裁判所、「サムソン半導体職業病」で史上初の現場検証/韓国の労災・安全衛生 2024年05月30日

2018年11月当時、サムソン電子とパノリムの仲裁判定履行合意協約式で、パノリムのファン・サンギ代表が着ていた服。/キム・チャンギル記者

裁判所がサムソン電子の華城事業場に対する現場検証を実施することにした。サムソン電子の半導体生産ラインで働いていて、2007年に白血病で亡くなったファン・ユミさんの事件で始まった半導体労働者の集団職業病発病に関連して、裁判所が直接作業現場を調べるのは初めてだ。「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)は裁判所の決定を喜びながら、現場検証には一定の限界があるということを考慮すべきだという立場を明らかにした。

ソウル高法が来月5日、サムソン電子華城事業場の17ラインで、現場検証を実施する予定であることが確認された。裁判所が現場検証をしようとしているのは、サムソン電子のシン・ジョンボムさんと協力業者の労働者のイム・ハンギョルさんの白血病が、業務上災害なのかを確かめるためだ。

乾式エッチング工程の設備のエンジニアだったシン・ジョンボムさんは、2014年7月から2016年3月まで、サムソン電子華城事業場の17ラインで、ウェハー加工工程の設備を配置・調整する業務、メンテナンス・事後整備業務などを担当した。退社して5年後の2021年3月、急性骨髄性白血病と診断され、翌年11月に亡くなった。イム・ハンギョルさんは、2015年3月から、半導体を作るサムソン電子器興・華城事業場などで、ガス感知器関連の業務を行った。2017年9月に急性骨髄性白血病と診断され、翌年10月に亡くなった。二つの事件は、二人がサムソン半導体工場で働き、それぞれ32歳、28歳の若さで白血病と診断され、半導体生産ライン(FAB)の下部の空間に頻繁に出入りして仕事をしていたという点で共通点がある。

勤労福祉公団は、二つの事件で下部空間の作業環境を調査しなかった。シン・ジョンボムさんの事件では、疫学調査自体が行われず、イム・ハンギョルさんの事件では、疫学調査は行ったが、下部空間に対する調査は行われなかった。下部の空間は、空気の循環のための空間のCSF、化学物質供給のためのバルブ、電気供給のためのケーブル、化学物質浄化装置などの機器が設置されたFSFなどで構成されている。遺族側は、下部空間の有害・危険性を判断するための調査が行われていないことは問題だと指摘する。

二つの事件に対する一審の判決は分かれた。イム・ハンギョルさんの事件を担当した一審裁判所は昨年5月、「故人が半導体の製造工程で働く勤労者と同じレベルで、ベンゼンなどの有害物質にばく露したと認めることは難しい」として不承認とした。

シン・ジョンボムさんの事件を担当した一審裁判所は昨年7月、勤労福祉公団とは反対に労災を認めた。ベンゼン・ホルムアルデヒド・極低周波磁場などにばく露されたことが白血病の原因だとした。裁判所は特に、勤労福祉公団に対して「作業環境で発生する有害物質、ばく露の程度などを具体的に糾明しようとする特別な努力をせず、故人の作業環境が、2011年当時の作業環境よりは良くなったということを前提に、(労災不承認)処分をした」と指摘した。

両事件の控訴審は、ソウル高裁行政7部に割り当てられ、裁判所が現場検証の実施を決めた。パノリムは「勤労福祉公団がきちんと調べなかった故人の作業環境を、遅ればせながらも裁判所が直接調べるとしたことは、取り敢えず嬉しいことだ」とした。

但し、故人の勤務していた時点と検証時点の間に7~10年の間隔があるということ、設備メンテナンス・故障・停電など、非常な状況での有害物質への高濃度ばく露の可能性を確認できないということ、発がん物質・極低周波磁場へのばく露などは、肉眼や臭いで判らないということなどで、現場検証にも限界があるとみている。パノリムは「裁判所は現場検証の過程でも、色々な限界点があるということを考慮し、故人の業務環境を評価する必要がある」と話した。

2024年5月30日 京郷新聞 キム・ジファン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202405302114015