特集/仕事のせいでは?と思ったことないですか~「新たな」「隠れた」職業病、国内でさらなる事例相次ぐ

「これは職業病ではないのだろうか?」「仕事が原因では?」と思ったことはないですか?

安全センター情報2018年7月号の「『新たな』『隠れた』職業病の把握」という特集で、以下のように書いた。
「わが国では最近でも、以下のように、『新たな職業病』あるいは『隠れた職業病』と言える事例が社会問題になってきた。
① 2012年に発覚した大阪の校正印刷会社(SA NYO-CYP)でのジククロロメタン・1,2-ジクロロプロパンによる職業性胆管がん事件
② 2015年の福井の染料顔料中間体製造化学工場(三星化学)でのオルト-トルイジン等芳香族アミンによる職業性膀胱がん事件
③ 2016年の化成品製造工場(イハラケミカル(現クミアイ化学静岡工場))での化学物質MOCAによる職業性膀胱がん事件
④ 2017年の樹脂製造化学工場(所在地等未公表)で明らかになった有機粉じんの一種である架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物の吸入性粉じんによる肺組織の線維化、間質性肺炎、肺気腫、気胸等の肺疾患

このようななかで、今[2018]年2月に策定された第13次労働災害防止計画も『化学物質による健康障害の現状と対策の方向性』の項目のなかで、次のように言っている。
『近年、胆管がんや膀胱がんといった化学物質による重篤な健康障害が発生しているが、職業性疾病を疑わせる段階において、国がこうした事案を把握できる仕組みがないことから、事業者による自主的な情報提供等を端緒として、実態把握や対策を講じざるを得ない状況にある。
こうした状況を踏まえると、国際的な動向も踏まえ、化学物質の危険性又は有害性等に関する情報提供の在り方や、化学物質による健康障害の発生が疑われる事案を国が把握できる仕組みの検討が必要な状況にある』。

あげられた『胆管がんや膀胱がん』事件はいずれも実際には、被害者自らが声をあげたことによって発覚したものであるから、『事業者による自主的な情報提供等を端緒として、実態把握や対策を講じざるを得ない状況にある』は事実と異なると言えるが、『化学物質による健康障害の発生が疑われる事案を国が把握できる仕組み』等が検討されることは歓迎できる。」
本誌は、この検討に資するためにも、とりわけ欧州労働安全衛生機関による「労働関連疾患を把握する方法:監視・警報アプローチのレビュー」の成果などを精力的に紹介してきた。

厚生労働省は2019年9月2日に「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を招集した()。ここで13次防で掲げられた課題も検討されるものと考えられるのだが、これまでのところ、少なくとも「化学物質による健康障害の発生が疑われる事案を国が把握できる仕組み」を検討する予定なのか、はっきりとは見えてきていない。

しかし、具体的な事例をめぐる動きは続いている。
①②については、職業病リストにも追加された。
④については、2018年10月3日に「架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物の吸入性粉じんの製造事業場で発生した肺障害の業務上外に関する検討会」が招集され、2019年4月19日に報告書が公表されて、労災認定された(8頁参照)。
労災請求がなかったために④に先を越された③については、われわれも請求促進等を厚生労働省に要請して(2018年12月号等)、2020年3月24日に「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_361173.html)が招集されて、ようやく検討がはじまった。

一方、2019年7月19日に「労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」が招集されて、「労働基準法施行規則別表第1の2第4号に基づく大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害の追加」についての検討が2020年7月28日の第5回検討会で終わり、今後、新たな化学物質による疾病に追加について検討が行われる予定である。
本号では、「新たな」「隠れた」職業病に関係しそうな関西労働者安全センター・片岡明彦さんの最近の論考を一挙掲載させていただく。
とりわけ、オルトフタルアルデヒドによる健康障害等は、同分科会の検討から漏れることないよう注目していきたい。

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安全センター情報2020年11月号特集
オルトフタルアルデヒドによる疾病に労災認定(皮膚・呼吸器障害)/医療機関における内視鏡等の殺菌消毒剤に使用
架橋型アクリル酸系水溶性ポリマーによる肺障害(呼吸器疾患)の経緯と労災認定について
高純度結晶性シリカの取扱作業に伴う留意点(基安発0927第2号平成30年9月27日) /高純度結晶性シリカの微小粒子にばく露して発症したけい肺症について(労安研2019年5月)
〇トリクロロエチレンによる腸管嚢腫様気腫症(ちょうかんのうしゅようきしゅしょう)、労災認定/専門家・熊谷信二氏の話(労働の科学2019年6月号より)
〇「溶接ヒューム」及び「塩基性酸化マンガン」を特定化学物質障害予防規則(特化則)の第2類特定化学物質に指定する新たな規制導入と経緯について~2021年4月1日より施行~
剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について 基安化発0817第1号2020年8月17日~未規制物質ベンジルアルコール 、特化物ジクロロメタン含有
〇2017年度に3件の「新しい疾病」労災請求の報告あり、「補504」報告書の不開示部分を一部開示させる答申書