労働基準法施行規則別表第1の2=職業病リスト(最新版2023年1月18日現在)-労働災害・職業病統計(業務災害・業務上疾病)基礎資料

いわゆる職業病リストとは、労働基準法施行規則別表第1の2及びそれに基づく大臣告示のことである。

職業病リストの改訂作業は、「労働基準法施行規則第35条専門検討会」及び「労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」で行われる。

労働基準法施行規則第35条専門検討会(以下、35条専門検討会)とは

1 開催目的
業務上疾病の範囲を定めている労働基準法施行規則(昭和 22 年厚生省令第 23 号。以下「労基則」という。)第 35 条の規定は、保険給付の請求の容易化及び業務上疾病に対する迅速かつ公正な補償を図る目的で、昭和 53 年に抜本的な改正がなされた。
昭和 53 年の労基則の改正に当たり、中央労働基準審議会及び労働者災害補償保険審議会に対し諮問したところ、両審議会から改正規則の運用について配慮すべき事項として、新しい疾病の発生等に対処し得るような医学専門家による定期的な検討を行うべきである旨が答申に付記された。
以来、定期的に検討を重ねているが、前回平成 25 年度において検討を行ってから、新たな業務上疾病の発生等がみられる状況にある。また、前回の検討会報告において、新たな化学物質による疾病について幅広く情報収集に努めることとされたところ、これまでに化学物質による新たな疾病に関する情報についても一定の収集を行ったところである。
以上のことから、業務上疾病として新たに労基則別表第 1 の 2 等に追加するべきものの有無等について検討を行うために、厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)が参集した医学の専門的知識を有する者によって構成される労働基準法施行規則第 35 条専門検討会(以下「本検討会」という。)を開催する。

労働基準法施行規則第 35 条専門検討会開催要綱(2018年10月16日~開催)

労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会(以下、35条分科会)とは

1 趣旨・目的
業務上疾病の範囲については、労働基準法施行規則第 35 条に基づき、労働基準法施行規則別表第1の2及びこれに基づく大臣告示に定められ、新しい疾病の発生等に対処し、業務上疾病の範囲に係る法令の見直し及び追加を迅速に行うため、労働基準法施行規則第35 条専門検討会を定期的に開催している。
平成 30 年度に開催された労働基準法施行規則第 35 条専門検討会において、「行政当局において情報収集を行った化学物質による疾病」等について化学物質による疾病に関する分科会(以下「本分科会」という。)を開催して検討を行うとともに、本分科会において、新たな化学物質による疾病について幅広く検討することを望むとされたところである。
このため、厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)が参集した医学の専門的知識を有する者によって構成される本分科会を開催する。

労働基準法施行規則第 35 条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会開催要綱(2019年7月19日~開催)

2020年7月現在、2019年7月196日から開催されている35条分科会が第5回2020年7月29日まで進んでいる。

職業病リストの法的根拠

職業病リストは労働基準法、労働基準法施行規則によって定められる。

労働基準法
(療養補償)
第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

労働基準法施行規則
第三十五条 法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病は、別表第一の二に掲げる疾病とする。

労働基準法施行規則別表第1の2=職業病リスト(2020年7月現在)

 業務上の負傷に起因する疾病
物理的因子による次に掲げる疾病
1 紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患
2 赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患
3 レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患
4 マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患
5 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射 線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害
6 高圧室内作業又は潜水作業に係る業務による潜函病又は潜水病
7 気圧の低い場所における業務による高山病又は航空減圧症
8 暑熱な場所における業務による熱中症
9 高熱物体を取り扱う業務による熱傷
10 寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務による凍傷
11 著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患
12 超音波にさらされる業務による手指等の組織壊死
13 1から12までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他物理的因子にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
1 重激な業務による筋肉、腱、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱
2 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛
3 さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢循環障害、抹消神経障害又は運動器障害
4 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病
化学物質等による次に掲げる疾病
1 厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であつて、厚生労働大臣が定めるもの 
 (ダウンロードは表の下から)
2 弗素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
3 すす、鉱物油、うるし、テレビン油、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務による皮膚疾患
4 蛋白分解酵素にさらされる業務による皮膚炎、結膜炎又は鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
5 木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
6 落綿等の粉じんを飛散する場所における業務による呼吸器疾患
7 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚
8 空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症
9 1から8までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他化学物質等にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和三十五年労働省令第六号)第一条各号に掲げる疾病
細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病
1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
2 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
3 湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスピラ症
4 屋外における業務による恙虫病
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病
1 ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍
2 ベータ―ナフチルアミンにさらされる業務による尿路系腫瘍
3 四―アミノジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
4 四―ニトロジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
5 ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん
6 ベリリウムにさらされる業務による肺がん
7 ベンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん
8 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫
9 ベンゼンにさらされる業務による白血病
10 塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫又は肝細胞がん
11 オルト―トルイジンにさらされる業務による膀胱がん
12 3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンにさらされる業務による尿路系腫瘍
13 一・二―ジクロロプロパンにさらされる業務による胆管がん
14 ジクロロメタンにさらされる業務による胆管がん
15 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫
16 オーラミンを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
17 マゼンタを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
18 コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん
19 クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による肺がん又は上気道のがん
20 ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による肺がん又は上気道のがん
21 砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん
22 すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務による皮膚がん
23 1から22までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他がん原性物質若しくはがん原性因子にさらされる業務又はがん原性工程における業務に起因することの明らかな疾病
長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)、重篤な心不全若しくは大動脈解離又はこれらの疾病に付随する疾病
人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
1 超硬合金の粉じんを飛散する場所における業務による気管支肺疾患
2 亜鉛黄又は黄鉛を製造する工程における業務による肺がん
3 ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍
十一その他業務に起因することの明らかな疾病

最近の職業病リストの改正(厚生労働省)

MOCAにさらされる業務による尿路系腫瘍を新たに追加する改正等を行いました。(2023年1月18日改正)

オルト-トルイジンにさらされる業務による膀胱(ぼうこう)がんを新たに追加する改正を行いました。(2019年4月10日)

胆管がん等新たに21疾病を追加する改正を行いました。(2013年10月1日改正)