【決定版!COVID-19と安全衛生・労災補償⑯】新型コロナウイルス感染症の労災補償/厚生労働省補償課対応の経過と現状-2022年9月15日までに入手できている情報から[2022年11月16日情報追加]

新型コロナウイルス感染症の労災補償が増加し続けている。あらためてこの間の厚生労働省の対応を、情報公開等を通じて入手した厚生労働省の発出した通達等を中心に整理しておきたい。膨大な資料をすべて安全センター情報に掲載することもできず、ウエブサイトで掲載するとともに、解説ビデオも公開しているのでぜひご活用していただきたい(https://joshrc.net/)。

「労災認定基準」通達

新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」は、同名の令和2(2020)年4月28日付け基補発0428第1号厚生労働省労働基準局補償課長通達に基づいて行われている-言わばこれが「労災認定基準」に当たると言ってよいだろう。同年2月3日に、従来の感染症に係る労災補償における取扱いの考え方をなぞっただけの基補発0203第1号「新型コロナウイルス感染症に係る労災補償業務の留意点について」をひそかに示していただけだったものから、この通達発出に至った経過については、安全センター情報2020年6月号を参照していただきたい。

通達の内容は以下のとおりで、最後の記の3の(2)以外は、現在に至るまで変わっていない。

「新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)に係る労災補償業務における留意点については、令和2年2月3日付け基補発0203第1号で通知しているところであるが、今般、本感染症の労災補償について、下記のとおり取り扱うこととしたので、本感染症に係る労災保険給付の請求や相談があった場合には、これを踏まえて適切に対応されたい。

1 労災補償の考え方について
本感染症については、従来からの業務起因性の考え方に基づき、労働基準法施行規則別表(以下「別表」という。)第1の2第6号1又は5に該当するものについて、労災保険給付の対象となるものであるが、その判断に際しては、本感染症の現時点における感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという本感染症の特性にかんがみた適切な対応が必要となる。

このため、当分の間、別表第1の2第6号5の運用については、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること。

2 具体的な取扱いについて

(1)国内の場合

ア 医療従事者等
患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。

イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

ウ 医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、必要に応じて医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

(2)国外の場合

ア 海外出張労働者
海外出張労働者については、出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断すること。

イ 海外派遣特別加入者
海外派遣特別加入者については、国内労働者に準じて判断すること。

3 労災保険給付に係る相談等の取扱いについて

(1)本件に係る相談等があった場合には、上記1の考え方に基づき、上記2の具体的な取扱い等を懇切丁寧に説明するとともに、労災保険給付の対象となるか否かの判断は、請求書が提出された後に行うものであることを併せて説明すること。
なお、請求書の提出があった場合には、迅速・適正な処理を行うこと。

(2)本件に係る労災保険給付の請求又は相談があった場合には、引き続き、速やかに補504により当課業務係に報告するとともに、当該請求に対して支給・不支給の決定を行う際には、当分の間、事前に当課職業病認定対策室職業病認定業務第一係に協議すること。」

記の3の(2)はこれまでに2回、以下のように改正されている。

令和2年12月1日付け基補発1201第1号-「本件に係る労災保険給付の請求があった場合には、引き続き、別途示している報告様式に請求書の写しを添付し、当課業務係及び企画調整係に報告するとともに、当該請求に対して不支給決定又は上記2(1)ウ及び(2)に係る支給決定を行う際には、当分の間、事前に当課職業病認定対策室職業病認定業務第一係に協議すること。」

令和3年6月24日付け基補発0624第1号-「本件に係る労災保険給付の請求があった場合には、引き続き、別途示している報告様式により、当課業務係及び企画調整係に報告するとともに、当該請求に対して不支給決定を行う際には、当分の間、事前に当課職業病認定対策室職業病認定業務第一係に協議すること。」

「労災認定実務要領」の策定へ

厚生労働省は同じ令和2年4月28日に、補償課課長補佐(業務担当)/職業病認定対策室長補佐事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る労災補償Q&Aについて」も発出すると同時に、ウエブサイト上の「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」の「5 労災補償」で課長通達やQ&Aの内容を公表した(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html)。

同年5月1日には、補償課職業病認定対策室長補佐事務連絡「新型コロナウイルス感染症の労災保険給付請求に係る調査等に当たっての留意点について」が示された(全文:https://joshrc.net/archives/9379)。これには、各種様式を含めた「新型コロナウイルス感染症に係る調査要領」が含まれていた。

また、5月22日版「『新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて』に関するQ&A」という文書を作成し、10の問を掲げて解説した(全文:https://joshrc.net/archives/9383)。

また、同年10月20日には、「新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性)事案の当面の取扱いについて」という「部内限」と表示した文書を作成(全文:https://joshrc.net/archives/9387)。11月24日には、都道府県労働局労働基準部労災補償課長宛てて「新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性事案)の本省協議の取扱いについて」と題したメールを発している(同前)。

以上のような経過を経て最終的に、令和3年5月11日付け補償課職業病認定対策室長「新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領について」が策定され、「新型コロナウイルス感染症事案の業務上外の判断に当たっては、これまで、令和2年5月1日付け事務連絡『新型コロナウイルス感染症の労災保険給付請求に係る調査等に当たっての留意点について』により、迅速・適正な事務処理を図ってきたところであるが、今般、標記要領を作成したので、今後はこれに基づき適切に対応されたい」としている(全文:https://joshrc.net/archives/10903)。

目次は、第1 新型コロナウイルス感染症とは、第2 通達の解説、第3 調査事項等、第4 取りまとめ様式、第5 調査復命書記入例、第6 質疑応答集、第7 関係通達等、第8 参考資料。関係通達等には、令和2年4月28日付け基補発0428第1号のほか、同年7月7日付け健感発0707第1号・基補発0707第2号「新型コロナウイルス感染症の労災補償のための保健所における情報提供等の協力依頼について」と同年3月11日付け基補発0311第1号「『新型コロナウイルス感染症防止等のための対応について』に係る労災部署における対応について」が含まれ、参考資料は、診療の手引き、積極的疫学調査実施要領、宿泊・自宅療養証明書である。

「質疑応答集」の内容

同事務連絡に含まれた「質疑応答集」の問は以下のとおりである(回答は簡略化してあるので、詳しくは原文を当たっていただきたい)。

Ⅰ 発病日の考え方

問1 4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日に医療機関を受診しPCR検査を受けた。4月14日に検査結果が陽性だったので、医師から新型コロナウイルスへの感染が診断された。この場合、発病日は、いつか。また、休業期間の始期はいつか。→(答)発病日は初診日の4月13日、休業期間の始期も4月13日。業務状況等の調査の起算日となる発症日は4月10日。

問2 4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日にA診療所を受診した。検査の必要性があったことから、A診療所の紹介で4月14日にB医療機関を受診しPCR検査を受けた。4月15日に検査結果が陽性だったので、医師から新型コロナウイルスへの感染が診断された。この場合、発病日は、いつか。→(答)最初に医療機関を受診した4月13日。

問3 4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日に保健所へ連絡したところ、医療機関の受診はなく、保健所にてPCR検査を受けた。4月15日に検査結果が陽性だったので、同日から入院となった。この場合、発病日は、いつか。→(答)PCR検査を受けた4月13日。

問4 4月10日に新型コロナウイルスに感染した者と濃厚接触し、その後、発熱や咳など症状が出現したので、4月13日に医療機関で1回目のPCR検査を受けたところ陰性であった。しかし、症状が続いたことから、4月20日に再受診し、2回目のPCR検査を受けたところ陽性であったため、同日から入院となった。この場合、発病日は、いつか。→(答)1回目のPCR検査を受けた4月13日。

問5 PCR検査は受けていないが、抗原検査を受けて陽性であった場合、PCR検査を抗原検査と読み替えて判断してよろしいか。→(答)後述。

Ⅱ 通達の考え方

問6 通達の記の2(1)アの「医療従事者等」とは、医療機関や介護施設で働く全ての労働者が該当すると考えて良いのか。→(答)一般的には、医師、看護師、介護職、理学療法士、診療放射線技師、診療エックス線技師、臨床検査技師、機能訓練指導員、歯科衛生士などが医療従事者等に該当すると考えられ、事務員、生活支援相談員、清掃員、調剤に従事する薬剤師などはここでいう「医療従事者等」に該当しないと考えられる。

問7 通達の記の2(1)アの「患者」とは、新型コロナウイルスに感染したことが診断された者、症状が出現している者などに限定されるのか。→(答)感染が確認された者等に限定するものではない。

問8 通達の記の2(1)アの「介護の業務」とは、どのような者の介護なのか。→(答)患者を介護する場合に限らず、高齢者、障害者等の身体に直接接触して日常生活行動を援助するという介護を行う業務を含む。

問9 通達の記の2(1)イの「感染経路が特定されたもの」とは、保健所の「積極的疫学調査」で感染源が特定されていることが必要か。→(答)客観的に特定できる場合は必要ない。

問10 会社員が事業場内でクラスターが発生したことにより感染した場合は、通達の記の2(1)イと2(1)ウ(ア)のどちらに該当するのか。→(答)感染経路が特定された場合は2(1)イ、感染経路が不明な場合は2(1)ウ(ア)。

問11 通達の記の2(1)ウ(ア)の「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、どのような場合か。→(答)省略

問12 通達の記の2(1)ウ(イ)の「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」とは、どのような業務をいうのか。→(答)小売業の販売業務、飲食サービス業務、バス・タクシ一等の旅客運送業務、育児サービス業務、医療機関における受付等の業務、調剤薬局における受付等の業務が想定されるが、これに限定するものではない。

問13 通達の記の2(1)ウについて、市中感染が拡大した中で、業務により感染した蓋然性が高いか否かの判断はどのように行うべきか。また、業務と一般生活の感染リスクを比較する上で、どのようなことを調査すべきか。→(答)省略

問14 通達の記の2(2)アの「海外出張労働者」について、出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合とは、何を基準に判断すればよいのか。→(答)省略

問15 海外ではなく国内の「国内出張労働者」の場合はどのような取扱いとなるのか。→(答)省略

Ⅲ 調査事項等・取りまとめ様式について

問16 様式1「使用者報告書」については、例えば、医療機関等で集団感染が発生した場合、必ず請求人ごとに求めるのか。→(答)必ずしも必要なし。

問17 様式2「申立書」については、事案によっては記入不要となる箇所もあると思われるが、必ず請求人に提出を求めるのか。→(答)必ずしも必要なし。

問18 保健所等に対し、どのような事案について、推定感染源等の情報提供を依頼する必要があるか。→(答)感染経路不明事案、感染経路に疑義ある事案、一般生活下での感染が疑われる事案については、保健所に対し情報提供依頼を行う必要がある。

問19 主治医意見書は、すべての事案で徴取する必要があるか。また、保健所において、PCR検査を受けた結果陽性となったが、軽症で、あって自宅(ホテル)療養したため医療機関の受診がなく、医学的事項の調査においても主治医意見の収集ができない場合、どのようにすべきか。→(答)必ずしも必要なし。

問20 様式5「調査復命書」については、新型コロナウイルス感染症のすべての事案に使用しなければならないのか。→(答)必ずしも必要なし。

Ⅳ 休業期間の考え方

問21 新型コロナウイルス感染症で入院していた者について、PCR検査の結果陰性が確認されたため退院した。その後、医師の指示で自宅において2週間待機した場合(退院後の受診はない)、休業補償給付の対象になるのか。→(答)医師の証明がない場合であって、療養ため労働することができないことが医学的に認められたときには、休業補償給付の対象となる。

問22 4月15日に新型コロナウイルスに感染した者と濃厚接触したことにより、無症状であったが4月17日に1回目のPCR検査を受け陰性であった。保健所等の指示で自宅にて待機をしていたが、その後、発熱や咳などの症状が出現したので、4月22日に、2回目のPCR検査を受け陽性となった。この場合、1回目のPCR検査日から、休業補償給付の対象になるのか。→(答)1回目のPCR検査日から療養のため労働することができないことが医学的に認められれば、休業補償給付の対象となる。

問23 PCR検査で陽性だったが、症状が軽かったため、医療機関への受診はなく、保健所の指示により、自宅(ホテル)にて2週間療養を行った。当該療養期間について、PCR検査を実施した医師に休業補償給付請求書の医師証明を求めたところ、検査を実施したのみで、診療をしていないため証明することができないとの回答であった。この場合、医師の証明の取扱い知何。→(答)後述。

Ⅴ その他

(陰性事案の考え方)
問24 濃厚接触者として、医療機関を受診しPCR検査を受けた。検査結果は陰性であったが、その検査費用は、労災保険給付の対象となるのか。また、その後、自宅で待機していた場合、休業補償給付の対象となるのか。→(答)新型コロナウイルス感染症に擢患していた蓋然性が高いと判断される場合は、検査費用や休業補償給付について支給対象となる。関連して、前出の「新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて」が「参考」として示されている。

(通勤災害)
問25 通勤途上で、新型コロナウイルスに感染したとの申立により労災請求があった場合、通達により判断することとなるのか。→(答)本省に協議すること。

(追加傷病名)
問26 新型コロナウイルス感染症による療養中、傷病名が追加された場合、労災保険給付の対象となるのか。→(答)後述。

(管轄について)
問27 A監督署管轄のB事業場で感染の疑いがあり、その後、C監督署管轄のD事業場に異動(転職)した後に、発熱等の症状が出現しPCR検査を受けて陽性となった場合、調査決定する監督署は何処か。→(答)感染した原因となる業務のB事業場を管轄するA監督署。

「質疑応答集」の一部改正

この質疑応答集の一部が令和4年2月8日付け補償課職業病認定対策室長事務連絡「新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領の一部改正について」によって一部改正された。これについては以下に新旧の(答)を示す。

「新型コロナウイルス感染症に係る質疑応答集は、令和3年5月発出の『新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領」』示してきたところであるが、外来医療のひっ迫が想定される場合に、患者が自ら検査した結果に基づき健康観察対象者とすることとした自治体もあること等から、今般、質疑応答集の一部を別添のとおり改正したので、今後はこれに基づき適切に対応されたい。」

問5 PCR検査は受けていないが、抗原検査を受けて陽性であった場合、PCR検査を抗原検査と読み替えて判断してよろしいか。
現行-抗原検査は、ウイルスの抗原を検知し、診断に導く検査であり、PCR検査と同様に用いられていることから、読み替えて判断して差し支えない。
なお、問1~問5でいうPCR検査・抗原検査は、医療機関(医師)又は保健所が行ったものをいい、事業場で購入した簡易キット等による検査であって、検査結果を踏まえた新型コロナウイルス感染症の診断を医師が行っていない場合は、当該検査は医療行為とならないため、当該検査日を発病日とすることはできない

改正-抗原検査は、ウイルスの抗原を検知し、診断に導く検査であり、PCR検査と同様に用いられていることから、読み替えて判断して差し支えない。
なお、当該検査が自主検査であって、自治体が健康観察の対象者とする場合においては、健康観察開始日を発病日とすることで差し支えない

問23 PCR検査で陽性だったが、症状が軽かったため、医療機関への受診はなく、保健所の指示により、自宅(ホテル)にて2週間療養を行った。当該療養期間について、PCR検査を実施した医師に休業補償給付請求書の医師証明を求めたところ、検査を実施したのみで、診療をしていないため証明することができないとの回答であった。この場合、医師の証明の取扱い如何。

現行-当該療養期間について、発症から一度も医療機関に受診していない場合やPCR検査の実施を行ったのみで診療をしていないとの理由で医師が証明することができない場合には、保健所の証明による「宿泊・自宅療養証明書」や「就業制限通知書」、「就業制限解除通知書」を休業補償給付請求書に添付することで、診療担当者の証明に代用して差し支えない。

改正-当該療養期間について、発症から一度も医療機関に受診していない場合やPCR検査の実施を行ったのみで診療をしていないとの理由で医師が証明することができない場合には、保健所の証明による「宿泊・自宅療養証明書」、「就業制限通知書」、「就業制限解除通知書」又は自治体が発行する「健康観察対象者であることとその期間を把握できる資料」を休業補償給付請求書に添付することで、診療担当者の証明に代用して差し支えない。

問26 新型コロナウイルス感染症による療養中、傷病名が追加された場合、労災保険給付の対象となるのか。

現行-新型コロナウイルス感染症による合併症は多岐にわたり、現在も、その因果関係がすべて判明しているものではないことから、慎重に確認する必要があるため、本省に相談すること。
ただし、レセプトに追加された傷病名が、①「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第4.2版)」記載の合併症に伴う傷病名である場合、②除外診断目的による検査傷病名である場合、③一過性の症状に対して行った治療による傷病名(精神障害も含む)である場合は、新型コロナウイルス感染症にかかる療養として、労災保険給付の対象として差し支えない。

改正-新型コロナウイルス感染症による合併症・罹患後症状は多岐にわたり、現在も、その因果関係がすべて判明しているものではない、レセプトに追加された傷病名が、①「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」記載の合併症に伴う傷病名である場合、②除外診断目的による検査傷病名である場合、③一過性の症状に対して行った治療による傷病名(精神障害も含む)である場合、④「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント」記載の罹患後症状による傷病名(精神障害も含む)である場合は、新型コロナウイルス感染症にかかる療養として、労災保険給付の対象として差し支えない。
ただし、上記①~④に該当しない傷病名又は不支給とするものについては、慎重に確認する必要があるため、本省に相談すること。

なお、厚生労働省ウエブサイトの「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」「5 労災補償」にも、以下が追加されている。

問8 PCR検査や抗原検査で陽性でしたが、医療機関に受診せずに、自宅等において療養を行いました。当該療養期間について、医師からの証明がなくても休業補償給付の請求はできますか。
(答)当該療養期間について、PCR検査や抗原検査の陽性結果を確認できる書類(※1)を自宅療養したことを客観的に推定できる書類として休業補償給付支給請求書に添付した上、請求してください。
なお、MyHER-SYS(※2)により電磁的に発行された証明書等をお持ちの方は、そちらを添付しても差し支えありません。
(※1)検査機関からの陽性結果通知書等。なお、陽性結果通知書を得られない場合は以下書類を参考として御使用ください。
新型コロナウイルス感染症陽性結果確認書類[ダウンロード可能]
(※2)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00129.html

「罹患後症状」の取り扱い

令和4年5月12日には、基補発0512第1号都道府県労働局労働基準部労災補償課長殿「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」が発出されており、内容は以下のとおりである。

「新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の労災補償の取扱いについては、令和2年4月28日付け基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき実施しているところであり、本感染症の罹患後症状についても労災保険給付の対象としてきたところであるが、今般、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第1版)」(以下「診療の手引き」という。)が取りまとめられたことを踏まえ、本感染症に係る罹患後症状の労災補償における取扱いを明確にした上で、今後、より一層適切な業務運営の徹底を図ることとするので、下記により、適切な対応に遺漏なきを期されたい。

1 基本的な考え方

本感染症については、感染性が消失した後であっても、呼吸器や循環器、神経、精神等に係る症状がみられる場合がある。新型コロナウイルス感染後のこれらの症状については、いまだ不明な点が多く、国内における定義は定まっていないが、WHOの定義の「post COVID-19 condition」を「COVID-19後の症状」と訳した上で、診療の手引きでは「罹患後症状」とされた。

これらの罹患後症状については、業務により新型コロナウイルスに感染した後の症状であり療養等が必要と認められる場合は、労災保険給付の対象となるものであること。

2 具体的な取扱い

(1)療養補償給付

医師により療養が必要と認められる以下の場合については、本感染症の罹患後症状として、療養補償給付の対象となる。

ア 診療の手引きに記載されている症状に対する療養(感染後ある程度期間を経過してから出現した症状も含む)

イ 上記アの症状以外で本感染症により新たに発症した傷病(精神障害も含む)に対する療養

ウ 本感染症の合併症と認められる傷病に対する療養

(2)休業補償給付

罹患後症状により、休業の必要性が医師により認められる場合は、休業補償給付の対象となる。

なお、症状の程度は変動し、数か月以上続く症状や症状消失後に再度出現することもあり、職場復帰の時期や就労時間等の調整が必要となる場合もあることに留意すること。

(3)障害補償給付

診療の手引きによれば、本感染症の罹患後症状はいまだ不明な点が多いものの、時間の経過とともに一般的には改善が見込まれることから、リハビリテーションを含め、対症療法や経過観察での療養が必要な場合には、上記のとおり療養補償給付等の対象となるが、十分な治療を行ってもなお症状の改善の見込みがなく、症状固定と判断され後遺障害が残存する場合は、療養補償給付等は終了し、障害補償給付の対象となる。

3 相談等における対応

本感染症に係る罹患後症状の労災保険給付に関する相談等があった場合には、上記の取扱い等の懇切丁寧な説明に努めることとし、罹患後症状がいまだ不明な点が多いこと等を理由として、労災保険給付の対象とならないと誤解されるような対応は行わないよう徹底すること。なお、罹患後症状については、「いわゆる”後遺症”」として「後遺症」との用語を用いられる場合も少なくないが、通常は障害補償給付における後遺障害の状態ではなく、療養が必要な状態を意味する場合が多いことから、説明等を行う際に誤解を生じさせることのないよう留意すること。

4 周 知

本感染症それ自体はもとより、症状が持続し(罹患後症状があり)、療養等が必要と認められる場合も労災保険給付の対象となることについて、令和2年11月20日付け基補発1120第1号「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」により指示したところのほか、あらゆる機会をとらえて、医療機関や被災労働者の方などに周知すること。

5 その他

上記2の(3)により障害補償給付を行う際には、当分の間、事前に当課業務係に協議すること。」

労災保険請求の臨時的取扱い

入手できているなかで一番新しい指示は、令和4(2022)年8月12日付け及び9月2日付けの同じ表題の通達で、後者によって前者が置き換えられている。両方の内容を紹介しておこう。

8月12日付け基補発0812第2号「新型コロナウイルス感染症に係る労災保険請求における臨時的な取扱いについて」の内容は以下のとおりである。

「新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の労災補償における取扱いについては、令和2年4月28日付け基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき実施しているところであるが、本年7月以降、全国的に新規感染者数が増加し、多くの地域で急速に感染が拡大する中、新型コロナウイルス感染症対策本部において、7月29日に「病床、診療・検査医療機関のひっ迫回避に向けた対応」が、8月4日に「オミクロン株の特徴に合わせた医療機関や保健所の更なる負担軽減への対応」が決定されるなど、医療機関等の負担軽減が求められている。

このため、今般、労災保険請求の手続においても、現下の感染拡大の状況を踏まえた当分の間の運用として、下記のとおり取り扱うこととしたので、本感染症に係る労災保険給付の請求や相談等があった場合には、これを踏まえ適切に対応されたい。

1 休業補償給付請求における証明の取扱いについて

休業補償給付請求書における診療担当者の証明については、PCR検査や抗原検査からの陽性結果通知書や、MyHER-SYSにより電磁的に発行された証明書等を添付することとして差し支えないこととする。

2 休業補償給付請求における相談等の対応について

休業補償給付請求書における診療担当者の証明に関し、被災労働者等から相談等があった場合には、医療機関や保健所の負担軽減を図る観点から、上記1の証明書等を休業補償給付請求書に添付するよう説明すること。」

臨時的取扱い

9月2日付け基補発0902第1号「新型コロナウイルス感染症に係る労災保険請求における臨時的な取扱いについて」の内容は以下のとおりである。

「新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)に係る労災保険請求における臨時的な取扱いについては、令和4年8月12日付け基補発0812第2号(以下「2号通達」という。)により通知したところであるが、今般、感染症法に基づく医師の届出(発生届)に係る事務負担が増加し、適切な医療の提供等が難しくなっているとの声があることから、発熱外来や保健所業務が極めて切迫した地域における緊急避難措置として、発生届を重症化リスクのある者に限定することを可能とするため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(令和4年厚生労働省令第116号)が令和4年8月25日に施行され、本日から運用開始となったところである。

このため、労災保険の請求手続きにおいても、臨時的な運用として下記のとおり取り扱うこととしたので、本感染症に係る労災保険の請求や相談があった場合には、これを踏まえて適切に対応されたい。
なお、2号通達は、本通知により廃止する。

1 休業補償給付請求における証明の取扱いについて

医療機関を受診せず自宅療養を行った者等からの休業補償給付支給請求書における診療担当者の証明については、PCR・抗原検査や薬事承認された抗原検査キットで陽性結果を確認できる書類(陽性結果通知書等)を添付することとして差し支えないこととする。

なお、MyHER-SYSにより電磁的に発行された証明書等を有する者の場合は、それらを添付することとしても差し支えない。

2 休業補償給付請求における相談等の対応について

休業補償給付支給請求書における診療担当者の証明に関し、被災労働者等から相談があった場合には、上記1の書類等を休業補償給付支給請求書に添付することにより請求が可能である旨説明すること。
なお、書類に不備があることをもって、直ちに保険給付の対象とならない旨の説明をすることのないよう徹底されたい。」

周知と積極的な労災請求

以上以外にも、以前に出されて、その後改正されているものもあり、労災補償と関連したものを紹介しておこう。ひとつは、令和2年11月20日付け基補発1120第1号「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」であり、令和3年12月16日付け基補発1216第1号によって一部改正されており、改正後の内容は以下のとおりである。

「新型コロナウイルスの集団感染が発生した事業場に対して、感染した労働者への労災請求勧奨を行うよう指示しているところであるが、現下の感染状況や労災請求状況に鑑み、当面、下記についても対応いただくようお願いする。

1 新型コロナウイルス感染症が労災保険給付の対象であること等の周知について

都道府県労働局(以下「局」という。)において実施される労働局長の定例会見や局及び労働基準監督署(以下「署」という。)の幹部職員等が出席する各種会.等の機会を捉え、新型コロナウイルス感染症に係る労災保険給付に関し、以下の内容を周知すること。

(1)労災保険給付の対象であること

① 業務により新型コロナウイルスに感染した場合には、労災保険給付の対象であること。また、症状が持続し(罹患後症状があり)、療養等が必要と認められる場合も労災保険給付の対象であること。

② 感染経路が特定できない場合であっても、個別の事案ごとに業務との関連性を調査し、労災保険給付の対象となるか否かを判断していること。

③ 厚生労働省ホームページにおいて、新型コロナウイルス感染症の労災補償に係るQ&Aや労災認定事例を掲載していること。

④ 労災請求はあくまで労働者本人からの請求行為であり、事業主からの承認を得てなされるものではないこと。

⑤ 事業主から請求書に証明が得られない場合は、署に相談していただきたいこと。

(2)積極的な労災請求

労働者においては、業種・職種を問わず、業務により新型コロナウイルスに感染したものと考えられる場合には、積極的に署に労災請求していただきたいこと。

(3)事業場を通じた労働者への請求勧奨

事業場においては、業務により新型コロナウイルスに感染したものと考えられる労働者に対して、労災保険制度を周知していただくとともに、請求勧奨を行っていただきたいこと。

2 集団感染が発生している事業場に対する請求勧奨等の実施について

令和3年9月27日付け事務連絡「集団感染が発生した医療機関等における労働者の感染が疑われる事案を把握した場合の労災請求勧奨等の対応について」及び令和2年8月7日付け基補発0807第1号「新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生した事業場に対する感染拡大防止の要請等について」に基づき、引き続き、請求勧奨等を確実に実施すること。」

集団感染発生事業場対策

もうひとつは、令和2年8月7日付け基安労発0807第1号・基補発0807第1号「新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生した事業場に対する感染拡大防止の要請等について」で、令和3年4月14日付け基安労発0414第1号・基補発0414第1号、及び、令和3年7月2日付け基安労発04702第3号・基補発0702第1号によって一部改正されており、最終改正後の内容は以下のとおりである。

「標記について、令和2年4月7日付け基安労発0407第1号「新型コロナウイルス感染症に係る労働者死傷病報告受理時の対応について」に基づき、令和3年2月12日付基監発0212第6号・基補発0212第1号・基安労発0212第3号「緊急事態宣言延長に伴う職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策の強化に当たって留意すべき事項」の記の4(1)アに留意の上、事業場における感染防止対策の取組状況の確認及び指導の対象とするよう指示しているところであるが、感染者は依然として後を絶たず、報道等で事業場における集団感染の発生も報じられているところである。

このような中、事業場において集団感染の発生が報じられているにもかかわらず、労働者死傷病報告が提出されていない事業場及び労働者から労災請求が行われていない事業場(以下「未提出事業場」という。)も少なからず認められるところであり、未提出事業場に対する感染拡大防止の要請、労働者死傷病報告の提出及び労災請求の勧奨の実施が必要である。

ついては、職場における感染拡大防止の一層の徹底を図るため、当面の間、地方自治体の発表や保健所からの情報提供、報道等をはじめ、各局が把握した各種情報により新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生したと疑われる事案を把握した場合には、下記により対応されたい。

1 事業場に対する感染拡大防止の要請、労働者死傷病報告の提出及び労災請求の勧奨について

(1)労働者死傷病報告受理時の対応

集団感染か否かにかかわらず、窓口において労働者死傷病報告を受理した場合には、引き続き、別添1(略)のチェックリストの活用勧奨も含め、令和3年2月12日付基監発0212第6号・基補発0212第1号・基安労発0212第3号「緊急事態宣言延長に伴う職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策の強化に当たって留意すべき事項」の記の4(1)アに留意の上、事業場における感染防止対策の取組状況の確認及び指導の対象とすること。なお、郵送又は電子申請により報告があった場合についても、電話等により、上記と同様の取組を行うこと。

また、引き続き、安全衛生担当部署及び労災補償担当部署が連携の上、適宜適切に労災請求勧奨を行うこと。

(2)労災請求受理時の対応

集団感染か否かにかかわらず、窓口において労災請求を受理した場合には、労災補償担当部署及び安全衛生担当部署が連携の上、労働者死傷病報告が未提出の場合は別添2(略)のリーフレット等を活用し労働者死傷病報告の提出勧奨を行うこと。

(3)未提出事業場への対応

各局において地方自治体の発表や保健所からの情報提供、報道等をはじめ、各局が把握した各種情報により新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生したと疑われる事案を把握した場合には、当該事業場からの労働者死傷病報告の提出状況を確認し、未提出の場合は、別紙1(略)の例を参考に上記(1)に準じた確認及び指導、労働者死傷病報告の提出の勧奨を速やかに実施することを所轄の労働基準監督署に指示すること。

また、上記の要請等を行うに当たり、令和2年5月19日付け本省補償課長補佐(業務担当)事務連絡に基づいた労災請求勧奨が行われていない場合には、労災請求勧奨についても併せて実施すること。

なお、保健所において集団感染発生事業場を把握した際には、必要に応じ、都道府県労働局健康主務課にその情報を提供することとされているため、保健所から情報提供を受けた場合には、速やかに上記対応を所轄の労働基準監督署に指示すること。

2 対応状況の適切な把握について

新型コロナウイルス感染症に係る労働者死傷病報告については、本省において労働基準行政システムにおいて随時、件数を把握することとしているため、受理した死傷病報告については令和2年12月25日付労働衛生課長名事務連絡「新型コロナウイルス感染症による労働災害等の把握について」に留意の上、遅滞なく労働基準行政システムに入力すること。記の1(2)及び(3)については、本省への報告は要しないが、本省において各局の取組状況を把握する必要が生じた場合に備え、別紙2(略)を活用し、局又は署において取組状況を適切に把握しておくこと。」

労働者死傷病報告受理時の対応

さらに、令和2年4月7日付け基安労発0407第1号「新型コロナウイルス感染症に係る労働者死傷病報告受理時の対応について」が、令和3年4月14日付け基安労発0414第2号によって一部改正されており、改正後の内容は以下のとおりである。

「標記については、令和2年3月31日付け基安発0331第3号「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大に向けた職場における対応について」(以下、「部長通知」という。)により指示されたところであるが、今般、海外出張から帰国した労働者に新型コロナウイルスの感染が認められ、4日以上の休業が見込まれるとして、労働者死傷病報告が提出された事案を把握したところである。

ついては、職場における感染拡大防止の一層の徹底を図るため、当面の間、新型コロナウイルスに感染した労働者に係る労働者死傷病報告(以下、という。)

「死傷病報告」の提出があった場合には、下記により取り扱うこととするので遺漏なきを期されたい。

1 死傷病報告受理時の対応

窓口において死傷病報告を受理した場合には、令和3年2月12日付基監発0212第6号・基補発0212第1号・基安労発0212第3号「緊急事態宣言延長に伴う職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策の強化に当たって留意すべき事項」の記の4(1)アに留意の上、事業場における感染防止対策の取組状況の確認及び指導の対象とすること。なお、郵送又は電子申請により報告があった場合についても、電話等により、上記と同様の対応を行うこと。

2 死傷病報告の労働基準行政システムへの入力

新型コロナウイルス感染症に係る労働者死傷病報告については、本省において労働基準行政システム(以下、「システム」という。)において随時、件数を把握することとしているため、受理した死傷病報告については令和2年12月25日付労働衛生課長名事務連絡「新型コロナウイルス感染症による労働災害等の把握について」に留意の上、遅滞なくシステムに入力すること。

罹患後症状事案の把握は困難

全国労働安全衛生センター連絡会議は「労働安全衛生・労災職業病に関する要望書」を提出して、令和4(2022)年9月6日に厚生労働省と交渉を行った(表紙写真)。新型コロナウイルス感染症に特化したものではなかったが、関連する要望内容と厚生労働省の回答を、最後に紹介しておきたい。

C1(1) 情報公開で入手した労災補償データの「疾病別都道府県別件数表(2年度)」の「最近、ウイルス等の原体による疾病6号」のコード番号「01~04」及び「99」に新型コロナウイルス感染症による労災認定件数が含まれていない[編注:安全センター情報2022年9月号29~31頁と42~53ページ参照]。都道府県労働局の判断にまかせるのではなく、厚生労働省として、新型コロナウイルス感染症の労災補償に関する都道府県別データを公表すること。

(2)傷病名にとらわれることなく「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状」が疑われる請求につき、請求件数、業務上外の決定件数、決定に係る傷病名、発症年月日から経過日数を明らかにすること。集計していなければ、都道府県労働局に対して上記を集計し、報告するよう通知し、集計結果を明らかにすること。

(3)通勤災害として請求された新型コロナウイルス感染症の業種別の請求件数、支給決定件数、不支給決定件数を明らかにすること。

(4)新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に起因した労災請求について、請求件数、業務上外決定件数、傷病名を明らかにすること。

(答)
((1)(3)(4)関連)
業種毎の労災の状況を踏まえ、業務による新型コロナウイルスへの感染が労災保険給付の対象となることの周知や、事業主による安全衛生の環境整備を目的とし、業種毎の労災保険請求件数等の集計・公表を行っているところです。
((2)関連)
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状については、症状が様々であり、新型コロナウイルス感染症に関する保険給付のうち、罹患後症状による労災請求件数、決定件数等の把握を行うことは困難であると考えています。
(労働基準局補償課)

C1(5) 新型コロナウイルス感染症をアフターケア制度の対象とすること。

(答)
新型コロナウイルス感染症及びその罹患後症状はいまだ不明な点が多いものの、時間の経過とともに一般的には改善が見込めることからリハビリテーションを含め、対処療法や経過観察での療養が必要な場合には、療養補償給付等の対象としているところです。
(労働基準局補償課)

罹患後症状や通勤災害、ワクチン接種による健康障害の労災請求・決定件数等については、そのようなかたちでの集計・把握はしていないので回答できないということだったが、少なくとも通勤災害については本省協議を求めているので把握可能なはずであり、これまでのところ認定事案はないということかもしれない。

これまでに新たな診断名が追加されたことから調査を理由に労災保険給付が中断された事案はあったものの、厚生労働本省としては、療養・休業が必要とされた事案の労災補償を認めなかったと非難されることは避けたいと考えているように思われる。実務的には、医師・医療機関が新型コロナウイルス感染症ないし罹患後症状としての療養・休業の必要性認めずに労災請求に協力しない例もあるのではないかと危惧される。

安全センター情報2022年11月号

自宅待機等による休業期間

※上記で2022年9月15日までに入手できている情報から」を解説したが、その後2021年度分労働基準行政関連通達の情報開示によって入手したもの。

令和3年10月11日付け基発1011第4号「新型コロナウイルス感染症に係る保健所等の行政機関の指示等に基づく自宅待機等による休業期間を含む給付基礎日額の算定について」

標記について、国内における新型コロナウイルス感染症の発生状況等を踏まえて、労働者災害補償保険法昭和22年法律第50号)第8条の規定に基づく給付基礎日額の算定期間中に新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした自宅待機等による休業期間を含む場合、被災労働者の福祉の増進に寄与することを目的とした労災保険制度の趣旨にかんがみ、今般、労働者災害補償保険法施行規則昭和30年労働省令第22号)第9条第1項第4号の規定に基づき、給付基礎日額の特例について、下記のとおり定めることとしたので、その運用に遺憾なきを期されたい。

1 原則的考え方

労災保険の保険給付に用いる給付基礎日額の算定において、下記2の休業期間が含まれる場合は、給付基礎日額の特例として、算定期間のうち、下記2の期間及び同期間中の賃金は控除して算定すること。

なお、本通達による算定方法により、かえって給付基礎日額が低くなる場合には本特例を適用しない。

2 対象となる休業

本通達による特例は、新型コロナウイルス感染症に係る保健所等の行政機関の指示等に基づく自宅待機等を行った労働者の休業について適用する。

【想定されるもの】
・事業場外において新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者と判断されたことなどにより保健所等の行政機関の指示等に基づき自宅待機等を行った労働者の休業

3 対象期間

本通達は、令和2年1月以降当面の間の休業について適用する。

4 追加支給等

既に給付基礎日額を算定し、保険給付を行っている事案については、上記1に基づき給付基礎日額を再算定し、令和3年9月1日付け基発0901第1号「労災保険給付事務取扱手引の一部改正について」の別添「労災保険給付事務取扱手引」のⅤの3第3のとおり、追加支給等を行うこと。その他、本通達に関連して疑義が生じた場合は、適宜本省に協議すること。