勤労福祉公団、サムソン電子白血病労災判決に「異例の上告」/韓国の労災・安全衛生2024年04月26日

サムソン電子半導体工場で働いて白血病で亡くなったファン・ユミさんの11周忌の2018年3月6日『サムソン労災死亡労働者追悼の日』の行進に参加した人たちが、ソウルのリウム美術館を出発してパノリムの座込み場に向かっている。/イ・ジョンア記者

サムソン電子でエンジニアとして働き、白血病で亡くなった労働者を労災と認定するという裁判所の判決に勤労福祉公団が上告して、遺族と関連団体が反発している。

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)は声明で、「勤労福祉公団が、サムソン電子で働いて白血病に罹って亡くなったAさんの事件を労災と認めたソウル高裁の判決は認められない」として、「最高裁判所に上告して遺族を更に苦しめている」と糾弾した。Aさんは2001~2015年にサムソン電子の映像事業部で、ソフトウェア開発と不良検査、高温テストなどをするエンジニアとして働いていたところ、30代後半に急性骨髄性白血病と診断された。

2015年3月にAさんが亡くなり、遺族は労災補償(遺族給与、葬儀費)申請をしたが、勤労福祉公団は、Aさんの病気と業務との関連性が低いとして承認しなかった。Aさんが働いている過程で極低周波の磁場と発ガン物質であるホルムアルデヒドに長期間ばく露し、一週間で69時間にもなる長時間労働とストレスに苦しめられて病気が発生したという遺族の主張を認めなかった。

遺族が提起した訴訟で、一審のソウル行政裁判所は公団の手を挙げたが、二審のソウル高裁の判断は違った。

高裁は3月20日の判決で「Aさんの業務と、この事件の傷病ないし死亡との間に相当な因果関係があると判断できる」として、公団の判断は違法だとした。極低周波の電磁場とホルムアルデヒドに長期間ばく露されたのが、白血病の発生に影響を与えた可能性があるという指摘だ。過労とストレスも同時に影響を与えた可能性があるとも判断した。

しかし、勤労福祉公団は4月3日に最高裁に上告した。パノリムは「2007年、故ファン・ユミ(サムソン半導体器興工場のオペレーターで白血病で死亡)事件から始まったサムソン電子の労働者の業務上疾病認定闘争は、多くの法廷での争いに繋がったが、勤労福祉公団が高等裁判所の敗訴判決に従わず、事件を最高裁まで持ち込んだのは初めてのこと」とし、「遺族たちは、再び約束のない法廷闘争を闘うことになった」と批判した。Aさんの遺族も「上告という言葉に胸がドキッとして座り込んだ。」「疫学調査と弁論で明らかになった事実は、私たちの主張が正しいことを証明している。それでも勤労福祉公団の上告決定は、この間の裁判の過程と結果を徹底的に無視する姿で、勤労者の立場を代弁すべき真の公団の姿とは見難いほど失望する」と話した。

勤労福祉公団は上告理由について「ホルムアルデヒドについては、韓国産業安全保健公団の作業環境測定の結果、ばく露濃度が基準に比べて非常に低く、極低周波電磁場については、傷病の有意性に対する研究結果の一貫性の欠如と、国際非電離放射防護委員会とアメリカ産業衛生士協会のばく露基準に比べて非常に低いこと、更に死亡者の喫煙歴などを考慮した」と明らかにした。

2024年4月26日 ハンギョレ新聞 チョン・ジョンフィ記者


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