【新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償⑭】2021年末までの労災・公務災害認定2万件突破-認定率は労災保険98.4%、公務員100% (2022年1月18日)
労災保険
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数等の状況について、2021年10月号で紹介した同年8月27日現在の9月2日公表以降、9月3日、9月10日、9月17日、9月24日、9月30日現在までは毎週更新、その後は、10月31日、11月30日、12月31日現在の2022年1月18日公表と、1か月ごとの情報更新に変更されている。2020年4月30日現在分の公表以来、170回の情報公表となった(図1参照)。
請求件数は、2020年3月の請求1件からはじまり(表1-月別の認定・不支給決定件数がわかるようになった)、昨年7月13日に500件を突破した後、9月2日に1,000件、2021年2月19日に5,000件、4月23日に10,000件、7月16日15,000件突破と増加し続け、12月31日現在23,554件となった。図1・表1でわかるように、2021年に入ってからの急増ぶりが著しい。
2021年10月号で紹介した8月27日現在の16,969件と比較すると38.8%の大幅増加である。業種別では、医療従事者等が12,591件から15,192件へと20.7%の増加、医療従事者等以外が4,349件から8,318件へと91.3%の大幅増加となっている。
認定(支給決定)件数は、2021年5月14日に最初の2件が現われ、8月31日に500件を突破、11月12日に1,000件、4月23日に5,000件、7月9日に10,000件を突破して、12月31日現在19,840件となった。8月27日の12,840件と比較すると54.5%増加した。業種別では、8月27日と比較して12月31日までで、医療従事者等が9,969件から13,896件へと39.4%の増加、医療従事者等以外が2,852件から5,912件へと107.3%の大幅増加である。
別に公表された令和2年業務上疾病の労災補償状況調査結果によると、2020年度の認定件数は4,545件(表1から計算すると4,553件)。同年度の職業病総認定件数は前年度9,359件から48.7%(4,561件)増えて13,920件であり、新型コロナウイルス感染症が32.8%を占めた。2021年度は12月までで15,287件である。
他方、2020年の請求2,652件(表1、認定は1,516件)に対して、令和2年労働災害発生状況によると、事業者から労働者死傷病報告の提出があったのは6,041件で、労働者から労災保険請求が行われたのは2分の1にも満たなかったがわかる。2021年の件数が公表されるのは4月頃と思われる(表1から、請求は20,902件、認定は18,324件)。
請求件数に対する支給決定件数として計算した「認定率」は、2021年2月19日の43.3%から9月17日78.4%までほぼ増加し続けた後横ばい状態で、11月30日も79.7%だったが、12月31日現在84.2%まで増加した。医療従事者等が91.5%、医療従事者等以外が71.1%という状況である。
不支給決定件数は、2020年10月20日に初めて現われ(11件)、2020年12月28日33件、2021年12月31日現在の不支給決定件数は322件で、医療従事者等の216件は新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と考えられるが、医療従事者等以外の106件に新型コロナウイルス感染症であるのに業務上と認められなかったものが含まれるかどうかは不詳である。(支給+不支給)決定件数に対する不支給決定件数の割合は、全体で1.6%。全体で決定件数の98.4%は認定(支給決定)されているということになる。
12月31日現在の業種別の状況を表2に示した。
地方公務員
地方公務員災害補償基金による地方公務員災害補償の状況の公表は、2021年10月号で紹介した7月31日現在の8月13日公表の後、8月31日、9月30日、11月30日現在の2022年1月6日公表と、3回更新された。月1回の更新ではあるが、遅れている(図2)。
最大の特徴は、いまだに公務外認定がゼロのまま-決定件数に対する認定件数としての認定率が100%を維持していることである。
11月30日現在の職種別状況を表3に示す。
国家公務員
人事院はウエブサイトの「新型コロナウイルス感染症」ページで「一般職の国家公務員に係る新型コロナウイルス感染症に関する報告件数及び認定件数」を公表している。
2021年10月号で紹介した7月31日現在の8月30日公表の後、8月31日、9月30日、10月31日、11月30日、12月31日現在の2022年1月17日公表と、月1回の更新が継続されている。
地方公務員の場合と同様、いまだに公務外認定はゼロで、調査中も2件だけである。ただし、報告件数自体が3月31日の45件から12月31日の79件とあまり増えていない。
12月31日現在の職種別状況を表4に示す。
東京都資料
東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議が、2020年7/28~8/3の週以降、週単位の「濃厚接触者における感染経路」別割合がわかる資料の公表を継続している(https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/10913388/index.html)。
「濃厚接触者」は「接触歴等判明者」のことで、別の資料(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)から日毎の新規陽性者数、接触歴等判明者数、接触歴等不明者数が得られるので、1週間ごとの接触歴等判明者数に割合を掛けて当該感染経路による感染者数の実数を求め、1週間ごとの新規陽性者数に対する割合を計算することができる。この結果を示したのが図3である。
新規陽性者のうち「職場」を感染経路とする者の割合は3.7%~11.3%、2020年7月28日から2022年1月3日までの全期間では5.3%となった。
ちなみに感染経路判明者に対する割合では13.1%である。新規陽性者のうち感染経路が判明した者の割合は、2021年2~3月に50%を超えていたのが最高で、その後は減少傾向にあり、全期間では40.2%という状況である。
感染経路が「職場」ではなく、「施設」等他の区分に区分されている中にも、労働者として業務上感染したものが含まれていることは確実である。接触歴等不明も含めて、労災保険の支給決定(業務上認定)や公務員災害補償基金の公務上認定の対象になり得る者が含まれていることにも留意する必要がある。いずれにしろ、貴重な情報であろう。
2021年12月31日までの日本全国の累計感染者数は1,733,378人であり、この5.3%は91,869人に相当する。対して労災保険請求件数19,840件(12月31日現在)、地方公務員災害補償基金の請求件数773件(11月30日現在)、一般職国家公務員の報告件数77件(12月31日現在)で、合わせても20,690人で、累計感染者数の1.2%に相当するだけである。
いずれにせよ、本来は労災補償を受けられるべき者から請求がなされているとは到底言い難い状況は変わっていないと考えざるを得ない。
安全センター情報2022年3月号掲載予定