クボタショック-アスベストショックの記録~弾けた時限爆弾アスベスト<4>国の対応、石綿対策全国連など緊急要請

古谷杉郎(全国労働安全衛生センター連絡会議/石綿対策全国連絡会議・事務局長)

国の腰も重かった

話をクボタ・ショック当時まで戻して、国の対応をみておきたい。

今ふりかえってみても各省庁は当初はおおごとだととらえてはいなかったように思われる。

7月1日だけで30件以上の深刻な健康被害の相談を受け付けた関西労働者安全センターや、市民からの相談に対応するためのQ&Aマニュアル作成に着手し、個人的に支援を希望される方に連絡先を教えてよいかと同センターに問い合わせてきた尼崎保健所、電話の鳴りやまなかった中皮腫・じん肺・アスベストセンター等の認識との間には隔世の感があったと言ってよい。

内閣官房が音頭をとって7月1日に課長レベルによるアスベスト問題に関する関係省庁会議(当初は、厚生労働省、環境省、経済産業省、国土交通省がメンバーと伝えられた)を発足させたものの、いずこの省庁も腰が重く、縦割り行政を突破するどころか、調査や相談、既存の法令や指導内容の周知徹底を超えるようなイニシアティブも出てこなかったと漏れ聞いている。しかしやがて、7月21日になって局長レベルに格上げされ、7月29日には最初の関係閣僚会合が開催されるという激流になっていく。

7月7日の定例記者会見で戸苅利和厚生労働事務次官は、先にふれた「過去に石綿による健康被害が発生している事業場に対(する)…全国的な立ち入り調査」及びその際「過去に石綿を製造したり石綿を取り扱う業務に従事していた退職者の方も含めて健康診断を行っていただくように事業主に要請をしたい」と発言。労働法が適用されない労働者の「家族の方の健康ということになると一義的には従業員を雇っておられる、あるいは雇っておられた事業所で検討いただく、労使で話し合って検討いただくということからスタートするのかなと思います」。厚生労働省としてできるのは、相談に応じることくらいだろう、という姿勢だった。

翌8日の尾辻秀久厚生労働大臣が閣議後の記者会見で、「石綿による健康被害への対応について」という以下のメモを用意して、「7項目にわたって事務方に対し て今日中に取りまとめて早速来週からでも取組を始めるように指示を致しました。とりまとまりましたら、今日の午後にでも発表をさせていただきます」とした。厚生労働省は同日午後、「石綿による健康被害への対応について」を発表、合わせて「来年、専門家会議を開いて、2008年までに全面禁止」を実施する方針を明らかにした。これが、「厚生労働省が緊急対策」と報じられた。

石綿による健康被害への対応について(厚生労働省)

石綿による健康被害の実態が企業から公表されているが、今般の石綿被害の報道等を受け、厚生労働省では、これまで行ってきた措置に加え、次のような措置を講じることとしている。

  1. 事業場への対応
    ① 現在石綿作業を行っている事業場への対応

    7月1日から施行された「石綿障害予防規則」等の遵守の徹底を図るとともに、関係業界の協力を得ながら代替化を促進し、早急に石綿製品の製造等の全面禁止を図る。
    ② 現在石綿作業を行っていないが、これまでに石綿による健康被害が発生している事業場への対応
    立ち入り等を行い、石綿作業に従事していた労働者に対するばく露防止対策の状況等について確認を行う。
    ③ 退職労働者への対応
    事業者に対して、既に退職した労働者に対しても健康診断を実施するよう要請する。
  2. 事業場が廃止されている場合の対応
    過去に石綿作業に従事していた労働者で勤務していた事業場が廃止されている場合については、健康診断の受診を呼びかけ、健康管理手帳制度及び労災補償制度の周知を、ホームページ等を活用し行う。
  3. 相談窓口の設置
    石綿による健康影響について不安を感じている労働者や地域住民等に対しては、産業保健推進センター、労災病院、保健所において相談窓口をも受けるとともに、石綿作業を行っている事業者に対し、中央労働災害防止協会や建設業労働災害防止協会において、健康障害防止対策などについて技術的な相談に対応していく。
  4. 調査研究
    我が国における中皮腫の原因、治療方法及び将来予測について調査研究を開始する。
  5. 労災補償の迅速な実施
    石綿の労災補償については、平成15年9月に改正した労災認定基準に基づき、迅速・適正に労災認定を行う。
  6. 建築物解体作業等への対策
    今後石綿を使用した建築物の立替えなどによる解体作業の急増が予想されるため、建築物の解体等の作業における石綿飛散防止等の対策の強化を主な目的とした「石綿障害予防規則」(7月1日から施行)の周知徹底を図り、解体作業におけるばく露防止について万全を期していく。
  7. 関係省庁との連携
    「アスベスト問題に関する関係省庁会議」等の検討結果等を踏まえ、関係省庁とも連携を図りながら、石綿代替品の開発を促進し、早期の石綿製品の全面禁止に向けて取り組んでいく。

石綿による健康被害への対応について(2005年7月8日 厚生労働省)

はっきり言って、いずれの文書にも明記はされていない「2008年までに全面禁止」という「口約束」以外は、新たな施策と言えるようなものは見当たらなかった。この状態が実に何か月も続くことになるのである。

調査、相談、既存対策の徹底

課長級の関係省庁会議は7月8日に第3回会合を開き、この結果を受けて7月11日に、「対応が正式に合意された」(7月12日の小池百合子環境大臣記者会見)。この文書は環境省のホームページにしか掲載されていないようで、経済産業省事務次官は7月11日の記者会見で、会議の結果がまとまるのはいつ頃と聞かれて、「7月の中旬ぐらいを目途」にしていると答えている。認識も足並みも揃っていない感じであるが、環境省ホームページに掲載されたものは、下記のとおりである。

石綿(アスベスト)問題への対応
2020年7月11日アスベスト問題に関する関係省庁会議

石綿(アスベスト)問題については、当面の対応として、「アスベスト問題に関する関係省庁会議」を設け、各省連携・協力して、①実態調査・報告を通じて情報の共有、②健康相談窓口の開設、③大気汚染防止法、労働安全衛生法などに基づく規制的措置や労災補償等の既存の対策の徹底についての点検等、下記の対策を一斉に進めている。

今後、関係省庁、地方公共団体等が、更に密接に連携・協力して適切な対応を図っていくこととしている。

  1. 石綿被害に関する実態把握(厚生労働省、経済産業省等)
    石綿関連事業場における健康障害防止対策の状況、被害状況について、事業場への立入調査、業界団体を通じた調査等を実施する。
  2. 石綿関連事業場労働者、退職者、その家族及び住民を対象とした健康相談窓口の開設(厚生労働省、環境省等)
    石綿関連事業場で働いていた人、その家族及び周辺住民の健康不安に対応するため、保健所、産業保健推進センター、労災病院等に健康相談窓口を開設するとともに、情報収集を行う。
  3. 石綿関連事業場労働者、退職者への健康診断の呼びかけ、労災補償制度及び健康管理手帳制度の一層の周知徹底(厚生労働省)
    石綿関連事業場で働いていた人に健康診断の受診を広く呼びかけるとともに、石綿による疾病に関する「労災補償」及び「健康管理手帳」の周知徹底を図る。
  4. 建築物の解体時の飛散予防等の徹底(環境省、厚生労働省、国土交通省等)
    大気汚染防止法、労働安全衛生法、廃棄物処理法等の関係法令の遵守の指導徹底を図る。
  5. 石綿含有製品の代替化の促進(厚生労働省、経済産業省等)
    関係業界団体に対し、代替困難として例外的に残されている石綿含有製品(ジョイント・シート等)の代替推進を改めて要請する。

石綿(アスベスト)問題への対応(平成17年7月11日 アスベスト問題に関する関係省庁会議)

これが一部では、「政府は12日、アスベスト(石綿)による健康被害の広がりに対応するため、アスベスト被害の実態把握や相談窓口の設置など5項 目を柱とする総合対策をまとめ、関係省庁や自治体に通知した」と報じられた。

環境省は12日に、都道府県知事・保健所設置市長・特別区長宛てに環境保健部長名の環保企第050712001号「石綿(アスベスト)に係る健康相談の受付等について(依頼)」、都道府県知事・政令市市長宛て環境省環境管理局長名の環管大発第050712001号「石綿(アスベスト)の大気環境中への飛散防止対策の徹底について(通知)」及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長名の環廃産発第050712001号「廃石綿等の適正処理の徹底について(通知)」を発出している。

国土交通省は14日、「国土交通省における石綿(アスベスト)問題への対応について」、①関係法令遵守の指導、健康管理制度の周知、②実態調査(吹き付け石綿の建築物における使用実態、輸送機関における使用実態等、記述のとおり石綿の使用に伴う健康被害についても)という、「当面の対応」を発表した。

15日に環境省(環境保健部企画課)は、都道府県・保健所設置市・特別区の地域保健主管部局宛てに「石綿(アスベスト)についてQ&A」を送付。同日閣議後の記者会見で小池環境大臣は、「一般環境経由のアスベスト被害についての専門家委員会」を立ちあげること、「役所間の連絡会議ができたところだが、環境省内でも、管理局、保健部、廃棄物・リサイクル対策部が関係してくるので、ここも臨機応変に関係部局が協力して対応できるようにしていくため、課長、室長をメンバーとする『アスベスト問題に関する環境省内連絡会議』を設けることとした」ことなどを明らかにした。

同日、経済産業省が、石綿製品製造企業、国土交通省が大手造船企業の、「アスベストによる健康被害の実態調査の結果」を公表したことは既述のとおりである。

厚生労働省も同日、都道府県労働局長宛ての基発第0715001号「石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について」通達した。

7月19日に経済産業省と厚生労働省は、アスベストを使用している18業界団体を週内にも集め、早期に使用をやめて代替品に切り替えるよう要請する方針を明らかにしたと報じられた。これは21日午前中に石綿関係業界20団体を集めた「石綿の代替化に関する緊急会議」として開催された。会議冒頭(行政からの挨拶)のみの報道許可で非公開だったが、先に表明された「2008年までに全面禁止をできるだけ前倒しして」と要請し、代替品への切り替えを促進させるための専門家会議を発足させる方針も示されたようである。

国の責任、認識不一致

この間、7月11日の記者会見で細田博之官房長官が、「より早く禁止措置がとられれば、よかったと思う。これまでの蓄積がたくさんあり、一種の『蓄積公害』みたいなものだ」と述べた。

しかし翌12日に、尾辻厚生労働大臣は閣議後記者会見で、「我が国だけが特に対応が遅れてきたものではないと基本的に理解している」と反論?

19日の閣議後記者会見で中川昭一経済産業大臣は、国際的に危険性が指摘されてから国内での規制が行われるまでの間にタイムラグがあったのではないかという指摘に対して、「いまとなっては、そういうご指摘に反論することはできないと思う。ただ、その時点ではでそれなりにきちんと対応をしてきたので、過失あるいは違法性ががあったかと言われれば、それはその時点ではそういう決定にやむを得ないものがあったと思う」と発言。

翌20日の衆議院厚生労働委員会のアスベスト問題集中審議において、社民党の阿部知子議員が、旧労働省が1976年に出した通達でイギリスの論文を引用するなどして、アスベストを扱う工場で働く労働者の家族や周辺住民にも健康被害が及ぶ危険性を指摘していたことを示し、「行政の不作為を反省すべきではないか」と質問。

西博義厚生労働副大臣は、「この事実は今の指摘で初めて知った」としたうえで、「事実をわかりながら、後々のフォローができていなかったということは、これは今では取り返しのつかない問題ですけれども、これは、決定的な私どもの省庁の失敗だったのではないかなというふうに私自身は個人的には考えている」と答弁した。

西副大臣は、翌21日午前中の記者会見でも、「もっときちっと対応できればよかった。これまでの体制について反省すべき点は多い」と語った。

同じ21日午後の定例記者会見で戸苅厚生労働事務次官は、以下のように話している。

「この通達について関係方面には随分説明に歩いた、周知も大分努めたということのようであります。ただ正直言って、…事業場外の問題については、各省間の連絡・連携といったことがどういったことだったのかという思いで副大臣が昨日のような答弁をされたということかなと思っています。」

「厚生労働省あるいは労働省としては、…その時々の工場の設備の現状、企業としての対応可能性といったものも十分勘案して必要な対策は採ってきたと思っています。それからここはちょっとまだもう少し確認しないといかんと思いますけれども、そういう対策・規制は着実に強化していたわけで、規制を強化するに際して関係者の方に理解・協力を求めるという過程では、当然その段階で石綿による健康被害についての科学的な治験といったものもきちんと説明しながらやってきたんだろうと思っているわけで、そういった意味では失敗ということでないんじゃないかと思います。ただ先ほど申し上げましたけれども、家族の方、工場の周辺住民の方に中皮腫等の石綿による健康被害というのが起きているということが現実としてあるわけですから、それがいったい何故起きたのかということになると、関係省庁間あるいは企業、いろんな関係者の方々の間の連絡・連携に何か問題があったのかどうかというあたりもよく見極めなくてはいかんということは事実としてあると思っています。」

同じ21日午前の記者会見で細田官房長官は、「今となってみれば、もっときちんと対応できればよかったと思う。反省すべき点が多い」と認める発言を行っている。

しかし午後に厚生労働事務次官が「必要な対策は採ってきた」と異なる見解を示したため、21日午後、細田官房長官があらためて、きちんと(見解を)統一して、7月中に政府全体の当面の対策と政府の過去の対応等をまとめて公表するという考えを示すこととなったようである。細田官房長官は、「規制の着手、手順、時期などについて再検証しないといけない。(政府の対応が)被害者が出ていることの原因であるのか、ないのかも含めてきちんと分析し、対応したい」、行政の責任が確認された場合は、被害者への補償についても「当然、検討の対象に含まれると思っている」等と述べた。

ちょうどこの日は、それまでに6回行われた課長レベルのアスベスト問題に関する関係省庁会議が局長レベルに格上げされて開催され、国土交通省による造船業における健康被害等状況調査の結果が公表された日でもあった。

各省内にも対策チーム

翌22日、厚生労働省は、西副大臣を委員長として、①過去の検証、②健康相談の実施、③健康障害の予防・治療、④労災保険給付の迅速かつ適正な実施、⑤関係省庁との連絡調整を任務とした、アスベスト対策推進チーム設置した。

尾辻厚生労働大臣は、「その都度厚生労働省としては対策を採ってきたと考えている」、「西副大臣の発言というのは、各省庁間の連絡というところについて不十分だったということを、今お話のような表現で発言さ
れたと理解している」などと発言した。

環境省も同日、炭谷茂事務次官をヘッドとし、保健部、管理局、廃棄物リサイクル対策部で構成するアスベスト対策班を設置、26日に公衆衛生、産業医学、臨床などの専門家による検討会を開催することを明らかにした。小池環境大臣は、「当時の環境庁として成すべきことを重ねてやってきたということではないかなと認識している。いずれにしても、当時何が話し合われて、何を知って、何をその後で対応をしてきたかというのを時系列でまとめているところ」と発言している。

経済産業省も同じく22日、アスベスト問題について情報を共有するとともに、関係業界における代替化の推進等を図るため、省内31課室で構成する「アスベスト問題に関する省内連絡会議」を設置している。

環境省は25日、1995年で打ち切っていた大気環境中のアスベスト濃度の測定を全国で再開する方針を決めた。

翌26日の閣議後記者会見で小池大臣は、①これを「現状の不安解消のため」と説明しながら200~300地点測定すること、②大気汚染防止法による規制対象工場(特定粉じん発生施設届出工場・事業場)の名称・所在地を都道府県からデータを集計して公表、③建築物の解体・補修作業規制の規模要件―延べ(床)面積500㎡の撤廃を検討(政令改正)することを明らかにした。

この26日の閣議で、29日に内閣官房長官を中心に総務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣でアスベスト問題に関する関係閣僚会合を開催、当面の対応や被害の実態把握等を取りまとめるということが報告された。課長級から始まった関係省庁会議は1か月のうちに、局長級に格上げされてから10日もたたないうちに、関係閣僚会合にグレードアップしたわけである。

厚生労働省(労働基準局安全衛生部)は26日、都道府県労働局長、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長、経済産業省製造産業局次長宛てに「石綿を含有する建材の在庫品の販売・使用等の停止」について通達、27日には「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」、28日には「石綿ばく露防止対策の推進について」、各々都道府県労働局長宛てに通達している。

緊急の要望・提案

アスベストによる健康被害の広がりが明かされるのと並行して、マスコミや国会で、企業や国の過去の対応、その責任や不作為等が問題にされるなかで、閣僚間、閣僚と官僚の間の見解の不一致が露見。政府としての見解の統一が求められるなかで、早急(7月中)に過去の検証と対策を示す必要性に迫られてきたと整理することができるだろう。

こうした動きには、危機感すら感じた。何より全面禁止の口約束以外は、調査や相談、周知徹底や迅速化の指導等だけで、何ら新たな対策は示されていないこと。短期間の内に過去の検証や総合対策などまとめられようはずもなく、拙速の小手先の対応で済まされたら、それこそ大騒ぎしただけで何ら新たな法令対応が行われなかった1987年の学校パニックの二の舞になるという思いである。

実際、工場周辺住民や労働者家族の被害など、補償制度のない被害者の救済の必要性は誰もが認めながら、既存の公害健康被害補償法を適用できるかどうかといった議論しか行われていない。検討の可能性について何か月も検討して、結果的に駄目でしたと終わられたりしたらどうしようもない。補償制度を確立するという政治決断がまず必要なのであって、既存の制度が使えるかどうか、どの役所が担当するか等の検討は二の次でよい。

また、マスコミ報道によってアスベストが原因と気づいたときにはすでに消滅時効(遺族補償5年、療養・休業補償2年)が成立してしまっていて労災補償給付の請求ができないという事例が、クボタ・ショックからちょうど1か月の7月29日の時点で、関西、東京、神奈川の関係団体に寄せられた相談だけで82件にものぼるという状況になっていた。

時効の問題は関西労働者安全センターによる記者発表(7月14日)などによって一定浸透したものの、解決へのイニシアティブは出てきていなかった。

国が始めた労働基準監督署や保健所の相談窓口等で、これらの事案がどのように扱われているか? 「補償制度はないから」、「時効で請求できないから」、とあきらめさせ、連絡先すら記録にとどめられていないのではという危惧もつのった(厚生労働本省の補償課では、所轄の労働基準監督署に連絡して記録に残しておくようにと対応しているとのことではあった)。

何より患者・家族やこの間アスベスト問題に取り組んできた関係者の声を聞くことも、参加することもなしに、過去の検証も対策の確立することはできないということを忘れてはならない。

7月15日、中皮腫・アスベスト疾患患者と家族の会と中皮腫・じん肺・アスベストセンターは東京・亀戸
事務所で記者会見を開き、各々以下のような、「国と石綿関連企業に対する要望」、「10項目対策の提案」を発表した。記者会見の場での、患者や家族自身の発言は大きく報道され、感銘を与えた。

国と石綿関連企業に対する要望/中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

今般のクボタを筆頭として多くの石綿関連企業において、永年にわたり多くの中皮腫等の患者と犠牲者がでていたとの報道は、ようやく事実が公表されたことを評価するとともに、中皮腫・石綿肺がん・良性石綿胸水などに苦しまされている患者と家族の会として、新たな第一歩が始まったと考えます。

労働災害としての補償を被災者本人が諦めることがないよう、そして環境や家族曝露の方たちが救済される制度の整備に向けて、私たちはこれからも諸団体と協力して、歩んでまいります。

すべての被災者とご家族に謹んで哀悼の意を表します。

  1. 小泉首相、環境大臣、厚生労働大臣は、是非、中皮腫や石綿肺がんの、患者や家族と直接お会いくださり、その声を聞いていただく場をつくって下さい。
  2. 国と石綿関連企業は、石綿に関する情報を公開して下さい。
    この間の石綿関連疾患の公表の流れを更に徹底させ、関連する下請会社や工場を含めた石綿関連疾患の情報を、是非公表してください。石綿製造業だけでなく、全石綿関連企業は当然ですが、最も多くの情報をご存じの国が所有している石綿関連の情報開示が必要です。
  3. 国は、石綿関連疾患の診断と治療に、全力をあげて取り組んで下さい。
    悪性中皮腫や石綿肺がんに関する診断と治療の進歩が、切実に望まれています。ベメトレキセド(アリムタ)の治験が始まったばかりですが、治験の期間の短縮を図り一日でも早い承認を望みます。また診断と治療を促進する研究体制づくりを早急に行って下さい。労災の認定にあたっては、職業での曝露歴
    と中皮腫の診断があれば、認定を速やかにおこなうよう是非お願い致します。
    各方面の努力にかかわらず大変残念なことですが、悪性中皮腫患者の予後を画期的に改善する治療法が、現在は少ないのが実情です。患者さんと家族にとって、外来入院含めたケアの体制に関する研究が重要な時期が続きます。
    当事者団体・NPOを含めた、ケアに関する研究班を是非設置して下さい。
  4. 環境曝露と家族曝露の方の調査を行い、救済する制度を作って下さい。
    環境曝露や家族曝露は、国が調査を十分してこなかった課題です。早急に調査を行い、石綿関連疾患を公害の一つとして認定し、医療費や休業補償や遺族補償の制度をつくって下さい。
  5. 報道で、事実関係を知った日からの時効として下さい。
    今回の報道で、アスベストと中皮腫の関係、補償制度を初めてて知った方からの相談が寄せられています。永眠から労災保険では5年間、法律上10年間とされていますが、事実を知った日からの時効とした運用で、是非多くの方を救済して下さい。
左から患者と家族の会・中村實寛さん、斉藤文利さん、古川和子さん、アスベストセンター・名取雄司代表、永倉冬史事務局長

石綿に関する10項目対策の提案/中皮腫・じん肺・アスベストセンター

石綿製造業と周辺住民に発生した悪性中皮腫等の石綿関連疾患に関して、この間多くの報道が行われています。日本でも石綿製造業の石綿肺は戦前から知られ、悪性中皮腫・石綿関連肺がんの発生は1970年代には知られていました。そうした事実は今までは、関係した被災者、NPO、行政機関、企業、労働組合、医療関係者、報道機関のそれぞれ一部にとどまり、今回ほど広く報道していただいたことはありませんでした。欧米から遅れること数十年で石綿のリスク認識にいたったことは大変残念ですが、石綿障害予防規則が施行された2005年7月に、日本の多くの人が中皮腫という言葉を知り、真剣に今後の対策を考えるにいたったことは評価できる事態と考えています。

しかしながら現状の報道では、被害の報道が相次いで、今後の日本の石綿対策に対する、建設的な報道が少ないように思われます。私たちは、石綿の全面禁止、石綿関連疾患の健康対策の充実、石綿障害予防規則の遵守と更に残る問題点、石綿の廃棄物対策の充実、大気汚染防止法の石綿の敷地境界10F/Lの現在における妥当性、地震の際の石綿対策等、様々な石綿対策の必要性を感じております。今回は緊急に重要と考える以下の10項目に絞り、緊急の提案をさせていただきます。

(1) 石綿情報の保有者による情報の提供

① 石綿製造業の情報開示

この間の石綿関連疾患の公表の流れを更に徹底させ、関連する下請会社や工場を含めた石綿関連疾患の情報を、是非公表していただきたい。また、現在まで製造された石綿含有製品と代替製品に関して、写真と製造年代及び市場への流通年代を含めた情報を開示していただきたい。特に過去の石綿吹き付け業に従事した会社は、今後の環境への吹き付け石綿の飛散防止のために、貴社が保有している石綿吹き付け建築物台帳を、一定の形で公表されたい。
「関連する下請企業の数十人単位の被害が報告されていない。」等の情報が、寄せられています。情報を正確に伝えている企業に準じて、今後の情報開示を行って下さい。
また、多くのユーザー企業や最終消費者にとっては、石綿含有製品及び代替製品の写真と年代情報が、過去の石綿曝露の不安を取り除くためにも、今後の飛散防止に役立てるためにも有用です。
石綿製造業及び石綿協会は、是非保有している石綿商品の情報を提供されたい。
その他の石綿関連企業も、今後石綿製造業に準じた情報の開示を行っていただきたい。

② 厚労省による石綿被害の事業場情報付き全面開示とHP掲載及び年次更新を、求めます

厚生労働省本省には統計情報しかないとは思いますが、各労基署には、事業場名、疾病名、給付種別など個別情報が保管されています。
石綿製造企業以上の情報を保有しているのは、厚生労働省なのです。厚生労働省は、認定年、企業名、疾病名に緊急に整理して、全面開示をするべきです。そのことで、多くの職種や地域の方が、石綿の被害の実態を知り、今後注意をすることが可能です。
また厚生労働書は特定化学物質等障害防止規則の関連で、1970年代から1,000社を越す石綿製造業に関して、当該監督署による検査や指導を行ってきています。企業、事業所、名称、所在地、使用石綿の種類、量、時期、当該企業の石綿濃度、特定化学物質に関する健康診断結果等に関して、多くの周辺住民がわかるように整備して公表していただきたい。

③ その他の国、自治体行政の情報開示

経済産業省窯業建材課は、石綿関連企業の商品とその代替化等に関して、経年的な調査を行ってきました。その情報を多くの国民が利用できる形で、公表していただきたい。
環境省は大気汚染防止法に基づく過去の情報を保有しています。公表が必要です。
文部科学省は、過去の学校等における吹き付け石綿の情報を、保有しています。
各自治体の建築部局は過去の公共建築物の吹き付け石綿及び石綿含有建材の情報を、保有しています。それらの情報を、周囲に滞在した人が使用できるように公表していただきたい。

(2) 国は過去に永眠、現在発症している悪性中皮腫・石綿関連肺がんの方への対策を、早急に行っていただきたい。

石綿関連疾患の診断基準として最も有名なヘルシンキ・クライテリアによると、悪性中皮腫の80%が職業性石綿曝露によるとされています。
欧米ではがん登録制度の一つとして中皮腫登録制度をもつ国もあり、労災認定を受ける比率も高いとされています。またその他の20%の中には、石綿の環境曝露や家族曝露が一定の比率で含まれているわけですが、日本では報告が散見されているにすぎません。現在まで複数の団体が、悪性中皮腫の全数調査の実施を要望したのにもかかわらず国は実施せず、家族曝露を報告した臨床医師に対する調査すら実施していません。

④ 国は、早急に中皮腫登録制度を導入し、過去の中皮腫の全数調査の実施を行っていただきたい。

他の国は、がん登録制度の一つとして中皮腫登録制度を導入し、職業や環境曝露や家族曝露の診断に成果をあげています。国は中皮腫登録制度を実施すべきです。また、死亡診断書の提出されている、過去の悪性中皮腫の全数調査を早急に行う調査研究班を設置すべきです。この調査結果で、今後の日本の石綿対策が進展することになるでしょう。

⑤ 労災補償制度で補償される人に向けた対策

呼吸器内科医や胸部外科医は主に治療に専念し、職業性疾患に詳しい医師に並行して受診し、NPOの援助を受けて労災認定にいたることが実際的な場合が多いと思われます。2003年の労災認定者の恐らく3分の1は、民間の医師やNPOの援助を受けた例だと思います。労災病院に限定せず、広く民間の医師やNPOの情報も周知することが現実的です。現在不安を感じている方への対策も同様です。

⑥ 環境曝露や家族曝露の方への対策

環境曝露や家族曝露の方は、既存の医療保障や休業補償や遺族補償の体系では、救済されない状態になっています。国は環境曝露と家族曝露の実態の調査研究を行うと共に、関連する患者が救済されるような補償体制づくりを検討していただきたい。

⑦ 診断と治療に関する対策

悪性中皮腫や石綿肺がんに関する診断と治療の進歩が、切実に望まれています。診断と治療を促進する研究体制づくりを早急に行って下さい。
その一方、各方面の努力にかかわらず大変残念なことですが、数年以内に悪性中皮腫患者の予後を画期的に改善する診断と治療法の国際的な開発は難しい可能性も多いと思われます。患者さんと家族にとっては、外来入院含めたケアの体制に関する研究が重要な時期が続きます。当事者団体・NPOを含めた、ケアに関する研究班を是非設置していただきたい。

⑧ 退職後の健康管理体制の確立 石綿健康管理手帳の改善

職場で石綿退職後の健康管理として、石綿健康管理手帳制度が既に設けられています。
しかしながら、手帳の支給要件が、石綿肺の存在、胸膜肥厚斑の存在と狭めているため、石綿吸入者の多くが支給されていません。また厚生労働省が認可した都道府県内2か所程度の医療機関しか認められない制度となっています。

1) 職業性石綿曝露が数か月以上の全員に退職後の石綿健康管理手帳を支給すること
2) 石綿健康管理手帳で健診の受けられる医療機関を届け出制とすること
3) 職業性曝露に伴う家族曝露者に健康管理手帳制度の対象に拡充

(3) 現在、石綿の飛散が予想される方への緊急対策

⑨ 吹き付け石綿の部屋で暮らす人への緊急対策

国、行政、建築物保有者は、天井や壁に、吹き付け石綿、吹き付け岩綿(石綿含有)のある施設や部屋で、長時間過ごさざるをえない方への対策を、早急に実施していただきたい。
封じ込めも、囲い込みもない、吹き付け石綿の下で、暮らし働く方からの悲痛な相談も増加しています。早急な除去対策が必要であり、零細の民間の建物保有者の場合には、新しく補助制度を導入した吹き付け石綿対策が必要と考えます。

⑩ その他の石綿吹き付け、石綿含有建材の対策

飛散が懸念される場合は、石綿障害予防規則の周知を、当面より一層行っていただきたい。
住民が飛散を懸念した際の、相談先を明示していただきたい。

石綿対策全国連絡会議の総合対策提言

左から斎藤竜太労住医連議長、筆者、冨山洋子日消連代表運営委員、天明佳臣全国安全センター議長、佐藤正明全建総連書記長、山口茂記自治労労働局長、永倉冬史事務局次長

さらに7月26日、石綿対策全国連絡会議として、自治労会館で記者会見を開き、「アスベスト問題に係る総合的対策に関する提言」を発表、内閣総理大臣及び各政党に届けた。

この記者会見には、山口茂記・自治労労働局長、佐藤正明・全建総連書記長、富山洋子・日本消費者連盟代表運営委員、天明佳臣・全国安全センター議長の4名の代表委員全員が顔をそろえた。この提言の主旨は、以下のとおりである。

「いまこそ、国や企業がその責任を自覚し、患者や家族、アスベストに曝露した労働者や市民の怒りや不安、訴えを理解し、今度こそ将来に禍根を残さない抜本的・総合的対策を確立するよう強く求めるものです。

しかし、いま世論に押されるようなかたちで、各省庁がすでに実施して結果を公表した調査内容や、再調査を指示している内容は、まったく不十分であると言わざるを得ません。さらに、ごく短期間のうちに過去の検証及び今後の『総合対策を確立』しようとしていることに、再びその場しのぎの対応に終わってしまうのではないかという強い危機感すら感じています。

そこで石綿全国連絡会議では、これまでに主張し続けてきたこと及び世界アスベスト会議の成果等も踏まえて、完全なものとは言えないまでも、総合的対策として取り組まれなければならない諸課題を、あらためて以下のとおり提言します。緊急を要する課題については、省庁の管轄や既存のどの法令や制度で対応するか等を論ずる以前に、まず確固たる決断を示すことが何よりも重要であると考えます。そのうえで、腰を据えて真に体系的な総合的対策を確立するよう強く勧告します。

なお、これらの対策を有効に進めるためには、患者と家族、労働者、市民のエンパワーメント―『知る権利』『参加する権利』等を確保し、あらゆるレベルで国や地方自治体、企業等を含めた関係者とのリスクコミュニケーションを通じて対策の確立及び実施を図ることが不可欠であることを申し添えます。」

提言は、以下の6つの柱に沿って、取り組まなければならない課題を約70項目にわたって提起している。

  • 全面禁止
  • 健康被害対策―補償、ハイリスク者の健康管理・健康被害の早期発見、診断、治療、患者・家族の心のケア、上記全プロセスへの患者・家族の代表の参加の確保等
  • 既存アスベスト対策―把握、管理、除去、廃棄等
  • 法規制等―石綿対策基本法の制定、関連行政一体となった体制の確立
  • 海外移転の阻止・地球規模での禁止
  • 予防原則の教訓を引き出すための歴史の検証等

いち早く、具体的な諸課題をあげて総合的対策の必要性とアスベスト対策基本法の制定を訴えたことは、その後の様々な局面で事態を先導する基盤となったものと自負している。

同時に関係閣僚会合の前に、何とか小泉総理大臣と患者・家族の代表との面会を実現できないかと動いてみた。結果的に7月28日午前に、公明党の福島豊衆議院議員の斡旋・同行によって、西厚生労働副大臣、高野博師環境副大臣と実現できることになり、急遽大阪から古川和子さんと中村實寛さんに上京してもらい、名取医師と筆者が付き添って両副大臣との面談が行われた。

初めての関係閣僚会合

7月29日、初の「アスベスト問題に関する関係閣僚による会合」が開催され、「日本及び海外における石綿規制の経緯」、「アスベスト問題への当面の対応」、「アスベスト(石綿)についてのQ&A」、「アスベストに関する過去の通知・通達、行政文書、研究結果等の一覧」が発表された。同日、厚生労働省が「石綿ばく露作業従事者労災認定事業場リスト」を公表したことは既述のとおりである。

「アスベスト問題への当面の対応」の内容が最も注目されていたわけだが、「新たな対策」と言えそうなものは、以下の7項目だけと言ってよいような内容であった。

① 大気環境への飛散防止措置の対象となる解体・補修作業の規模要件等の撤廃(来年2月までに関係規定を改正)(環境省)―大気汚染防止法の吹き付けに係る届出対象要件のことと考えられるが、石綿障害予防規則等と整合性を欠くその他の諸点すべてを見直すのでなく、なぜこの点だけを取り上げるのか、理解に苦しむ。

② 解体作業の発生箇所が等情報が、関係部門より廃棄物処理業者に確実に伝達されることを確保するための方策の検討(8月までに検討)(環境省)

③ 製造・新規使用等の早期の全面禁止(2008年目標の前倒し)(厚生労働省、経済産業省)

④ アスベスト関連疾患の診断・治療の中核となる医療機関として労災病院の診療体制の充実を図るため、診断・治療体制が整備された労災病院に「石綿疾患センター」(仮称)を設置するとともに、アスベスト関連疾患の症例の収集、他の医療機関から診療相談等他の医療機関の支援を行う。(9月までに実施)

⑤ 健康管理手帳の要件等アスベスト作業従事者の健康管理の在り方についての検討(8月から研究班を組織し早急に検討を行う)(厚生労働省)

⑥ 船員に対する「健康管理制度(無料健康診断を含む)」の導入(2005年度中に実施)(国土交通省)

⑦ 労災補償を受けずに死亡した労働者、家族及び周辺住民の被害への対応について、十分な実態把握を進めつつ、幅広く検討して、9月までに結論を得る(厚生労働省、環境省等)

その他、「新たな対策」につながるかもしれないと考えられた記述としては、以下のものがあった。

① 周辺住民のアスベストの健康被害に関する分析等を行うため、アスベストの健康影響に関する検討会を開催する。―「第1回:7月26日」と記載されているので、環境省の「アスベストの健康影響に関する検討会」のことと考えられた。

② 専門家チームにより、リスク評価に基づく健診対象やアスベストばく露者に対する健康管理の方法の検討を行う。―8月4日に第1回が開催された、厚生労働省の「健康管理等専門家会議」のことと考えられた。

③ 中皮腫の実態調査に係る研究(厚生労働省)
人口動態統計に登録されている中皮腫で死亡した878名(平成15年)や療養中の者について、職歴、初期症状、検査所見、確定診断方法、治療法、生存期間等に関する調査研究を実施する。―「7月から実施」とされていたが、8月4日に研究班立ち上げ。

④ アスベストばく露に関連した職種別リスクに関する研究(厚生労働省)
職場の健康診断で撮影した胸部レントゲン写真における胸膜プラークの有無について職業・職種別に検討すること等により、アスベストばく露のリスクについて検討を行う。―「8月から実施」とされていたが、8月4日に研究班立ち上げ。これは「新たな対策」としてあげた④の「健康管理手帳の要件等アスベスト作業従事者の健康管理の在り方についての検討」と重なるものと考えられた。

⑤ 労働者健康福祉機構における研究等(厚生労働省)
独立行政法人労働者健康福祉機構は、上記③、④の研究に協力するとともに、これまで全国の労災病院で診断・治療がなされたアスベストにばく露した者の肺がん及び悪性中皮腫の症例及び今後の症例を収集し、業務上のアスベストばく露との関連等について分析・研究を開始した。(平成16年度研究計画策定、今年度より実施)

⑥ 国立がんセンター及び放射線医学総合研究所等において、中皮腫の早期診断や治療方法に関する研究に取り組む。(厚生労働省、文部科学省)

なお、「日本及び海外における石綿規制の経緯」は、「クロシドライト(青石綿)」、「クリソタイル(白石綿)」、「一般大気環境」について、各々1~2枚の年表にまとめたもの。「アスベストに関する過去の通知・通達、行政文書、研究結果等の一覧」は、厚生労働省、環境省、総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省のものが、55頁の一覧表にまとめられている。

「政府の過去の対応の検証」については、「アスベストに関連するこれまでの通知・通達、行政文書、研究結果等についての関係省庁での調査を踏まえ、8月までに検証する」ものとされた。

いい加減な内容で過去の検証も総合対策の取りまとめも終了というかたちにはならなかったという点ではほっとしつつも、重要な政治決断はすべて先送り、総合対策とは言えるような新たな対策がなさすぎるという点ではがっかりした、と言うのが率直な印象であった。

安全センター情報2005年9・10月号

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