【COVID-19と安全衛生・労災補償⑮[補足]】新型コロナウイルス感染症の公務災害請求千件超、初の公務外も(2022年5月19日)

地方公務員災害補償基金は、5月13日になってようやく、2021年度末(2022年3月31日)現在の「新型コロナウイルス感染症に関する認定請求件数、認定件数について」公表した。

2月9日に1月31日現在の情報に更新してから、3か月以上未更新のままだった。厚生労働省と人事院が毎月の情報更新を継続していることは、6月号でお伝えしたとおりである。

地方公務員災害補償基金としては、2020年6月1日に同年5月29日現在の情報を提供して以来、39回目の情報更新ということになる(厚生労働省の情報更新は173回だった)。

公務災害請求件数は、2020年10月9日に100件を超え(100件)、2021年4月30日に500件を超えて(525件)、2022年にはついに1,000件を超えた(1,051件)。

地方公務員災害補償基金は、「認定・補償実績」に関する統計を公表しているが(https://www.chikousai.go.jp/gyoumu/toukei/toukei.php)、ここには新型コロナウイルス感染症に関する情報は含まれていない。公表されている統計によると、公務災害認定件数は、2015年度27,680件、2016年度28,162件、2017年度29,357件、2018年度29,532件、2019年度29,360件、2020年度27,838件である。
このうち、「疾病」が、2015年度1,345件、2016年度1,446件、2017年度1,452件、2018年度1,435件、2019年度1,551件、2020年度2,067件であった。

さらに「疾病」のうちの「第2号~第7号」が、2015年度34件、2016年度49件、2017年度39件、2018年度128件、2019年度128件、2020年度423件となっている。「第2号~第7号」はわが国の職業病リストである労働基準法施行規則別表第1の2(第35条関係)の号数であり、新型コロナウイルス感染症は「第6号/細菌、ウイルス等の病原体による疾病」に含まれていることになる。


一方、過去39回の情報更新で、認定件数が現われたのは2020年6月10日現在が初めてであった。2021年3月31日現在の情報は公表されていないが、同年3月24日現在がもっとも近く、その次は4月30日現在分の公表である。2021年3月24日現在の公務上認定件数は、医師・歯科医師 15件、看護師 175件、保健師・助産師 1件、その他の医療技術者 12件、保育士・寄宿舎指導員等 1件、土木技師・農林水産技師・建築技師 3件、義務教育学校以外の教員 1件、警察官 71件、消防吏員 5件、清掃職員 11件、その他の職員 17件で、合計312件だった。

2020年度に公務上認定された「疾病」は2,067件で、前年度と比較して516件、33.3%の増加であったが、増加分の約6割(「疾病」全体の15.1%)が新型コロナウイルス感染症によるものだったということになろう。

2022年3月31日現在の状況を、表1に示した。この公務上認定計914件から、2021年3月24日現在の312件を引いた602件が2021年度の認定件数ということになろう。2020年度の約2倍である。2021年度の公務災害認定に係るその他の情報はまだ公表されていないが、労災保険では、2020年度の職業病認定件数13,920件中の32.7%に相当する4,545件が新型コロナウイルス感染症によるもので、2021年度には19,264件と約4倍に増加したという状況と比較して検討してみることも意味があるだろう。いずれにしろ、新型コロナウイルス感染症の公務災害請求・認定ともに、民間労働者が対象の労災保険の場合と比較して低すぎると考えている。

公務災害では、今回の発表で初めて公務外認定件数1件が現われた(警察官)。そのため、公務上決定/公務上・外決定として計算した「認定率」は99.7%ととなったが、労働災害の98.5%より高い。

公務上決定/請求として計算した「認定率」(処理率に近い)は、全体で87.1%。請求件数の少ないいくつかの職種で100%であるほか、90%近い職種が多いが、教員が請求件数が少ないのにもっとも低く、清掃職員、その他の職員、その他の医療従事者が70%台にとどまっていることが気がかりである。

安全センター情報2022年7月号掲載予定