COVID-19と安全衛生・労災補償⑩/労災請求8千件超、認定4千件超、例年の職業病認定件数の半数-2020年度のCOVID-19労災(2021年3月31日)
労災保険
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数等の状況について、2月26日現在の3月3日公表以降、3月5日、3月12日、3月19日、3月26日現在の3月31日公表と、1週間ごとの情報更新が継続している。昨年4月30日現在の公表以来、141回の情報公表となる(図1参照)。
請求件数は、2019年度-昨年3月の請求1件からはじまり(表1)、昨年7月13日に500件を突破した後、9月2日に1,000件、11月12日に2,000件、今年1月15日に3,000件、2月5日に4,000件、2月19日に5,000件、3月12日に6,000件、3月19日に7,000件、3月26日に8,000件突破と増加し続け、3月26日現在8,177件となった。表1でわかるように、今年1月以降は毎月1,000件を超える増加が続き、3月は26日までで2,587件という急増ぶりである。
前号で紹介した2月26日現在の5,590件と比較すると46.3%の大幅増加である。業種別では、医療従事者等が4,238件から6,316件へと49.0%の増加、医療従事者等以外が1,340件から1,848件へと37.9%の増加となっている。
認定(支給決定)件数は、5月14日に最初の2件が現われ、8月31日に500件を突破、11月12日に1,000件、2月5日に2,000件、3月12日に3,000件、3月26日に4,000件を突破して、4,038件となった。2月26日の2,516件と比較すると60.5%増加した。3月は26日までで1,422件の認定である。業種別では、2月26日と比較して3月26日まで、医療従事者等が1,935件から3,139件へと62.2%の増加、医療従事者等以外が570件から887件へと55.6%の増加である。
例年の職業病認定件数は7~8千件であるので、昨年度はコロナの労災認定だけで、その約半数以上あったことになる。
請求件数に対する支給決定件数として計算した「認定率」は、2021年に入ってから請求件数の急増に処理が追いつかずに減少も見えたが、3月26日現在で、全体で49.4%、医療従事者等が49.7%、医療従事者等以外が48.0%という状況である。
不支給決定件数は、昨年10月20日現在で初めて現われ11件だったが、昨年末(12月28日現在で33件)時点では、すべてが新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と確認されている。3月26日現在の不支給決定件数は190件で、医療従事者等の146件は新型コロナウイルス感染症ではなかった事例と考えられるが、医療従事者等以外の44件に新型コロナウイルス感染症であるのに業務上と認められなかったものが含まれるかどうかは不詳である。(支給+不支給)決定件数に対する不支給決定件数の割合は、全体で4.5%、医療従事者等では4.4%、医療従事者等以外では4.7%となっている。決定件数の95.5%は認定(支給決定)されているということになる。
3月26日現在の業種別の状況を表2に示した。請求件数に対する支給決定件数の割合としての「認定率」が、不動産業・物品賃貸業で25.5%と落ち込んでいるが(ただし不支給決定件数はゼロ)、他はいずれも40%は超えている。
地方公務員災害補償
地方公務員災害補償基金による地方公務員災害補償の状況の公表は、2月28日現在の3月4日公表以降、3月10日現在、3月17日現在、3月24日現在の3月26日公表と続いている。昨年5月29日現在の公表以来、28回の公表である(図2参照)。
請求件数は2月28日以降、347件→384件→403件→433件へと、24.8%増加した。こちらは幸いにいまだ公務外認定事例は現われておらず、公務上認定件数は、225件→273件→291件→312件へと、38.7%増加した。
職種別の3月24日現在の状況を、表3に示した。保育士・寄宿舎指導員等の「認定率」が33.3%と低く、消防吏員の41.7%がその次に低くなっている。
その他
東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議の資料等から、毎日の新規陽性者数と接触歴等判明・不明者数、及び1週間ごとの接触歴等判明者(濃厚接触者)における感染経路別割合が、昨年7月28日以降分についてわかる。
これをもとに新規陽性者のうち感染経路が「職場」であった者の割合を計算すると、7月28日~1月4日は5.8%、1月5日~3月1日は2.9%、3月2日~3月22日は4.0%となる。
この情報の信頼性については、1月22日~2月25日の間は、新規陽性者数拡大第三波の影響でいわゆる「積極的疫学調査」が放棄されたことや、1日300人を超えるとうまく機能しない等とも言われていることに注意する必要があろう。
また、感染経路が「施設」「接待を伴う飲食」の者や接触歴等不明も含めて、業務上の疾病として労災認定される事例があり得ることにも留意したい。
安全センター情報2021年5月号