『アスベスト問題の過去と現在-石綿対策全国連絡会議の20年』(2007年発行) 12 石綿問題は終わっていない

※ウエブ版では脚注をなくし、日本語の情報を優先して参照先にリンクを張っており、PDF版の脚注とは異なる。

関係閣僚会合の「幕引き」

石綿全国連は、2006年4月28日に第19回総会を開催、「全ての被害者に公正な補償と『アスベスト対策基本法』の制定を求める決議」及び「石綿対策全国連絡会議はアスベスト問題の地球規模での解決をめざす」という2本の決議案を採択して、「石綿問題を終わらせない」決意を再確認した。

一方、2006年9月8日、第6回目にして、小泉内閣最後のアスベスト問題に関する関係閣僚会合が開催された。ここでは、①石綿健康被害救済法に基づく申請受付・認定の状況(累計)、②石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する考え方(概要)(以上、環境省)、③「石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金の請求・決定状況」及び「労災保険法に基づく石綿による中皮腫・肺がんの補償状況」、④石綿の製造等の全面禁止(以上、厚生労働省)、⑤石綿除去等の取組状況(防衛庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省)、及び、⑥石綿対策関係平成19年度概算要求額一覧、が報告されただけである。

前年末に関係閣僚会合として取りまとめた「総合対策」の進捗状況を確認し、積み残し事項及び実施した中で明らかになった新たな課題等を整理して、次の内閣に引き継ぐという、当然なされてしかるべき「小泉内閣のもとでの石綿対策の総括」が行われた形跡はまったくない。政府―関係閣僚会合としての文章も1切なく、各省庁の報告文書の寄せ集めが公表されただけなのである。クボタ・ショック以前の縦割り行政時代に逆戻りしてしまったようだ。

続く安倍内閣のもとでは、関係閣僚会合は一度も開催されなかった。関係閣僚会合はすでに「幕引き」されているようにみえる。

全面禁止の実現はいつか

既述のとおり、2004年10月1日からわが国で実施された原則禁止は、条文上は10種類の石綿含有製品の禁止(禁止品を列挙するネガティブリスト)にすぎなかったが、クボタ・ショック前の時点ですでに、2005年4月にILO石綿条約批准が審議された参議院外交貿易委員会で公明党の澤雄司議員から質されて、厚生労働省は後日、同議員に、2007年を目途にポジティブリスト(禁止除外品を列挙)化する方針を報告していた。

クボタ・ショック直後の7月8日、尾辻厚生労働大臣は、「2008年度までに全面禁止」する方針を表明。7月29日の第1回関係閣僚会合の「当面の対応」では、「遅くとも2008年までに全面禁止を達成するため代替化を促進するとともに、全面禁止の前倒しも含め、さらに早期の代替化を検討する」とされ、年末の第5回関係閣僚会合の「総合対策」では、「全面禁止を前倒しして、関係法令の整備を行い2006年度中に措置する」と公約した。

厚生労働省は、「石綿製品の全面禁止に向けた石綿代替化等検討委員会」を設置して検討を進め、2006年1月18日にその報告書を公表したが、そこでは、2006年度中のポジティブリスト化(禁止除外は7製品だが、前回除外された3製品より実際の対象は狭くなる)を示したものの、全面禁止の時期は明示されなかった。国会審議においても、「完全な(例外なき)全面禁止」の時期は「『できるだけ早期に』以上のことは言えない」という政府答弁で、EUその他諸国の「全面禁止」にも例外はあり、「ポジティブ・リスト化は実質的な全面禁止」だと居直っているが、これは公約を反古にするものと言われても仕方ないであろう。

ともかく、再び労働安全衛生法施行令が改正され、経過措置として新たに6品目に再整理された適用除外製品等を除き、石綿をその重量の0・1%を超えて含有する製品等の使用等の禁止が、2006年9月1日から実施された。規制対象の含有率基準の1%から0・1%への引き下げは、前年の総選挙時に石綿全国連が公開質問状であらためて提起し、全政党が賛意を示した内容が実行に移されたものである。化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善関係の労働安全衛生法施行令等の改正も別途行われて、12月1日からは、石綿以外も含めた発がん物質に係る関係規制も含有率0・1%基準で整合化が図られた。

貿易統計によると、原料石綿の新たな輸入は2006年以降、止まっている。とはいえ、石綿の全面禁止の実現時期はいまだに不透明なままであり、その早期実現が求められている。輸出の禁止や海外移転の規制に関する規定・仕組みがないことなども課題である。

「隙間なく公正な」補償・救済

クボタ・ショックによる社会の最大の関心が、石綿被害に対する「迅速」かつ「隙間なく公正な」救済にあったことは間違いないだろう。この間全国安全センターが実施したフリーダイヤルによる全国1斉石綿健康被害ホットラインに寄せられた相談件数は、2005年12月9・10日494件、新法による救済措置の申請・請求の受付開始に合わせた2006年3月20~22日には805件、同年12月1・2日には128件という状況になっている。救済新法の施行後、メディアが石綿問題を取り上げる機会は激減しているが、石綿被害は決して終わっていないし、今後も増加し続けることが確実である。

表2は、石綿全国連が作成した、労災補償と新法による救済の比較で、「◆救済の隙間」及び「▼公正さを欠く点」を示している。石綿全国連は、「『見直し』は、部分的な手直しですませるわけにはいかず、事実上『作り直し』でなければ対処できないと考え」るとしている。

この他にも、クボタのような法律を超える「上積み補償制度」の問題や、労災補償や時効救済の「官民格差」などの問題も存在していることは既述のとおりである。認定基準やその運用等も含めて、補償・救済をめぐる問題点は広範囲にわたっており、詳しい解説は省略するが、主な問題点だけでも、以下のような点があげられる。

  • 「すべての被害を救済」できているかどうかの検証
  • 新たな時効切り捨ての続出(生存中本人申請要件、過去分は3年以内)
  • 迅速な行政救済からほど遠い(とくに新法救済では全数環境大臣の医学判定→環境再生保全機構の役割は単なるメッセンジャー)
  • 被災者・家族に多大な医学的立証責任
  • 医学的診断精度の向上等を救済制度に持ち込むべきではない―新法救済では「判定保留」、「取り下げ」事案続出
  • 「石綿肺がん」をほとんど救済できていない
  • 対象疾病以外の石綿関連疾患(とくに石綿肺)
  • 認定事業場名、市区町村別中皮腫数等の公表
  • 救済財源の事業主負担のあり方

責任の所在を明確にした補償・救済は今なお残された課題である。個別企業の責任を追及するにしても、補償を行うべき企業がすでに存在しない場合や「クボタ並み」の補償を実施できない企業もあることに加えて、環境曝露の発生源が工場から建築物等の改修・解体等に移行していくにつれて、加害者を特定できない被害事例が将来増えていくであろうことも予想される。それらも含めて、アスベストの使用を早期に中止させることを怠り、かえってその使用を事実上義務づけたり、促進してきた面すらある、国の責任を回避することはできない。結局、個別企業の対応のみによっていたのでは正義が実現することにはならず、国としての対応が必要になってくることは不可避である。

石綿曝露者の健康管理対策

石綿による健康被害対策は、疾病が発症してしまった場合の補償・救済に限られるものではない。この点では、まず、政府の検討会報告書等でも何度も勧告されていながら、いまだに実現していない中皮腫等の登録制度の確立が重要である。臨床現場における中皮腫等の診断精度の向上までをも新法のもとでの医学判定が担うかのごときいびつな現状は早急に是正される必要がある。また、因果関係の究明のためにも同制度は寄与できるものと考えられる。

過去石綿に曝露した者に係る健康管理対策については、関係閣僚会合の「総合対策」でも一定ふれられながら、船員であった者に対する健康管理手帳の創設以外には、いまだに何ら恒久的な具体策の講じられていない課題である。

石綿曝露労働者対策としては、行政指導による事業主による離退職者健診が一定行われているが、その内容等の妥当性は検証されておらず、いつまで続けられるかも不透明。倒産企業等の離退職者に対しては、厚生労働省委託事業による特別健康診断が行われたが1過的なものである。「総合対策」で「調査研究の結果を踏まえ…見直しを行う」こととされている健康管理手帳制度の見直しが早急に実施されるべきであり、石綿全国連は早くから、①交付対象者を3か月以上の石綿曝露作業従事者に拡大、②「常時従事」要件を撤廃するとともに、③本人の申請によらず事業者の責任で交付手続をするようにし、④過去の離・退職者についても遡及適用すること。また、⑤手帳所持者が無料で健診を受けることのできる医療機関を全ての医療機関に拡大すること等を要求している。

「総合対策」ではまた、「『石綿に関する健康管理等専門家会議』において検討し、その結果を活用して、一般住民等の健康管理の促進を図る」ともしていた。しかし、同専門家会議の報告書は、「中皮腫登録のあり方の検討の必要性」を提起していることは注目されるものの、労働者の場合の健康管理手帳制度のような、「一般住民等の健康管理体制の確立」に関する具体的提言はなされていない。環境省の「石綿の健康影響に関する検討会」では、①健康リスク調査(大阪府泉南地域、尼崎市、鳥栖市)、②健康影響実態調査(大阪府、佐賀県)、③尼崎市コホート調査等が進められているが、そこから何が生まれてくるのかも定かではない。現在、一部の地方自治体や企業によって行われている健康診断は、健康管理対策とは言えず、妥当性、将来性等も不透明なままである。

労働者と同様の職業曝露の可能性のある自営業者や、学校等における吹き付けアスベスト等に曝露した可能性のある児童・生徒・学生等の健康管理対策の考え方・あり方等については、検討すらされていない状況であり、このような重要な課題を放置したまま、終わらせるわけにはいかないであろう。

既存石綿対策の「整合性」

これまでのわが国の既存石綿対策に関しては、数多くの省庁や法令が関与していながらも、①それらの間で「整合性」や「連携」を欠き、また、②「隙間」も多く、さらに、③規制等の周知・遵守の徹底、執行体制上の問題も多い、ことなどが指摘されてた。最大の弱点は、何といっても石綿対策に係る国としての「戦略」の不在であったと言えよう。クボタ・ショックを契機に求められたのは、そのような状況を抜本的に変革することであった。

既存石綿対策に関しては、大気汚染防止法、廃棄物処理法、建築基準法が改正されている。しかし1言で言えばいずれも、原則使用禁止という新たな局面に対応した労働安全衛生法令、とりわけ石綿障害予防規則の2005年7月1日施行までに当然行われるべきだった対応の遅れを、クボタ・ショック後のどさくさに紛れて取り戻したにすぎず、その点ですら十分とは言えない内容にとどまっている。労働安全衛生法改正は行われず、既述の禁止規制のポジティブ・リスト化と含有率基準の引き下げを除くと、マイナーな石綿障害予防規則の改正が2006年9月から実施等にとどまっている。

例えば、規制対象となる石綿建材等の石綿含有率基準は、労働安全衛生法・石綿障害予防規則では、前述のとおりクボタ・ショック直後に、1%から0・1%への引き下げの方針が固まった。大気汚染防止法では、法令ではなく施行通知で1%基準を示していたが、2006年7月に都道府県等に示された改正大気汚染防止法の解説である「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」では、「『石綿を含有する』とは…石綿を意図的に含有させたことを言い、それが不明な場合にあっては、石綿の質量が当該建築材料の質量の1%を超えることをいう」としている。意図的含有の場合には0・1%以下の場合も含まれるようにも読めるが、なぜ0・1%基準を採用しないのか疑問である。施行令改正案のパブリック・コメントで寄せられた意見に対する回答(7月31日)の中で、「労働安全衛生法施行令及び石綿障害予防規則の改正により石綿含有率が0・1%超えに変更になる場合は、その運用方針も見ながらできるだけ合わせてまいりたい」としているが、いまだにマニュアルの記述は変更されていない。廃棄物処理法令では、含有率基準は示されていなかったが、改正廃棄物処理法施行令により0・1%基準を採用した。また、国会審議で国土交通省は「建築基準法独自に含有率の数値を定めることは考えていない」と答えたものの、法改正に伴う建築基準法関連告示で規制対象を、①吹き付け石綿、及び、②吹き付けロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の0・1%を超えるもの、と明示した。

規制対象となる石綿建材等の範囲については、石綿障害予防規則は、レベル①―石綿含有吹き付け、レベル②―石綿を含有する耐火被覆材、保温材、断熱材、レベル③―上記以外の石綿含有材、と称して、曲がりなりにも全ての石綿建材等について各々のレベルに応じた規制を設けた。改正大気汚染防止法令では、特定建築材料として、従来のレベル①にレベル②に対応するものを追加して、①と②の区別をつけない同じ規制をかけたものの、レベル③に対応する部分の対策については、法令による規制ではなく、前述のマニュアルによる行政指導を示すにとどまっている。改正廃棄物処理法令では、レベル①と②の部分を含めて特別管理産業廃棄物としての廃石綿等として、①と②の区別をつけない同じ規制の対象としたうえで、レベル③に対応するものに対しても、「石綿含有一般廃棄物」及び「石綿含有産業廃棄物」として「収集、運搬、処分等の基準」を示した。他方、改正建築基準法は、レベル①の石綿含有吹き付けの一部としての、吹き付け石綿及び石綿含有吹き付けロックウールのみに限定した、新たな規制を導入したものである。

各省庁まかせではない関係閣僚会合のもとでの「総合対策」と言っても、このように「整合性」がとれないということは、より強力な政府1体化の方策を必要としていることを証明している。

既存石綿対策の「隙間」

しかも、いずれの法令も基本的に、建築物等の解体等作業が行われる段にならないと発動されない仕組みとなっている。唯1の例外が、石綿障害予防規則が事業主に対して、「その労働者を就業させる建築物の壁、柱、天井等に吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、及びその労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該石綿等の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならない」としていること。これにより事業者は、吹き付け石綿等の調査及び状況の把握をしなければならないが、石綿全国連が要求した「措置を講ずべき場合の基準」及び「いずれの措置を講ずべきかの判断基準」が明確ではない上に、周知されていないのが実状である。

今回の建築基準法改正の関連で事態が改善することが期待されたが、宅地建物取引業法施行規則の改正で重要事項説明に追加されたのは、「当該建物に石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」であって、調査の実施及び結果の記録を義務づけるものではなく、住宅性能表示基準等の改正で石綿関連項目が盛り込まれているが、同基準による評価を受けるかどうかは申請者の判断によるものである。建築基準法12条1項に基づく定期調査報告書の様式が、吹き付け石綿等の実態把握をより適切に行うために改正され、「石綿を添加した建築材料の調査状況」の欄が新設され、この欄に吹付け石綿等がある旨を記入した場合には、「一般構造の調査状況」においても併せて「不適合の指摘あり(既存不適格)」をチェックする必要があるとされたことが、今後どのように運用されるか、注目していく必要があろう。

国土交通省住宅局長名で2006年10月1日付けで都道府県宛てに発出された、改正法施行に係る技術的助言の通知(国住指第1539号)は、「吹付け石綿等が使用されている建築物については、民間建築物における吹付けアスベストの実態調査、定期調査・報告等により把握した上で、必要に応じて、報告聴取、立入検査を行い、建築物の所有者等に除去等の飛散防止措置の実施を指導」し、「石綿の飛散により著しく衛生上有害となるおそれがあると判断される場合には、法第10条に基づく勧告、命令の厳正な適用を図られたい」としている。ただし一方で、「石綿繊維の濃度の基準については、現時点で室内環境の基準はなく、石綿繊維の濃度測定結果に基づき、勧告・命令の判断を1律に行うことは困難である」とも言っている。

すなわち、現在、どこに、どのようなかたちで、どれだけの石綿が存在しているかを、誰が、いつ、どのように調査・把握するかを規定した法令は存在していないということである。クボタ・ショック後、各省庁等の指示により全国で建築物の石綿調査等が実施されたが、この調査の法的裏付けは存在せず、調査方法及び実施状況の妥当性等も検証されていない。学校パニックのときと同様の諸問題が再燃することは避けられないだろう。

濃度基準等については、現在、法令で策定されているのは、労働安全衛生法令による屋内作業環境基準(管理濃度)=0・15繊維/cc=150繊維/l、及び、大気汚染防止法令による敷地境界基準(アスベスト粉じん発生施設と周辺環境との敷地境界における規制基準)=10繊維/ccだけである。これらはいずれも、石綿含有製品製造工場を主眼としたものであって、新たな製造等が原則禁止されたことから、現実に発動される場面はなくなっている。

そして、必要とされるような濃度基準等を定めている法令は、いまだにひとつもないのが実状である。国土交通省の社会資本整備審議会建築分科会にアスベスト対策部会が設置され、2005年12月に「建議『建築物における今後のアスベスト対策』」がまとめられた。その概要のひとつに、「室内空気中のアスベスト繊維濃度の指標を検討することが必要」との項目があげられている。この建議を踏まえて、アスベスト室内濃度測定委員会が参集され、委員の1人(名取雄司・アスベストセンター所長)から根拠を示して「建物内の石綿濃度指針を0・3繊維/ccとする提案がなされたが、採用されず、それに代わる濃度指標も示されなかった。この提案は、2006年3月にまとめられた「アスベストによる健康障害対策に関する緊急研究建築物室内のアスベスト濃度指標の検討報告書」の本体にも収録されないで、議事録と1緒に別冊化されたうえ、ウエブでも公表されていない状況である。

既存アスベスト対策の原則

このような状況を踏まえれば、改正された関連法令を含めて既存の法令を遵守しているだけでは十分な対策とは言えず、また、企業なり所有者、管理者としても、法令さえ守っていれば責任を果たしていると言い切れない実状にある。クボタ・ショック後、多くの地方自治体が石綿対策に関連した条例等を策定しているが、これらは改正法令の施行に対応した見直しが必要なだけでなく、そのような観点からも見直される必要があろう(現に国の法令の不備を補うような条例も見受けられる)。

その際、既存石綿対策の主な原則として、以下の点を上げることができる。

  • 全てのアスベスト含有製品等を対象とする
  • 把握・管理・除去・廃棄等を1貫した対策をたてる
  • 有害性・飛散性等による優先順位付け
  • 有害性(青・茶石綿含有製品)
  • 飛散性(吹き付け、保温材・断熱材・耐火被覆板等)
  • 利用状況(不特定多数者の利用の有無・頻度等)による優先順位付け
  • 特別な管理が必要な石綿等(優先順位の高い石綿等)の取り扱いは認可を受けた業者、それ以外は粉じん飛散防止の一般原則の徹底
  • 封じ込め、囲い込みは「管理」対策のひとつであって「措置済み」ではないことの徹底(「除去」するまでの管理計画)
  • 計画的・段階的・継続的取り組み(年次計画の作成等)
  • 情報公開/関係者の教育・参加/人材・財政的裏付け

国レベルではやはり、各省庁まかせの現状を転換して、「アスベスト対策基本法」の制定、及び、政府においては、省庁間の縦割り行政の弊害を克服するため、内閣府のもとに「アスベスト対策会議」を設置するとともに、アスベスト被害者とその家族、労働者、市民等の代表を含めた「アスベスト対策委員会」を設置すること等も重要な課題として残されている。

石綿問題は終わっていない

石綿全国連は、2007年3月25・26の両日、石綿健康被害救済法1周年を検証するシンポジウム(210名参加)と集会・デモ(900名参加)を行い、「アスベスト問題は終わっていない!隙間なく公正な補償・救済を求めるアピール」を採択した。また尼崎では、地元関係団体を中心とした実行委員会主催、兵庫県、尼崎市と石綿全国連の後援で、6月30日・7月1日に「クボタ・ショックから2年 写真と報告でつづるアスベスト被害尼崎集会」が開催され(300名参加)「アスベストのない社会を!尼崎宣言2007」が採択された(1周年シンポジウムと尼崎集会は各々報告書の発行が予定されている)。

それらを通じて、職業病と公害の垣根を超えたアスベスト被害者とその家族、市民、労働者、関心を寄せる様々な分野の専門家等々の連携が、そしてまた一方で、国境を越えた連携もひろがっている。

私たちは、人類史上最悪の産業災害と言えるアスベストの負の遺産から未来を守るための新たな20年の歩みを刻み始めなければならない。石綿問題は終わっていないし、小手先の対策で終わらせてはならないのである。

●アスベスト問題の過去と現在-石綿対策全国連絡会議の20年
はじめに
1 石綿被害の本格化はこれから
2 日本における石綿の使用
3 石綿肺から発がん性、公害問題も
4 管理使用か禁止か
5 石綿の本格的社会問題化
6 石綿規制法案をめぐる攻防
7 被害の掘り起こしと管理規制強化の積み重ね
8 石綿禁止が世界の流れに
9 日本における原則使用禁止
10 地球規模での石綿禁止に向けて
11 クボタ・ショックと日本の対応
12 石綿問題は終わっていない
●石綿対策全国連絡会議(BANJAN)の出版物