アスベスト(石綿)被害と情報公開(1)アスベスト疾患労災認定に係る処理経過簿の開示請求とその結果(2007年12月時点)【クボタショック・アスベストショックの記録】

片岡明彦

関西労働者安全センター事務局/全国労働安全衛生センター連絡会議/中皮腫・じん肺・アスベストセンター運営委員

「情報開示」ありき

2005年6月29日からはじまったいわゆる「クボタショック」。

クボタは、かつて尼崎市・旧神崎工場で石綿水道管などを製造していた。近隣に居住した女性2名、男性1名が中皮腫で療養中(この時点でほかに2名死亡)、クボタがこの3名に見舞金を支払うこと、旧神崎工場労働者に石綿被害が多数発生していることを毎日新聞夕刊が特報した。

当時の詳細は、「アスベストショック クボタショックから2年」(アットワークス社)などにゆずるが、「ショック」とまで形容された出来事の発端は、クボタが、「自社の被害状況の詳細を開示したこと」にあった。

石綿被害の重大さにようやく気づいたマスコミは、政府と企業に情報を求め殺到した。もはや隠しきれないとみた企業側の被害情報公表が相次ぐ一方、政府側―経済産業省、国土交通省は、所管する業界に被害を報告するように指示し、内容的には不十分ながら、またたくまに被害情報が集まってきた。

この騒ぎの中、石綿被害情報を最も把握しているのは労災・安全衛生行政を所管する厚生労働省であって、厚労省こそ情報公開するべきであるとの圧力が高まった。かくして、クボタショック後わずか1か月後の2005年7月末には、2004年度までの中皮腫・肺がんの労災認定事業場に関する情報を、事業場の実名を含めて厚生労働省が公表するまでになった。

しかし、その後マスコミ圧力の低下につれ企業の情報公開度は低下、それに歩調を合わせるように厚生労働省は、労災認定事業場名の公表を拒むようになった。その間、2005年度、2006年度の労災保険による肺がんと中皮腫の認定件数及び時効になった事案を救済するための石綿新法の認定件数の合計は3,000件を優に超えた。2004年度以前の認定件数の約4倍に当たる件数である。本誌でも何度も指摘したように、それでもなお補償・救済から漏れた事案が補償・救済された事案よりはるかに多い。とりかえしのつかない過ちが行われたこと、「もし、クボタショックがなかったら」、ここのところを私たちは決して忘れてはならない。

「どこでどういう被害が生じているか」を社会に明らかにすることの重要性は、クボタショック後2年たったいまも変わらない。クボタショックの大切な教訓である。この貴重な教訓の実体としての膨大な数であろう労災認定事業場の公表継続を、私たちは政府・厚労省に交渉機会のあるごとに、本当に、真剣に申し入れたが、体よくあしらわれ、無視され、むなしく時間が過ぎた。なぜそんなことができるのか、そのたびに怒りにふるえた。

厚労省は、年度ごとに、都道府県別の労災補償状況をまとめホームページ上に掲載しているが、情報価値は非常に低い。そこで筆者は、いたずらに手をこまねいているよりも何かできないかと考えて、情報公開法にもとづく開示請求をしてみた。その結果、石綿による肺がん、中皮腫などの石綿関連疾患のすべての請求事案の部分開示リストを入手、労基署別に業種別・疾病別・性別で決定件数が把握できることになった。

データを整理・分析すると、次のようなことがわかった。

  1. 労災保険法と石綿新法(労災時効救済)において、2年間で約3,500件が業務上と認定され、その4割が建設関連だった。
  2. 非建設関連の業種においては、少なくとも約720の事業場で労災認定事案が発生し、このうち厚労省がクボタショック直後の2005年7月と8月に公表した「2004年度以前に労災認定のあった415事業場」以外に、新たに労災認定のあった事業場が、少なくとも約520あった。
  3. 2005年開示事業場の中には、2年間で労災認定件数を大幅に積み増したケースが、造船業などで目立つとともに、これまで認定事案がなかった、あるいはほとんどなかった事業場や業種で相当数の認定事案がみられた。

毎日新聞が2007年12月3日の朝刊1面トップで今回の開示結果を取り上げるとともに、全労基署の業種別認定内訳を掲載するなどして、労災認定事業場名の公表を強く主張した。

翌4日の参議院厚生労働委員会では足立信也議員(民主党)がこの記事をとりあげて質問、舛添要一厚生労働大臣は、「来年春までに労災認定事業場名を公表する」と明言し、懸案であった労災認定事業場名未公表問題が、ようやく前進することになった。(ただ一方で、被害を出した企業が石綿被害と補償に関する情報公開を率先して行うべきところ、現状はごく一部を除き、どうしようもない状況が続いており、根本的な反省と改善が求められていることを指摘しておきたい。)

今後、石綿問題における一層の情報公開、石綿被害救済制度の改善、石綿新法の見直しに取り組んでいかなければならない。

とりわけ、石綿新法では3年間の期限付きで労災時効事案の救済が認められたが、これを恒久的な措置とするために、石綿被害への時効適用を撤廃する労災保険法等の改正を、石綿新法見直しまでに行わせることが緊急に課題である。石綿新法制定前に「時効撤廃法案」が民主党から提出されたが、いわゆる「郵政解散」のあおりで廃案となった。これを復活させなければならない。石綿新法施行後に時効を迎えた事案が発生しているが、今は救済の道が閉ざされている。

大量の請求・認定情報、中皮腫登録制度開始の見通しなど、石綿被害の補償・救済対策はやっと情報に基づいた将来を見据えたものを策定できる条件が整ってきた。石綿公害についてもより正確に把握し評価できる状況ができつつある今、あらためて、石綿新法の抜本的見直しとともに、アスベスト対策基本法に基づく内閣府を中心とする総合対策を確立するべきだろう。

「各々の所管官庁に問題を任せておけばよい」では絶対にいけない、このことを端的に示したのが、今回の労災認定事業場未公表問題の顛末である。

クボタショック後の石綿健康管理手帳交付数の激増、交付要件緩和に伴うさらなる増加によって、厚労省には労災部局だけではなく、安全衛生部局にも石綿ばく露のあった企業・事業場情報が集まってきており、労災認定事業場の公表と合わせて、これらの事業場情報も公表されるべきものである点にも注目しておかなければならない。また、厚労省だけではなく、環境省も同じ問題を抱えている。中皮腫死亡数の市町村別データのみならず、石綿新法による市町村別認定情報は、未だに自治体に連絡されず、公表もされてはいない。

いまこそ情報公開を徹底し、英知を集めて総合的な石綿対策、対策推進体制を確立しなければ、またしても将来に禍根を残すことになる。注意しておきたいことは、認定件数や手帳交付数の多い事業場は、それだけばく露や被害も大きいことを示しているといえる反面、退職者対策などを通じて掘り起こしが進んでいる面もあるということである。前向きな対策はこれを評価し、大企業に止まらずその関連・下請企業、建設業など中小零細企業に働く人たちを含めた石綿対策を社会全体に広めていくためにも、「情報公開」は必要不可欠である。

まちがいなく石綿被害は今後何十年と続き、すでに韓国・釜山へのニチアスの公害輸出が問題化しているように、アジアをはじめとする地域的拡散が確実視されている。日本のアスベスト対策がどうなるのかということが、アジアの石綿被害を今後どれだけ小さくできるのかということと関連していることを私たちは忘れてはいけない。

なお、本稿の末尾に、今回の処理経過簿をめぐる経過を踏まえて、情報公開の徹底と被害企業の疫学調査実施、自治体への被害情報通知義務化について述べた。日本の石綿被害の実態と全容解明は、国際的にも重要な課題であることをあらためて強調しておきたい。

処理経過簿による管理

まず、今回の開示情報の源である「処理経過簿」について述べる。

労災請求事案を「処理経過簿」によって管理している例はめずらしいことではなく、脳・心臓疾患等についても同様なやり方をとっているようである。

全国安全センターが入手した厚労省の通達類には、石綿関連疾患に関して該当のものがなかったため、

「平成17年度以降の、石綿による業務上疾病(肺がん、中皮腫、石綿肺、瀰漫性胸膜肥厚、良性石綿胸水)の請求・業務上外認定事案、補償状況等について、調査、報告の作成、上局への提出等を厚生労働省から各労働局や各労基署の担当職宛に指示した文書、書式等の一式(通達、事務連絡、メモのすべて)。(労災保険法と石綿救済法によるもの)」として、厚生労働省に対して、7月10日付で開示請求したところ、「処理経過簿」に関する次の3つの事務連絡が開示された(ちなみに、重要な行政連絡が「通達」ではなく、より下位の「事務連絡」以下のレベルで行われ、行政文書として容易に公になってこないという問題は以前からあり、全国安全センターの厚労省交渉でも問題にしてきた。)

  1. 「石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿の作成について」2005年9月7日
  2. 「特別遺族給付金に係る請求・認定状況の把握について」2006年5月19日
  3. 「石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿(労災保険法分)について」2006年8月7日

1.によって、石綿による肺がん、中皮腫について、2005年度以降の労災保険における決定事案すべてが登録されることになり、2.で時効救済の石綿新法でのすべての請求事案が登録されるようになり、3.で2.に合わせるかたちで1.の処理経過簿の様式が一部改変されて現在に至っている。

1.から3.の変更は、1件1行で登録されること、疾患コードに「3:その他」が加わるなど、記載コードが若干変更になっていることである。1件1行としたのは、データの整理分析上は当然の改訂だろう。エクセルや他のデータベースソフトを使ってデータを操作するためには不可欠だったと思われる。

こうして、「処理経過簿」が存在することがわかった。

つまり、労災認定事業場名の公表という観点では、処理経過簿関連事務連絡、それに基づいて作成された処理経過簿がひとつの焦点ということである。また、処理経過簿の作成更新とともに、決定事案については、「調査復命書写」を局に保管せよ、との指示がなされており、石綿関連疾患の補償状況を系統的に把握し、分析できるようにしてある、ということは重要なポイントである。

処理経過簿は、現在、「労働基準行政情報システム」内の電子掲示板に登載されており、本省-局の縦方向の参照、更新が可能だが、局間の参照はできないものとみられる。つまり、処理経過簿の横の共有は図られていないようである。

さらに、各事案の調査復命書に記載されているような、ばく露、認定に関する情報についてシステム上どのように共有が図られているのかもわからない。おそらく有機的な活用はされていない。

なお、処理経過簿をもとにして労災認定事業場に関する集計リストが作成されているかどうかについては、確認できていない(ある局に、そうしたリストについての開示請求をしたが、「文書不存在」という回答だった)。

以下、3つの事務連絡の全文を示す。

事務連絡
平成17年9月7日

都道府県労働局労働基準部
労災補償課長殿

厚生労働省労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室長

石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿の作成について

現在、石綿による健康障害について国民の不安が高まっている状況から、労災補償行政においては、今後、石綿による肺がん及び中皮腫に係る労災請求事案(以下「石綿労災事案」という。)の請求及び認定の状況について、国会等からの照会に迅速・的確に対応する必要があります。

このため、当分の間、各局及び本省において、常時、最新の石綿労災事案の請求及び認定の状況を把握できるよう、下記により平成17年4月1日以降に請求のあったすべての事案について、石綿労災事案の処理経過簿(以下「処理経過簿」という。)を作成することとしましたので対応をお願いします。

なお、処理経過簿の項目については、「職業がん個人調査票」と内容が重複する部分が多いことから、「職業がん個人調査票」の平成18年度以降の作成・報告方法については、別途検討の上、通知します。

1 処理経過簿の作成方法

別添様式を電子ファイルとして労働基準行政情報システムにより各労災補償課長あて送付するので、局においてこれに各項目の内容を記入して作成し、さらにこれを労働基準行政情報システムの本省掲示板に掲示するものとする。

2 処理経過簿の初期作成

処理経過簿の初期作成は平成17年9月16日までに行うこと。その際、平成17年4月1日以降に請求がなされたものに加え、平成17年3月31日時点において、請求がなされているが決定がなされていない事案及び平成17年度において決定がなされた事案についても登記すること。

3 処理経過簿の更新

処理経過簿は、石綿労災事案について当該事案に係る最初の受付がなされた時点で登記し、記載事由が発生する都度更新すること。

4 調査復命書写の局での保管

石綿労災事案については、本省において個々の事案の内容の詳細を把握する必要が生じることも予想されることから、当分の間、決定がなされた場合には、調査復命書の写を所轄署から提出させ、局において整理・保管しておくこと。

なお、決定を行った事案について処理経過簿を更新するに当たっては、調査復命書の内容を十分確認すること。

5 記載に当たっての留意事項

(1) 「疾病名」欄については、次のコードに従い記載すること

肺がん:1 中皮腫:2

(2) 「業種」については、労災保険率表の事業の種類を記載すること。

(3) 「請求年月日」欄及び「決定年月日」欄は、それぞれの給付の種類毎に最初に請求がなされ
たものについて記載すること。

(4) 「(業務)上・外」欄については、次のコードに従い記載すること。

業務上:1 業務外:2

(5) 「業務外の理由」欄については、次のコードに従い記載すること。

労働者非該当:1 認定基準非該当:2 時効・その他:3

(6) 「医学的所見等」欄については、次のコードに従い記載すること。

石綿肺所見有り:1
胸膜プラーク所見有り:2
石綿小体・石綿繊維有り:3
医学的所見等無し:0

(7) 「作業従事期間」欄については、原処分庁で認定した被災労働者が従事した全ての石綿ばく露作業の合計期間を記載すること。

(8) 調査の結果、所轄が異なるため回送した場合には、「備考」欄に自署が回送元である旨と、回送
年月日、回送先の局署名を記載すること。また、回送を受けた側は当該石綿労災事案の処理経過簿を登記の上、各項目の内容を記入するとともに、「備考」欄に自署が回送先である旨と、回送を受けた年月日、回送元の局署名を記載すること。

(9) 「備考」欄には、上記(8)以外に以下の例を参考に特記すべき事項を記載すること。

例 1.他の事業におけるばく露歴を○○年から有する。

  2.当初じん肺で療養していたが、○○年から中皮腫で療養。

(10)記載に際しては、各監督署ごとに請求年月日順に掲示すること。

<PDF>石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿の作成について(事務連絡 平成17年9月7日)

事務連絡
平成18年5月19日

都道府県労働局労働基準部
労災補償課長殿

厚生労働省労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室長

特別遺族給付金に係る請求・認定状況の把握について

「石綿による健康被害の救済に関する法律」が制定され、同法に基づく特別遺族給付金に係る請求書の受付が本年3月20日から開始されたところである。ついては、当該給付金に係る請求及び認定状況を把握する必要があるため、当分の問、下記により、「特別遺族給付金に係る処理経過簿」(以下「処理経過簿」という。)を作成することとしたので、遺漏なきよう取り扱われたい。

1 処理経過簿の入力について

労働基準行政情報システムにおいて処理経過簿様式(別添)を各局労災補償課長あて送信するので、下記(1)及び(2)により、各項目を入力した上で、労働基準行政情報システムの本省掲示版に掲示されたい。

(1) 当月中に特別遺族給付金に係る請求書の受付、他の労働基準監督署(以下「署」という。)への請求書の回送、他の署から回送された請求書の受付、支給・不支給決定を行ったものについて、各局労災補償課において、管内の各署の状況を取りまとめた上で、翌月15日までに入力し、掲示するものとする。

なお、自局管内の署間における回送処理についても上記と同様に入力する。

また、平成18年3月から4月において、請求書の受付、回送処理、支給・不支給決定を行ったものについては、平成18年5月31日までに入力し、掲示するものとする。

(2) 報告の対象となる期間内(毎月1日~毎月末)において、支給・不支給決定が行われていないものについては、「局名」、「署名」、「労働者等氏名」、「生年月日」、「性別」、「請求種別」、「請求年月日」欄までを入力すること。その後、当該事案について支給・不支給決定を行った時点で、決定日の属する月分の報告において残りの欄を入力すること。

2 入力に当たっての留意事項

(1) 「局名」欄については、局コード(2桁の番号)を入力すること。

(2) 「署名」欄については、各署の名称を入力すること。

(3) 「労働者等氏名」欄については、姓と名の問に一文字分スペースを空けること。

(4) 「生年月日」、「請求年月日」、「死亡年月日」、「決定等年月日」、「ばく露開始年月」、「ばく露終了年月」欄については、和暦を使用すること。また、元号は大正は「T」、昭和は「S」、平成は「H」とすること(例昭和13年4月20日→S13.4.20)。

なお、取下げ又は回送済み事案についても、当該年月日を「決定等年月日」欄に入力すること。

(5) 「性別」、「請求種別」、「疾病名」、「医学的所見等」、「決定等の区分」、「ばく露作業の種類」及び業務外の場合の「理由」欄については、処理経過簿の各項目欄に記載されている所定のコードを参照し、番号のみを入力すること。

なお、業務外の場合の「理由」欄へのコード入力に当たっては、以下も参考にされたい。

  • 「労働者非該当」:労働者としての雇用の事実関係が確認されなかったものをいう。
  • 「ばく露作業歴なし」:認定基準に定める石綿ばく露作業への従事が確認されなかったものをいう。
  • 「ばく露作業歴の不足」:石綿ばく露作業に従事していたことが確認されたものの、認定基準において疾病ごとに定める石綿ばく露作業従事期間の要件を満たさなかったものをいう。
  • 「医学的所見なし」:診療録、エックス線写真、病理組織検査記録などの医学的資料により、石綿肺、胸膜プラーク、石綿小体、石綿繊維が確認されなかったものをいう。
  • 「医学的資料なし」:診療録、エックス線写真、病理組織検査記録などの医学的資料が残されていないものをいう。
  • 「対象疾病以外」:特別遺族給付金の対象となる疾病ではないものをいう。
  • 「その他」:戸籍謄本・抄本や死亡届書記載事項証明書等、省令で定める書類がないものなどが該当する。

(6) 「請求年月日」欄については、他の署から回送されてきた請求書である場合、回送された請求書を自署において受け付けた年月日ではなく、請求人から請求書の受付手続きを行った年月日を入力すること。

(7) 「業種番号」、「ばく露作業の種類」、「ばく露開始年月」及び「ばく露終了年月」欄については、業務上として決定した事案についてのみ入力すること。

また、「業種番号」欄については、業務上としての支給決定事務において使用した労災保険適用事業細目表の「事業の種類の番号」(2桁の番号)を入力すること。

「ばく露開始年月」は当該労働者の職歴上、初めて石綿ばく露作業に従事した年月をいうのであって、必ずしも最終ばく露事業場において初めて石綿ばく露作業に従事した年月と同じではないことに注意すること。

(8) 「備考」欄については、以下の要領にて入力すること。

  • 業務外の場合の「理由」が「7その他」に該当する場合、その理由を入力すること。
  • 調査の結果、所轄が異なるために請求書を回送した場合、回送年月日、回送先の局署名を入力すること(例「H18.4.20○○局○○署に回送済み」)。また、回送された請求書を受け付けた署は、処理経過簿の各項目に当該請求の内容を入力するとともに、回送された請求書を受け付けた年月日、回送元の局署名を入力すること(例「H18.4.25○○局○○署から回送受付」)。
  • 上記以外に特記すべき事項があれば入力すること。

<PDF>特別遺族給付金に係る請求・認定状況の把握について(事務連絡 平成18年5月19日)

事務連絡
平成18年8月7日

都道府県労働局労働基準部
労災補償課長殿

厚生労働省労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室長補佐

石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿(労災保険法分)について

標記処理経過簿については、平成17年9月7日付け補償課職業病認定対策室長名での事務連絡により、各局において作成され、更新が行われているところですが、今後の円滑な集計作業を目的として、別添様式に変更することといたします。

つきましては、本年7月末までの各局管内における、労災保険法に係る石綿による肺がん及び中皮腫の請求書の受付、他の労働基準監督署(以下「署」という。)への請求書の回送、他の署から回送された請求書の受付及び支給・不支給決定・取下げの状況ついて取りまとめた上で、従来から使用している様式に入力し、8月15日(火)までに労働基準行政情報システムの都道府県掲示板に掲載するようお願いいたします。

右期日までに各局により掲載された処理経過簿について、本省において別添様式にデータを移替える作業を行い、順次、移替えた後の様式(電子ファイル)を労働基準行政情報システム上の電子メールにより各局労災補償課長あて送付しますので、以後は送付を受けた様式を更新するようお願いいたします。

7月末までの分を入力後、本省より移替えた後の様式の送付を受けるまでは、各局における更新作業は一時停止してください。

なお、変更点は、従来から使用している様式の入力項目を一行に並べたことにあり、入力項目及び入力に当たっての留意事項については追加・変更が無いことを申し添えます。

記載に当たっての留意事項

(1) 「疾病名」欄については、次のコードに従い記載すること

肺がん:1 中皮腫:2 その他:3

(2) 「業種」については、労災保険率表の事業の種類を記載すること。

(3) 「請求年月日」欄及び「決定年月日」欄は、それぞれの給付の種類毎に最初に請求がなされたものについて記載すること。

数字と数字の間にスペースを入れたり、「・」を使用したりせず、エクセルにおける日付として入力すること。

(4) 「(業務)上・外」欄については、次のコードに従い記載すること。

業務上:1 業務外:2 取下:3 回送済み:4

(5) 「業務外の理由」欄については、次のコードに従い記載すること。

労働者非該当:1 認定基準非該当:2 時効・その他:3

(6) 「医学的所見等」欄については、次のコードに従い記載すること。

石綿肺所見有り:1
胸膜プラーク所見有り:2
石綿小体・石綿繊維有り:3
医学的所見等無し:4

(7) 「作業従事期間」欄については、原処分庁で認定した被災労働者が従事した全ての石綿ばく露作業の合計期間を記載すること。

(8) 調査の結果、所轄が異なるため回送した場合には、「備考」欄に、回送年月日、回送先の局署名を記載すること。

また、回送を受けた側は当該石綿労災事案の処理経過簿を登記の上、各項目の内容を記入するとともに、「備考」欄に、回送を受けた年月日、回送元の局署名を記載すること。

(9) 「備考」欄には、上記(8)以外に以下の例を参考に特記すべき事項を記載すること。

例1. 他の事業におけるばく露歴を○○年から有する。
 2.当初じん肺で療養していたが、○○年から中皮腫で療養。

<PDF>石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿(労災保険法分)について(事務連絡 平成18年8月7日)

労基署別決定状況からはじめた開示請求

以上の「処理経過簿」関連事務連絡の入手に行き着くまでには経過があったので、それについて述べる。

一連の開示請求によって、

  1. 2005年度、2006年度の労基署別、疾病別の補償・認定状況
  2. 2005年度、2006年度の決定事案(業務上外等)について「処理経過簿」(一部開示)
  3. 処理経過簿の作成、運用に関する事務連絡

を入手した。経過の概略は次のとおりである。

厚生労働省は2005年度以降の補償状況について、ホームページ上に発表している。
2005年度:石綿による肺がん及び中皮腫に係る労災請求・補償状況(平成17年度)について(2006(平成18)年5月30日)
2006年度:石綿による健康被害に係る給付の請求・決定状況について(平成18年度)(2007年5月25日)

ただ、年度間で内容が統一されていなかったり、不支給件数についての情報が示されていない部分が多いなど情報価値は低い。

そこでもっと詳しい認定状況を知るために、全国47都道府県労働局に対して、労基署別の労災補償状況について開示請求を行った。47通の開示請求を出すことにしたのは、厚労省の担当部署である職業病認定対策室に対して労基署別の数字を問い合わせても、「まとめていない」と言われることが、これまでのいろいろなやりとりの結果、あらかじめわかっていたからである。

手始めに労災認定件数が突出して多い兵庫局と大阪局に対し、2007年4月27日付で開示請求を行った。開示請求書の「請求する行政文書の名称等」には、

「○○労働局管内の過去の石綿による業務上疾病(肺がん、中皮腫、石綿肺、瀰漫性胸膜肥厚、良性石綿胸水)の労基署別、年度別、疾病別の請求件数、支給件数、不支給件数がわかる資料(労災保険法と石綿救済法によるもの)」

と記載した。

両局から同一日付(5月24日付)で開示決定通知書が届き、ほとんど同じ内容だが表の形式が違う開示文書を入手した。開示文書は

  1. 労災保険法について、2005年度、2006年度の、労基署別、疾患別請求件数、支給件数、不支給件数一覧表。
  2. 石綿新法について、平成18年度末締めの労基署別、疾患別請求件数、支給件数、不支給件数一覧表(ただし、兵庫局の請求件数は署合計件数、大阪局はすべて疾患別でない件数。)

の2種類だった。

2局の開示内容から、全国各局で同様のまとめ資料を作成していることが予測されたので、6月上旬に残り45局に同内容で開示請求を行い、順次開示された。ただし、2006年度だけで、2005年度分はなし、という局が少なからずあった。

ちなみに、当センターでは情報公開法施行を契機に労災認定情報の情報公開に取り組む中で、石綿による肺がんと中皮腫の労基署別の請求、支給、不支給件数について、1999年度から2003年度まで(2003年度は請求件数はなし)厚生労働省から情報提供されていたが、2004年度以降は提供されなくなっていた。

認定事案の一覧表

労基署別、年度別(2005年度、2006年度)、疾病別の労災補償状況の開示結果でわかったことは、

2005年度から年度ごと、各局ごとに補償状況の統一的な内容でのまとめが行われるようになっていた」ことである。クボタショック後の請求件数の増大などに対応して、一定の一貫した事案管理が行われるようになったことを推測させた。

そこで、2007年6月7日付で、兵庫、大阪局に対して、

「過去の石綿による業務上疾病(肺がん、中皮腫、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水)の認定事案について、当該事案についての労災保険適用事業場名、所轄労基署、認定疾病名等の一覧表ないしこれらがわかるような調査個票等の資料のすべて(労災保険法と石綿救済法によるもの)。局、管内労基署の保有するもの」

との内容で、開示請求を行った。6月下旬には、残り45局に対しても同じ請求を行った。

そして、先行して請求していた兵庫、大阪局から「開示決定期限の延期通知」が7月6日付で届いた後、7月下旬から8月上旬にかけて全47局の開示決定通知書が順次到着した。

開示されたのはいずれも、

「処理経過簿」から労災保険法と石綿新法の「認定事案」(業務上事案)を抜粋して、一部をマスキング(黒塗り=不開示)したもので、労災保険法については、2005年度分と2006年度分、石綿新法については、法施行の2006年3月27日から2006年度末までの分。局によっては年度によって分けて開示したところもあった。

2004年度分までの肺がん、中皮腫については労災認定事業場名が公表されているので(公表されていない部分が少なからず存在している。安全センター情報2007年12月号参照)、このとき開示された認定事案の処理経過簿は、2005年度以降の「開示されていない分について労災認定事業場名を記載したすべての認定事案のリスト」ということになる。

これを整理し、ばく露状況などを付け加えれば、2005年夏の労災認定事業場公表と同じことが容易に可能ということがこの時点で判明した。このときの開示資料例は次のようなものだった。

開示資料の例(認定事案のみ)労災保険法
開示資料の例(認定事案のみ)石綿健康被害救済法(=石綿新法)による特別遺族給付金

処理経過簿の存在判明と追加請求

過去の認定事案についての開示決定通知書の「1 開示する行政文書の名称」の記載は、47局
が同一ではなかったが、複数の局が「労災保険法:石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿」「特別遺族給付金に係る処理経過簿」と記載していた。

ここで「処理経過簿」というものの存在と名称を知ることになった。

前述した事案管理が、「処理経過簿」によって行われていることがほぼ明確になったわけである。
ところで、開示文書(開示資料例参照)をみると、「業務上外」についてコードが記載されるようになっており、実は処理経過簿は「すべての請求事案」についてのリストであって、筆者の開示請求が「認定事案」の開示を求めたものになっていたため、「すべての請求事案」からわざわざ認定事案だけを抜粋した資料が開示されたことがわかった。

そのため、業務外決定等を含め処理経過簿の全コピー(2005年度、2006年度決定分)を追加開示
請求し、その開示文書が8月下旬から9月にかけて到着した。

この間に、前述した処理経過簿関連事務連絡3本が8月下旬に到着しており、この時点で、ようやく全体像が把握できるようになった。

多い不開示部分

開示された処理経過簿のフォーマットは、労災保険法分は前述した事務連絡3.、石綿新法は事務連絡2.の様式によっている。

開示された項目は次のとおりで、他の項目は不開示とされた。

不開示理由は、「情報公開法第5条第1号の特定の個人を識別できる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」にあたるというものである。

【労災保険法:石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿】の開示情報

  • 局名(ただし、コード番号)
  • 労基署名
  • 性別(コード番号)
  • 疾病名(コード番号)
  • 業種(4桁または2桁コード、事業の種類等)
  • 業務上外(コード番号)
  • 備考(ただし、所轄署の変更、疾患名などの一部開示)

【石綿新法:特別遺族給付金に係る処理経過簿】の開示情報

  • 局名(コード番号)
  • 労基署名
  • 性別(コード番号)
  • 疾病名(コード番号)
  • 決定等の区分(コード番号)
  • 業種番号(2桁コード)
  • 備考(ただし、所轄署の変更などの一部開示)

「労働者氏名」が個人識別情報にあたるというのはそのとおりだが、「職種」(労災保険法)が開示されないのは理解できない。

「事業場名」、「ばく露作業の種類」(石綿新法)を明らかにすることが、「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある」とも言えないだろう。

いずれにせよ、個人を識別できないやり方で整理して、労災認定事業場に関する有意義な情報の公表をすることは十分可能と思われる。

なお、「ばく露作業の種類」(非開示項目:石綿新法の処理経過簿)に記入されるコードは、ある局への問い合わせによって、認定基準上の「石綿ばく露作業」の番号と記号のことであることがわかり、それは次のとおりである。

(1) 石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
(2) 倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
(3)次のアからオまでに掲げる石綿製品の製造工程における作業
ア 石綿糸、石綿布等の石綿紡織製品
イ 石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品
ウ ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品
エ 自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
オ 電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
(4) 石綿の吹付け作業
(5) 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
(6) 石綿製品の切断等の加工作業
(7) 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体
作業
(8) 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
(9) 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)等)等の取扱い作業
(10)上記(1)から(9)までに掲げるもののほか、これらの作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業
(11)上記(1)から(10)の作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける作業

業務上外等決定事案の全リスト

ここであらためて述べると、いわゆる「処理経過簿」は二つある。

ひとつは、労災保険にかかる「石綿による肺がん及び中皮腫の処理経過簿」(以下、労災経過簿)。肺がん、中皮腫及び石綿肺(管理4)などその他の疾患の通常の労災請求事案を登載するもの。

もうひとつは、いわゆる石綿新法による労災時効救済の部分である「特別遺族給付金に係る処理経過簿」(以下、新法経過簿)。両経過簿とも、請求時に登載された新規1件1行のリストで、業務上、業務外、取り下げ、他署への回送という転帰が記録される。したがって、回送事案を除けば、全請求事案のリストということになる。

今回入手したのは、2005年度、2006年度中に処分決定された全事案のリストで、業務上事案だけでなく、全ての業務外事案を含む。

労災認定事業場名など多くの項目は非開示とされたが、開示項目による一定の分析が可能となった。

4,511件の業務上外処分の概括

業務上外の処分事案を概括したものを表1、表2に示す。

厚生労働省ホームページの2005,2006年度労災補償・新法認定状況と今回の開示結果の集計数を比較すると、新法については変わりないが、労災保険法分については、わずかに食い違う局があった。

この数字の食い違いについて各局に問い合わせたところ、開示結果に間違いがあったものと厚労省ホームページの方に間違いのあったものの両方のケースがあった。ただ、全体からいえば無視できるものだったので、ここでは触れないことにする。本稿の記述は、「処理経過簿」の数字に基づく。

表1 「処理経過簿」制度別、疾患別の概括

表1から、中皮腫に比較して肺がんの認定率の低さが目立つ。とくに、新法の肺がんは業務外が業務上を上回っている。中皮腫についても、思いのほか業務外が多い。

肺がんでは、石綿関連所見の有無が重視され過ぎるなど認定基準が救済の壁となっていたり、石綿ばく露歴把握調査が尽くされず、安易に「ばく露歴なし」などとして、業務外決定している実態をうかがわせている。

表2 「処理経過簿」認定事案の性別、疾患別の概括

これまで男女別の数字は示されたことがなかったが、今回、初めてわかった。表2のように、圧倒的に男性が多いが、女性が、2年間で100名以上認定されていた。

処理経過簿の業務上外事案を都道府県別、疾患別に整理して、件数、認定率、肺がん:中皮腫比を算出したものが表3(労災経過簿),表4(新法経過簿)、表5(労災経過簿+新法経過簿)である。

表3 【労災保険法 処理経過簿】都道府県別・疾患別業務上外件数、認定率(上/(上+外))、肺がん:中皮腫比(2005、2006年度新規決定)

表4 【石綿新法 処理経過簿】都道府県別・疾患別業務上外件数、認定率(上/(上+外))、肺がん:中皮腫比(2006年3月27日法施行~2006年度末)

表5 表3と表4をあわせたもの【労災保険法+石綿新法】(労災保険法は2005、2006年度新規決定、石綿新法は2006年3月27日法施行~2006年度末)

業務上件数/(業務上件数+業務外件数)でみた2年間分の認定率が、都道府県でかなりばらつきがある。石綿による肺がんは中皮腫の約2倍といわれるが、肺がん:中皮腫比もばらつきが大きい。
認定実績のばらつきについては、認定基準の合理性の検討と合わせて検証することが必要と考えられる。

建設関連で爆発的被害へ

業種別集計は、表6(肺がん),表7(中皮腫),表8(肺がん+中皮腫)のようになる。

表6 「肺がん」業種別認定件数

表7 「中皮腫」業種別認定件数

表8 「肺がん+中皮腫」業種別認定件数

業種に応じてつけられている2桁と4桁のコードは、最終石綿曝露事業場の労災保険料を算定する際に適用されているその事業場についての「業種の種類の番号」(2桁)、「業種の種類の細目」(4桁)である。これらは、「労災保険率表」(労働保険料徴収法施行規則別表第一)、「労災保険率適用事業細目表」(表9)に掲載されている。

「事業細目表は、労災保険率表に掲げられた事業の種類の内容及び範囲を規定したものであり、いわば、労災保険における産業分類ともいうべきものである」(労災保険適用事業細目の解説 平成19年版)。業種については、労災経過簿では「業種」欄、新法経過簿では「業種番号」欄に記載することになっていて、基本的に、事業の種類やそれに対応する事業の種類の番号が記入される。

局によって、事業の種類の細目やそれに対応する4桁コードを記入しているところがあった。本来は、そのように4桁コードを記入する方が意味のある、適切な記入方法である。

肺がんと中皮腫について、労災と新法の全体の認定件数で見ると(表8)、建設関連で1,387件(41.2%)を占め、以下、「59 船舶製造又は修理業」444件(13.2%)、「49 その他の窯業又は土石製品製造業」258件(7.7%)、「58 輸送用機械器具製造業」193件(5.7%)、「94 その他の各種事業」175件(5.2%)、「56 機械器具製造業」144件(4.3%)、「47 化学工業」115件(3.4%)と続く。

表9 労災保険率適用事業細目表

建設関連で被害が爆発的に拡大している様相を呈している。

今回の処理経過簿の認定件数と2005年の事業場名公表対象事業場(2004年度以前に労災認定のあった事業場のうち、厚労省の判断で公表対象とされたもの。したがって、すべてが公表されたわけではない。)について、厚労省が業種別に分類した認定件数を比較したのが表10である。

2004年度以前にはまったく認定事案のなかった、あるいは、ほとんどなかった業種で認定事案が発生していることや、造船など大幅に認定件数が積み増しになった業種があることがわかる。

表10 2005年8月厚労省公表対象事業場業種別認定件数と「処理経過簿」業種別認定件数との対比(肺がん+中皮腫)

クボタショック後に、少なくとも、新たに、520事業場で労災認定

クボタショック後に大量の認定が多様な職場で行われた状況がより具体的な形で認識できるようになった。さらに、新たに労災認定のあった事業場に関する情報を得るために、建設関連以外の業種について、今回の処理経過簿の業務上事案データを労基署別・業種別に整理、集計し、これを、2005年に公表された事業場のデータと対比して一覧表にしたのが表11である。

2005年開示では肺がん・中皮腫の認定のあった事業場が公表されているのに対して、表11では肺がん・中皮腫の他に石綿肺など他の対象疾患のデータが含まれている。

さて、表11の整理をベースとして、肺がん・中皮腫だけについて各労基署ごとに「認定事案のあった業種数」(a)と「2005年開示のあった事業場数」(b)の差(c)を計算した。

(c)は「その労基署管内で新たに労災認定事案のあった事業場数の最低限の推定値」とみなせる。ただし、今回の処理経過簿の認定件数が特定の業種に集中していて((a)が少なくなる)、かつ、2005年の開示事業場数(b)が多かった労基署の場合は、結果的に(c)がマイナスになることがあり、その場合は(c)をゼロとみなす。たとえば、2005年公表時に造船関係に集中する形で11事業場が公表された横須賀労基署などがこれに該当する。

その結果、
(a)の全労基署の合計数(A): 726
(c)の全労基署の合計数(C): 522
となった。

したがって、2005、2006年度に肺がん・中皮腫の労災認定・新法認定のあった建設関連以外の事業場は、少なくとも726あり、そのうち少なくとも522は新たに認定事案のあった事業場ということになる。作業を簡略にする試算方法をとったため明かな過小評価になっているが、それでもなお「522」なのである。

こうしてクボタショック後の新規労災認定事業場数が500を大きく超えていることが示された。「労災認定事業場の公表を!」という私たちの主張の正しいことがデータで裏付けられたのである。

以上の検討は、建設関連における1,387件(肺がん、中皮腫)の認定事案を除いたものだが、建設関連における労災認定事業場名の公表は、特に、元同僚労働者と家族、関係者への注意を喚起する効果がある。建設業での被害が爆発的に広がる中で、ばく露情報とともに事業場名を明らかにする意義は建設関連を含めて、大きい。

表11 今回部分開示された「処理経過簿」署別業種別認定件数と2005年事業場名公表との対比

200801joshrc_table11

(続く)

安全センター情報2008年1・2月号 総特集/石綿被害と情報公開<PDF> 一部修正

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