石綿曝露-四国電力アスベスト中皮腫労災死事件/鈴木意見書参考文献-⑤「E-カドヘリンとカルレチニン 中皮腫と転移性腺癌との鑑別のための免疫化学的マーカーとしての有用な組み合わせ」

第2部 アスベスト疾患のひろがり
第2章 悪性中皮腫とはどんな病気か
Ⅱ 鈴木康之亮意見書添付資料 Ⅲ「参考文献」翻訳
1 悪性中皮腫の病理診断に関するもの

⑤ 「E-カドヘリンとカルレチニン 中皮腫と転移性腺癌との鑑別のための免疫化学的マーカーとしての有用な組み合わせ」

G.LEERS, J.AARTS & H.THEUNISSEN
De Wever 病院病理部門(ハーレン・オランダ)
Histopathology, 32, 1998, pp. 209-216

抄録

目的:胸膜病変における転移性癌と中皮腫の鑑別診断に際し、抗体の組み合わせについての診断精度を評価すること。

方法と結果:間接的免疫ペルオキシダーゼ染色法を使用することにより、実際に入手可能な抗体、すなわちBer-EP4、MOC-31、CEA、B72.3、CD15、E-カドヘリン及びカルレチニンの特異度と感度が評価された。この技法を、胸膜病変のホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックに対して用いた。21例の転移性癌(MC)と20例の悪性中皮腫(MM)患者が含まれていた。E-カドヘリン/カルレチニンの組み合わせが、最も高い特異度(MCで100%、MMで91%)と感度(MMで100%、MCで91%)が、両方の腫瘍のカテゴリーにおいて考察された。

結論:E-カドヘリン/カルレチニンの組み合わせは、胸膜における転移性癌と中皮腫の鑑別のための有用な一式(panel)であることを示した。他のマーカーを追加する価値は限定的である。

キーワード:カルレチニン、E-カドヘリン、免疫組織化学、中皮腫

はじめに

胸膜病変の通常の組織学的検査において、主要な問題のひとつが、悪性中皮腫と転移性癌の鑑別である。この10年間、多くの研究が、特にこの鑑別診断において、選択された抗体の一式(panel)の使用によってほとんど全てが中皮腫での反応陰性と転移性癌の反応陽性となることに基づいて、免疫組織化学がもっとも重要な診断補助であることを示してきた。

今回の研究の目的は、中皮腫と転移性癌との鑑別のマーカーのパネルとして、最も正確なものを選択することであった。この目的のために、腺癌のマーカーとして最も有用と一般的に考えられている5個の流通している抗体を、われわれは使用した:それは、B72.3、CEA、Ber-EP4、MOC-31、CD15である。このパネルは、最近、上皮型の中皮腫の選択的マーカーとされている、細胞接着分子であるE-カドヘリンに対する抗体と、カルレチニンに対する抗体を備えていた。この抗体の一式は、悪性中皮腫、転移性癌及び反応性中皮細胞増殖のサンプルについてのホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックに使用された。免疫染色の全ての可能な組み合わせの結果は、これら3種の状態の診断において、最も特異的かつ感度の高い組み合わせを確立するために分析された。

材料及び方法

組織標本

全ての生検標本は、通常4%の中性に緩衝されたホルマリンに24時間つけられ、その後パラフィンに埋め込まれた。

転移性癌(n=21)の組織学的診断は、腫瘍が、以下に述べる一般的なクライテリアの少なくとも2つを満たすときに確認された:(1)ジアスターゼ染色を伴ったPAS染色によって、多くの(3つ以上)腫瘍細胞に細胞質内のムチンの小滴が存在すること(21例の癌のうち15が認められた:表1)、及び/または、(2)Sheibaniらの提案した方法に従って、CD15及び/またはBer-Ep4及び/またはCEAに対して腫瘍が陽性染色すること(21例中20例の癌:表1をみよ)。そして、(3)原発性腫瘍と全く同じ組織学的パターンの存在があること(21例中6例の癌にみられた:表2)。

中皮腫の診断(n=20)は、臨床診断及び中皮腫と矛盾しない組織学的検査と(すでに述べた)転移性癌の除外に基づいてなされた。個々の症例における、悪性中皮腫の臨床診断のクライテリアは、免疫組織化学に焦点をおいた研究の範囲をこえるほどには、詳細な評価はできていない。20例中9例のみが剖検によって確認された。この比較的少ない例数は、われわれの病院の1993年と1994年の総剖検率が35%にすぎなかったことによる。

良性反応性中皮(n=7)の診断は、臨床診断と数年にわたって追跡された良性(しばしば炎症)の過程と矛盾しない組織学的所見との組み合わせにもとづいた。

免疫組織化学

6つのモノクローナル抗体と、1つのポリクローナル抗体が、本研究に使用された。それらの性格や参考事項は表3に要約した。最もよい結果を生み出すための通常の免疫染色の手順の修正も、この表に示した。パラフィン包埋ブロックより4μ厚の切片を取り出し、シランコーティングされたスライドに載せられ、一晩中37度の恒温に保たれた。免疫染色を行うために、その切片は、キシレンによる脱パラフィン化とエタノールによる再水和がなされた。内因的なペルオキシダーゼ活性は、3%の過酸化水素を加えたメタノールに、10分間漬けることにより阻止した。それら過程の後で、スライドは燐酸緩衝食塩水(PBS: pH7.2-7.4)中にて濯がれた。抗体のうちの3つ(表3をみよ)は前処理に酵素消化を必要とし、0.1%ペプシン/0.1N塩酸に37度15分の処理を行った。一方、CEAは0.1%I型プロテアーゼ/PBS37度15分処理を最適化のため必要とした。他の抗体は、酵素による前処理を行わなかったが、スライドは0.1モルのサイトレート緩衝液(pH=6.0)及び750Wの電子レンジにて10分間処理された。

1%ウシ血漿アルブミン/PBSによる10分間のプレインキュベーションの後に、表3に示したような適切な時間及び温度において、適切な希釈にて最初の抗体を作用させた。PBSにて洗浄された後、適切に希釈された2番目の抗体を、室温で45分間作用させた(モノクローナル抗体については、ビオチンでラベルされたヤギの抗マウス免疫グロブリンを、ポリクローナル抗体についてはビオチンでラベルされたブタの抗ウサギ免疫グロブリンを用いた。双方とも1:400希釈:DAKO A/S、Glosrup、デンマーク)。PBSによる洗浄後、これらのスライドはセイヨウワサビのペルオキシダーゼ(サイトケラチン陽性、1:600、DAKO A/S)と共役させたストレプタビジンでインキュベート(孵卵)された。PBSでの洗浄後、3.3-ジアミノベンチジン/0.002%水化ペルオキサイド液(Sigma)によって、ペルオキシダーゼ活性が測定された。最後に、切片はハリスのヘマトキシリン液で対比染色され、脱水化され、キシレンで洗浄され、エンテランで最終的にマウントされた。免疫染色は、他人の免疫組織染色の評価を知らされず、また診断名も知らされず、ブラインドで評価された。免疫反応のスコアは、表3に示した抗原決定基の局在性に制限された。それぞれの切片の染色された細胞の割合の分析により、3群に分割された:免疫反応細胞が存在しない、明らかな免疫染色陽性細胞が少数散在して存在する、強度に免疫染色陽性。腫瘍細胞における全体的な染色の強さの違いは、内部のないしは研究所内における染色手順のバリエーションの可能性のために、評価することはできなかった。免疫染色陰性か、陽性かの違いのみ評価された。

結果

免疫組織化学

反応性中皮細胞

全7例ともが、CEA、Ber-Ep4、MOC-31、B72.3、そしてCD15に対する抗体に陰性であった。1例において、ごく少数の中皮細胞が、CEAとBer-Ep4に対して陽性を示し、他の2例については、E-カドヘリンに、部分的に免疫反応を示すいくらかの中皮細胞がみられた。7例全例において、中皮細胞はカルレチニンに対して強い免疫反応性を示した。

悪性中皮腫

中皮腫の20例の異なる抗体への免疫組織化学的結果を表4に示す。それら症例の検査結果は、CEA、B72.3とCD15に対する抗体には免疫反応を示さなかった(診断クライテリアと方法を見よ)。しかしながらいくつかの症例において、染色後の免疫反応が、上皮関連抗体であるBer-Ep4(7例が陽性)、MOC31(10例が陽性、それらの6例はBer-Ep4にも陽性を示した)にみられた。その上、3例についてはE-カドヘリンに対する抗体により細胞膜の染色がみられた。全20例は、カルレチニンに対するポリクローナル抗体に対して陽性を示した。この抗体を用いる、大部分の腫瘍細胞では細胞質に陽性を示した。

転移性腺癌

全ての癌が、1例を除いて「材料と方法」にて示されたクライテリアを満足した。この1例は、胸膜生検によって、癌性リンパ管症と考えられたが、その症例はリンパ転移性乳癌として知られていた。転移性癌21例の免疫組織化学的結果もまた表4に要約を示した。ほぼ全例の癌で(21例中20例)、E-カドヘリンの発現が認められた。これは、細胞膜免疫染色としてみられた。これらの症例の多くが、Ber-Ep4(n=19)、MOC31(n=20)、B72.3(n=17)、 CEA(n=15)に対する抗体にも陽性を示した。21例中9例に、CD15に対して免疫染色が行われた。これら腺癌のうち1例のみが、抗カルレチニン免疫染色後に陽性のシグナルが認められた。

免疫表現型分析

転移性癌と中皮腫との診断のための、最も特異度があり、感度が高い抗体と抗体の組み合わせを、表5に示した。癌に対する最も特異的な単一のマーカーは、B72.3(95%)であったが、感度は81%に過ぎなかった。E-カドヘリンは腺癌の85%の特異度と、非常に高い95%という感度を示した。カルレチニンは最も特異的な中皮腫のマーカー(95%)であり、全ての中皮腫のついての検査がそれに対して陽性を示した(100%)。

E-カドヘリンとカルレチニンが2種のマーカーの組み合わせとしてベストであるとされた。E-カドヘリンに対して陽性であり、カルレチニンに対して陰性である組み合わせは、100%の特異度と91%の感度を転移性癌に示した(図1A、B)。その上、逆の組み合わせ(E-カドヘリン陰性/カルレチニン陽性)もまた中皮腫の2種のマーカーとして100%の特異度と80%の感度を示すベストの組み合わせのひとつであった(図1C,D)。

腺癌に対して100%の特異度を示す3種のマーカーの組み合わせは多く存在する。86%という最大の感度を腺癌に示しうるのは、Ber-Ep4(またはMOC31)、E-カドヘリン、カルレチニンの組み合わせのときである。中皮腫に対しては、ごく少数の組み合わせのみが100%の特異度をもたらし、それらのうちで最高の感度(75%)に届いたのはB72.3(-)/E-カドヘリン(-)/カルレチニン(+)の組み合わせであった。

考察

転移性癌と中皮の増殖とを鑑別することは困難なこともあり、小さな胸膜生検切片材料のときは特に困難である。細胞質内の中性のムチンの証明は、上皮性である癌の中でも特に腺癌に強く表われる。鑑別における組織化学的染色の欠点は、比較的感度が悪いことと、特異度の欠如である。近年、多くの出版物が鑑別診断における免疫組織化学の重要性を示してきた。最近まで、特異的な「中皮腫」抗体はみつからず、悪性中皮腫の診断は、抗体のパネルを使って、それらが陰性であることに基づいてきた。論文においては、B72.3、CEA、Ber-Ep4、MOC-31及びCD15が最も多く記述されてきた。

モノクローナル抗体であるB72.3は、ヒト乳癌の細胞膜成分に富んだフラクションより作成されている。それは、肺、子宮内膜、卵巣、乳房、膵臓、消化管を含む多くの臓器からの腺癌から過剰に産出されている高分子糖蛋白であるTAG72と理解されているが、反応性中皮に対しては親和性を欠いている。しかしながら、Szpak等が発見したことであるが、B72.3は、腺癌に完全に限定しているわけではない。われわれの研究でも、中皮腫の1例がB72.3に対して弱い免疫染色性を示した。

癌胎児性抗原(CEA)は、悪性中皮腫と腺癌との分離に広く使われているマーカーである。それは、大腸癌より抽出分離された腫瘍胎児性糖蛋白の1つであり、60%の炭水化物を含む200kDaの分子量を有する糖蛋白複合体とされている。われわれの研究において、21例中15例の腺癌において陽性であった。明白な免疫反応が、大腸(n=2)、肺(n=6)からの転移性癌でみられた。しかしながら、乳房(n=5)、腎(n=1)からの全ての転移では、完全に陰性であった。中皮腫の2例において、われわれは弱い限定的なCEAに対する反応を認めた。Dejmek等は、いくつかの中皮腫においては、CEA分子類似の抗原物質を含み、それはある種の流通しているCEA抗体に反応しうるものであることを示した。

Ber-Ep4は、免疫原として乳癌細胞のMCF-7 lineを使用して作成された抗体である。その抗体は、2つのグリコペプチドの半分の蛋白からなる抗原決定基と理解され、広範囲にヒトの上皮とそこから発生する腫瘍に存在するが、正常な中皮腫には存在しないと考えられている。多くの研究において、全ての種類の腺癌の87%においてBer-Ep4の発現が認められるが、乳房と腎からの腫瘍では反応性がないとされている。それとは対照的に、本研究においては、5例の乳房からの転移のうち2例(それらは腎からでもあった)は、Ber-Ep4に対して陽性であった。この抗体は高い感度(91%)を有する。しかしながら、腫瘍全体を全般的に染色したもので、部分的な陽性反応を示したものを含めても、特異度は中皮腫の35%と比較的低い。これらの現象はGaffey等の結果と類似している。

MOC-31抗体は、上皮細胞と、腺癌に存在する40kDaの細胞膜の糖蛋白と理解されている。本研究において、MOC-31はBer-Ep4と類似の反応パターンを示した:腺癌に高い感度(95%)、中皮腫に低い特異度(50%)。

CD15(Leu M1)は、細胞膜あるいは細胞内蛋白ないし脂肪に連結されたglycopeptidlact-N-fucose pentosyl III ceramideに存在する、特異的糖鎖に結合している。最初、CD15は骨髄単球性マーカーとして理解されていたが、ホジキン病における新生細胞やマクロファージ及び白血球においてもまた発現した。続いて、Sheibaniらが、肺腺癌を含む腺癌の59%にCD15が発現することを報告した。後年、それは多くの癌やときに中皮腫に発現することが明らかとなった。本研究においては、Leu-M1は腺癌の43%に陽性で、それらの症例では強い免疫反応を示した。20例の中皮腫のうち2例において、Leu-M1抗体に対して部分的な反応がみられたが、それら2種の腫瘍の染色パターンは異なっていた。転移性癌のサンプルでは、細胞膜染色と同等に染まる細胞質が提示されたが、2例の免疫陽性である中皮腫では、少数の部分的な細胞において、淡く細胞質が示されたのみであった。

2つの新しい、パラフィン包埋組織によく反応する抗体が、E-カドヘリンとカルレチニンである。E-カドヘリンは、多くの異なるメンバー、例えばE-カドヘリン(上皮細胞に発現)、N-カドヘリン(神経細胞)及びP-カドヘリン(胎盤細胞)などを有するカドヘリンファミリーに属する。カドヘリンは、カテニンと呼ばれるαカテニン、βカテニン、プラコグロビン、ビンクリン及びαアクチニンを含む蛋白質の一群によって、アクチン基の細胞骨格に連結されている。E-カドヘリンは、120kDaの細胞接着分子であり、上皮に発現し、細胞間接合部に濃縮されている。E-カドヘリンの発現の減少は、結合性の欠如に関連し、消化管、卵巣、乳房、肺その他の部位の上皮性腫瘍の高度な悪性度と浸潤性を示すものである。われわれの研究において、21例の転移性癌のうち20例に、細胞膜でのE-カドヘリンの発現が、腫瘍細胞の20%以上にみられた。20例の中皮腫のうち17例は、E-カドヘリンに対して完全に陰性であった。中皮腫の2例において、部分的な細胞膜の染色(腫瘍細胞の5%以下)がみられたが、他の免疫陽性の中皮腫では、E-カドヘリンによる、より全般的な細胞質染色を呈した。これらの所見は、肺癌や悪性中皮腫において、E-カドヘリンと同じくN-カドヘリンを調査したPeralta Solerとその同僚のそれと類似のものであった。その研究では、いくつかの中皮腫においても、E-カドヘリン蛋白の低いレベルの発現が認められた。彼らは、カドヘリンを用いて効率的に細胞を個々の集団に分別することができることはたんに抗原の特異性の結果ではなく、個々のカドヘリン発現の量的な効果であるとしている。

カルレチニンは、カルシウムに結合した細胞質蛋白の大きな一群に属しており、そこにはS100蛋白もまた属している。それは、29kDaの蛋白であり、カルシウム結合側において作用する二重ラセン環に組み込まれた独特のアミノ酸の順位によって性格づけられている。それは、中枢ないし末梢の神経組織において多量に発現される。強固で一貫した免疫反応性が、正常及び反応性の中皮においてみられる。中皮や他の非神経組織に発現するカルレチニンの生物学的意味は、まだよく分かっていない。今回の調査では、すべての中皮腫がカルレチニンに対して陽性であったが、転移性癌の95%においてはこの抗体に対する免疫反応性が欠除していた。大腸癌からの転移の1例において、カルレチニンに対して部分的な免疫反応がみられたが、それは腫瘍細胞の1%から5%に過ぎないものであった。このことは、それら腫瘍の10%にカルレチニンに対する免疫反応を認めたDoglioni等のそれと同意できるものである。最近、調査者のグループが、ある種の漿液性卵巣癌の転移において免疫反応が陽性であることを報告している(未発表)。今回の調査においては、卵巣癌からの2例の転移(1例は漿液性、1例は卵巣外癌)は、カルレチニンに対して陰性であった。組織切片の一部に存在した正常な中皮は、陽性コントロールとして検査された。

E-カドヘリンとカルレチニンの両方とも、それらが単一のマーカーとして使われるとき、高い特異度とそれに匹敵する高い感度が存在する。E-カドヘリン(+)/カルレチニン(-)の組み合わせが、双方のカテゴリーの腫瘍において、最も高い特異度(転移性癌100%及び悪性中皮腫91%)と感度(転移性癌100%及び悪性中皮腫91%)を有した。逆の反応、すなわちE-カドヘリン(-)/カルレチニン(+)もまた高い特異度と感度(悪性中皮腫特異度100%、感度80%及び転移癌特異度80%、感度100%)を示した。

結論として、E-カドヘリンとカルレチニンの組み合わせは、悪性中皮腫と転移性癌との鑑別に有意な援助となることが明らかとなった。そしてまた、中皮腫において陽性の結果を産みだす抗体(抗カルレチニン)を含むため、病理医が“減点法診断”すなわち一連の陰性の結果のもとに結論に到達することをあてにしなくてよくなるという、適した組み合わせであるともいえる。その上、この組み合わせは、ルーチンの過程(フォルマリン固定、パラフィン包埋)による組織によく作用し、主要な腫瘍の症例に100%の特異度に到達しうる。3つないしそれ以上の抗体でなりたつ一式(panel)には、もはや付加価値は存在しない。

★以下の図が添付されている。

図1 転移性癌(上段)と中皮腫(下段)のカルレチニン(A、C)、E-カドヘリン(B、C)の免疫反応

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