COVID-19と安全衛生・労災補償⑨/労災請求5千件、認定2千件突破、処理追いつかず認定率停滞傾向-しかし不支給は少なく95%超は支給(2021年2月5日)

2021年になってからも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは依然深刻である。

労災保険の状況

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数等の状況について、昨年12月28日現在の1月8日公表以降、1月8日、1月15日、1月22日、1月29日、2月5日、2月12日、2月19日、2月26日現在の3月3日公表と、1週間ごとの情報更新が継続されている(図1参照)。

請求件数は、昨年11月12日に2,000件を突破(2,028件)、1月15日に3,000件を突破(3,230件)、2月5日に4,000件を突破(4,045件)、2月19日に5,000件を突破(5,384件)と増加し続け、2月26日現在5,590件となった。前号で紹介した12月28日現在の2,720件と比較すると105.5%の大幅増加である。月別で1月は1,059件(表1参照)、2月は26日時点で1,873件。業種別では、医療従事者等が2,085件から4,144件へと98.8%の増加、医療従事者等以外が625件から1,051件へと68.1%の増加である。

認定(支給決定)件数は、12月28日現在の1,442件から、11月13日に1,000件を突破(1,036件)、2月5日に2,000件を突破し(2,044)、2月26日現在2,516件へと、12月28日と比較すると74.5%増加した。業種別では、医療従事者等が1,132件から1,935件へと70.9%の増加、医療従事者等以外が302件から570件へと88.7%の増加である。

請求件数に対する支給決定件数として計算した「認定率」は、全体では12月28日の53.0%から2月26日の45.0%へと減少している。業種別では、医療従事者等が54.3%から45.7%へ、医療従事者等以外が48.3%件から42.5%へと、各々減少している。

不支給決定件数は、12月28日現在の33件(医療従事者等29件、医療従事者等以外4件)から、2月26日現在の100件(医療従事者等88件、医療従事者等以外12件(内医療業が6件))へと、67件増加した。決定件数(支給決定+不支給決定)に対する「不支給率」を計算すると、2月26日現在で3.8%(医療従事者等4.3%、医療従事者等以外2.1%)で、決定件数の96.2%が認定されている。医療従事者等の不支給は、新型コロナウイルス感染症ではなかったものと考えられるが、医療従事者等以外新型コロナウイルス感染症であるにもかかわらず不支給となった事例が出たかどうかは不明である。

2月26日現在の業種別の状況を、表2に示した。医療従事者等以外について、教育・学習支援業で1月22日現在で初めて支給決定事例が現われ、2月26現在で「支給/請求」としての認定率(以下同じ)は57.9%(19件の請求中11件)で比較的高くなっている。農業・林業は1月19日現在で初めて支給決定事例が現われた。学術研究・専門・技術サービス業(15.6%)、情報通信業(26.7%)、製造業(32.5%)、不動産業・物品賃貸業(36.0%)の認定率が相対的に低い水準にとどまっている。

なお、厚生労働省は2月1日に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」を更新して、13事例から21事例に増やした。別稿にその内容を紹介している。

厚生労働省は11月16日に「労働者の方向けQ&A」ウエブサイト上に公表する「労災補償」関係参考資料に「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求・決定件数(月別)」を追加した(表1)。

地方公務員災害補償

地方公務員災害補償基金による地方公務員災害補償の状況の公表は、前号で紹介した昨年末12月31日現在の1月7日公表以降、1月22日現在、1月31日現在、2月12日、2月28日現在の3月4日公表と、4回の更新にとどまっている(図2参照)。

請求件数は、200件→248件→260件→295件→347件へと、73.5%増加した。1月22日現在で初めて義務教育学校以外の教員が現われた。

こちらは幸いにいまだ公務外認定事例は現われておらず、公務上認定件数は、123件→143件→162件→183件→225件へと、82.9%増加した。1月22日現在で保健師・助産師、2月12日現在で保育士・寄宿舎指導員等、義務教育学校以外の教員の初めての公務上認定事例が現われている。

職種別の2月28日現在の状況を、表3に示した。清掃職員は決定までに時間がかかったものの、請求された11件すべてが公務上認定されている一方で、保育士・寄宿舎指導員等と警察官の認定率が相対的に低い。

その他

東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料をもとに、新規陽性者数全体のうち「職場」を感染経路とする者の割合を計算した結果について、前号で示した「7/28~1/4」合計(訂正版)に「1/5~1/11」~「2/23~3/1」分を追加したものを、表4に示す。いわゆる積極的疫学調査による感染経路の追跡が非常に困難だった期間のものと考えられるが、参考として示しておきたい。

また、厚生労働省は、私たちが要請していた「職場で新型コロナウイルスに感染症した方」向けリーフレットの13か国語版を作成するとともに、2月12日に8回目になる労使団体等への感染予防等の要請を行っている。

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