サムソン半導体の下請け労働者の自己免疫疾患、労災認定/韓国の労災・安全衛生2024年10月29日

サムソン半導体の製造工程に使われるスクラバー(有害ガス浄化装備)設備の維持・補修業務をしていた下請け労働者に発生した自己免疫疾患が、業務上疾病という判決が出た。

ソウル行政裁判所が17日、Aさん(31)が勤労福祉公団に提起した療養不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を行ったことが確認された。

Aさんは2017年7月から2020年5月まで、スクラバーなどを生産するユニセムに所属し、サムソン電子華城工場でスクラバー設備の維持・補修を担当した。彼は仕事を始めて一年六ヶ月後の2019年1月から、皮膚炎、脱毛、気絶、妄想などの症状を経験し、2020年7月に、最終的に「全身紅斑性ループス」という自己免疫疾患と診断された。

Aさんは「スクラバーの維持・補修業務を遂行中に、狭い作業空間などによって保護具が外れることが多く、有害化学物質に頻繁にばく露し、肉体的・精神的なストレスが累積して全身紅斑性ループスが発病した」として、勤労福祉公団に労災申請をした。勤労福祉公団は2021年9月に、スクラバー設備の維持・補修作業時に見付けられるガラスケイ酸は、毒性が低い非決定型と確認されるとして、申請を受け容れなかった。これに対してAさんは行政訴訟を提起した。

裁判所は勤労福祉公団の不承認処分は不当だと判断した。裁判所は「産業安全保健研究院の疫学調査によると、国内研究の結果、スクラバー設備の維持・補修作業時にガラスケイ酸が発見された。ほとんどが非決定型ではあるが、結晶型ガラスケイ酸が含まれている可能性も排除できない」とし、「その上、毒性の低い非決定型といっても、高い投与量では毒性が報告されている」とした。続けて「整理すれば、有害物質ヘのばく露量がどの程度だったのかとは別に、Aさんが扱った設備、作業方法、作業環境に照らしてみる時、Aさんが有害物質にばく露されたという事実は否定し難い」とした。

裁判所はまた「サムソン電子傘下の別の工場勤労者たちに対する業務上疾病判定書によれば、半導体の製造工程の勤労者たちに、全身紅斑性ループスが発病したことが確認される」とした。

Aさんは「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)を通じて「勤労福祉公団は、先端産業の特殊性を口実に勤労者たちの健康を無視せず、社会的な責任と安全網を提供しなければならない」と表明した。

Aさんの代理をしたチョン・イルホ弁護士は「一審の裁判所は、公団の判定に同意する診療記録鑑定機関の意見は、現在の知識水準と基準によるものに過ぎないということを指摘し、発病原因が医学的、自然科学的に究明されていない状態なら、因果関係の判断は、経験則と社会通念に基づいて合理的に推論しなければならないと指摘した」と話した。

2024年10月29日 京郷新聞 キム・ジファン 記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202410291642001