【COVID-19と安全衛生・労災補償⑮[補足]】2021年は届出件数が労災請求件数を大きく上回る状況は逆転、都道府県別情報も開示を!(新型コロナウイルス感染症の労働者死傷病報告と労災補償)(2022年5月31日)

2022年5月30日に厚生労働省は、「令和3年の労働災害発生状況」を公表した。これは、事業者が届け出た労働者死傷病報告に基づくものであり、年度ではなく暦年で集計したものである。

これによると、2021年(暦年)の休業4日以上の死傷者数は149,918人で、前年比18,762人、14.3%の増加。厚生労働省は、「平成10[1998]年以降で最多となった」とした。実際には、19,332人が新型コロナウイルス感染症によるもので(全体の12.9%)、これを除くと130,586人。この数字だと、「平成14[2002]年以降で最多」ということになる。

前年-2020年の死傷者数は131,156人で、うち6,041人が新型コロナウイルス感染症によるもの(全体の4.6%)で、これを除くと125,115人であった。

新型コロナウイルス感染症は、2020年の6,041人から2021年の19,332人へと3.2倍の増加。それ以外は、2020年の125,115人から2021年の130,586人へと、5,471人、4.4%倍の増加ということである。

一方、本誌がたびたび紹介しているように、厚生労働省は別途「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」を毎月更新していて、別掲表のとおり、暦年でも年度でも集計が可能である。

両者の数字を比較すると、2020年は、届出件数6,041人に対して、請求件数2,652件(届出件数の43.9%)、認定件数1,516件、不支給決定件数34件で認定率は97.8%。届出事例のうちのどれくらい請求がなされたかはわからないが、事業主が届け出ているにもかかわらず、労災請求自体がなされていないものが非常に多くあることが明らかだった。

2021年は、届出件数19,332人に対して、請求件数20,842件(報告件数の107.8%)、認定件数18,491件、不支給決定件数289件で、認定率は98.4%。やはり届出事例のすべてが労災請求がなされたかどうかはわからないが、2020年と比べると状況は一変した。労災請求件数が増加したことは歓迎できる。ただし、労働者死傷病報告が届け出られ、労災請求がなされるべき事例のすべてでそれらが行われているとは言えないことも明らかで、届出及び請求の勧奨は引き続き必要である。

ちなみに2022年4月分までの累計では、請求件数39,498件、認定件数26,089件、不支給決定件数388件で認定率は98.5%である。請求がなされれば認定される可能性がきわめて高いわけであるから、なおさら労災請求の勧奨が望まれる。

なお、今回の公表では業種別分析は行われているものの、資料に都道府県別の死傷災害数が含まれていない。いずれ、「職場のあんぜんサイト」の「労働災害統計」(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.htm)に掲載されるものと思われるが、前年度分と同様、新型コロナウイルス感染症の内数は示されないだろう。最近、厚生労働省に、2020年度分の「業務上疾病の労災補償に係る統計の一切」について開示請求を行ったが、新型コロナウイルス感染症は、都道府県別の傷病コード別認定件数の統計表からは除外されていた。改善を望みたい問題である。

安全センター情報2022年7月号掲載予定