情報公開で明らかになった「『新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて』に関するQ&A」(令和2(2020)年5月22日版 職業病認定対策室)

都道府県労働局労働基準部労災補償課長宛て厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室

「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に関するQ&A(令和2年5月22日版)

(発病日の考え方)

間1
4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日に医療機関を受診しPCR検査を受けた。4月14日に検査結果が陽性だったので、医師から新型コロナウイルスへの感染が診断された。この場合、発病日は、いつか。
また、休業期間の始期はいつか。

(答)
発病日は、「医学上療養を必要とすると認められるに至った日」であることから、検査結果が陽性と確認された場合に、受診した医療機関への初診目(療養の請求書記載の発病年月日)となる。
したがって、本件の発病日は、初診日である4月13日となる。また、休業期間の始期は、発病日である4月13日となる。
なお、業務状況等の調査の起算日となる発症日は、4月10日となる。

間2
4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日にA診療所を受診した。検査の必要性があったことから、A診療所の紹介で4月14日にB医療機関を受診しPCR検査を受けた。4月15日に検査結果が陽性だったので、医師から新型コロナウイルスへの感染が診断された。この場合、発病日は、いつか。

(答)
本件の発病日は、最初に医療機関を受診した日である4月13日となる。
なお、A診療所とB医療機関との受診間隔や、自覚・他覚症状の経過等から疑義が生じる場合は、調査の上、医師の意見を踏まえて決定すること。

(検査結果が陰性だった場合の取扱い)

問3
発熱や咳等の症状はなかったが、濃厚接触者として、医療機関を受診しPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、検査費用は、労災保険給付の対象となるのか。
また、その後、自宅で待機していた場合、休業補償給付の対象となるのか。

(答)
労災保険給付の対象となるには、新型コロナウイルスに感染したとの確定診断(※)が必要となる。ただし、検査結果が陰性の場合であっても、発熱や咳等の症状があり、検査結果等から、主治医が感染の疑いあるとしている場合は、当分の問、本省に相談されたい。
※核酸増幅法(PCR法など)や抗原検査で、陽性となった場合。
なお、PCR検査結果が陰性の事案に係る相談があった際には、業務上外の決定はあくまでも請求書提出後に行うものであり、請求の受け付けを拒否する等の対応を行わないよう留意されたい。

(1回目陰性、2回目陽性の場合の取扱い)

間4
発熱や咳など症状が出現したので、4月20日に1回目の検査を受けたが陰性であった。その後、発熱や咳など症状が続いたので、4月27目に2回目の検査で陽性となった。この場合、1回目の検査費用も、労災保険給付の対象となるのか。

(答)
1回目の検査結果が陰性、2回目の検査結果が陽性の場合は、症状経過、検査間隔、発症までの時間的間隔等を踏まえ、医学的に1回目の検査時点で既に新型コロナウイルスに感染したものと認められれば、1回目の受診日が発病日となり、1回目の検査費用も労災保険給付の対象となる。

(医師の指示で自宅やホテルに待機した場合の休業補償給付の取扱いについて)

問5
新型コロナウイルスで入院していた者が、陰性が確認され退院した。その後、医師の指示で自宅で2週間待機した場合、休業補償給付は、対象になるのか。

(答)
当該待機期間について、休業補償給付の対象になるには、その期間、「療養のため労働することができない」と医師により認められる必要がある。
よって、医師(退院時の主治医など)への確認により、当該待機期間については、療養を要する期間でありこのため労働することができないと、医師により認められれば、休業補償給付の対象となる。

(通達の記の2(1)アの「患者」の考え方)

間6
「患者」とは、新型コロナウイルスに感染したことが診断された者、症状が出現している者などに限定されるのか。

(答)
新型コロナウイルス感染症は、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという特性を有していること等から、本取扱いの対象となる「患者」については、感染が確認された者等に限定するものではない。
なお、眼科、整形外科等の医師についても、内科等の医師に比較すれば、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる患者の診察を行う可能性が高いとはいえないものの、感染した患者を診察する可能性があること、また、診察行為は一般に患者と近接して行うものであることから、今般の感染症については、業務以外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

(通達の記の2(1)アの「介護の業務」の考え方)

間7
「介護の業務」とは、どのような者の介護なのか。

(答)
「介護の業務」とは、患者を介護する場合に限らず、高齢者、障害者等の身体に車接接触して日常生活行動を援助するという介護を行う業務を含むものである。
なお、労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書(平成21年12月)において、介護業務従事者については、一般に伝染性疾患に感染するリスクが高いとされていることを踏まえ、別表1の2第6号1に追加されたものである。

(通達の記の2(1)ウ(ア)の「複数の感染者」が確認された場合の取扱いについて)

問8
3名の感染者が発生した事業場で、いずれも業務外の感染が確認できなかった場合、全員が労災保険給付の対象となることはあるのか。

(答)
通達の記の2(1)ウの対象となり得る業務に従事していた複数の労働者が同一の労働環境下で感染した場合には、各感染者の一般生活での感染の可能性等を調査した上で、業務起因性を判断することとなる。調査の結果、いずれの者も業務外での感染が確認されず、業務により感染した蓋然性が高いといえる場合には、これらの感染者は、全員、業務上と認定される事案もあり得る。
いずれにしても、各労働者の潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて、業務により感染した蓋然性が高いといえるか否かを個別に判断することとなる。

(通達の記の2(2)アの「海外出張労働者」について)

問9
海外出張労働者について、出張先園が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合とは、何を基準に判断すればよいのか。

(答)
本省が公表している「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」の記4の国外の発生状況、本省健康局結核感染症課が示している「本感染症に関する流行地域(WHOの公表内容から本感染症の流行が確認されている地域)」に係る情報、外務省で示している海外渡航危険情報、WHOが発表している地域別の感染状況報告等を参考に判断することとなる。

(調査要領の使用者報告書)

問10
調査要領の「使用者報告書」については、例えば、医療機関等で集団感染が発生した場合、請求人ごとに求めるのか。

(答)
集団感染が発生した事案については、使用者報告書を必ずしも請求人ごとに求める必要はなく、まとめて依頼する等により、事業主・監督署双方の省力化を図ることとされたい。
また、これ以外の事案についても、調査要領末尾(3(6)のなお書)に記載したとおり、各種調査様式は、事案ごとに、適宜、修正して差し支えない。

※本文書についてはその後修正等が行われている可能性があることに注意してください。

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