(他の者を安全衛生リスクに曝露させることの回避を含め)他の者の安全に対する合理的な配慮、及び安全機器や保護機器の正しい使用に責任がある。
  • 労働安全衛生対策は労働者にいかなる支出も課すべきではない。
  • 職場における手続が労働者に、彼らの生命または健康に対して差し迫った重大な危険があると信じる合理的な理由がある状況を、直属の管理者に直ちに報告することを義務づけるべきである。必要な場合には、使用者が是正対策をとるまでは、使用者は労働者に対して、生命または健康に対する差し迫ったじゅうだいな危険が続いている労働状況に戻ることを求めることはできない。
  • 労働者は、彼らの労働に関わる健康ハザーズについて、適切かつ十分なやり方で知らせられるべきである。

〇労働者は労働から離れる権利をもっているか?

  • 労働者は、彼らの生命または健康に対して差し迫った重大な危険があると信じる合理的な理由がある労働状況から離れる権利をもっている。労働者がこの権利を行使した場合、いかなる不当な結果からも守られるべきである。

〇COVID-19は職業病として分類され得るか?

  • COVID-19と心的外傷後ストレス障害[PTSD]は、職業曝露を通じて罹患した場合には、職業病とみなされ得る。労働関連活動の結果として、こうした病気に罹患した労働者が、労働する能力を失った限りにおいて、1964年業務災害給付条約(第121号)に定められたように、彼らは現金補償並びに医療及びこれに関連する給付の資格があるべきである。労働関連活動の過程で罹患したCOVID-19により死亡した労働者の扶養家族(配偶者や子供)は、葬祭の補助または給付はもちろん、現金による給付または補償の資格がある。

〇医療へのアクセスについてはどうか?

  • COVID-19に罹患した者は、必要なだけの期間、一般臨床医の医療、(病院や外部における)専門的治療、必要な医薬品の供給、必要な場合の入院、及び医学的リハビリテーションを含め、適切な医療及び予防・治療的性質のサービスへのアクセスをもつべきである。

〇労働者を労働における生物学的ハザーズから守るための規範的ガイダンスはあるか?

  • 一般的労働安全衛生諸条約はときどき労働における生物学的ハザーズに関する予防対策を求めているが、現在、国際労働基準の本体には、生物学的ハザーズ因子に対する労働者の保護または労働環境に特別の焦点をあてた包括的な規定が含まれていない。
  • 生物学的ハザーズは、ヒトの健康に有害な生物またはそうした生物の有機製品である。一般的な生物学的ハザーズには、最近、ウイルス、毒素及び動物が含まれる。それらは、炎症や感染アレルギーから、がんその他の疾病までにわたる、様々な健康影響を引き起こし得る。いくつかの業種、例えば医療サービス、農業、(例えば船舶解体を含め)衛生・廃棄物処理など、の労働者はその他よりも生物学的因子により曝露する。
  • 一定の生物学的因子は、労働活動から生じた曝露のの場合には職業病の原因と認められるべきである。労働活動から生じた生物学的因子への曝露と労働者の罹患した疾病との間に、科学的に(またはその他の国の方法にしたがって)直接の関係が確立される場合には、そのような疾病は、予防、記録、届出及び補償の目的のために職業病として認められることが勧告されている。
  • 大部分の生物学的ハザーズによって引き起こされる疾病の予防は現在、規制のギャップを示している。国際労働機関は、すべての生物学的ハザーズを扱う新しい文書の設定を検討している。機関はまた、生物学医的ハザーズに関する技術的ガイドラインの策定も進めている。これらの基準・ガイドラインは、労働安全衛生方針の中心的目的、すなわち、労働環境に内在するハザーズの原因を、合理的に実行可能な限り最小化することによる、労働に関連した事故及び健康傷害の予防を支援するだろう。

https://www.ilo.org/global/standards/WCMS_739937/lang–en/