最新情報!特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償③-2020年7月1日

請求は労災433件、地公災31件、認定率労災12.5%、地公災16.1%-集団感染発生事例の報告はわずか10数%

認定労災54件、地公災5件

前号で報告した後も厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」の更新を続けている。5月27日、28日、6月2日、3日、4日、5日(請求105件)、8日、9日、10日、11日(請求229件)、12日、15日(請求300件)、17日、18日、19日、22日、23日、24日、26日(請求421件)、30日各18時現在の状況(最後の公表日は7月1日)である。

6月30日現在での請求433件の内訳は、医療従事者等358件(医療業306件、社会保険・社会福祉・介護事業51件、複合サービス事業1件)、医療従事者等以外75件(建設業4件、製造業3件、運輸・郵便業14件、卸売業・小売業6件、学術研究、専門・技術サービス業2件、金融業、保険業1件、不動産業、物品賃貸業2件、宿泊業、飲食サービス業4件、生活関連サービス業、娯楽業3件、医療業18件、社会保険・社会福祉・介護事業6件、サービス業(他に分類されないもの)12件)となっている。

同じく支給決定54件の内訳は、医療従事者等件37件(医療業32件、社会保険・社会福祉・介護事業4件、複合サービス事業1件)、医療従事者等以外17件(建設業1件、製造業2件、運輸・郵便業1件、卸売業・小売業1件、学術研究、専門・技術サービス業1件、宿泊業、飲食サービス業4件、生活関連サービス業、娯楽業2件、医療業2件、社会保険・社会福祉・介護事業2件、サービス業(他に分類されないもの)1件)である。

別掲表中に、海外出張者の件数も示してある。

認定率は、認定件数54件/請求件数433件=12.5%ということになる。医療従事者等では10.3%、医療従事者等以外では22.7%である。しかし、具体的な内容は、概要すらも明らかにされていない。

地方公務員災害補償もようやく6月1日になって、初めて5月29日17時現在の「新型コロナウイルス感染症に関する認定請求件数、認定件数について」公表し、6月12日に6月10日現在、6月25日に6月23日現在の情報に更新している。

請求件数は、医師・歯科医師4件、看護師23件、その他の医療技術者3件、消防吏員1件、計31件。公務上認定件数は、医師・歯科医師1件、看護師3件、消防吏員1件、計5件の認定となっている。

認定率は、認定件数5件/請求件数31件=16.1%ということになる。

しかし、国家公務員の状況はいまだに公表されていない。

とりわけ、前月号で見たように、労災認定の「留意点」として示された内容がどのように運用されるのか明瞭でないなかでは、どのような事例が具体的に労災認定されているのか、一定の情報を公表することこそが、「労災隠し」をなくし、請求の促進につながるものと確信している。

記者会見の女性看護師認定

5月15日に労災請求を行った女性が記者会見を行って、初めて具体的事例が報じられた。

「…新型コロナの感染拡大に伴い、医療従事者らからは速やかな労災認定を求める声が上がっている。15日には、90人を超す職員や患者が感染した中野江古田病院(東京都中野区)の女性看護師が新宿労働基準監督署に労災申請した。女性は4月29日に陽性が判明し、現在は入院中だという。

代理人の川人博弁護士によると、女性は夜勤専従だったが、院内で多数の職員が感染したため、早出や残業をしながら感染者を看護していた。医療用のフェイスシールドやマスクは使い回すよう指示されていたという。女性は弁護士を通じ『労災補償されるか、されないかで、天と地の差がある。同じ状況にある人が一人でも多く労災で救われてほしい』とコメントした。」(同日毎日新聞)

女性は6月4日付けで労災認定されたことを、代理人とともにネット会見で明らかにし、以下のように報じられている。

「患者のせきを正面から浴びることもあった。手袋とマスクのみで感染しないはずはないと思っていた」、「とてもつらい日々だった。すぐに受診できる体制を整えてほしい」、「弁護士に教えてもらうまで労災手続きを知らなかった。医療従事者が一人でも多く補償を受けられるよう望む」(新型コロナ感染で労災認定 集団感染した病院の看護師/朝日新聞)

「現在も呼吸苦の肺線維症状に苦しんでいます。感染し休んだ分はお給料が入らず、社会保険料が引かれたマイナスの給与明細を見たときはショックでした」 (クラスター発生の中野江古田病院看護師、労災認定/TBS)

「感染を防ぐための対策やその後の補償の手続きなど今振り返ればさまざまな面で対応が不十分だったと思います。身体を張って現場にたっている医療従事者が1人でも多く正当な補償を受けられるよう望みます」、「相当の期間が経過しても手続きが行われなかったのは病院の怠慢と言わざるを得ない。業務によって感染した人は相当数に上るはずで、事業者はもとより政府関係機関がこの問題について早急に取り組みを強化しなければならない (代理人 川人博弁護士)」(病院の新型コロナ集団感染 看護師に労災認定 都内/NHK)

さらにひとり看護師の労災認定

さらに6月17日、NHKが「感染の看護師 東海初の労災認定」として、以下のように報じた。

「労災と認定されたのは、愛知県内の病院で働く看護師です。この看護師は、勤務先の病院に入院していた新型コロナウイルスの感染患者の看護を担当していましたが、発熱の症状が出たため、検査を受けたところ、感染が確認されました。

看護師は感染した患者を担当する際は防護服を身につけるなど感染を予防する対策を取っていたということですが、感染は業務によるものだとしてことし4月に労災を申請し、5月、労災と認定されました。

東海3県では、新型コロナウイルスへの感染をめぐり、少なくとも愛知県で9人、岐阜県で7人が労災を申請していますが、労災認定は今回が初めてです。」(注:都道府県別数字の報道は初めて)

質問主意書に対する答弁書

5月27日に阿部知子衆議院議員が提出した「新型コロナウイルス感染症と労災及び公務災害に関する質問主意書」(第210号)に対して、6月5日に「答弁書」が届けられた。(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a201210.htm

1 労働安全衛生について

厚生労働省が公表している「新型コロナウイルスに関するQ&A」や、労使団体に発出した「職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について」(5月14日付)等では、使用者の安全衛生上の法的義務について明確な言及がない。しかし、労働弁護団の電話相談には、看護師から「院内感染しても労災の話は病院から何もない」、「感染症病棟で従事して感染したが補償などの説明がまったくない」といった声が寄せられていると聞く。多くの事業所において労働者保護の理念が徹底されていない現状を踏まえれば、こうした情報提供の機会をとらえ、改めて労働安全に関する事業主の責務と労働者の権利を明示し、周知を徹底する必要があると考えるがどうか。

(答弁) 労働安全衛生法第22条の規定に基づき、事業者は、同条第1号に規定する病原体等による健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないこととされているところ、当該必要な措置は個々の事業場の実情等によって異なるため、「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」(5月14日付け厚生労働省労働基準局長事務連絡別添)を活用し、事業場の実情等に即した適切な感染拡大防止対策を実施するよう、関係団体に対する累次の要請を通じ、事業者への周知徹底を図っているところである。

また、事業場において新型コロナウイルス感染症にかかった者に係る労働者災害補償保険法に基づく補償については、御指摘の「新型コロナウイルスに関するQ&A」において労災補償に関する考え方を示すとともに、5月14日付けで、労使団体及び公益社団法人日本医師会等医療関係団体宛てに労働者の同法に基づく保険給付の請求等に係る要請を行ったところである。

2 労災補償について

1 …厚生労働省は4月28日通知「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」において、医療従事者等について「患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」と記しているが、認定が…あまりにも少ないのではないか。政府の認識を問う。

(答弁) 「請求件数のうち決定されてないものについては]労働基準監督署において、労災保険給付の支給の決定又は不支給の決定(以下「労災認定」という。)に係る調査を行っているところである。いずれにしても、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求があった事例については、迅速かつ適正な処理に努めてまいりたい。

2 「日経ヘルスケア」5月18日付記事によれば、医療・介護・障害福祉サービスの従事者等の感染状況について、「5月16日時点で、COVID-19の感染が確認された医療機関や介護事業所、障害福祉施設などの従事者の累計は1,300人を超えている。内訳は判明分で医師150人以上、看護師490人以上。介護職員等や職員の内訳が未判明な分も合わせると従事者の感染は計1,330人以上に上る」とされている。同社取材班が独自の調査でまとめたものである。政府はこうした調査を行っているか。行っているとしたらどこで行っているのか。また行っていないとしたらなぜか。

(答弁)…厚生労働省において、医療従事者、介護従事者及び障害福祉に従事する者の新型コロナウイルス感染症の感染者数に関する調査は行っていない。政府としては、新型コロナウイルス感染症については、医療機関や社会福祉施設等における集団感染を防止することが重要と認識しており、同省において、全国で発生した集団感染の事例を収集しているところである。

3 新型コロナウイルス対策本部の下に設置された、クラスター対策班の調査で集団感染が明らかになっている医療施設は5月10日現在86施設とされた。これらの事業所から労働者死傷病報告が提出されているのは何件か。また、労災申請がなされているのは何件か。

(答弁) 5月10日時点で、厚生労働省が把握していた医療機関において発生した新型コロナウイルス感染症の集団感染の事例は、85件であり、これらの事例について、同年6月1日時点で、労働基準監督署長が労働安全衛生規則第97条の規定に基づく労働者死傷病報告を受理した事例は13件、報告件数の合計は68件であり、労災請求があった事例は11件、請求件数の合計は23件である。

4 集団感染が明らかになっているこれらの施設において、労働者死傷病報告が適切に提出されず、施設側から労災申請が不当に抑制されているとしたら大問題である。まず労働者死傷病報告の速やかな提出を求め、労働安全衛生法違反の是正勧告を積極的に行うことにより、労災申請を喚起すべきと思うがどうか。

(答弁) 事業場において新型コロナウイルス感染症にかかった者に係る労働者死傷病報告の提出や労災請求については、Q&Aや関係団体に対する累次の要請において、新型コロナウイルス感染症の陽性者について、労働者死傷病報告の提出に留意することや、労働者が業務により新型コロナウイルス感染症にかかったものと認められる場合には、労災保険給付の対象となることについて周知徹底を図っているところである。また、都道府県労働局及び労働基準監督署において、労働者死傷病報告の提出及び労災請求の勧奨に努めているところである。

5 感染経路が特定できないが感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下で働いている労働者については、業務起因性を個々に判断するとしている(4月28日付基補発0428第1号、項目2(1)ウ)。スーパーのレジ担当者、タクシーやバスの運転手、育児サービス従事者などが想定されるが、潜伏期の業務や生活状況等について、専門家の意見等を求めながら調査を行うことが想定され、相当な時間を要すると思われる。該当するあらゆる労働者について、医療従事者と同様、積極的な反証のない限り業務上疾病と認定すべきと考えるがどうか。

(答弁) …「感染経路が特定できないが感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下で働いている労働者」であって、医療従事者等以外の者を意味するのであれば、これらの者の従事する業務については、医療従事者等と異なり、医学的知見により業務と疾病との因果関係が確立されておらず、医療従事者等と同様の取扱いとしていないものである。このため、これらの者から新型コロナウイルス感染症に係る労災請求があった場合には、業務により感染した蓋然性が高く、業務により新型コロナウイルス感染症にかかったものと認められれば、労災保険給付の対象とすることとしており、今後とも迅速かつ適正な処理に努めてまいりたい。

6 新型コロナウイルス感染症は無症候者や軽症者が8割とされ、電車やバスなどの乗客に混在している可能性が高い。通勤途上の感染については蓋然性を広く認め、「積極的な反証がない限り」、できるだけ幅広く「内在する危険が具現化」したものとみなして労災保険給付の対象とするべきと考えるがどうか。

(答弁) …通勤により新型コロナウイルス感染症にかかったとして労災請求があった場合には、労働基準監督署において、個別の事例ごとに調査を行い、通勤により新型コロナウイルス感染症にかかったものと認められる場合には、労災保険給付の対象となるものである。

7 これまでの労災認定事例について、被災労働者の業務内容、労災と認定した根拠、労災認定に要した時間などの認定概要を公開し、新型コロナウイルス感染症による労災を具体的に類型化して例示することにより、積極的な労災請求を促すべきではないか。

(答弁) 政府としては、Q&Aにおいて、事業場において新型コロナウイルス感染症にかかった者に係る労災補償に関する考え方等を示し、これを厚生労働省ホームページで公表するとともに、労使団体及び医療関係団体宛てに労働者の労災請求等に係る要請を行う等、様々な機会を捉えて、適切な労災請求を促しているところである。
なお、労災認定を行った事例に関する情報を公表することについては、今後、個人情報保護の観点にも配慮しつつ、検討してまいりたい

3 公務災害について

国家公務員災害補償法第2条第4によれば、「人事院は、この法律の実施に関し、次に掲げる権限及び責務を有する」として、「次条の実施機関が行う補償の実施について調査し、並びに資料の収集作成及び報告の提出を求めること」と規定されている。

1 公務中あるいは通勤中に新型コロナウイルス感染症に感染した者について、国家公務員災害補償法に基づき、34の実施機関(本府省等26機関、行政執行法人等8機関)において、補償事務主任者による探知ないしは被災職員・遺族からの申し出により、実施機関へ報告があった件数について政府が承知するところを実施機関別に示されたい。

2 公務中あるいは通勤中に新型コロナウイルス感染症に感染した者について、国家公務員災害補償法に基づき、34の実施機関において、①「公務上」と認定した件数、②「公務外」と認定した件数、③公務上外の調査中の件数について、政府が承知するところを実施機関別に示されたい。

3 公務中あるいは通勤中に新型コロナウイルス感染症に感染した者について、国家公務員災害補償法に基づき、34の実施機関において、「公務上」と認定されたものについて、①療養補償の実施件数、②休業補償の実施件数、③障害補償の実施件数、④遺族補償の実施件数について、政府が承知するところを実施機関別に示されたい。

(答弁) お尋ねについては、人事院規則16-0(職員の災害補償)第20条の規定に基づき、補償事務主任者が新型コロナウイルス感染症による災害について実施機関に報告した件数は、令和2年5月27日時点で、零件である。このため、当該災害について、実施機関において、公務上のものであるか又は通勤によるものであるかどうかの認定が行われた件数、公務上のものであるか又は通勤によるものであるかどうかを調査中である件数並びに国家公務員災害補償法に基づく療養補償、休業補償、障害補償及び遺族補償の実施を行った件数は、いずれも零件である

4 地方公務員の公務災害について

災害補償基金における、新型コロナウイルス感染症による公務災害への対応状況については、都道府県別に公務災害の申請数および認定数を、政府としても把握すべきと考えるがどうか。
また、認定事例については、被災公務員の個人情報保護を図りつつ、少なくとも、被災公務員の業務内容、公務災害と認定した根拠、公務災害認定に要した時間などの認定概要を明らかにするべきである。この点について、政府としての見解を示されたい。

(答弁) 地方公務員災害補償制度については、地方公務員災害補償法第24条の規定に基づき地方公務員災害補償基金が補償を実施しているところであり、新型コロナウイルス感染症による公務上の災害及び通勤による災害(以下「公務災害」という。)に係る補償の請求及び認定の件数については、同基金において適切に把握すべきものである。同基金によれば、請求件数は、5月27日時点で、4件であり、いずれも公務災害であるかどうかを調査中である。政府としても、引き続き把握に努めてまいりたい。

また、認定を行った事例に関する情報を公表することについては、同基金において、個人情報保護の観点にも配慮しつつ、適切に対応されるものと考えている。(注:前述のとおり、6月2日にようやく公表に踏み切った。)

再質問と再答弁の内容

これに対して、阿部知子衆議院議員に協力して、6月10日に「再質問主意書」を提出してもらい(第246号)、6月19日に「答弁書」が届けられた(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/201246.htm)。なお、7月1日の衆議院厚生労働委員会での同議員の質問に対する回答で補足された内容を[]で追記した。

1 労災補償について

1 …全国各地で院内感染や集団感染が相次ぎ報告される中、「毎日新聞」6月8日朝刊の記事によれば、独自の取材により、新型コロナウイルスの院内感染が全国99医療機関で発生した疑いがあり、患者や医療従事者が少なくとも2,105人が感染していたことが明らかになったという。感染者の内訳は患者1,028人、医療従事者等1,013人、その他(事務職員や出入り業者等)55人、不明9人という。
厚労省は4月28日通知「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取り扱いについて」において、医療従事者等について「患者の診療若しくは看護の業務または介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」と明記している。本来であればこの1,013人は迅速な労災請求・認定に至っているはずではないのか。医療従事者労災請求件数94件、認定数12件と、けた違いに少ないが、何に起因していると認識しているのか。政府として見解を明らかにされたい。

2 …厚労省「Q&A」問8に「事業主の援助」とあるが、法的には「事業主の助力義務」であり、労働者災害補償保険法施行規則第23条に、「保険給付を受けるべき者が、事故のため自ら保険給付の請求その他の手続きを行うことが困難である場合には、事業主はその手続きを行うことができるように助力しなければならない」と明記されている。
現に感染して入院加療している労働者に請求手続きが困難である場合には、事業者側に手続きを進めるよう促すべきであり、さらに言えば事業所自体が院内感染対応に追われ、小規模の介護事業所等は休業や倒産の危機もあり得るなど、果たすべき役割を行使できないケースも考えられる。所管の労働基準監督署はこうした事業所にきめ細かく対応し、請求・申請のサポートや指導監督を積極的に行うべきと考えるがどうか。

(答弁1&2) 労働者災害補償保険法に基づく保険給付は、同法に基づく補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者の同法に基づく請求に基づいて行うものであり、労災請求については、請求に要する期間並びに当該請求の調査及び審査に要する期間として一定の時 間 を要するものである。なお、御指摘の「1,013人」には、地方公共団体が開設する医療機関の医療従事者等同法に基づく補償の対象でない者も含まれているものと考える。

医療従事者の新型コロナウイルス感染症に係る労災請求については、厚生労働省において、令和2年5月14日付けで、公益社団法人日本医師会等医療関係団体宛てに医療従事者の労災請求の勧奨や請求手続における協力等に係る要請を行ったところであり、また、都道府県労働局においては、集団感染が発生した医療機関を把握した場合、当該医療機関に対して、同旨の要請を行っているところである。

さらに、医療従事者以外の新型コロナウイルス感染症に係る労災請求についても、同省において、同日付けで、労使団体宛てに労働者災害補償保険法施行規則第23条の規定の内容を含め、労災請求の勧奨等に係る要請を行っているところであり、引き続き、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求の勧奨に努めてまいりたい

3 答弁書ではクラスター対策班の役割について、「医療機関や社会福祉施設等における集団感染を防止することが重要と認識しており、同省において、全国で発生した集団感染の事例を収集している」と述べている。ならばその調査対象の中には、労働者が感染した際の詳細な実態把握並びに救済状況が当然含まれなければならない。介護・障害福祉などの社会福祉施設および居宅介護サービス事業所などについて、政府が把握している集団感染の事例数を明らかにされたい。また、それらの事例のうち、労働者死傷病報告が提出されている件数と労災請求の件数を明らかにされたい。

(答弁) 令和2年6月15日時点で、厚生労働省が把握していた社会福祉施設等において発生した新型コロナウイルス感染症の集団感染の事例は、61件であり、これらの事例について、同日時点で、労働基準監督署長が労働安全衛生規則第97条の規定に基づく労働者死傷病報告を受理した事例は7件、報告件数の合計は18件であり、労災請求があった事例は7件、請求件数の合計は15件である

4(1) 答弁書において、医療機関における集団感染の事例は85件であり、うち、労働者死傷病報告を受理した事例が13件、報告件数は68件という。ここで言う集団感染の「事例数」「受理した事例数」「労災請求の事例数」は、医療機関の数という意味か。用語の意味を明らかにされたい。

(答弁) 御指摘の「85件」については、令和2年5月10日時点で、厚生労働省が把握していた集団感染の事例のうち、思療機関において発生した事例の件数であり、このうち、同年6月1日時点で、労働者死傷病報告を受理した医療機関の数が13件であり、労災請求があった医療機関の数が11件である[6月30日時点で37機関、242件]。

(2) 医療機関の集団感染事例85件のうち、労働者死傷病報告を受理した件数は13件しかない。圧倒的に死傷病報告の提出数が少ない原因は何に起因しているのか。政府として見解を明らかにされたい。

(答弁) お尋ねの「死傷病報告の提出数が少ない原因」については、集団感染が発生した事業場において労働者死傷病報告の提出に至っていない理由は個々の事業場の状況によって様々であると考えられることから、一概にお答えすることは困難である

5 答弁書の「二の4」で、死傷病報告の提出について「勧奨に努めている」とある。死傷病報告の速やかな提出は、労働安全衛生法上の事業者の義務である。政府は、死傷病報告の提出について、勧奨ではなく労安衛法違反の是正勧告を行うべきである。政府として見解を明らかにされたい。

(答弁) 新型コロナウイルス感染症にかかった者に係る労働者死傷病報告については、都道府県労働局及び労働基準監督署において、事業者に対して提出の勧奨に努めているところであるが、労働安全衛生規則第97条の違反が認められた場合には、事業者に対して、その是正の指導等を行うこととしている

6 答弁書では、認定事例に関する情報の公開について検討したいとあるが、6月8日には、都内の病院に勤務し新型コロナウイルス感染症に感染した看護師が、3週間の調査で労災認定されたと報道されている。こうした認定に関する具体的な報道は、労災請求を促す上で非常に大きな効果を持つ。政府は、認定事例の公開について、いつまでにその検討を終えるのか。検討の期限を明示されたい。

(答弁) 労災認定を行った事例に関する情報を公表することについては、個人情報保護の観点にも配慮しつつ、検討しているところであり、現時点で検討の期限をお示しすることは困難である[7月1日、早々に示したいと大臣が答弁]

7 従前の認定事例では、結核病棟の看護師など、その職場の環境条件や業務自体に感染の危険性がある場合には「特に反証のない限り」労働災害・公務災害が認定されてきた。例えば、1977年には保育所の保育士が子どもから風疹に感染したとして公務災害の認定を受けている。この時の認定要件は次の3つであった。(「公務災害400例とその解説-自治省監修」ぎょうせい)
① 担当クラスで風疹の子どもと接触していた
② 家庭と自宅近隣に風疹患者がいなかった。
③ 医学的意見からも風疹は近接(密接な接触)感染により感染する。
今回該当するあらゆる労働者について、積極的な反証のない限り迅速に業務起因性を認め、労災認定すべきと考えるがどうか。

(答弁) …患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務に従事する者については、新型コロナウイルス感染症にかかった場合、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象としているところである。また、医疲従事者等以外の労働者については、医療従事者等と異なり、医学的知見により業務と疾病との因果関係が確立されておらず、医療従事者等と同様の取扱いとしていない。

2 公務災害について

1 答弁書では国家公務員の公務災害について、人事院規則16-0(職員の災害補償)第20条の規定に基づき、補償事務責任者が新型コロナウイルス感染症による災害について実施機関に報告した件数はゼロ件との事である。しかし、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での業務に従事していた国家公務員が感染したとの発表が厚労省からなされ、バーレーンに派遣中の海上自衛官が感染したとの発表が防衛省からなされるなど、公務中の国家公務員の感染が複数報告されている。当該省庁はこれら職員の使用者責任に基づき補償義務を負っているところ、報告件数ゼロ件とはどういうことか。説明を求める。

(答弁) お尋ねの厚生労働省の職員については、令和2年6月15日時点で、同省の補償事務主任者が調査中であり、公務上の災害と認められる場合には、人事院規則16-0(職員の災害補償)第20条の規定に基づき、速やかに実施機関に報告を行うこととなる[ダイヤモンド・プリンセスでの厚生労働省職員の感染事例9件中、その後6月30日時点までに3件報告したとのことみ]。また、お尋ねの海上自衛官については、特別職の国家公務員であり、防衛省の職員(一般職に属する職員を除く)の公務上の災害に対する補償については、国家公務員災害補償法は適用されず、同条の規定に基づく報告は行われない。

その上で、防衛省職員の公務上の災害に対する補償については、防衛省の職員の給与等に関する法律第27条第1項において国家公務員災害補償法の規定を準用するものとされており、防衛省職員の災害補償に関する政令第1条の規定によりその例によるものとされる規則第20条の規定による報告は、同月10日時点で、1件である

2 公務災害において補償事務責任者による報告とは、申請や請求によらず「職権探知主義」に基づいて「国が使用者責任において補償を行うものであることから、被災職員からの請求を待つことなく、国が自ら公務災害であるかどうかの認定を行う」とされている。しかし、当事者からの申請や請求を認めないことは、国家公務員災害補償法第23条「この法律に定める補償の実施については、これに相当する労働基準法、労働者災害補償保険法、船員法及び船員保険法による業務上の災害に対する補償又は通勤による災害に対する保険給付の実施との間における均衡を失わないように十分考慮しなければならない。」における「均衡」を損なう事実となりうるのではないか。どうか。

3 人事院は国家公務員災害補償に当たっては、国家公務員災害補償法第3条に照らせば申請や認定の状況を取りまとめ把握する立場にあり、不適切な運用に関しては厳しく是正する責務を負っている。また2007年の災害補償制度研究会報告書において、「請求主義への転換に向けて制度の見直しを行っていくことが必要」とされていることから、新型コロナウイルス感染症による公務災害については各省庁に積極的に申請・請求を促し、迅速な認定・救済を図ると同時に、人事院において公務災害を取りまとめ、統計資料として公表すべきと考えるがどうか。

(答弁2&3) …補償事務主任者は、規則第20条の規定に基づき、負傷し、若しくは疾病にかかった職員又は死亡した職員の遺族からその災害が公務上のもの又は通勤によるものである旨の申出があった場合は、速やかに実施機関に報告しなければならないとされ、実施機関は、この報告を受けたときは、規則第22条第1項の規定に基づき、その災害が公務上のものであるかどうか又は通勤によるものであるかどうかの認定を速やかに行わなければならないとされているところである。新型コロナウイルス感染症について、人事院においては、これまでも、実施機関に対して、規則第20条の規定に基づく報告及び同項の規定に基づく公務上の災害であるかどうか又は通勤による災害であるかどうかの認定を速やかに行うよう指導しており、また、国家公務員災害補償法に基づく公務上の災害の認定状況については、毎年度、規則別表第1の各号に掲げる疾病ごとの認定件数を取りまとめ、公表しているところである。

3 地方公務員の公務災害について

1 地方公務員災害補償基金について、5月27日時点で請求数が4件と極めて少ないが、この原因について、政府としての見解を明らかにされたい。

2 各自治体に積極的な申請・請求を促し、認定事例の概要を公開すべきである。特に、地方公務員災害補償基金を所管する総務省が、その責任において、請求の促進や認定事例の概要公開について、同基金を指導すべきと考える。この点について政府の見解を示されたい。

(答弁1&2) 地方公務員災害補償基金が行う補償は、地方公務員災害補償法第25条第2項の規定に基づき、補償を受けるべき職員若しくは遺族又は葬祭を行う者の請求に基づいて行うこととされており、請求件数の多寡について評価を行うことは困難であるが、総務省においては、令和2年3月26日付けで、各地方公共団体宛てに通知を発出し、新型コロナウイルス感染症による公務上の災害及び通勤による災害に係る補償について職員に周知するよう依頼するとともに、基金においては、同年5月1日付けで、基金の主たる事務所から従たる事務所宛てに、新型コロナウイルス感染症による公務上の災害の認定における取扱いについて通知を発出し、請求に係る相談があった場合には、公務上の災害の認定における具体的な取扱いを懇切丁寧に説明すること等としたところである。

また、新型コロナウイルス感染症による公務上の災害及び通勤による災害に係る補償の請求及び認定の件数については、現在、基金のホームベージで公表しているところであり、認定を行った事例に関する情報を公表することについては、個人情報保護の観点にも配慮しつつ、基金において適切に対応されるものと考えている

「労災かくしは犯罪です」

政府関係当局の消極さがにじみ出ていると言わざるを得ないだろう。

とりわけ、把握している医療機関の集団感染事例85件のうち、労働者死傷病報告を受理した件数は13件(15.3%)、労災請求があった医療機関の数が11件(12.9%)、社会福祉施設等における集団感染事例61件のうち、労働者死傷病報告を受理した事例7件(11.5%、報告件数合計18件)、労災請求があった事例7件(11.5%、請求件数合計15件)という事実がわかっていながら、「勧奨に努めている」だけなのはなぜなのか。

労働者死傷病報告について言えば、厚生労働省が経済団体等に対する5月15日付けの要請にあたって特別のリーフレットも作成して、「新型コロナウイルス感染症による労働災害も労働者死傷病報告の提出が必要です」と示したものである(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000631412.pdf)。

法的根拠は労働安全衛生法第100条第1項に基づく労働安全衛生規則第97条であり、罰則(50万円以下の罰金-同法第120条第6項)も定められ、違反-報告をせず又は虚偽を報告をした場合に対しては書類送検することもできる。厚生労働省は、「『労災かくし』は犯罪です。『労働者死傷病報告』の提出が必要です。」、「正しい保険で安心治療。労働災害の受診は労災保険で!!労働災害に健康保険は使えません」とキャンペーンもしてきたのである(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/rousai/)。

厚生労働省には、法令の執行が求められているのである。

労災保険請求についても、請求がなされれば処理するという「待ち」の対応から脱皮すべきである。少なくとも集団感染の発生が把握されている事業場には直接出向いて、結果を出すべきである。また、労災認定された事例に関する情報の提供に努めて、請求を促すべきである。

地方公務員についても、労働者死傷病報告の義務は適用されており、厚生労働省が責任を負っている。地方公務員災害補償基金も「待ち」の姿勢から脱皮するとともに、一層の情報提供の改善に努めなければならない。

国家公務員はについては、国家公務員災害補償制度上、役所自体が「探知」して適切な対応をしなければならないいわゆる「探知主義」(労災保険や地方公務員災害補償は本人請求主義)なのに、ゼロ件、防衛省職員について1件のみというのは信じがたい回答、状況である。

認定17事例の情報の報道

7月1日になって共同通信が、労災保険支給決定を受けた17事例に関する情報を「新型コロナ労災の職業判明 バスガイド、土木作業員も」と報道した。次頁表中の「日数」は、「申請から認定までの日数」である。

支給決定件数が17件(内1件は海外出張者)になったのは6月9日現在で、その内容であると思われる。当時公表された、医療業11件(表中の病院医師・看護師・放射線技師の合計11人)、社会保険・社会福祉・介護事業1件(5番か6番と思われる)、複合サービス事業1件(5番か6番と思われる)、建設業1件(4番)、学術研究、専門・技術サービス事業1件(海外出張者=17番)、生活関連サービス業、娯楽業1件、(1番か?)、医療業1件(消去法で15番ということになろう)という内訳とも一致する。

16番と3番が、本稿冒頭で紹介した、報道された東京と愛知の看護師の事例である。

8~14番の7人は同じ川口工業総合病院の医師・看護師・放射線技師で、日数がすべて同じ28日となっていることから、同時に請求がなされて、同時に支給決定がなされたものと思われる。同病院のホームページによると、職員9人、患者10人の院内感染が発生したとされている。

5番と6番も日数(こちらは17日と短い)は同じだが、同一事業場の事例ではないとのこと。

申請から認定までにかかった日数の評価は一概には言えないが、1番のバスガイドの日数が64日で一番長いのは、もっとも初期の事例で慎重に判断が行われたのかもしれない。16番の「アフリカに出張、パリ経由で帰国する際に発症」などは調査に時間がかかりそうな気もするが、22日。14番は申請から10日で認定されている。それらを踏まえ、可能な限り迅速な処理に一層努めるよう期待したい。

医療関係者等を除く事例(1番、4番、15番、17番)は、いずれも感染経路が特定されて業務上と認定されたように思われる。そうであるとしたら、感染リスクが相対的に高いと考えられる「複数の感染者が確認された労働環境下」または「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下」での業務で、感染経路が特定されないものの業務により感染した蓋然性が高いと認定された事例は。この時点ではまだないことになる。

というようなこと含めて、こうした情報が、とりわけ類似事例の請求を促進する点で、被災労働者や事業者、医療関係者等にとって重要な情報であることが確認できる。厚生労働大臣が「早々に示したい」と答弁した、認定事例の概要情報の公表が意義のあるものになることを期待したい。

安全センター情報2020年8月号

安全センター情報2020年10月号 特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償④(2020年8月31日)
安全センター情報2020年7月号 特集/ 新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償②(2020年5月27日)
安全センター情報2020年6月号特集 特集/新型コロナウイルス感染症と安全衛生・労災補償①(2020年4月27日)
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