石綿曝露-四国電力アスベスト中皮腫労災死事件/鈴木意見書参考文献-⑦抄録「石綿関連疾患の肺組織内の石綿含有量」110例の検討

第2部 アスベスト疾患のひろがり
第2章 悪性中皮腫とはどんな病気か
Ⅱ 鈴木康之亮意見書添付資料 Ⅲ「参考文献」翻訳
3 一般人肺切片上における石綿小体の数

⑦抄録「石綿関連疾患の肺組織内の石綿含有量」110例の検討

V.L. Roggli, P.C. Pratt & A.R. Brody
British Journal of Industrial Medicine,43,1986:18-28

石綿曝露に関連した疾患は、石綿肺、悪性中皮腫、肺癌そして壁側胸膜肥厚斑である。この研究で、肺組織の石綿含有量は、これら疾患を呈する症例の群と、非職業性の特発性肺繊維症の数例とで測定された。石綿曝露の特徴である石綿小体は、実際一般人の誰の肺にも存在し、石綿関連疾患の人では高いレベルにあった。石綿肺の患者で石綿小体数がもっとも多く、その全員が肺湿重量1g当たり2,000本以上の石綿小体を持っていた。石綿小体の含有量がg当たり100,000本かそれ以上の全例が石綿肺である。悪性中皮腫の患者では中等度のレベルで、壁側胸膜肥厚斑の患者で最も低いレベルであった。石綿肺患者の肺の石綿含有量と、特発性肺繊維症の石綿含有量とはオーバーラップしない。肺癌は石綿肺の患者の半分にみられ、組織型の分布は、石綿肺を伴わない肺癌患者と変わらない。肺癌患者の石綿小体含有量には非常に幅があった。対照例は、以前われわれが設定した正常範囲(石綿繊維0-20本/g)におさまっていた。光学顕微鏡で計数した石綿小体数と、走査型電子顕微鏡で計数した非被覆繊維との間に統計学的に有意な(p<0.001)相関が見られた。ヒトの組織から分離された石綿小体の大半は角閃石の鉱石であるという、以前の観察が確認された。

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