BACK TO THE WORKPLACE:安全・健康に職場にもどる/EUガイダンス 2020/4/24
目次
COVID-19:職場への復帰-職場の適応と労働者の保護
EUガイダンス/欧州労働安全衛生機関(EU-OSHA)
ガイダンスの背景と対象
この非強制のガイドラインは、使用者と労働者が、COVID-19パンデミックのために大きく変化した労働環境のなかで安全かつ健康でい続けるのを援助することを目的にしている。以下に関する助言を提供している。
リスクアセスメントと適切な対策
- COVID-19への曝露の最小化
- 閉鎖期間後の作業の再開
- 高い欠勤率への対処
- 自宅で働く労働者の管理
労働者の参加
病気にかかった労働者への配慮
将来のための計画と学習
よい情報周知の継続
業種・職種別の情報
ガイドラインは、特定の労働状況に応じた一般的対策の事例を含んでおり、使用者が事業を再開する場合に、適切な安全で健康的な労働環境を達成するのを援助することができる。
本文書は、EU-OSHA[欧州労働安全衛生機関]による関連情報へのリンクを提供するとともに、巻末に様々な業種・職種を対象にした様々な情報源からの情報をリストをつけている。本ガイダンスのなかの情報は、(例えばECDC、WHO、CDCによる)特別の助言が示されている医療部門は対象としていないことに留意されたい。
本文書で扱われていない特別な質問や懸念については、医療サービスや労働監督など、地元当局による情報を参照されたい。
はじめに
2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを受けて、欧州連合(EU)の大部分の加盟国は感染症の拡大に立ち向かうために、職場に影響を与えるものを含め、多くの対策を実施してきた。労働の世界はこの危機の間に大きな影響を受け、それゆえ、労働者、その家族と社会全体を守るために、ビジネス、使用者や社会パートナーを含め-社会のすべての部門が役割を果たさなければならない。
必須ではない活動の停止など、制限の性質と規模は加盟国及び部門間で異なるものの、労働者の大きな部分が自宅で働かなければならないか、または離れて作業を行うことができない場合には、収入代替措置のもとで自宅にとどまることも多い。
いったん物理的距離置き対策がCOVID-19の感染率の十分な減少を達成すれば、国家当局は作業活動の段階的再開を認めていくだろう。これは、健康保護や経済にとって必要と考えられる作業が最初に認められ、自宅での労働によっても効果的に行うことができる作業は最後にと、段階的に行われるだろう。しかし、どのように、またどの程度、通常の作業活動が再開されるかにかかわらず、一定の期間は、感染率の急増を防ぐために、いくらかの対策は継続されるだろう。さらに、将来のどこかの時点における感染の増加が制限措置の再導入を必要とする場合もあるであろう可能性は高い。
COVID-19危機は使用者及び労働者に対して、非常に短期間のうちに新たな手順・方法を実行するか、または、作業・ビジネス活動を停止しなければならないか、どちらかのプレッシャーにおいた。労働安全衛生は、職場に戻るための実際的支援を提供する。適切な保護対策は、物理的距離置き対策の緩和を踏まえて安全かつ健康に作業に戻るのを援助するとともに、COVID-19の感染を抑制するのに貢献する。
リスクアセスメントの更新と適切な対策の実施
通常の労働条件のもとで同じように、物理的及び心理社会的双方の労働環境におけるリリスクの把握[アイデンティフィケーション]と評価[アセスメント]が、COVID-19対策下における労働安全衛生(OSH)管理のための出発点である。使用者は、労働過程に変化があった場合には、リスクアセスメントを改訂し、また、メンタルヘルスに影響を与えるものを含めあらゆるリスクを検討することを義務づけられている。リスクアセスメントを改訂する場合には、問題を引き起こすあらゆる異常や状況、及びそれらがいかに組織が長期的により弾力的になるのに役立ち得るかについて、注意が払われるべきである。リスクアセスメントに労働者とその代表が参加することの重要性を忘れずに、また、アクセスをもっている場合にはリスク予防または労働衛生サービス機関を呼ぶこと。アセスメントへのインプットとして、地域のCOVID-19流行に関する最新情報を地元当局から入手すること。いったんリスクアセスメントが更新されたら、次のステップは、適切な対策をもった行動計画をつくることである。以下は、行動計画を策定する場合に考慮すべき、COVID-19関連問題のいくつかの例である。
労働におけるCOVID-19への曝露の最小化
労働におけるCOVID-19への曝露を制限するための安全慣行の実施には、最初にリスクを評価すること、次に管理のヒエラルキーを実施することが必要である。これは、最初にリスクを取り除き、これが可能でない場合に、労働者の曝露を最小化する管理対策を実施することを意味している。最初に集団的対策からはじめ、必要な場合には、個人保護機器(PPE)などの個人対策で補完する。以下は、管理対策のいくつかの例であるが、その性質からこれらすべてがすべての職場に適用できるわけではない。
- 当面必須な作業のみを行う。いくつかの作業はリスクが低くなるまで延ばすことができるかもしれない。可能な場合には、直接対面の代わりにサービスをリモート(電話またはビデオ)で提供する。当該作業に必須な労働者だけが職場にいることを確保するとともに、第三者の存在を最小限にするよう確保する。
- 可能な限り(例えば会議中や休憩中の)労働者同士の物理的接触を減らす。職務をひとりで安全に行うことができ、移動させることのできない専用の機器や機会を必要としない労働者は隔離する。例えば、可能な限り、予備の事務所、スタッフルーム、社員食堂または会議室で彼らを働かすよう手配する。可能な場合には、影響を受けやすい労働者(高齢者や(高血圧、肺や心臓の病気、糖尿病、またはがん治療その他の免疫抑制治療を受けている者を含め)慢性疾患のある者及び妊娠中の労働者に、自宅で働くよう要請する。ハイリスクにさらされる家族をもつ労働者もテレワークをする必要があるかもしれない。
- 顧客との及び顧客同士の物理的相互作用を除去、また可能でない場合には制限する。例えば、オンラインまたは電話による注文、接触のない提供または(外部での混雑も回避しながら)管理されたエントリー、また施設の内部と外部双方における物理的距離置きを通じて。
- 商品を配達する場合には、ピックアップまたは施設外部での提供を通じて行う。社内でのよい衛生について運転手に助言するとともに、適切な衛生用ジェル・ティッシュを提供する。配達労働者は、(一時に一人だけに使用を許し、定期的に清掃するなどの)適切な用心をするとしても、トイレ、喫茶室、着替室やシャワーなどの施設の使用が許されなければならない。
- とりわけお互いに2メートルの距離を維持できない場合には、労働者の間に不浸透性のバリアを設置する。バリアは特注のものであったり、または、プラスチック板、パーテーション、移動式引き出しや補完棚などのアイテムを即席に利用することもできる。鉢植え植物や台車のような堅固でないものまたは隙間のある物、つまずきや落下など新たなリスクを生じさせるものは避けるべきである。バリアが使えない場合には、例えば、どちらかの側の机の少なくとも2つは空けておくようにするなどによって、労働者間に追加的な距離がつくられるべきである。
- 密接が避けられない場合には、15秒以内にとどめる。シフトの最初と最後における事業所の異なる部署間における接触を減らす。喫茶室、スタッフルームや食堂を共有する人々の数を減らすために、食事休憩のタイミングを調整する。浴室と着替室には一時に一人しかいないよう確保する。一時に一人しか入っていないようにするために、トイレの一つが使用中のときにはメインドアにサインを置く。
- 便利な場所に石鹸と水または手の洗浄液を提供するとともに、労働者に手を頻繁に洗うよう助言する。施設、とりわけカウンター、ドアの取っ手、器具その他人々がよく触る表面を頻繁に清掃するとともに、可能な場合には、よい換気を提供する。
- スタッフの割り当てを追加するとともに、労働者に作業スペースを整理して帰るよう求めるなど、適切な措置を取ることによって、清掃スタッフへの過剰な作業負荷を回避する。ティッシュ及び内容物にふれることなく空にできるようにビニール袋を詰めた廃棄用瓶を労働者に提供する。
- 実行可能な安全対策を適用しているにもかかわらず、感染のリスクを確認した場合には、必要なすべてのPPEを提供する。労働者にPPEの適切な使用について訓練を行って、フェイスマスク及び手袋の使用に関する利用可能なガイダンスにしたがうのを確保することが重要である。
- 病気のときは自宅にいること、咳・くしゃみエチケット、及び手の衛生を促すポスターを職場の入り口その他の場所に貼る。
- 例えば、駐車場やバイクを安全に駐輪できる場所を利用できるようにすることにより、集団的移動手段よりも個人的移動手段の利用を促進する。
- 必要な場合には、職場にいることを制限するために、柔軟な休暇やリモートワークに関する方針を導入する。
COVID-19に感染した者が職場にいた場合に行うことを含め、COVID-19に対する職場の準備に関する情報及び旅行や会議に関する助言については、「COVID-19:職場のためのガイダンス」を参照されたい。「フロンティア及び海外派遣労働者」(ある国で働き定期的に居住する国に帰ってくる者)についての情報も入手可能である。
閉鎖期間後の作業の再開
COVID-19に関連した理由で一定期間職場が閉鎖されていた場合には、安全と健康を考慮した作業を再開するときの計画をつくる。計画では以下のことを考慮すべきである。
- 上述したようにリスクアセスメントを更新するとともに、「COVID-19:職場のためのガイダンス」を参照する。
- 作業を完全に再開し、すべての労働者が職場に復帰する前に、職場のレイアウトや作業の編成を、COVID-19感染を減らすようにする適応を実行する。適応が実行されるようにするために、作業の再開を複数の段階で検討する。変更について労働者に必ず知らせるとともに、必要な場合には、作業に復帰する前に、労働者に新しい手順・訓練を提供する。
- アクセスをもっている場合には労働衛生サービスや安全アドバイザーと連絡をとり、計画について議論する。
- ハイリスクにさらされる労働者に対して、また、高齢者、(高血圧、肺や心臓の病気、糖尿病、またはがん治療その他の免疫抑制治療を受けている者を含め)慢性疾患のある者及び妊娠中の労働者を含め、もっとも影響を受けやすい者を保護する準備がなされているよう特別な注意を払う。ハイリスクにさらされている緊密な家族がいる労働者にも注意を払う。
- 不安やストレスに苦しんでいるかもしれない労働者のための支援を導入することを検討する。これは、管理者が彼らの状況をより頻回に尋ねることから、労働衛生サービスとのコンタクトの提供はもちろん、従業員援助プログラムやコーチ・システムにまで及び得る。労働者が、家族や友人の重篤な病気や死亡などの衝撃的な出来事を体験していたり、金銭的困難や個人的な関係の問題を経験しつつあるかもしれないことに注意する。
- 個人的対策としてまたは集団的隔離の一部としての隔離期間後に、職場に復帰しようとしている労働者は、とりわけ感染のリスクについて、恐れを抱いている可能性がある。こうした恐れは-とりわけ職務について変更があった場合には-ストレスやメンタルヘルス問題に陥りやすいかもしれない。物理的距離置きの対策が実施されている場合には、これらの問題は可能性があるだけでなく、個人用スペースや他の者との問題の共有など、通常の対処メカニズムが利用できない(「メンタルヘルス問題」による病休後の職場復帰」参照)。労働者に、公けに入手可能な支援・助言の情報源を提供する。メンタルヘルス・ヨーロッパは、自らのメンタルヘルスに気を配るとともに、COVID-19の脅威に対処する方法に関する情報を提供している。
- 労働者は、職場における感染の機会の増大を心配して、復帰することを望まないかもしれない。彼らの懸念を理解し、講じられている対策や入手可能な支援についての情報を提供することが重要である。
高い欠勤率への対処
地域の感染率及び実施されているプロトコルによっては、多くの労働者がCOVID-19のために欠勤するかもしれない。労働者が用心のために自宅に隔離している場合には、リモートで働き続けられるかもしれず(以下参照)、また、そうでない場合には一定期間働けないだろう。
COVID-19感染が確認されている労働者は欠勤し、相当期間働くことができないだろうし、重篤な病気になった者は、いったん感染症が治った後もさらなる期間のリハビリテーションを必要とするだろう。加えて、家族の面倒をみなければならないために欠勤する者もいるかもしれない。
- 一時的だけだったとしても、相当数の労働者の欠勤は、事業の継続に緊張を生じさせるかもしれない。復帰可能な労働者が可変的であるであろう間は、彼らが、自らの健康と安全が危険にさらされる状況にあることを見出さないことが重要である。何らかの追加的作業量は可能な限り少なくし、個々の労働者に過度の負担がかかっていないように維持する。労働時間と休憩時間に関する規則と協約を尊重するとともに、労働者に労働がオフのときには連絡を絶つ権利を許すこと。
- 例えば、新たな方法や手続を導入し、役割と責任を変更することによって、減少した労働力に対処するよう作業を適応させる場合には、スタッフが追加的訓練・支援を必要としているかどうか検討して、すべての労働者が行うことを求められている職務を行う能力をもっていることを確保する。
- 主要な労働者が欠勤していても職場が動くようにするために、必須の機能を遂行できるよう労働者を相互訓練すること。
- 臨時的スタッフに頼る場合には、彼らに職場リスクについて知らせるとともに、必要な場合には訓練を提供することが重要である。
自宅で働く労働者の管理
ほとんどの加盟国でとられている物理的距離置き対策の一部として、労働者は、職務の内容がそれを許す場合には、自宅で働くことを奨励または義務付けられている。こうした労働者の多くにとって、「テレワーカー」として働くことは彼らにとって最初のことであり、また、彼らの作業環境は職場と比較して多くの面で不十分である可能性がある。自宅の環境を適応させられる程度は、労働者の状況や適応のために利用できる時間と資源に応じてさまざまである。
自宅で働く間に安全かつ健康にとどまることに関する助言はここで入手できるが、それは多くは、定期的または長期間テレワークする者に向けられたものである。以下は、自宅の作業場所を適切に準備することができなかった労働者のリスクを最小限にするためのいくつかの示唆である。
- テレワークをする者と彼らの代表が参加してリスクアセスメントを実施する。
- 労働者が使う機器を一時的に自宅に持ち込むことを許す(彼らが自分で持ってこれない場合には配達の手配を検討する)。これには、コンピューター、モニター、キーボード、マウス、印刷機、机、フットレスト、または電灯などのアイテムが含まれ得る。通常作業が再開したときの混乱を避けるために、誰が何をもっていたか記録を維持する。
- テレワーカーに、よい姿勢や可能な限りの頻回の動作など、よい人間工学を適応する「自宅におけるワークステーション設定に関するガイダンス」を提供する。
- 労働者に、定期的(およそ30分ごと)に休憩をとって、立ち上がり、移動やストレッチを行うよう奨励する。
- テレワーカーに、IT機器やソフトウエアを使用するうえでの支援を提供する。電話・ビデオ会議ツールが作業に不可欠になるかもしれないが、それを使ったことのない労働者にとっては問題があるかもしれない。
- 自宅で働く者も含めて、すべてのレベルにおいてよいコミュニケーションがあるよう確保する。同僚間のルーチンの社会的相互作用の重要性を忘れることなしに、これは、経営陣のトップレベルから提供される戦略情報から、ラインマネージャーの義務までさまざまである。前者は定期的なオンライン会議のなかで扱うことができる一方、後者はオンラインチャットや「バーチャル・コーヒー」会議を通じて促進することができる。
- 支援がなければメンタルヘルス問題につながる可能性のある、労働者が隔離され、プレッシャーを受けていると感じることのリスクを過小評価してはならない。管理者及び同僚からの効果的なコミュニケーションと支援、並びに同僚とのインフォーマルな接触の維持を可能にすることが重要である。作業への段階的な復帰がはじまった場合には、定期的なスタッフまたはチーム会議をオンラインまたは従業員が職場にいることのできるものと交替で行うことを検討する。
- 従業員には、同じくテレワークをしているパートナーや、学校に行っていないので面倒をみる必要のある、または学業を続けるためにリモートコネクトする必要のある子供がいるかもしれないことに注意すること。高齢者や萬世の病気をもつ人々もしくは隔離された者の世話をする必要のある者もいるかもしれない。そうした状況においては、管理者は、労働時間を柔軟にする必要があるかもしれず、彼らのスタッフの生産性は彼らの理解及び柔軟性を労働者が理解しているようにする必要があるだろう。
- 労働者が働いていると見込まれ、可能である場合には、明確にコミュニケートすることによって、労働者が労働と自由時間の間に健康的な境界を設定するのを支援する。
労働者の参加
労働安全衛生管理における労働者とその代表の参加は、首尾よくいくための鍵のひとつであり、また法的義務である。これはまた、労働者と人口全体が高いレベルの不確実性と不安をもつなかで物事が急速に発展するときに、COVID-19に関連してとられる対策にも当てはまる。
計画される変化や一時的な手順が実際に機能する方法について、よいタイミングで労働者及び/またはその代表並びに安全衛生代表と協議することが重要である。リスクアセスメントと対策の策定に労働者とともに取り組むことが、よい安全衛生慣行の重要な一部である。安全衛生代表と安全衛生委員会は、予防対策の設計を助けるとともに、それらが首尾よく実施されるのを確保するために独特の位置にいる。
派遣労働者や請負業者が従業員に向けたものと同じ情報にアクセスできているのを確保する方法も検討すること。
病気にかかった労働者への配慮
世界保健機関(WHO)によれば、COVID-19のもっとも共通する症状は、発熱、疲労感及び痰を伴なわない咳である。感染してもいかなる症状も出ず、具合が悪くない者もいる。大部分(約80%)の人々は、特別な治療を必要とせずに病気から回復する。COVID-19に罹患した人々の約6人に1人は病気が重篤化し、呼吸困難に陥る。高齢者、及び高血圧や心臓病、糖尿病のような基礎疾患をもっている者は病気が重篤化する可能性が高い。
病気が重篤化した者は、たとえ労働が可能と宣告された後であっても、特別な配慮を必要とするかもしれない。コロナウイルス患者が病気の発作に続いて肺機能の低下を蒙ると指摘されている。この状況にある労働者は、彼らの作業を適応させるとともに、理学療法を受けるためのタイムオフを必要とするかもしれない。集中治療(IC)に時間を費やさなければならなかった労働者は、特別な問題に直面するかもしれない。可能な場合には、労働者の医師や労働衛生サービスが、彼らの作業への復帰の仕方と時期について助言すべきである。
- 筋力低下。集中治療が長引くほどこれはより深刻になる。筋力低下はまた、例えば呼吸不全にも現われる。別の共通する、しかしあまり理解されていない現象は、集中治療後症候群(IPCS)である。これは、集中治療を受けた人々の30から50%に起きると推計されており、心的外傷後症候群(PTSD)と同等のものである。
- 記憶や集中力の問題。こうした症状は時間がたってからしか出ないことも多い。いったん作業を開始した後では、これは常に理解されるとは限らない。労働において目に見える症状は、記憶や集中力の問題、職務を満足に行うことが困難、問題解決能力の低下である。それゆえ、誰かが集中治療を受けたことを知っていたら、このことを警告されることが重要である。労働者にとって以前のレベルのパフォーマンスに戻ることが困難なこともあることから、よいガイダンスがきわめて重要である。
- 作業復帰に長期間必要。データは、年齢にかかわらず、集中治療を受けた者の4分の1から3分の1に問題が出てくることを示している。患者の約半分は作業に復帰するのに1年間必要とし、また3分の1までが復帰できないかもしれない。
労働医と保健サービスは、病気にかかった労働者に配慮する方法及び彼らの作業に必要な何らかの適応について助言する、最良な立場にいる。労働衛生サービス[へのアクセス]をもっていない場合には、気配りをもってこの問題に対処し、労働者のプライバシー・秘密を尊重することが重要である。
COVID-19に罹患した労働者が汚名や差別にさらされるかもしれないリスクに留意すべきである。
将来のための計画と学習
「COVID-19:職場のためのガイダンス」に示されているように、将来におけるシャットダウンとスタートアップという事態に備えて危機対応計画を策定または更新することが重要である。小さなビジネスでも、将来何らかのかかる自体が起こった場合に備えるのを助けるチェックリストをつくることができる。
今回初めてテレワークを活用した企業は、それを現代的な長期的作業慣行として採用することを検討するかもしれない。COVID-19パンデミックの間に得た経験は、テレワークの方針・手順の策定や既存のものの改訂に注がれるかもしれない。
よい情報周知の継続
COVID-19に関連した情報の量は圧倒的なものでありえ、不確かなものや人を惑わすものから、信頼できる正確なものを区別するのが困難であり得る。オリジナルな情報源が確立された資格のあるプロバイダーであることを常にチェックすること。COVID-19に関する公的な情報源には以下がある。
物理的距離置き措置が緩和されはじめるにつれて、特定の業種、地域社会、またはグループを対象とした情報が公表されるかもしれない。国レベルでは、保健大臣や労働大臣が関係する情報をもっており、より専門的な情報源へのリンクを提供するかもしれない。
業種・職種別の情報
他の多くの者との物理的接触を必要とする職種の人々は、COVID-19に感染するもっとも高いリスクにさらされている。医療、在宅・ホームケア労働者を別にして、高いリスクにさらされる必須の労働者には、例えば、食料品供給や小売関係、廃棄物収集、公共事業、警察・保安及び公共輸送である。
同様に、いくつかの国は他よりも前にいくつかの業種における労働を制限した-通常、教育、余暇、娯楽を最初に停止し、工業と建設業を最後にする-措置の緩和を受けた作業への復帰も同様に調整されるだろうが、逆の順番になるだろう。COVID-19に関連した業種専用のガイダンスはいくつかの国で公表されており、セレクションを以下に掲載した。さらなる事例については、欧州労働安全衛生機関及び各国の労働安全衛生当局または研究所をチェックされたい。
[業種専用ガイダンス一覧]
[建設/小売/食品/運輸/保守・家事サービス/余暇・娯楽/教育/理容/医療/警察・監獄/その他/国編集(非網羅的)の区分別に示されているが、一覧は省略]
欧州委員会プレスリリース
Coronavirus: EU guidance for a safe return to the workplace
原文
COVID-19: Back to the workplace – Adapting workplaces and protecting workers
古谷杉郎 訳
全国労働安全衛生センター連絡会議 事務局長