最高裁「サムソン電子の超低周波磁場、白血病の有害要因」/韓国の労災・安全衛生2024年07月15日

資料写真/チョン・ギフン記者

最高裁判所がサムソン電子の電気設備から発生した極低周波磁場を急性骨髄性白血病の有害要因と認定した。

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)によれば、最高裁は12日、勤労福祉公団が提起した遺族給与および葬儀費不支給処分取り消し上告審で、審理不続行棄却とし、遺族の手を挙げた。

14年間数十台のディスプレイに囲まれて働く

事件の争点は、極低周波磁場が白血病発病の有害要因に該当するかどうかだった。労災被災者の故チャン某さんは、2001年から2015年まで、サムソン電子映像事業部でソフトウェア(SW)エンジニアとして働いた。テレビのSW開発と不良検査・高温テストといった業務を行った。チャンさんは数十台のディスプレーパネルに囲まれた所で働き、製品を50度以上に加熱する高温テスト設備の中にも入った。パノリムは、故人の勤務時間が一週間に69時間に達することもあったと指摘した。チャンさんは14年間働いていたが、2015年2月に白血病を発病し、一ヵ月後の2015年3月に死亡した。

遺族は翌年5月、労災遺族給与を申請したが、公団は2018年5月頃、疫学調査をの結果を得て不承認とした。疫学調査をした安全保健公団・産業安全保健研究院が、2017年1月20日から9月12日までサムソン電子水原事業場で調査した後、極低周波磁場の最大露出水準は18.5マイクロテスラ(μT)のレベルであることと、製品を50度以上に加熱した時にベンゼン・エチレン・多環芳香族炭化水素(PAH)は検出されず、ホルムアルデヒドだけが危険ばく露基準(0.3ppm)よりも低い0.005ppm検出されたことを挙げて、業務性を否認した。公団・ソウル地域業務上疾病判定委員会は、これを根拠に相当因果関係を認めず、遺族が提起した行政訴訟で、ソウル行政裁判所も2022年4月に公団の手を挙げた。

ソウル高裁「先端分野の職業病研究が相対的に不足」

一方、ソウル高裁は昨年3月に原審を逆転した。裁判所は「極低周波磁場に職業的にばく露する高圧線勤労者の骨髄性白血病罹患(発病)の確率が高いという研究と、職業的に極低周波磁場にばく露した時に、慢性骨髄性白血病の罹患確率が高いという研究、電気業種の勤務経験者に慢性骨髄性白血病の罹患確率が高いという研究、13.67μT以上の磁場にばく露した作業環境で20年以上働けば、成人の白血病発病の危険度が増加するという研究などが報告された。」「先端産業分野で、作業現場の職業病に対する研究が相対的に不足している。化学物質に露されたチャンさんの作業環境と過労までを幅広く認めた。公団が上告すると、最高裁は再び裁判を開く理由がないとして棄却し、極低周波磁場の白血病有害要因は判例として確立した。

遺族とパノリムは晩時之嘆(註:時機を失して嘆く)だと口を合わせた。遺族はパノリムを通してメディアに「労災認定は嬉しいが、8年という長い時間がかかってしまったという事実には、納得し難い。」「二審で労災認定の判決を受けたのに、公団が無理に上告した」と指摘した。更に、「業務上の災害で職場と家族を失い、直ちに明日からの生計を心配しなければならない労働者と遺族が、公団を相手に労災を立証することは容易ではない。」「この制度は明らかに改善されるべきだ」と伝えた。労災の立証責任を被害者と遺族に負わせる現行のやり方ではなく、事業主に反証の責任を負わせるべきだということだ。

2024年7月15日 毎日労働ニュース イ・ジェ記者

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