公務員の災害補償をめぐっては、民間の労災保険と大きな違いが生じています。かつて(30年ぐらい前)は、労働組合の力もあり、「官民格差」(=官の方がよい)が問題として指摘されましたが、今は間違いなく民間よりも補償されにくい、泣き寝入りも多いのが実態です。

例えば神奈川の経験だけで言っても、アスベストは明らかに認定されにくいし、精神疾患も同様です。兵庫の震災アスベスト労災のように清掃職員が公務外で訴訟となり、警官がすんなり公務上と言う、不可解な事例も少なくありません。災害についていえば、腰痛などであまりにも杓子定規な治癒認定がまかり通り、待たせるだけ待たせて公務外ということも少なくないです。やはり神奈川の事例ですが、救急車に乗り込もうとした救急隊員が足を負傷した件で、通常動作を理由に公務外となり、二審の途中で公務上決定されたこともあります。

一方で雇用関係だけは民間よりも安定している(非正規は除く)ため、ますます公務災害が一般傷病に埋もれて実態が見えなくなっています。神奈川では一年目の高校教員が公務災害に遭って、校長からパワハラ退職勧奨を受けたが、組合に相談した結果、退職勧奨は止まり、公務外になったにも関わらずなんとか雇用が継続された例があります。審査請求も棄却され、現在は再審査請求中です。

認定基準そのものも問題が多いが、それ以上に運用や解釈の問題も大きいです。まず、民間=労働基準監督署の給付担当者とは異なり、人事や総務にたまたま配属された職員が実際の調査や決定に携わっていることは致命的欠陥です。具体的に言えば、例えば主治医と専門医の意見が異なる時に再度主治医に尋ねることはしません。事実確認においても本人聴取もおおざっぱであるし、はっきりしない点について、同僚や上司も含めて再調査することはまずありません。支部審査会でも同様です。かつては文書が開示されたり、基金支部の弁明書が出てきて、労災保険の審査請求よりもわかりやすいと感じたが、個人情報開示されたり質問ができるようになった今となっては、やはり労基署よりもいい加減で官僚的であることが浮き彫りになるばかりです。

公務災害対策委員会は、自治労や教職員組合とも連携して、個別の認定闘争はもとより、地方公務員災害補償基金本部に改善を求めていきます。

労災・職業病ニュース一覧(2001年10月~2024年6月:27592件)2024/11/11更新

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地方公務員災害補償の問題点基金本部と久しぶりに交渉実施、突然死した消防レスキュー隊員の両親も参加【特集】地方公務員災害補償地公災基金本部との交渉

目次交渉記録交渉関連資料)医療従事者等以外の職員にかかる新型コロナワクチン接種の公務遂行性について 交渉記録 2024年7月9日、久しぶりに地方公務員災害補償基金本部との交渉を行った。基金本部側:総務課次長・平本勝也氏、 […]

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NPO法人神奈川労災職業病センター事務局長 川本浩之 1 地方公務員の災害補償制度の問題点について、具体的な事例をあげながら説明していきたいと思います。いずれも神奈川県の教職員の事例です。 2 まず山田さん(仮名)ですが […]

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公務員の方々にも多くのアスベスト被害が発生しています。この動画では公務員のどのような職種の方々にアスベスト被害が出ているのかを解説します。退職してから肺がんや中皮腫などのアスベスト疾患を発症する場合も多く、正しく補償に結 […]

火災鎮圧678件の消防士に『骨肉腫』、裁判所が「公務上災害」 2024年02月14日 韓国の労災・安全衛生

約30年間、有害化学物質にばく露して『骨肉腫』に罹った消防士に、裁判所が公務上の災害を認めた。骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍で、10万人に1人の割合で発病する希少がんだが、発病原因は正確にはなっていない。 「綿マスク」をつ […]

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業務中に怪我をしたり病気に罹った公務員の、公務上災害の申請手続きが簡素化され、 公務上の災害補償額も拡大される。 人事革新処は、公傷推定適用の対象に疾病分野を明示し、公務上の負傷に対する審議を省略するとした「公務員災害補 […]

欧州における心理社会的リスク/新たな指令のためのインスピレーションとしての国の事例-2021年6月 欧州労働組合研究所(ETUI)ポリシーブリーフ

目次主なポイントはじめに心理社会的リスクに対する総合的組織的アプローチ-スウェーデン心理社会的リスクに関する詳細かつ広範囲な法的枠組み-ベルギー心理社会的労働環境の現代的な概念-デンマークの事例結論:心理釈迦的リスクに関 […]

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全国安全センターの厚生労働省交渉(2021.7.20):B.7. 審査請求制度、B.8. 公務災害の認定について

※全国安全センターの厚生労働省交渉の全体-「労働安全衛生・労災職業病に関する要望書」の全文はココで確認できます。 目次B.7. 審査請求制度についてB.7.(1) 審査請求での口頭意見陳述を合理的に進めるためには、原処分 […]