石綿曝露-せきめんばくろ-四国電力アスベスト中皮腫労災死事件／日本初の発電所労働者アスベスト裁判の記録－愛媛労働安全衛生センター編(Web版)

発電所、変電所及び電力設備関係で仕事をされたことのある方で石綿関連疾患（肺がん、中皮腫、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚）を発症された方やその家族の方の相談は、こちらまでお寄せください。

日本初の電力会社アスベスト労災死事件裁判の記録

この本における被災労働者は、1991年に愛媛労働災害職業病対策会議(現在は愛媛労働安全衛生センターに改名)が全国労働安全衛生センター連絡会議の呼びかけで行なったアスベストホットラインにおける第1号の相談者の夫でした。相談時点ではすでに労災時効5年が経過していましたが、発電所でのアスベスト被害としてははじめて、会社（四国電力）の損害賠償責任を問う裁判を提訴、和解にいたるまでに9年、被害者ご本人が死亡されてから15年、長い時間がかかりました。その記録として和解後、白石昭夫氏（愛媛労職対、愛媛労働安全衛生センター事務局長）によって制作されのが「石綿曝露－せきめんばくろ－」です。第１部に登場する「戻川陽一」は白石氏です。

さまざまな面で貴重な記録であることから、今回、白石氏の許諾とご協力のもと当サイトに全体を掲載できたことは意義深いことだと考えています。また本書にも登場し、この裁判において決定的な役割を果たされた、そして、多くのアスベスト被害者の救済に多大な貢献をされた故・鈴木康之亮先生に対しまして、ここにあらためて、心よりの感謝と哀悼の誠を捧げる次第です。

多くの方に読んでいただければ幸いです。

【書籍帯から】
手弁当の支援者たちの足かけ8年に及ぶ長丁場と大どんでん返しの物語。三人の弁護士の活躍とニューヨークから来た老病理学者の証言。「先進国の中で一人当たりに換算して石綿に曝露する確率というのは日本が一番高い」アスベスト被災の追求に賭けた群像伝説！第二部にアスベスト疾患の貴重な化学論文を所収して一巻とする。晴耕雨読刊　書籍版発売元／星雲社　2001年2月15日

口絵写真：悪性中皮腫の3つの細胞型（線維肉腫型細胞、上皮型細胞、二相性細胞）／肥厚斑／細胞の繊維化1，細胞の繊維化2／石綿小体／石綿繊維

第１部　あとを継ぐ者たちのドラマ

第１章　発電所での一労働者の死

第２章　告発

第３章　裁判

第４章　三人の弁護士

第５章　ニューヨークからきた老病理学者

第６章　和解

第２部　アスベスト疾患の広がり

第１章　アスベスト疾患の現状と展望（座談会）

平野敏夫（ひらの亀戸ひまわり診療所所長、医師）
名取雄司（神奈川県勤労者医療生協横須賀中央診療所、医師）
飯田勝泰（東京労働安全衛生センター事務局長）
古谷杉郎（全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長）

第２章　悪性中皮腫とはどんな病気か

第2部第2章として掲げるのは、「鈴木意見書」及び「鈴木意見書添付資料Ⅲ参考文献」の日本語翻訳論文である。特に日本語翻訳論文は、鈴木康之亮意見書と表裏一体をなす研究論文である。これらは、四国電力の火力発電所で働いていた上甲一郎さんの亡くなった原因が、悪性中皮腫であることを原告側が指摘し、裁判所に訴え、証明する必要の中から産まれたもう一つの成果である。また、全国の沢山の医師や関係者の無私の翻訳作業の賜でもある。なによりアスベスト被災で苦しむ人の実態をつかむ上で貴重な資料となるものであることから収録した。