<最新>日本の労働安全衛生をめぐる状況【2023年→2024年】~労働災害・職業病(業務災害・業務上疾病)統計の構造、労働安全衛生情報(付録:PDF版【2022年→2023年】)

目次

1.労働災害・職業病(業務災害・業務上疾病)の発生状況等

● 労災保険新規受給者

労災保険新規受給者数は、2009年度の534,623人を底に増加に転じ、2020年度は653,355人とや
や減少したものの、2021年度678,604人、2022年度777,426件と増加し、1990年代初めの水準となった。
「新型コロナウイルス感染症による労災保険新規受給者」数は公表されていないものの、後述のように「業務上疾病補償状況」として新型コロナウイルス感染症による補償件数が2020年度4,556人(0.7%)、2021年度19,608人(2.9%)、2022年度150,434人(19.4%)あったことがわかっているので、これを除くと2020年度648,799人、2021年度658,996人、2022年度626,992人で、2022年度は減少に転じて、2016年度の水準にまで戻ったことになる。
2022年度の労災保険新規受給者についてみると、業務災害689,692人(88.7%)、通勤災害87,730
人(11.3%)で合計777,422人(上記数字よりも4人少ない)。その発生年度別内訳は、2022年度586,671人(75.5%)、2021年度186.671人(24.0%)、2020年度3,050人(0.4%)、2019年度580人(0.1%)、2018年度130人、2017年度以前303人、となっている。
2021年度分からは、「複数事業労働者分」の数字も示されるようになっており、2,759人(業務災害
2,271人、通勤災害485人、3人少ない)である。

● 死亡災害

2024年5月27日に、事業主の届け出た労働者死傷病報告を暦年単位で集計した「令和5[2023]年の労働災害[死亡災害と休業4日以上の死傷災害]発生状況」が公表されたが、前年から、新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除いた数字を基本とするかたちに変更されている。下表に、コロナを含めた数字(合計)と、コロナの数字、除いた数字(その他)がわかるように記載した。

死亡災害は、2015年以降は1,000人を下回る状況が継続し、2018年909人、2019年845人、2020年は、コロナを含めても802人と、3年連続で最低記録を更新した。2021年は、コロナを含めると867人で増加になるが、コロナを除くと778人で最低記録を更新、2022年はコロナを含めても791人(コロナを除くと774人)で最低記録を更新、2023年はコロナを含めても759人(コロナを除くと755人)でさらに最低記録を更新した。コロナによる死亡災害は2020年度18人(2.2%)、2021年度89人10.3%)、2022年度17人(2.1%)、2023年度4人(0.5%)と、多くはなく、かつすでに減少に転じている。
一方、2022年度の労災保険の葬祭料・葬祭給付受給者数は2,754人で、業務災害2,563人(93.1%)、通勤災害190人(6.9%)(1人少ない)。発生年度別では、2022年度464人(16.8%)、2021年度773人(28.1%)、2020年度324人(11.8%)、2019年度195人(7.1%)、2018年度117人4.2%)、2017年度以前881人(32.0%)という内訳になっている。

● 死傷災害

1件の重大災害の背後には、29件の軽症災害と300件の無傷害災害があるというよく知られたハイ
ンリッヒの法則の「1:29:300」という数字の妥当性はともかくとして、「死亡災害件数」を1とした場合の、「休業4日以上の災害件数(休業4日以上の死傷災害災害-死亡災害)」及び「休業3日以内+不休災害の件数(労災保険新規受給者数-休業4日以上の死傷災害災害)」の比率を下表に示した(労災保険新規受給者数は年度で、他は暦年の数字である)。

コロナを含めた全業種計で、過去27年間の平均で、この比率は1:98.8:368.3ということになるが、1996年の1:67.9:208.2から2022年の1:364.5:617.3へと、後者2つの比率が経年的に増加して
いることがわかる(2022年はとくに休業4日以上死傷災害が急増)。しかし、業種別のばらつきが著しい(2022年業種別の死亡災害と死傷災害はコロナを除いたものである)。とりわけ、鉱業、建設業、農林水産業、運輸業では、製造業やその他事業と比較して、休業+不休災害の件数が著しく低い。
これは「労災隠し」の存在を示唆しているとも考えられる。このような分析も、「労災隠し」の根絶のために活用されるべきであると考える。

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● 業務上疾病

業務上疾病(職業病)は、補償件数で、2002年度の8,810人を底に、2005年夏のクボタ・ショックの影響で2006年には(過去死亡事例を含めて)11,171人に増加。最近では、2016年度の8,512人から2019年度9,359人へと上昇気味であったが、2020年度は13,931人(前年度比48.9%増加)、さらに2021年度29,367人(同110.8%増加)、2022年度159,982人(同444.8%増加)と、クボタ・ショックを上回る突出を記録することとなった。原因は、2020年度4,556人(32.7%)、2021年度19,608人(66.8%)、2022年度150,434人(94.0%)の新型コロナウイルス感染症の労災補償であり、これ
を除くと2020年度9,375人、2021年度9,759人、2022年度9,548人で、2019年度の9,359件からさほど増加していない。2023年度のコロナの補償件数は別の厚生労働省公表によれば47,277人(前年度31.4%)に減少しているが、新型コロナウイルス感染症はこの間、まさに最大の職業病であった(上記のグラフ「労働災害・職業病の推移」では、バランスが大きく崩れてしまうため、「業務上疾病」のみはコロナを除いたものを示している)。「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に係るもの(発熱症状等)」も、2021年度858人、2022年度144人補償されていることがわかっている(「その他の物理的因子による疾病(二-6)」に含まれる)。
下に、新型コロナウイルス感染症以外の、「主な職業病の認定件数の推移」を示した。

伝統的な職業病の双璧のひとつ-「じん肺及びその合併症」の認定件数は、2003年度から原発性肺がんが合併症に追加されたにもかかわらず減少が続いた後、2015~2017年度は横ばい、2018年度は277人と初めて300人を割り、以降「振動障害」を下回るようになり、2021年度は200人を割って197人、2022年度は165人まで減少している。もうひとつの伝統的な職業病の双璧-「振動障害」の方は、2005年度まで減少し続けた後、ほとんど横ばいか微増のようにみえたが、2021年度221人、2023年度
220人と最低記録を更新している。
「上肢障害」は、1997年の労災認定基準改正以降増加傾向を示し、2008年度に「じん肺及びその合併症」を上回り、2009年度以降いったん減少に転じたものの、2013年度以降反転して、再び増加傾向を示した。2019年度は1,013人で初めて千人を超えたが、2020年度921人、2021年度922人、2023年度963人という状況である。図中の疾病のなかで最大であるが、精神障害が近づいてきている。
「中皮腫」と「石綿肺がん」は、2005年夏のクボタショックで認定件数が激増。中皮腫による死亡者が増加し続けていることに示されているように、被害は増えているはずなのに、中皮腫で横ばい、石綿肺がんが漸減傾向にあるようにみえていた。
2022年度と2023年度はともに、2年連続して増加した。2023年度の速報値では各々642人と433人、合計すると1,075人で上肢障害を抜く水準である。
「脳・心臓疾患」は、2007年度の392人をピークに減少傾向にあるようにみえ、2020~2022年度は200人を割ってしまったが、2年連続して増加して2023年度は214人という状況である。2021年度認定基準改正が増加につながっているか、注目される。
「精神障害」は、1999年の判断指針策定以来増加し続け、2010年度にはついに「脳・心臓疾患」を上回った。2011年末に判断指針が認定基準に改訂されて、2012年度には「石綿肺がん」、2020年度には「中皮腫」も上回った。2018年度の465人から5年連続して増加し、2023年度は883人で、上肢障害も上回りそうな状況である。2023年度認定基準改正が増加につながっているか、注目される。
下の図は、「認定率」を分析したものである。

また、表5(統計資料PDFにあります。クリックすると別ウィンドウで開きます。他の表についても同様です。)に、請求件数、不支給決定件数が判明している職業病に係るデータのすべてを示してあるので参照していただきたい。認定率①=認定件数/請求件数(いずれも当該年度)、認定率②=認定件数/(認定件数+不支給決定件数)の二つの認定率を計算することができるが、前頁下図に示したのは、認定率②の方である。
認定率②は、「中皮腫」がもっとも高く90%超、次いで「石綿肺がん」で90%に迫りつつあったが、2023年度81.7%まで減少してしまっている。その次の「上肢障害」も80%超だったものが減少し続け、2023年度はやや持ち直したものの65.1%である。
これらと比較すると、「脳・心臓疾患」、「精神障害等」は著しく低い。「脳・心臓疾患」の認定率は、2020年度は29.2%で過去最低を更新した後、やや持ち直したものの2023年度は24.7%。2012年度に「精神障害」の認定率が上昇したのは、2011年末の認定基準策定の影響と考えられるが、一時は40%超えが期待されたものの、その後減少して32%前後の状況が続き、2023年度は34.2%だった。
「非災害性腰痛」の認定率は、2000年度に60%を超えた後、50%前後で推移してきたが、2011年度に大きく減少した後、40%以下で動揺。2019年度46.9%まで持ち直したものの、2023年度は27.9%で、過去最低となった。
新型コロナウイルス感染症の認定率②は、2020年度95.9%、2021年度99.2%、2022年度99.9%、2023年度99.6%であり、認定率でも職業病トップを誇っている。
公表件数と補償件数を比較すると(表2-1から表2-3参照)、「災害性(負傷による)腰痛(一-1)」は公表件数のほうが1千件以上多く、2017年度以降は2千件以上の差になっている。「異常温度条件による疾病(二-4)」(熱中症及びそれ以外ともに)、「その他の物理的因子による疾病(二-6)」、「その他の身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(三-5)」、「化学物質による疾病(四-2)」、コロナワクチン接種に係るものが含まれた2021年度と2022年度を除く「その他業務に起因することの明らかな疾病」(十一)でも、ほぼ系統的に公表件数が補償件数を上回っている。これらは、使用者が職業病と判断して死傷病報告を届け出たにも関わらず、労災補償請求手続がなされていないか、請求手続がなされたにもかかわらず認定されていないことを意味すると考えられ、問題である。「細菌、ウイル
ス等の病原体による疾病(六)」でも過去部分的にみられていたが、「新型コロナウイルス感染症」について2020年度と2022年度には、公表件数が補償件数を大きく上回っている。
逆に、「腰痛以外の負傷による疾病」(一-2)、
「騒音による耳の疾病」(二-5)、「重激業務」(三-1)、「非災害性腰痛」(三-2)、「振動障害」(三-3)、「職業がん」(七)、「脳・心臓疾患等」(八)、「精神障害等」(九)では、系統的に補償件数が公表件数を(大きく)上回っている。退職後に発病したものは後者に含まれないとしても、それだけでは説明できないと思われる乖離がある。
また、表7に「傷病別長期療養者数」を示しているが、2020年度分から、それまでのじん肺(4,809人)、せき髄損傷(353人)、外傷性の脳中枢損傷(595人)、頭頸部外傷症候群(425人)、頸肩腕症候群(109人)、腰痛(635人)、一酸化炭素中毒(4人)、振動障害(4,857人)、負傷(22,267人)に加えて、良性石綿疾患(良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚)(219人)、悪性石綿疾患(肺がん・中皮腫)(1,533人)、脳・心臓疾患(153人)、精神障害(1,972人)の療養開始後1年以上経過した者の数が示されるようになった(括弧内は2022年度末療養中の者の数)。なお、傷病補償年金は、じん肺、せき損、その他別の内訳がわかるが、障害補償給付については傷病別の内訳が示されていない。

● 労働者の健康状況等

労働者の健康状況全般については、定期健康診断受診者のうちの有所見率が、1990年度の23.6%から2021年度の58.7%へと経年的に増加し続けたが、2023年度は58.2%と微減(表3-1)。項
目別の有所見率では、血圧、貧血、血糖検査、心電図検査で経年的な増加傾向が認められる(
3-2
)。
警察庁によれば、自殺者が2011年まで14年連続で3万人を超えた後、2012年27,858人から2019年20,169人まで減少。2020年21,081人、2021年21,007人、2022年21,881人、2023年21,837人と推移している。そのうち「有職者」が2019年7,612人(37.7%)から2023年8,858人(40.6%)へと増加するとともに、「勤務問題」が原因・動機のひとつとなっているものが1,949人(9.6%)から2,875人(13.2%)へと増加している(裏付け資料により明らかにできるもの自殺者一人につき3つまで計上可能から、2022年からは家族等の証言から考え得る場合も含め4つまで計上可能に変更されている)。
「労働安全衛生に関する調査」が厚生労働省のホームページに掲載されている(http://www.
mhlw.go.jp/toukei/list/list46-50.html
)。
ここでは、「労働者健康調査」、「労働災害防止対策等重点調査」、「労働安全衛生基本調査」、「建設業労働災害防止対策等総合実態調査」、「技術革新と労働に関する実態調査」が「廃止した調査」とされていることがわかる。例えば、5年ごとに実施されていた「労働者健康調査」では、自分の仕事や職業生活に関して「強い不安、悩み、ストレスがある」とする労働者の割合が、1992年57.3%→1997年62.8%→2002年61.5%→2007年
58.0%→2012年60.9%と推移してきていた。
現在は、「労働安全衛生調査(実態調査)」(2014年と2019年を除く2013~2022年、2023年は2024年9月公表予定)と、「労働安全衛生調査(労働環境調査)」(1996、2001、2006、2014、2019年)のみが掲載されている。
「労働安全衛生調査(実態調査)」の個人(労働者)調査では、現在の仕事や職業生活に関して「強い不安、悩み、ストレスがある」労働者の割合-2013年52.3%。以後質問が若干変わり、「強いストレスとなっていると感じる事柄がある」-2015年55.7%<2016年59.5%>2017年58.3%>2018年58.0%>2020年54.2%>2021年53.3%<2022年82.2%。
「職場で受動喫煙がある」労働者の割合(「ほとんど毎日」と「ときどきある」の合計)-2013年47.7%>2015年32.8%<2016年34.7%<2017年37.3%<2018年28.9%>2020年20.1%<2021年20.7%>2022年20.6%。
「労働安全衛生調査(実態調査)」の事業所調査は、内容がかなり変わってしまっていて、2021年調査では産業保健、受動喫煙対策、長時間労働者に対する取組に関する事項がなくなり、2022年調査では高年齢労働者・外国人労働者に対する労働災害防止対策に関する事項もなくなって、いまも継続的に追えるのは、以下を実施または取り組んでいる事業所の割合くらいで、以下のとおりである。

  • メンタルヘルス対策-2013年60.7%>2015年59.7%>2016年56.6%<2017年58.4%<2018年59.2%<2020年61.4%>2021年59.2%<2022年63.4%
  • ストレスチェック-2013年26.0%>2015年22.4%<2016年62.3%<2017年64.3%>2018年62.9%>2020年62.7%<2021年65.2%>2022年63.1%(ストレスチェックの活用状況も調査している)
  • ストレスチェック結果の集団分析-2015年40.4%<2016年43.8%<2017年58.3%<2018年73.3%<2020年78.6%>2021年76.4%>2022年72.2%
  • 化学物質を取り扱う際のリスクアセスメントをすべて実施:安衛法第57条の2該当化学物質-2017年52.8%>2018年29.2%<2020年67.2%<2021年78.0%<2022年78.5%(製造・譲渡・提供時のGHSラベル表示・SDS交付、また安衛法第57条非該当化学物質についても調査)

なお、過去1年間にメンタルヘルス不調により1か月以上休業または退職した労働者がいる事業所の割合が、2011年9.0%>2012年8.1%<2013年10.0%>2020年9.2%<2021年10.1%r<2022年13.3%、となっている。
「労働安全衛生調査(労働環境調査)」のほうがやや系統的であり、事業所調査-①有害業務、②作業環境測定、③化学物質、労働者調査(2019年は「個人調査」)-①有害業務、②有機溶剤、③化学物質、ずい道・地下鉄工事現場調査-①粉じん抑制対策、②作業環境測定、について継続的に追えるが、それでも2014・19年調査はそれ以前とけっこう違ってしまっている。
なお、「心理的な負担の程度を把握するための検査実施状況」のページができて、現在2017~22
年の分のデータが提供されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01674.html)。これは、安全衛生調査(実態調査)の特別集計を行なったものと説明されている。
また、平成28年版以降毎年、「過労死等防止対策白書」が公表されているほか、「過労死等防止
対策に関する調査研究
」の成果も公表されるようになっている。

2.労働安全衛生対策

● 第14次労働災害防止計画

2023年3月8日付け厚生労働省発基安0308第1号をもって、2023~2027年を対象期間として新た
に策定された第14次労働災害防止計画(14次防)が通知された。14次防は、「重点事項における取組の進捗状況を確認する指標(アウトプット指標)を設定し、アウトカム(達成目標)を定める」かたちに変更され、8つの重点事項と具体的取組及び6つの指標事項とアウトプット/アウトカム指標が示され、「アウトカム指標の達成を目指した場合に期待される労働災害全体としての結果」として、以下が示されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197308.html)。

① 死亡災害については、2022年と比較して2027年までに5%以上減少する。
② 死傷災害については、2022年までの増加傾向に歯止めをかけ、2022年と比較して2027年までに減少に転ずる。

14次防は新型コロナウイルス感染症へのり患によるものの取り扱いを明示していないが、仮にそれを除くと、2023年の死亡災害は755人で2022年と比較して2.5%減少、死傷災害は135,371人の増加というスタートになった。
2021年7月30日閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」のメンタルヘルス
対策の関連の数値目標については、14次防において新たな数値目標が設定された場合には、その目標の達成に向けた取組を推進するとされている。

● 「働き方改革・2024年問題」

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により改正された労働基準法による時間外労働の上限規制(原則として月45時間、年360時間、臨時的な特別の事情があって特別条項付き36協定を締結する場合でも年720時間等)について、5年間適用が猶予されていた事業・業務に対しても2024年4月1日から適用された。具体的には以下のとおりである。

① 工作物の建設の事業-災害時における復旧・復興の事業を除き上限規制がすべて適用。
② 自動車運転の業務-特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となる。
③ 医業に従事する医師-特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が原則年960時間、最大年1,860時間(都道府県知事の指定が必要な特例水準)となる。追加的健康確保措置等を定めた医療法等改正も行われた。

①の災害時における復旧・復興の事業及び②③には、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されず、また、②③については、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制も適用されない。
これに伴う人出不足の深刻化等が「2024年問題」としてメディア等でも取り上げられるなか、厚生労働省は、
「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html)、
「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制特設サイト『はたらきかたススメ』」https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/)、
「『医師の働き方改革』.jp」https://iryou-ishi-hatarakikata.mhlw.go.jp/
等で、周知・情報提供を行っている。

● 裁量労働制の一部改正

裁量労働制に関する労働基準法施行規則等の改正も2024年4月1日から施行・適用されている。
主な内容は、同日以降、新たにまたは継続して裁量労働制を導入するためには、専門業務型裁量労働制の労使協定に①本人の同意を得る・同意の撤回の手続きを定めるを追加、企画型裁量労働制の労使委員会の運営規定に②労使委員会に賃金・評価制度を説明する、③労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う、③労使委員会は6か月ごとに1回開催するを追加後、決議に①②を追加し、労働基準監督署に協定届・決議届の届出をお行うこと等である。厚生労働省は
「裁量労働制の概要」ページで関連情報等を提供している(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/sairyo.html)。


● 個人事業者等の安全衛生対策

2021年5月17日の建設アスベスト訴訟最高裁判決で、労働安全衛生法第22条(事業者の講ずべき
健康障害防止措置)の規定について、労働者と同じ場所で働く労働者以外の者も保護する趣旨であるとの判断がなされたことを踏まえて、一人親方等についても同法第22号等の規定に基づく措置の対象とする労働安全衛生規則等11の省令が2022年4月15日に改正され、2023年4月1日に施行された。
その後、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」が参集され、2023年10月27日に報告書が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_558547_00010.html)。これを踏まえて、安衛法第20・21条(事業者が講ずべき危険防止措置)に基づく措置についても同様に対象とする4つの省令が2024年4月30日に改正され、2025年4月1日から施行される。
また、2024年5月28日付けで、「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」も策定された。危険有害性以外の過重労働、メンタルヘルス、健康確保等の対策について、個人事業者等が自身で行うべき事項、個人事業者等に仕事を注文する注文者等が行うべき事項や配慮すべき事項等を周知し、それぞれの立場での自主的な取組の実施を促すことを目的としたものとされる。
厚生労働省は、「一人親方等の安全衛生対策について」というページを設けていたが、「個人事業者等の安全衛生対策について」に変更して、関係情報等を提供している(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei03_00004.html)。
労働政策審議会安全衛生分科会では引き続き、労働安全衛生法上の「個人事業者等」の範囲と、
労働安全衛生法で「個人事業主等」を保護し、または規制するに当たっての考え方と具体的対策について検討を継続している(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126972.html

● フリーランス・事業者間取引適正化等法

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等
法)2023年5月12日に公布され、2024年11月1日に施行される。これにより、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられる(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html)。
厚生労働省では雇用環境・均等行政の所管であるが、労働基準行政としても2021年3月26日付け
で内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」等も活用して相談等に対応することとしている。

● カスタマー・ハラスメント対策等

一部労使による取り組みに加えて、東京都が2023年10月31日から「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」を開催し、2024年秋の都議会定例会に提出する予定などの自治体の動きや2024年5月16日には自民党政務調査会のPTが「カスタマーハラスメントの総合的な対策強化に向けた提言」を公表するなかで、厚生労働省も法制化に動き出さざるを得なくなった。
具体的には、「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」において、2024年6月21日
の第9回検討会で「ハラスメントに関する対応の方向性」が論点として追加され、8月8日に公表された「報告書」には、①総論(国の施策としてのハラスメント対策)(国はハラスメント対策に総合的に取り組む必要があることから…一般に職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確にすることが考えられる)、②カスタマーハラスメント(事業主の雇用管理上の措置義務とすることが適当)、③就活等セクシュアルハラスメント(事業主に義務付けられた雇用管理上の措置が講じられるようにしていくことが適当)、④ILO第190号条約(①の法整備についても、批准に向けた環境整備に資すると考えられる…引き続き、条約全般について、さらなる検討を進めることが適切)、⑤その他(後述の「自爆営業」について、パワハラ防止指針に明記することが考えられる)について、対応強化の方向性等が示された。

● 「自爆営業」対策

2024年度監督指導業務運営上の留意事項通達は、「『規制改革推進に関する中間答申』(令和5年12月26日規制改革推進会議決定)において、使用者が労働者の自由な意思に反して使用者の商品やサービスを購入させるいわゆる自爆営業は、労働者に対して経済的損失や精神的苦痛を与える行為であり、関係省庁において取組を講ずることとされたところである。具体的対応については別途指示する予定であるが、申告・相談等の各種機会を捉え、いわゆる自爆営業が疑われる事案の把握に努めること」としている。前出の「報告書」は、「職場におけるパワーハラスメントが『自爆営業』の背景として指摘されている」等としている。

● 労働基準関係法制研究会

他方で、2023年3月20日から15回開催された「新しい時代の働き方に関する検討会」の報告書が
2023年10月20日に公表され(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35850.html)、それを踏まえた今後の労働基準関係法制の法的論点の整理と働き方改革関連法の施行状況を踏まえた労働基準法等の検討を行うために、2024年1月23日からは「労働基準関係法制研究会」が開催されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/otherroudou_558547_00024.html)。
①労働時間法制、②労働基準法上の「事業」、③労働基準法上の「労働者」、④労使コミュニケーションについて構成員からの自由意見から関係団体のヒアリングに進んでいるが、まだ議論がどのような方向に進むのか、定かとは言えない。

● 家事使用人の雇用ガイドライン

厚生労働省は2024年2月8日、「家事使用人の実態把握のためのアンケート調査」(2023年9月公
表・独立行政法人労働政策研究・研修機構実施)
の結果等も踏まえたとして、家事使用人の働きやすい環境を確保するため、雇用主であるご家庭が家事使用人と労働契約を結ぶ際や、就業中の
留意すべき事項を示した「家事使用人の雇用ガイドライン」を作成した(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00454.html)。
家事使用人は現在、労働契約法の適用は受けるが、労働基準法の適用除外とされ、また、2018
年からは労災保険の特別加入の対象とされている。
しかし、労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法の適用対象とすることが検討されるべきである。

● 足場からの墜落・転落防止対策

2022年10月28日に「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」の報
告書が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_557645.html)。これを踏まえて厚生労働省は2023年3月14日に、足場からの墜落・転落災害防止の充実に係る労働安全衛生規則の改正を行い、同年10月1日から施行される。合わせて、「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」も改正された(基安発0314第2号)。

● 建設工事従事者安全健康確保基本計画

2022年8月26日に、2017年に閣議決定された「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する
基本的な計画」が変更されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33559.html)。
「気候変動の影響、石綿を用いた建築物の解体工事の増加、新興・再興感染症の発生・拡大等」も状況変化のひとつとしてふれられている。

● 貨物自動車荷役作業の墜落・転落防止対策

2023年6月13日に陸上貨物運送事業労働災害防止協会が公表した「陸上貨物運送事業におけ
る荷役作業の安全対策に関する検討会報告書」
を踏まえて、厚生労働省は2023年3月28日に、貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落災害防止の充実に係る労働安全衛生規則及び安全衛生
特別教育規定の改正を行い、同年10月1日(一部規定は2024年2月1日)から施行される。

https://jsite.mhlw.go.jp/okayama-roudoukyoku/content/contents/001514113.pdf
https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/content/contents/001438788.pdf

● 山岳トンネル工事関連ガイドラインの改正

独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所においてとりまとめられた「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に関する検討会報告書」(2023年3月)の提言を踏
まえて、2024年3月26日付けで新たに発注者等が講ずべき措置等を盛り込んで「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」が改正された(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39096.html)。

● じん肺標準エックス線写真集の改定

「じん肺標準エックス線写真集の改定等に関する検討会」が2023年11月13日から4回開催され、
2024年3月27日に報告書が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_128910_00001.html)。新たに合計16症例を追加するという結論であり、同年3月25日の安全衛生分科会じん肺部会に報告されている。

● 特定機械等の製造許可・製造時検査制度

「特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の在り方に関する検討会」が2024年1月26日から
3回開催され、同年3月28日に報告書が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39335.html)。厚生労働省は、制度等の見直し等を進め、必要な法令改正等を行うべきとされている。

● 電気自動車等整備業務に必要な特別教育

2024年3月25日、「電気自動車等の整備業務に必要な特別教育のあり方に関する検討会」報告
書が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39039.html)。

● 産業保健のあり方に関する検討会

「産業保健の在り方に関する検討会」が2022年10月17日から4回開催され、2023年12月26日に「第1回~第3回の議論の概要」が公表された後は、開催されていない(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_558547_00014.html)。

● 開催中の検討会

「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」が2023年12月5日から、
「農業機械の安全対策に関する検討会」が2024年2月13日から、「エックス線装置に係る放射線障害防止対策に関する検討会」が2024年2月21日から、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が2024年3月29日から、各々開催されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/indexshingiother_128808.html)。

3.化学物質管理対策等

● 「新たな化学物質規制」へ政省令等改正

2021年7月19日に公表された「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会最終報告
書」を踏まえた新たな化学物質規制に向けた改正労働安全衛生規則等は2022~24年度の3年かけ
て2024年4月1日に全面施行された。厚生労働省は「化学物質による労働災害防止のための新たな
規制について」ページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html)で関連情報を提供してきたが、新たに「職場の化学物質管理総合サイト/ケミガイド」(https://
cheminfo.johas.go.jp/
)も開設した。
主な改正内容と施行時期は以下のとおりである。
(1) 2022年4月1日施行
① SDS等による通知方法の柔軟化
(2) 2023年4月1日施行
② 曝露を最小限にする努力義務
③ 意見聴取、記録の作成・保存
④ 衛生委員会の付議事項の追加
⑤ 皮膚等障害化学物質への直接接触の防止
⑥ がんの発生の把握強化
⑦ リスクアセスメントの結果等に係る記録の作成保存
⑧ 職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大
⑨ SDS等の「人体に及ぼす作用」の定期確認及び更新
⑩ 事業内別容器保管時の措置の強化
⑪ 注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大
⑫ 管理水準良好事業場の特別則等適用除外
⑬ 特殊健康診断の実施頻度の緩和
(3) 2024年4月1日施行
⑭ ラベル表示・SDS交付・リスクアセスメント義
務対象化学物質の大幅拡大
②’ 曝露を最小限にする義務
⑮ 曝露を濃度基準値以下にする義務
⑤’ 衛生委員会の付議事項の追加
⑥’ 皮膚等障害化学物質への直接接触の防止
⑯ 化学物質労災発生事業場等への労働基準監督署長による指示
⑰ リスクアセスメント健康診断の実施とそれに基づく措置
⑱ 化学物質管理者の選任
⑲ 保護具着用責任者の選任
⑳ 雇入れ時等教育の拡充
㉑ SDS等による通知事項の追加及び含有量表
示の適正化
㉒ 第三管理区分事業場の措置強化
2023年度の主な動きには、濃度基準・技術上の指針・リスクアセスメント指針の一部改正、リスクアセスメント対象物健康診断に関するガイドライン・皮膚障害等防止用保護具選定マニュアル・作業環境管理専門家/化学物質管理専門家始動用マニュアルの策定等がある。
2024年度から「化学物質管理強調月間」(毎年2月)も創設され、スローガン募集に当たって、「化学物質の性状に関連の強い労働災害の分析結果」も公表された(2024年6月27日)。
また、毎年度の「化学物質管理に係る専門家検討会」の開催と報告書の公表が継続されている
(令和6年度は、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39859.html)。

● 特別規制・指針対象物質の追加

「新たな化学物質規制」が定着すれば特別則による規制は廃止される可能性すらあるが、特化
則等による特別規制の対象の追加について、①有害物曝露作業報告を活用して、②国が曝露評価と有害性評価をもとにリスク評価(初期リスク評価及び詳細リスク評価)を行い、③リスクが高い作業等については特別規則による規制等の対象に追加するという仕組みが運用されてきた。厚生労働省は「職場における化学物質のリスク評価」のページで情報提供を行い(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000113892.html)、また、「職場のあんぜんサイト」に「リスク評価実施物質」のページも設けられている(https://anzeninfo.
mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc09.htm
)。
化学物質のリスク評価に係る企画検討会、化学物質のリスク評価検討会及びそのばく露評価小委員会・有害性評価委員会・発がん性評価ワーキンググループ、化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会はいずれも2023年度には開催されていない(2022年度は発がん性評価ワーキンググループのみ1回開催)。
また、特別規則の対象以外であっても、厚生労働大臣は、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質を製造・取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針(がん原性指針)を公表するものとされ(法第28条第3項)、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に「がん原性に係る指針対象物質」のページがある(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc05.htm)。
さらに、法第57条の4に基づき届出のあった化学物質のうち強い変異原性が認められた物質、また、既存化学物質のうち国による試験等において強い変異原性が認められた物質の製造・取り扱いには「強い変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」が適用されるが、2023年12月7日付け基発1207第3号によって、事業者からの届出のあった新規化学物質636物質のうち18物質が追加されるとともに、1物質を再評価の結果、指針の対象から除外することとされた。これによって、同指針の対象となる化学物質の数は、届出物質1,102、既存化学物質244、合計1,346となっている。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に「強い変異原性が認められた物質」のページがある(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc02.htm)。

● 石綿障害予防規則の改正

2020年4月14日の「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策検討会最終報告書」を受けて石綿障害予防規則の改正が行われ、2020年10月1日以降順次施行されている。これに合わせて、「石綿総合情報ポータルサイト」が開設されている(https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/)。総トン数20トン以上の船舶の解体・改修工事を労働
基準監督署への報告対象とする等の石綿則等の改正が2022年1月13日に行われたうえで、石綿の有無によらず一定の要件を満たす(解体部分の延べ床面積80m2以上、請負金額100万円以上、総トン数20トン以上等)建築物・船舶の解体・改修工事についての「事前調査結果等の届出制度の新設」が2022年4月1日に施行され、「石綿事前調査結果報告システム」も運用されている。関連して、2022年3月29日に環境省から、「アスベストモニュタリングマニュアル(第4.2版)」、「建築物の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン(改訂版)」が公表されている。2023年10月1日には「事前調査・分析調査を行う者の要件新設」が施行された。
また、2022年11月9日に「令和4年度建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討
会報告書」が公表され、工作物の解体・改修作業についても事前調査を行う者の要件の新設等を内容とする石綿則の改正も行われて、2024年1月1日から施行された。
さらに、2023年6月20日に公表された「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検
討会」報告書を踏まえ、石綿等の切断等の作業等における粉じん発散防止措置について、「湿潤化」に限定せず、湿潤化、除じん性能を有する電動工具の使用その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置のいずれかの措置を行うことを義務づける等の石綿則の改正も行われて、2024年1月1日から施行された。

4.労災補償対策

● メリット制適用事業主の不服の取り扱い

労災保険のメリット制適用事業主に労災支給決定決定処分についての不服申し立ての権利(原告
適格)を認めてしまった2022年11月29日の東京高裁判決(あんしん財団事件)で最高裁は、2024年6月10日に弁論を開催し、7月4日に原判決を破棄し、被上告人(あんしん財団)の訴えを棄却するという判決を下した。最高裁が、事業主の労災支給決定処分についての不服申し立ての権利を明確に否定した、歴史的な判決である。
しかし、最高裁は、メリット制事業主は、自己に対する保険料認定処分についての不服申し立てまたはその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張することができるから、事業主の手続保障に欠けるところはない、とも言う。
後者の主張を認めることによって、労災支給決定決定処分自体について事業主の不服申し立ての権利を認める判決を回避しようとした厚生労働省の思惑が成功したとも言えるが、後者を主張する事例が増え、いずれ労災支給決定処分の支給要件非該当性が認められる事例も出てくることが非常に危惧される。労災保険のメリット制自体の廃止に進むことが不可欠である。

● 労災保険特別加入制度の拡大

労働政策審議会労災保険分科会は、2020年に法改正が行われた「複数事業就業者に係る労災保険給付等」に続き、とりわけ第87回(2020年6月1日)以降、「特別加入制度の見直し」について検討を進め、特別加入制度対象者が拡大されている。

・ 2021年4月1日から-①芸能関係作業従事者/②アニメーション制作作業従事者/③柔道整復
師/④創業支援等措置に基づき事業を行う高年齢者
・ 2021年9月1日から-⑤自動車を使用して行う貨物の運送の事業/⑥ITフリーランス
・ 2022年4月1日から-⑦あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師
・ 2022年7月1日から-⑧歯科技工士
・ 2024年11月1日から-⑨(同日施行されるフリーランス・事業者間取引適正化等法に規定する)特定受託業務に従事するフリーランス
厚生労働省ウエブサイト「労災保険の特別加入」ページに加えて、「令和6年11月から『フリーランス』が労災保険の『特別加入』の対象となります」というページが開設されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kanyu_r3.4.1_00010.html)。

● フリーランス等への労災保険の適用

「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」が2024年2月から8回の検討を経て、2024年7月3日に「議論の取りまとめ」が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41109.html)。
「フリーランス等」については、まず、「労働基準監督署において労働者であると判断した事案について、日本年金機構が情報提供を受け、その情報を基に適用要件に該当するか調査を行うことができる環境を整備した」として、労働基準局長と大臣官房年金管理審議官連名通知「被用者保険の更なる適用促進に向けた労働行政及び社会保険行政の連携について」(2023年基発0331第52号/年管発0331第5号)留意事項通達(基監発0331第1号/基徴収発0331第1号/年
管管発0331第7号)
に言及。しかし、「労働基準法上の労働者に該当しない働き方をしている者への対応」としては、「労働基準関係法制研究会において、労働基準法上の労働者について国際的な動向を踏まえて検討がなされており、まずは、労働法制における議論を注視する必要がある」とした。
家事使用人については、前出の「家事使用人の雇用ガイドライン」策定に合わせて、基発第0208第1号「家事使用人の労災保険の特別加入促進及び働きやすい環境の整備のための周知広報資料の
策定について」が示されているが、懇談会の「議論の取りまとめ」には家事使用人への言及がない。。
労災保険特別加入の対象として済ますのではなく、労働基準法、労災保険法、労働安全衛生法の
適用対象とすることが検討されるべきである。

● 貨物軽自動車運転手の労働者性

貨物軽自動車運送事業の自動車運転者からの労災請求を契機に、労基法第9条の「労働者」に該当するか調査した結果、「該当する」と判断された事案があったことを踏まえ、2023年12月15日付け基監発1215第1号「貨物軽自動車運送事業の自動車運転者に係る労働者性の判断事例につい
て」
が発出されている。

● 精神障害労災認定基準の見直し

2021年12月7日からはじまった「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」は14回開催し
て、2023年7月4日に報告書が公表された(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33235.html)。これを踏まえて9月1日付けで「心理的負荷による精神障害の認定基準」が改正された(基発0901第2号、運用上の留意点について基補発0901第1号)。
今回の改正の主な内容は、①業務による心理的負荷表の見直し(カスタマーハラスメント等を)追加等、②精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し(悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには悪化した部分について業務起因性を認める)、③医学意見の収集方法の効率化(専門医3名の合議により決定していた事案について特に困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更)、である。
厚生労働省は、「精神障害の労災補償について」のページで関連情報を提供している(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/090316.html)。

● 放射線被ばくの医学的知見等

「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」がまとめた報告書「直腸がん・精巣腫瘍(精巣
がん)と放射線被ばくに関する医学的知見について」が2023年5月17日に公表され、報告書を踏まえた「当面の労災補償の考え方」が示されている。
また、2024年3月27日に厚生労働省は、東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者3名
の白血病(2名)と肺がん(1名)がそれぞれ労災認定されたことを公表
した。

● 労災保険率の変更

2024年4月1日から労災保険率が改訂された。具体的には、①労災保険率を業種平均で0.1/1000引き下げ(4.5/1000→4.4/1000、全54業種中引き下げ17業種、引き上げ3業種)、②一人親方などの特別加入に係る第2種特別加入保険料率の改定(全25区分中引き下げが5区分)、③請負による建設の事業に係る労務費率の改定。労災保険率は、3年ごとに過去の災害発生状況などを考慮して改定を行っているが、前回-2021年度は、コロナの影響を考慮して改定が見送られた。厚生労働省は「令和6年度の労災保険率について(令和6年度から変更されます)」のページを開設している(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rousaihoken06/rousai_hokenritsu_kaitei.html)。

●中皮腫死亡遺族への救済制度等周知

厚生労働省は2024年3月27日、法務局などに保管している死亡届をもとに、2006~2018年3月までに中皮腫で亡くなった方について情報を収集し、把握した中皮腫による死亡者数10,913人のうち、労災補償などを申請済みなのは7,901人だったため残る3,012人についてご遺族に「特労災診療費算定基準の改定について(令和6年度)別遺族給付金制度」(石綿健康被害救済法に基づく労災時効救済)などの案内文を送付したことを公表した(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38934.html)。
1995~2005年までに中皮腫で亡くなった方のご遺族へは2012年に案内文を送付済みとしている。

●労災診療費算定基準等の改正

労災診療費算定基準が2024年3月29日に改定され、同年6月1日からの労災診療費の算定に適用
されている。労災診療費算定マニュアルも令和6年4月版が作成されており、「労災診療費算定基
準の改定について(令和6年度)」のページで関連情報が提供されている(https://www.mhlw.
go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai_shinryouhi/kaitei0604.html
)。

● 労働者死傷病報告等の電子申請化等

以下の内容のじん肺法施行規則等の改正が2023年6月に行われ、2025年1月1日に施行される。
① 労働者死傷病報告、じん肺健康管理実施状況報告、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛
生管理者・産業医選任報告、定期健康診断結果報告書、有害な業務に係る歯科健康診断結
果報告書、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書、有機溶剤等健康診断
結果報告書の電子申請の原則義務化
② コード入力方式への変更及び記載欄の分割
③ 休業4日未満の災害に係る報告について、「労働保険番号」、「被災者の経験期間」、「国籍・在留資格」、「親事業場等の名称」、「災害発生場所の住所」等、様式上、明確に記入欄が設けられていなかった事項についても報告事項に追加
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33137.html

5.労働災害・職業病の統計データ

● 労働災害の総件数

労働災害の総発生件数として公表されているデータは、今のところ存在していない。
労働者死傷病報告書は、「労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建
設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は4日以上休業したとき」に、「遅滞なく」、所轄労働基準監督署長に提出しなければならないとされている。また、「休業3日以内」のものは、3か月分をまとめて提出しなければならない(労働安全衛生法施行規則第97条)。しかし、これに基づく「休業3日以内」のデータは公表されていない。
2007年8月7日に公表された総務省行政評価局の「労働安全衛生等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」が、「休業4日未満の労働災害に関する労働者死傷病報告について、当該データの集計・分析や公表を行うなど、その利用を促進すること」という所見を示し、厚生労働省が2008-09年度に委託した「行政支援研究:休業4日以上と4日未満の死傷災害の比較」研究報告書が、労働者死傷病報告書の様式改善の提案も示して、「休業4日未満労働災害データは、今後の労働災害防止対策の検討に有用である」と結論付けているにもかかわらず、具体的な対応はなされていない。
同報告書の対象には、労災非適用事業に係るものも含む一方で、労災保険の対象となる通勤災害や退職後に発症した職業病、労働者ではない労災保険特別加入者に係る死傷病等は含まれない。
ここでは、労働災害の総件数に代わる数字として、「労災保険事業年報」による労災保険新規受給者数を紹介する(表1参照)。
「労災保険事業年報」は、2005年度分以降、厚生労働省ホームページ(統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>12.4.労働保険>労働者災害補償保険事業年報、https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/138-1.html)に掲載されている(当初は概況等のみで、2015年度分以降は全文を掲載。毎年7月頃にまず、前々年度の「労災保険事業の保険給付等支払状況」が公表され、その後「労災保険事業年報」が掲載されている)。
また、毎年7月第1週の全国安全週間に向けて中央労働災害防止協会から発行されている『安全の指標』が1999年度版から、労災保険新規受給者数のデータを掲載するようになったが、そこで紹介されているのは業務災害分だけで、本誌では、業務災害と通勤災害の合計数を紹介している。
「労災保険事業年報」に業務災害と通勤災害の内訳が示されるようになったのは、2000年度版以降
のことで、1999年12月21日に旧総務庁行政管理局が旧労働省に対して行った「労働者災害補償保険事業に関する 行政監察結果に基づく勧告」のなかで、「労災保険財政に係る情報開示について…国民にわかりやすい形で公表すること」とされたのを受けて、「労災保険事業年報」の厚さが以前の2倍以上になってからのことである。

● 死亡災害・重大災害

「死亡災害発生状況」については、2012年までは5月頃に「前年における死亡災害・重大災害の発生状況」として公表されていたが、2014年からは「前年の労働災害発生状況」として死亡災害、死傷災害、重大災害を合わせて公表するようになった(2017年から重大災害がなくなり、死亡災害と死傷災害だけになってしまっている)。2024年は5月27日に公表されている。。
厚生労働省ホームページでは、政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>安全・衛生>労働災害発生状況・災害事例・安全衛生関係統計>労働災害発生状況で、2007年分からの「労働災害発生状況」統計が入手できるが、2015年分までは死亡災害、死傷災害、重大災害のデータが含まれているものの、2016年以降分には重大災害データが含まれていない(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html)。
また、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」「労働災害統計」に1988年以降分の各年の、死亡災害、死傷災害、業務上疾病の発生状況、度数率・千人率等が掲載されている(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.html)。ここでは、2013年分から「建設業の一人親方等の死亡災害発生状況」も掲載されるようになっている。
「死亡災害発生状況」は、『安全の指標』等でも紹介されており、出所は「死亡災害報告より作成」または「安全課調べ」と記載されている。
また、死亡災害に関係する資料としては、労災保険統計の葬祭料・葬祭給付の支給件数を参照することもできる(発生時点ではなく、支給決定時点での集計で、請求の時効が5年であることに留意)。
なお、「重大災害発生状況」は、「重大災害報告より作成」したものとされ、「重大災害」とは、「一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害事故」のことをいうとされていた。

● 死傷災害

前述のとおり、2014年から「前年の労働災害発生状況」の一部として公表されるようになっている。
以前は「死傷災害(死亡災害及び休業4日以上の死傷災害)」の出所は、「労災保険給付データ及び労働者死傷病報告(労災非適)より作成」とされてきたが、2012年分以降は、「労働者死傷病報告より作成」に代えられている。「労働者死傷病報告データの方が事故の型別分類等がなされていて、今後の対策に生かせるということで変更した。労働災害防止計画の数値目標等も労働者死傷病報告データによる」とのことである。前出の厚生労働省ホームページの「労働災害発生状況」統計に掲載されているデータも、同様に、2012年分から労働者死傷病報告データに代えられている。
他方、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」の「労働災害統計」の各年の「死傷災害発生状況」のなかの、1988~1998年分の「死傷災害発生状況」のうち起因物別・事故の型別データは、明記はされていないものの「労働者死傷病報告」によるデータであろうと思われる。1999年分以降は「『労働者死傷病報告』による死傷災害発生状況」とされている。
もうひとつ、情報公開法が施行されて、「職業病統計に関する一切」を開示請求するようになってから全国安全センターが毎年開示させている「傷病性質コード別労災補償状況」の2002年度分以降に、「負傷(負傷を伴わない事故を含む)」データも掲載されるようになった。内容は、下表のとおりである(2012年度以前分は省略)。

この「負傷」合計件数に、その後に続く疾病件数(表4参照)を合わせた「負傷+疾病」の合計件数が、休業4日以上の死傷災害の「補償件数」であろうと考えられる。
「労働者死傷病報告」によるデータは、素直に考えれば、事業主が届け出た報告の件数をそのまま集計したものであろう(「届出件数」と呼ぶことにする)。それと、2011年以前に公表されてきた「労災保険給付データ及び労働者死傷病報告(労災非適)」による数字(「公表件数」と呼ぶ)、さらに「補償件数」を並べてみると、下の表のようになる。


補償件数には、労働者死傷病報告書を届け出する必要のない、通勤災害、労災保険特別加入者や退職後の発症・死亡等も含まれる。理屈で考えれば、それらを除いた業務災害分だけの補償件数に労災非適用事業に係る労働者死傷病報告件数を加えたものが公表件数ということになりそうな気もするが、そのような説明がなされたことはない。また、公表件数は、(負傷に限定したとしても)補償件数
よりもかなり少なく、そのような事情だけでは説明できそうにない。なお、1999年以降、届出件数が公表件数を上回り(網掛け部分)、実際に届け出られた件数よりも少ない件数しか公表されていない状況が続いていたことになる。
どのような理由で、どのように算定されたのかわからない数字が、長年、死傷災害の公表件数とされ、労働災害防止計画等の数値目標としても用いられてきたということ自体が、実に不可解ではある。
なお、厚生労働省による前年の労働災害発生状況公表は、業種別・事故の型別情報に加えて、2008年分から「派遣労働者の労働災害発生状況」、2013年分から「外国人労働者の労働災害発生状況」、2020年分から「新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害発生状況[死傷者数の業種別内訳のみ]」、2021年分から「高年齢労働者の労働災害発生状況」も公表されるようになった。また、2009年以降、毎年別途、職場における熱中症による死傷災害の発生状況[2014年以前は死亡災害のみ]も公表されている(2024年は5月31日公表)。
また、厚生労働省ホームページの、政策について>分野別の政策>雇用・労働>労働基準>安全・衛生>労働災害発生状況・災害事例・安全衛生関係統計には、業務上疾病発生状況等調査、労働安全衛生特別調査、労働災害動向調査や、酸素欠乏症・硫化水素中毒による労働災害発生状況、化学物質による労働災害発生状況に加えて、石綿の除去作業等に係る計画届、作業届及び監督指導等の件数、技能講習の登録機関数及び終了者数、心理的な負担の程度を把握するための検査実施状況も掲載されるようになっている(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/toukei.html)。
他方、厚生労働省ホームページの、統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>12.労働災害・労働安全衛生・労働保険は、12.1. 労働基準監督、12.2. 労働災害、12.3. 労働安全衛生、12.4. 労働保険に区分され、12.2.では、労働災害動向調査、業務上疾病発生状況等調査、労働災害発生状況、石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況、過労死等の労災補償状況にアクセスすることができる(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/#anc-12)。12.1.では労働基準監督年報が提供され、12.3.では「1. 労働災害・職業病の発生状況等」の「労働者の健康状況等」で解説した情報が提供されている。

● 業務上疾病

厚生労働省ホームページの、政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>安全・衛生>労働災害発生状況・災害事例・安全衛生関係統計に、2004年分以降の「業務上疾病発生状況等調査」へのリンクが設定されるようになった
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09976.html)。
ここにある「業務上疾病発生状況(業種別・疾病別)」は、「暦年中に発生した疾病で翌年3月末までに把握した休業4日以上のもの」で、出所は「業務上疾病調」と記載されており、全国労働衛生週間(10月1~7日)に向けて中央労働災害防止協会から発行されている『労働衛生のしおり』掲載のものと同じものである。表2及び下の表では、これを「公表件数」として示している。


どちらも、2014年分以降、「死亡」の内数が示されるようになるとともに、熱中症、脳・心臓疾患等、精神障害、その他の内訳も示されるようになった。「新型コロナウイルスり患によるもの」も含まれている。
この公表件数がどのように算定されているかも、闇の中であった。以前、情報公開法に基づく開示請求も行って厚生労働省に説明を求めたところ、「公表件数」は、労働者死傷病報告をそのまま集計しているのではなく、例えば、「非災害性」(第3号)として届け出られた「腰痛」を、事情を確認したうえで「災害性」=「負傷による腰痛」(第1号)に振り替え、また、「じん肺及びその合併症」については、届出件数ではなく労災保険給付データを使っている等との説明がなされた。しかし、処理方法を示した文書は存在していないという回答であった。
他方、前出の「職場のあんぜんサイト」には、2004~2009年分について、「労働者死傷病報告」によると明記された「業種別・年別業務上疾病発生状況」データも示されている。2010~2013年分については、「『労働者死傷病報告』による死傷災害発生状況(確定値)」でダウンロードできるエクセル・ファイルのなかに、死亡・休業別内訳も示された「業種別・傷病分類別業務上疾病発生状況」の
シートが含まれていたのだが、いつの間にか消されてしまい、2014年分以降も同じである。かつて得られたものも含めて、「労働者死傷病報告」によるデータを「届出件数」と呼ぶことにする。
「補償件数」については、驚くべきことに厚生労働省ホームページには一切掲載されてこなかった。いつできたのか不明だが、厚生労働省ホームページの、政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>労災補償>業務上疾病の認定等>業務上疾病の労災補償状況調査結果(全国計)のページがつくられ、最初は2017年度分、その後更新されて現在は2022年度分のみが掲載されている。各年度分の継続的公表を望みたい(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyoumu_00531.html)。
この調査結果には、職業病リストの第一~十一(2009年分以前は一~九)号別の新規支給決定件数、及び、振動障害、じん肺症等、非災害性腰痛、上肢障害、職業がん、脳血管疾患及び虚血性心疾患、精神障害に係る都道府県別データなどが収録されている。この元となる調査については、毎年度、補償課長から指示が出されており、調査内容は微妙に変化している。2023年度は、基補発0728第1号「業務上疾病の労災補償状況調査について」で指示され、2024年1月16日付け補償課職業病認定対策室長補佐事務連絡「令和4年度『業務上疾病の労災補償状況調査結果(全国計)』について」で調査結果が通知されている。
なお、2022年7月28日に開催された第1回労働基準法施行規則第35条専門検討会に「労働基準法施行規則別表第1の2の各号の「その他に包括される疾病」における労災補償状況調査結果(昭和53年度~令和2年度)」が報告され、本誌2023年
9月号表7
として紹介した。これは、2021年8月2日付け補償課職業病認定対策室長事務連絡「厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物による疾病並びに『その他に包括される疾病』に係る統計調査について」で指示された調査に基づものと推察されるが、2023年7月28日付けで補償課職業病認定対策室長から同名の事務連絡が発出されているので、調査結果をまとめた文書とともに開示請求中である。
全国安全センターは、情報公開法を使って、1999年度分以降毎年度、「業務上疾病の労災補償に係る統計の一切」の開示請求を行っている。実際に開示されるのは、
①「業務上疾病の労災補償状況調査(全国計)」、②「傷病性質コード別労災補
償状況」(前に示した表(負傷(負傷を伴わない事故を含む))表4(業務上疾病)を合わせた内容)、③「都道府県別請求・決定状況確認表」(表5の内
容の都道府県別データ
)、④「疾病別都道府県別件数表」(表9の内容)、⑤「〇年度労働基準法施行規則の規定に基づき厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病に係る新規支給件数」と題された表6の内容である。「それらが何らかの文書・冊子の一部をなしている場合には、当該文書・冊子等のすべて」を開示請求しているが、毎年開示されるている②~⑤は表紙すらない集計表だけである(①は表紙と目次がついている)。
なお、①(全国計)には「新型コロナウイルス感染症」(「別途厚生労働省労働基準局補償課にて取りまとめている『新型コロナウイルス感染症に係る月別請求・決定件数』による」とされている)も含まれ、2021年度分では、「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に係るもの(発熱症状等)」の件数も明らかにされている。②(全国計)にはコロナ及びワクチン接種に係るもののいずれも含まれておらず、④(都道府県別)にはワクチン接種に係るものは含まれているが、コロナ自体は含まれていない(厚生労働省はコロナ労災補償の都道府県別
データの公表に一貫して消極的である)。

これらのデータは、本誌以外で紹介されることはほとんどないと言ってよい。

さきほどの上の表に、「届出件数」「公表件数」「補償件数」を並べてみた。2010~2013年分の届出件数と公表件数は同じ数字である(2014年分以降の「届出件数」は得られていない。「公表件数」と「補償件数」については表2-1、2-2、2-3及び表2-4参照)。疾病分類別のデータで比較してみると、2010年は452件、2011年は487件、2012年は373件、業務上の負傷に起因する疾病から非災害性腰痛に振りえていることが確認できる(2010年分は化学物質等分は化学物質等による疾病からその他業務に起因する疾病にも5件振り替え)。2013年分は、「届出件数」として公表される段階ですでに操作が行われているのかもしれない。
なお、厚生労働省は、毎年6月頃に前年度分の「過労死等(以前は「脳・心臓疾患と精神障害」)の労災補償状況」及び「石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況(速報値)」、12月頃に後者の「確定値」及び「石綿ばく露作業による労災認定等事業場」を公表している。これらは、他と区別して特別の「処理経過簿」の作成を指示して、集計・公表されている職業病である。

新型コロナウイルス感染症については、「労働者の方向けQ&A」の「4 労災補償 問1 労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となりますか」の回答として、「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」を示し、一定の変遷を経ながら現在も毎月の情報更新を継続している(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q4-1)。なお、この数字はしばしば改訂されている。

● 包括的救済規定による業務上疾病(その他業務に起因する疾病)

職業病リストには、例示列挙疾病のほかに、「その他業務に起因する疾病」という項目がある。このカテゴリーについて、厚生労働省は別途毎年調査を実施しており、その調査結果には、どのような疾病が何件認定されているかがわかるが、一般には(HPなど)には統計として明示されていないため、これを次の記事にまとめたので参照していただきたい。

● 労災保険事業年報

前述のとおり、厚生労働省ホームページ(厚生労働統計一覧)に「労災保険事業月報」及び「労働者災害補償保険事業年報」が掲載されるようになった。これも基本的な統計データであり、全国安全センターでは労災保険法施行以来の事業年報(古いものはコピー)を備え付けている。ホームページ上では、2005~14年度分について「労働者災害補償保険事業の概況」、2015年度分以降については年報の全文がPDFで、また、2009年度分以降について「保険給付等支払状況」がエクセルファイルで入手できるようになっている。
表1(年別全国)及び表8(都道府県別)に示した基本情報は、これらによって確認できる。詳しくは、以下のとおりである。
労災保険適用事業場数、労災保険適用労働者数は、年報の第1-2表(適用状況〔合計〕(都道府県別))。労災保険新規受給者数、障害(補償)給付一時金新規受給者数、遺族(補償)給付一時金新規受給者数、葬祭料(葬祭給付)受給者数は、「都道府県別、保険給付支払状況(業務災害+通勤災害+二次健康診断等給付)」エクセルファイル。死亡災害発生状況と死傷災害発生状況は、既出の
情報源(前述のような公表データの変更があったために、表1の2012年以降の数字及び表8では、労働者死傷病報告による死傷災害発生状況の数字を示してある)。障害(補償)年金、傷病(補償)年金、遺族(補償)年金の新規受給者及び年度末受給者数は、各々、年報第7-10表(障害補償年金受給者数(都道府県別、等級別))、年報第7-15表(傷病補償年金受給者数(都道府県別、等級別))、第7-13表(遺族補償年金受給者数(都道府県別、新規受給者数は年金新規と前払一時金新規を合算)によっている。 

統計資料【PDF】(画像下部のダウンロードボタンを押すと、別ウィンドウでも開きます)

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本記事PDF版

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安全センター情報2024年10月号

【「日本の労働安全衛生をめぐる状況」過去記事】

日本の労働安全衛生をめぐる状況【2022年→2023年】~労働災害・職業病(業務災害・業務上疾病)統計の構造、労働安全衛生情報(PDF版)

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日本の労働安全衛生をめぐる状況【2021年→2022年】~労働災害・職業病(業務災害・業務上疾病)統計の構造、労働安全衛生情報

日本の労働安全衛生をめぐる状況【2020年→2021年】~労働災害・職業病(業務災害・業務上疾病)統計の構造、労働安全衛生情報

日本の労働安全衛生をめぐる状況【2019年→2020年】~労働災害・職業病(業務災害・業務上疾病)統計の構造、労働安全衛生情報