COVID-19と安全衛生・労災補償⑫/昨年の請求は届出の半数未満、請求・認定件数の急増続く(2021年6月25日)

労働者死傷病報告

厚生労働省は2021年4月30日、「令和2年の労働災害発生状況」を発表した。これは、2020年1月1日から12月30日までに発生した労働災害について、2021年4月7日までに事業者が労働基準監督署に届け出た労働者死傷病報告を集計したものである。

これによると、令和2年の労働災害による休業4日以上の死傷者数は131,156人で、前年比5,545人、4.4%の増加であった。しかし、新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害が6,041人あり(業種別内訳は表1のとおり)、これを除くと125,115人で、前年比496人、0.4%の減少となる。

一方、表2から計算できるのだが、同じ期間の労災保険請求件数は2,653件でその半分にすぎず、事業者が労働災害として届け出ているにも関わらず労災請求がなされていないものが半分以上あることが明らかになった。

厚生労働省がクラスター発生を知った事業場に対して労働者死傷病報告の届出を勧奨している事実を踏まえて、私たちが、労働者死傷病報告が届け出られた事案について労災保険請求を指導するよう求めてきたゆえんである。2021年度に入ってから労災保険請求は飛躍的に増加しているが、労働者死傷病報告との乖離が解消されているのかどうか、検証する必要があろう。

労災保険

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数等の状況について、6月号で紹介した4月23日現在の4月28日公表以降、5月7日、5月14日、5月21日、5月28日、6月4日、6月11日、6月18日、6月25日現在の6月30日公表と、1週間ごとの情報更新を継続している。昨年4月30日現在の公表以来、153回の情報公表となる(図1参照)。

請求件数は、2019年度-昨年3月の請求1件からはじまり(表2)、昨年7月13日に500件を突破した後、9月2日に1,000件、11月12日に2,000件、今年1月15日に3,000件、2月5日に4,000件、2月19日に5,000件、3月12日に6,000件、3月19日に7,000件、3月26日に8,000件、4月16日に9,000件、4月23日に10,000件、5月14日に11,000件、6月4日12,000件突破と増加し続け、6月25日現在13,886件となった。表2でわかるように、今年に入ってからの急増ぶりが著しい。

6月号で紹介した4月23日現在の10,218件と比較すると35.7%の大幅増加である。業種別では、医療従事者等が7,991件から10,682件へと33.7%の増加、医療従事者等以外が2,214件から3,186件へと43.9%の増加となっている。

認定(支給決定)件数は、昨年5月14日に最初の2件が現われ、8月31日に500件を突破、11月12日に1,000件、2月5日に2,000件、3月12日に3,000件、3月26日に4,000件、4月23日に5,000件、5月14日に6,000件、5月28日に7,000件、6月11日に8,000件を突破して、9,043件となった。4月23日の5,340件と比較すると69.3%増加した。4月は1,369件、5月は1,536件、6月は25日までで1,450件の認定である。業種別では、4月23日と比較して6月25日までで、医療従事者等が4,234件から7,183件へと69.7%の増加、医療従事者等以外が1,094件から1,845件へと68.6%の増加である。

請求件数に対する支給決定件数として計算した「認定率」は、2021年に入ってから請求件数の急増に処理が追いつかずに減少も見えたが、6月25日現在で、全体で65.1%、医療従事者等が67.2%、医療従事者等以外が57.9%という状況である。

不支給決定件数は、昨年10月20日現在で初めて現われ11件だったが、昨年末(12月28日現在で33件)時点では、すべてが新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と確認されている。6月25日現在の不支給決定件数は229件で、医療従事者等の168件は新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と考えられるが、医療従事者等以外の61件に新型コロナウイルス感染症であるのに業務上と認められなかったものが含まれるかどうかは不詳である。(支給+不支給)決定件数に対する不支給決定件数の割合は、全体で2.5%、医療従事者等では2.3%、医療従事者等以外では3.2%となっている。全体で決定件数の97.5%は認定(支給決定)されているということになる。

6月25日現在の業種別の状況を表3に示した。

地方公務員災害補償

地方公務員災害補償基金による地方公務員災害補償の状況の公表は、5月号で紹介した3月24日現在の3月26日公表の後、4月30日、5月31日現在の6月7日公表と、2回更新された。月1回の更新となったようである。

最大の特徴は、いまだに公務外認定がゼロのまま-決定件数に対する認定件数としての認定率が100%を維持していることである。

請求件数に対する認定件数としての認定率は、全体で73.7%(表4)。保育士等と技師が100%である一方で、調理員と義務教育学校教員の認定がまだ決定されていない。

安全センター情報2021年8月号

[関連情報の御案内]コロナ労災:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災補償について