厚生労働省が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」を21事例に更新(2021年2月1日)

厚生労働省は2021年2月1日に、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」をそれまでの13事例から21事例に増やしました。5頁のPDFファイルなので、ここにスマホ等でも見やすいかたちで掲載しました。事例については、「番号-業種-職種」+「認定事例」というかたちで示しています。
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災補償について知っておいていただきたいこと、公務災害等も含め昨年以来の経過等については別稿をご覧ください。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災請求のご参考となるよう、労災認定の具体的な事例について概要をご紹介します。
なお、各事例は、同感染症の労災認定の考え方について示した令和2年4月28日付け基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱い」(以下「通知」といいます。)の事項に沿って、職種に着目して記載しています。

1 医療従事者等の事例

(通知記の2の(1)のア関係)

【具体的な取扱い】
医師、看護師、介護従事者等の医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

1-医療業-医師
感染経路は特定されなかったが、Aさんは、日々多数の感染が疑われる患者に対する診療業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。

2-医療業-看護師
感染経路は特定されなかったが、Bさんは、日々多数の感染が疑われる患者に対する問診、採血等の看護業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。

3-社会保険・社会福祉・介護事業-介護職員
感染経路は特定されなかったが、Cさんは、介護施設で日々複数の感染が疑われる介護利用者に対する介護業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。

4-医療業-理学療法士
感染経路は特定されなかったが、Dさんは、病院で日々多数の感染が疑われる患者に対するリハビリテーション業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。

5-医療業-診療放射線技師
感染経路は特定されなかったが、Eさんは、日々多数の感染が疑われる患者に対するMRIの撮影等の画像検査業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。

※上記1~5については、それぞれ一般生活での感染が明らかでなかったことが確認されている。

2 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定された場合の事例

(通知記の2の(1)のイ関係)

【具体的な取扱い】
感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる。

6-宿泊業、飲食サービス業-飲食店員
Aさんは、飲食店内での接客業務に従事していたが、店内でクラスターが発生し、これにより感染したと認められたことから、支給決定された。

7-社会保険・社会福祉・介護事業-保育士
Bさんは、保育園で保育業務に従事していたが、園内でクラスターが発生し、これにより感染したと認められたことから、支給決定された。

8-社会保険・社会福祉・介護事業-児童クラブ職員
Cさんは、児童クラブで学習支援業務に従事していたところ、後日、児童クラブを利用する児童が、新型コロナウイルスに感染していたことが確認され、当該児童から感染したと認められたことから、支給決定された。

9-ビルメンテナンス業-清掃員
Dさんは、病院で清掃業務に従事していたが、院内でクラスターが発生し、新型コロナウイルスに感染した医療従事者との接触により感染したことが認められたことから、支給決定された。

10-建設業-建設作業員
Eさんは、勤務中、同僚労働者と作業車に同乗していたところ、後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、当該同僚から感染したと認められたことから、支給決定された。

3 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されない場合の事例

(通知記の2の(1)のウ関係)

【具体的な取扱い】
感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務(複数の感染者が確認された労働環境下での業務や顧客等の近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など)に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる。

① 複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務

(通知記の2の(1)のウの(ア))

11-製造業-建設資材製造技術者
感染経路は特定されなかったが、Aさんは、発症前14日間に、会社の事務室において品質管理業務に従事していた際、当該事務室でAさんの他にも、新型コロナウイルスに感染した者が勤務していたことが確認された。このため、Aさんは、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

12-建設業-工事現場施工管理業務従事者
感染経路は特定されなかったが、Bさんは、発症前14日間に、工事現場の事務室において現場の施工状況を管理する業務に従事していた際、当該事務室でBさんの他にも、新型コロナウイルスに感染した者が勤務していたことが確認された。このため、Bさんは、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

13-建設業-営業職業従事者
感染経路は特定されなかったが、Cさんは、発症前14日間に、会社の事務室において営業業務に従事していた際、当該事務室でCさんの他にも、新型コロナウイルスに感染した者が勤務していたことが確認された。このため、Cさんは、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

※上記11~13については、医学専門家からは、それぞれ当該労働者の感染は業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。

② 顧客等の近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

(通知記の2の(1)のウの(イ))

14-卸売業、小売業-販売店員
感染経路は特定されなかったが、Aさんは、発症前14日間に、日々数十人と接客し商品説明等を行う等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

15-宿泊業、飲食サービス業-飲食店員
感染経路は特定されなかったが、Bさんは、発症前14日間に、日々数十組に接客を行う等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

16-運輸業、郵便業-バス運転者
感染経路は特定されなかったが、Cさんは、発症前14日間に、日々数十人の乗客(県外からの乗客を含む)を輸送・接客する等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

17-運輸業、郵便業-タクシー運転者
感染経路は特定されなかったが、Dさんは、発症前14日間に、日々数十人の乗客(海外や県外からの乗客を含む)を輸送・接客する等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

18-社会保険・社会福祉・介護事業-保育士
感染経路は特定されなかったが、Eさんは、発症前14日間に、日々数十人の園児の保育や保護者と近距離で会話を行う等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

19-医療業-診療所事務員
感染経路は特定されなかったが、Fさんは、発症前14日間に、日々数十人の患者の受付を行う等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

20-卸売業、小売業-調剤薬局事務員
感染経路は特定されなかったが、Gさんは、発症前14日間に、日々数十人の処方箋の受付を行う等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

21-運輸業、郵便業-港湾荷役作業員
感染経路は特定されなかったが、Hさんは、発症前14日間に、日々不特定多数のトラック運転手等と近距離で会話を行う等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。

※上記14~21については、医学専門家からは、それぞれ当該労働者の感染は業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった