情報公開で明らかになった「新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性)事案の当面の取扱いについて」(令和2(2020)年10月20日 職業病認定対策室)

都道府県労働局労働基準部労災補償課長宛て厚生労働省令和2年10月20日 労働基準局補償課職業病認定対策室
機密性2/部内限

新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性)事案の当面の取扱いについて

1 基本的な考え方について

新型コロナウイスル感染症に係るPCR検査については、感度(陽性者を正しく陽性と判定する率)には限界がある(※1)ため、濃厚接触者、かつ、発熱や呼吸器症状を有している者であっても、陰性判定される場合がある。

また、発熱等の症状が出てから7日~10日程度経過すると、新型コロナウイルス感染者の感染性が急激に低下することから、最初のPCR検査を受けた日が症状出現日から10日程度以上経過した場合で、PCR検査結果が陰性判定となる場合がある。これによると、検査時の陰性判定は、必ずしも症状発症時の感染状況を示したものでないということになる。

このため、このような疑い患者の要件(※2)である症状等があって陰性判定されている者については、労災専門医に、症状等からの総合的な判断により、臨床的に感染していた蓋然性の意見を求め、その上で、監督署において、当該意見を踏まえ、業務により感染していた蓋然性を総合的に判断することとする。

なお、今般の新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性)事案の取扱いについては、労災保険独自の取扱いではなく、感染症の関係法令においても、疑似症患者(※3)に該当する者は、新型コロナウイルス感染症患者と同様に取り扱うこととなっていることを踏まえた対応である。

(※1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き【第3版】P17「2 病原体診断」最後から1~2行目参照
[編注:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きは、以下の「4. その他ガイドライン等に関する事項」で入手可能]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00111.html
(※2)(※1)の手引きP16「表3-1 疑い患者の要件」参照
(※3)(※1)の手引きP16「1 症例定義』参照

2 具体的な取扱い(フロー図)

(1)監督署における調査

新型コロナウイルス感染症の請求があった場合には、調査要領(※4)に基づき調査を行っているところであるが、新型コロナウイルス感染症疑い事案(PCR検査陰性判定)の場合には、症状出現時点において疑似症患者か否か労災専門医に確認する必要があるため、①請求人の症状経過等(最初の症状出現目、経過及びその程度)、②PCR検査の実施状況(時期、検査日等)、③事業場内の感染状況、感染者との濃厚接触状況についての調査を適切に行うこと。

特に、請求人の最初の症状出現から症状状況が分かる資料(主治医意見、診療録、胸部画像等)は必ず収集すること。

なお、疑似症患者とは、「感染が疑われる患者のうち、臨床的に蓋然性が高い」者であり、感染が疑われる患者とは、疑い患者の要件に合致している者であること。

(※4)令和2年5月1日付け当室長補佐事務連絡の別紙「新型コロナウイルス感録症に係る調査要領」

(2)本省協議

調査が終了し疑い患者の要件の項目を確認次第、本省に協議すること。本省協議において、PCR検査陽性事案と同様に、資料及び復命書を本省にメール送付(プロジェクト領域に格納でも可。この場合、プロジェクト領域に格納した旨をメールで報告)すること。

なお、PCR検査陰性判定事案は、疑い患者の要件に合致しているか杏かにかかわらず、すべて、本省協議事案となる。

(3)労災専門医(呼吸器)への意見聴取

本省協議後、下記のア又はイにより、労災専門医(呼吸器)に意見聴取を求めることになるが、その際、手引き(※5)の16~17ページを手交した上で、①意見を求める趣旨(上記1の基本的な考え方等)、②疑似症患者の要件、③手引きに、「検査感度には限界があるため、臨床像と合わせて総合的に判断するべき」旨の記載内容等の必要事項を簡潔に説明し理解を得ること。
なお、労災専門医への意見聴取後、当該意見書を本省に速やかに報告すること。

ア 疑い患者の要件に合致している者

労災専門医に、症状出現時点において、臨床的に疑似症患者と認められ、新型コロナウイルスに感染していたと認められるか否か意見を求めること。
なお、監督署が収集した資料のみでは、労災専門医による適切な判断が難しい場合には、必要となる検査結果(例:抗体検査結果)等の追加資料の収集の必要性を労災専門医に確認した上で、本省に相談されたい。

イ 上記ア以外

労災専門医に、「臨床的に疑似症患者と認められないことから、新型コロナウイルスに感染していない」旨の意見を求めること。
(※5)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き【第3版】

(4)監督署における判断

労災専門医の意見を踏まえ、業務により感染していた蓋然性を総合的に判断し、業務上外を決定すること。

なお、業務外となる場合、請求人に対し懇切丁寧な説明をすること。具体的には、調査の結果、医学的に新型コロナウイルスに感染していたと認められなかったことの説明と併せて、診療費は健康保険の適用となること等の説明を行うこと。この際、PCR検査陰性判定のみをもって不支給決定したとの誤解を招くような説明は行わないよう留意すること。

3 窓口相談対応

労災保険では、請求を拒むような対応は厳に慎むべきであるが、陰性事案の相談があった場合には、必要に応じ、疑い患者の要件について説明を行う等により丁寧に対応し、「陰性事案は一律に補償の対象にならない」と受け取られかねない言動を行わないよう留意すること。

[追記]本省協議の取扱いの変更(令和2(2020)年11月24日)

令和2年11月24日付け都道府県労働局労働基準部労災補償課長あてメール「【機密性2】新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性事案)の本省協議の取扱いについて」

10月20日付けメール「新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性事案)の取扱い」にて、「新型コロナウイルス感染症疑い事案(PCR検査陰性事案)は、労災専門医に意見を求める前に、全事案、資料及び復命書をメールで送付する本省協議」をお願いしているところですが、今般、新型コロナウイルス感染症疑い事案(PCR検査陰性事案)において、

口①PCR検査結果がすべて「陰性」と確認されている。
口②抗体検査を受けていない又は抗体検査が「陰性」と確認されている。
口③主治医意見等から自覚症状、他覚所見で異常が確認されていない(画像所見で異常がある場合を除く)。
ロ④請求人の申立書等からも症状がないことが確認されている(最後にPCR検査実施した日から14日後まで)。

の4つの要件をすべて満たす場合は、原則、以下のとおりの取扱いとさせていただきます(ただし、4つの要件への該当の有無も含め、本省への確認協議を希望される場合は、事前に相談をお願いします。)。

・専門医に意見を求める前に、メールで当該該当事案を専門医に意見を求める旨を当室へ報告(所轄監督署、請求人、請求日)。※1

・決定後、速やかに、決定した復命書(決定日記入済)を当室にメールで送付(共働支援システムのプロジェク卜領域に格納でも可。この場合、プロジェク卜領域に格納した旨をメールで報告をお願いします)。(同一事業場における集団感染(クラスター)であって、当該該当事案が複数の場合には、代表例1件の決定後復命書の送付で差し支えありません。)

・なお、請求人への不支給の旨の連絡は、「PCR検査が陰性であったことを理由」とせず、「症状の内容(無症状)等から医学的な総合判断で感染していたとは認められない」などとしてください。

※1 報告は、このメールを活用し、確認のため、①~④の要件の口を■に変更するようお願いします。
※2 [メール送付先:省略]
※3 不明な点があれば、遠慮なく本省認対室に相談していただくようお願いします。

※本文書についてはその後修正等が行われている可能性があることに注意してください。

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