【建設アスベスト給付金関係通達】令和3(2021)年6月16日付け基発0616第1号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律の公布について」
特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(令和3年法律第74号。以下「法」という。)が、令和3年6月9日に第204回通常国会において可決・成立し、本日公布された。施行期日は、一部を除き公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日となっている。
法の趣旨及び内容は下記のとおりであるので、その趣旨について御了知の上、別添1のリーフレットを活用するなど、必要に応じて周知を図られたい。
また、本省においては、別添2のとおり電話相談窓口(0570-006031。土日祝日、年末年始を除く平日8時30分から17時15分まで。)を設置したので、併せて御了知願いたい。
なお、法第16条第3項及び附則第1条の規定に基づき政令で定める内容並びに法第2条第1項第2号及び第3項第2号、第4条第1項第1号ロ、第12条第2項、第21条第1項及び第2項並びに第22条の規定に基づき厚生労働省令で定める内容等については、制定後おって通達する。
記
第1 趣旨(第1条関係)
法第1条は、法の趣旨を明らかにしたものであること。
すなわち、法は、石綿にさらされる建設業務に従事した労働者等が石綿を吸入することにより発生する中皮腫その他の疾病にかかり精神上の苦痛を受けたことに係る最高裁判所判決等において、国が労働安全衛生法に基づく権限を行使しなかったことは、労働者の安全及び健康の確保という同法の目的等に照らして著しく合理性を欠くものであるとして、国の責任が認められたことに鑑み、これらの判決において国の責任が認められた者と同様の苦痛を受けている者について、その損害の迅速な賠償を図るため、特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給について定めたものであること。
第2 定義(第2条関係)
1 趣旨
法第2条は、法に規定する「特定石綿ばく露建設業務」、「石綿関連疾病」及び「特定石綿被害建設業務労働者等」について、その定義を明らかにしたものであること。
2 内容
(1)特定石綿ばく露建設業務(第2条第1項関係)
法において「特定石綿ばく露建設業務」とは、日本国内において行われた石綿にさらされる建設業務のうち、次のア又はイの業務をいうものとすること。
ア 石綿の吹付けの作業に係る業務(昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間に行われたものに限る。)
イ 屋内作業場であって厚生労働省令で定めるものにおいて行われた作業に係る業務(昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間に行われたものに限る。)
(2)石綿関連疾病(第2条第2項関係)
法において「石綿関連疾病」とは、石綿を吸入することにより発生する次のアからオまでに掲げる疾病をいうものとすること。
ア 中皮腫
イ 気管支又は肺の悪性新生物(第3の2(1)イ②及びウにおいて「肺がん」という。)
ウ 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
エ 石綿肺(じん肺法第4条第2項に規定するじん肺管理区分(以下単に「じん肺管理区分」という。)が管理2、管理3若しくは管理4である者又はこれに相当する者に係るものに限る。第3の2(1)ウ①において同じ。)
オ 良性石綿胸水
(3)特定石綿被害建設業務労働者等(第2条第3項関係)
法において「特定石綿被害建設業務労働者等」とは、次のアからオまでに掲げる者であって特定石綿ばく露建設業務に従事することにより石綿関連疾病にかかったものをいうものとすること。
ア 労働者(労働基準法第9条に規定する労働者。以下ウからオまでにおいて同じ。)
イ 厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業の事業主
ウ イの事業主が行う事業に従事する者(労働者を除く。)
エ 労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする者
オ エに掲げる者が行う事業に従事する者(労働者を除く。)
第3 給付金等(第3条~第15条関係)
1 趣旨
法第3条から第15条までは、給付金及び追加給付金(以下「給付金等」という。)の支給、額及び支給の手続並びに損害賠償との調整等の規定を定めたものであること。
2 内容
(1)給付金の支給等
ア 給付金の支給(第3条関係)
国は、法の定めるところにより、特定石綿被害建設業務労働者等に対し、給付金を支給することとし、特定石綿被害建設業務労働者等が死亡したときは、その者の遺族は、自己の名で、その者の給付金の支給を請求することができるものとすること。
イ 給付金の額(第4条第1項関係)
給付金の額は、次の①から③までに掲げる特定石綿被害建設業務労働者等の区分に応じ、それぞれ①から③までに定める額とすること。
① 石綿関連疾病により死亡した者
次の(ア)又は(イ)に掲げる区分に応じ、それぞれ(ア)又は(イ)に定める額
(ア)(イ)以外の者 1,300万円
(イ)石綿肺により死亡した者(じん肺管理区分が管理2若しくは管理3であった者(じん肺法第2条第1項第2号に規定する合併症のうち厚生労働省令で定めるもの(③(ア)a及び③(イ)aにおいて「指定合併症」という。)にかかった者を除く。)又はこれに相当する者に限る。) 1,200万円
② ①に掲げるもののほか、中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、石綿肺にかかった者(じん肺管理区分が管理4である者又はこれに相当する者に限る。)又は良性石綿胸水にかかった者 1,150万円
③ ①及び②に掲げるもののほか、石綿肺にかかった者次の(ア)又は(イ)に掲げる区分に応じ、それぞれ(ア)又は(イ)に定める額
(ア)じん肺管理区分が管理3である者又はこれに相当する者次
のa又はbに掲げる区分に応じ、それぞれa又はbに定める額a指定合併症にかかった者950万円ba以外の者800万円
(イ)じん肺管理区分が管理2である者又はこれに相当する者
次のa又はbに掲げる区分に応じ、それぞれa又はbに定める額
a 指定合併症にかかった者 700万円
b a以外の者 550万円
ウ 給付金の額の減額(第4条第2項及び第3項関係)
① 特定石綿被害建設業務労働者等であって、第2の2(1)に規定する期間のうち特定石綿ばく露建設業務に従事した期間が、次の表の左欄に掲げる石綿関連疾病に応じてそれぞれ同表の右欄に定める期間を下回るものに係る給付金の額は、イの規定にかかわらず、イ①から③までに定める額に100分の90を乗じて得た額とすること。
肺がん又は石綿肺 10年
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚 3年
中皮腫又は良性石綿胸水 1年
② 特定石綿被害建設業務労働者等(肺がんにかかった者に限る。)であって、喫煙の習慣を有したものに係る給付金の額は、イ又はウ①にかかわらず、イ①(ア)又はイ②の額(ウ①の適用がある場合にあっては、ウ①による額)に100分の90を乗じて得た額とすること。
(2)給付金の支給の手続
ア 請求(第5条関係)
① 厚生労働大臣は、給付金の支給を受けようとする者の請求に基づき、当該支給を受ける権利の認定を行い、当該認定を受けた者に対し、給付金を支給するものとすること。
② ①の請求(イ及びウ①において単に「請求」という。)は、石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断又は石綿肺に係るじん肺法の規定によるじん肺管理区分の決定(じん肺管理区分が管理2、管理3又は管理4と決定された者に係る決定に限る。)があった日(石綿関連疾病により死亡したときは、その死亡した日)から起算して20年を経過したときは、することができないものとすること。
イ 厚生労働大臣による調査(第6条関係)
① 厚生労働大臣は、ア①の認定(ウ③において単に「認定」という。)を行うため必要があると認めるときは、請求をした者(②及びウ①において「請求者」という。)その他の関係人に対して、報告等をさせ、又は厚生労働大臣の指定する医師の診断を受けさせることができるとともに、関係機関その他の公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるものとすること。
② 請求者が、正当な理由がなくて、①による報告等をせず、又は医師の診断を拒んだときは、厚生労働大臣は、その請求を却下することができるものとすること。
ウ 請求に係る審査(第7条関係)
① 厚生労働大臣は、請求を受けたときは、当該請求の内容を特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会(以下「審査会」という。)に通知し、次の(ア)から(エ)までに掲げる事項について審査を求めなければならないものとすること。
(ア)当該請求に係る請求者が特定石綿ばく露建設業務に従事した期間
(イ)当該請求に係る請求者がかかった石綿関連疾病の種類
(ウ)当該請求に係る請求者が特定石綿ばく露建設業務に従事したことと石綿関連疾病にかかったこととの関係
(エ)当該請求に係る請求者の喫煙の習慣の有無
② 審査会は、①による審査を求められたときは、①(ア)から(エ)までに掲げる事項について審査を行い、その結果を厚生労働大臣に通知しなければならないものとすること。
③ 厚生労働大臣は、②による通知があった審査会の審査の結果に基づき認定を行うものとすること。
エ 関係機関等の協力(第8条関係)
関係機関その他の公務所又は公私の団体は、厚生労働大臣から必要な事項の報告を求められたときは、これに協力するよう努めなければならないものとすること。
(3)追加給付金の支給等
ア 追加給付金の支給(第9条関係)
国は、給付金の支給を受けた特定石綿被害建設業務労働者等であって、吸入した石綿により新たに(1)イ①から③まで(1)イ③(イ)bを除く。イにおいて同じ。)のいずれかに該当するに至ったものに対し、追加給付金を支給するものとすること。
イ 追加給付金の額(第10条関係)
追加給付金の額は、(1)イ①から③までに掲げる特定石綿被害建設業務労働者等の区分に応じ、(1)イ①から③までに定める額(1)ウ①又は②の適用がある場合にあっては、これらによる額)から、次の①又は②に掲げる場合に応じ、それぞれ①又は②に定める額を控除した額とするものとすること。
① 初めて追加給付金の支給を受ける場合
(1)アにより支給された給付金の額
② 既に追加給付金の支給を受けたことがある場合
(1)アにより支給された給付金の額及び①により支給された追加給付金の額の合計額
(4)追加給付金の支給の手続(第11条関係)
ア 厚生労働大臣は、追加給付金の支給を受けようとする者の請求に基づき、当該支給を受ける権利の認定を行い、当該認定を受けた者に対し、追加給付金を支給するものとすること。
イ (2)ア②及び(2)イからエまでの規定は、アの認定について準用するものとすること。
(5)給付金等に係る損害賠償との調整等(第12条~第15条関係)
給付金等に係る損害賠償との調整、不正利得の徴収等の規定を設けるものとすること。
第4 特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会(第16条関係)
1 趣旨
法第16条は、審査会について定めたものであること。
2 内容
(1)厚生労働省に、審査会を置くこととすること。
(2)その他審査会に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
第5 雑則(第17条~第22条関係)
1 趣旨
法第17条から第22条までは、戸籍事項の無料証明、事務の委託、厚生労働省令への委任等の雑則について定めたものであること。
2 内容
(1)戸籍事項の無料証明(第17条)
市町村等の長は、厚生労働大臣又は給付金等の支給を受けようとする者に対して、当該市町村等の条例で定めるところにより、給付金等の支給を受けようとする者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができるものとすること。
(2)事務の委託(第18条~第20条関係)
ア 厚生労働大臣は、給付金等の支払に関する事務を独立行政法人労働者健康安全機構(以下「機構」という。)に委託することができるものとすること。
イ アにより業務の委託を受けた機構は、給付金等の支払業務(以下「給付金等支払業務」という。)に要する費用(給付金等支払業務の執行に要する費用を含む。ウにおいて同じ。)に充てるため、特定石綿被害建設業務労働者等給付金等支払基金を設けるものとすること。
ウ 政府は、予算の範囲内において、機構に対し、給付金等支払業務に要する費用に充てるための資金を交付するものとするものとすること。
エ 政府は、ウにより機構に対して交付する資金については、必要な財政上の措置を講じて、確保するものとすること。
(3)厚生労働省令への委任(第22条関係)
給付金等の支給手続その他の必要な事項は、厚生労働省令で定めるものとすること。
第6 附則
1 趣旨
法附則は、施行期日、検討規定及び関係法律の整備について定めたものであること。
2 内容
(1)施行期日(附則第1条関係)
法は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、第4、第5の2(2)及び(3)並びに第6の2(3)の一部は、令和4年3月31日までの間において政令で定める日から施行するものとすること。
(2)検討(附則第2条関係)
国は、国以外の者による特定石綿被害建設業務労働者等に対する損害賠償その他特定石綿被害建設業務労働者等に対する補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするものとすること。
(3)関係法律の整備関係(附則第3条~第7条関係)
その他関係法律について、所要の規定の整備を行ったこと。
※本通達のPDF版を厚生労働種省ウエブサイトで入手できる。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000793733.pdf