放射線被ばく職員「会社、病院移送を一日遅らせようと提案」/韓国の労災・安全衛生2024年08月27日

今年5月、大学病院に入院した当時のサムソン電子の放射線被爆者の両手写真(左)と、8月15日に被害者が労組の掲示板に載せた両手の写真(右)。/全国サムスン電子労組提供

5月に発生したサムソン電子器興事業場の放射線被ばく事故直後、会社が被害者に「原子力病院への移送を一日遅らせよう」と提案したことが判った。治療費の支援も円滑でなく、被害者は借金までしたという。

サムソン電子はこれに対して、「被害者の主張」で、「治療と回復に必要なことは、会社ができる範囲内で最大限支援している」と釈明した。

全国サムソン電子労働組合(全サム労)は、被害者にインタビューした後、27日に考え方に関する資料を出し、事故直後の会社の対応が「無責任で衝撃的」と指摘した。

先立って、5月27日にサムスン電子器興キャンパスで、職員2人が装備の整備作業をしている途中に放射線にばく露した。原子力安全委員会によると、2人がばく露した放射線量はそれぞれ94シーベルト(㏜)と28㏜で、基準値である年間50ミリシーベルト(m㏜)を、それぞれ188倍、56倍超過した。

労組によると、事故発生翌日の5月28日、被害者たちは会社に被爆の疑いを申告した。社内の病院には放射線専門の診療者がおらず、近くの亜洲大学病院に移送されたが、ここでも事情は同じだった。被害者たちは被爆治療の専門機関のソウル蘆原原子力病院への移送を要請した。会社は「翌日に延ばそう」と提案したと話した。社内病院の救急車が1台だけで、事業場を離れられないというのが理由だった。被害者らはこれを拒否し、直ちに原子力病院を訪れ、リンパ球の数値検査を受けた。労組は「もし移送を翌日に延ばしておれば、正常に戻ったリンパ球数値のために、被爆の事実を確認できなかっただろう」と主張した。

労組は、会社が被害者に責任を負わせているとも主張した。被爆が発生した装備は、半導体ウェハーにX線を照射して化学物質の厚さを測定する「XRF」装備だ。作業者が装備を点検していた当時、放射線発生を遮断しなければならない「インターロック(安全装置)」が正しく作動せず、事故が発生したと調査された。

労組は「(被害者の)部・所長は『インターロックがあることも知らなかったのか』と、事故の責任を転嫁する虚偽の報告書を作成した。被害者は通院治療を受けた翌日に会社に戻り、個人の帰責についての疎明をしなければならなかった」と主張した。

会社の事故報告書には、「シャッター分解作業標準作業指針(SOP)上『X線オフ(Off)』にしなければならないが、これを守っていない」、「(作業者は)高年次エンジニアで、設備のインターロックを看過した」といった、被害者の責任を浮き彫りにするような内容が盛り込まれた。

しかし、労組と被害者は「該当作業は当初はSOPがなく、X線装備のインターロックはA級インターロックで、国の法令で管理されるので、作業者が勝手に操作することはできない」と反論した。装備構造上、放射線の遮蔽体を開くと、自動的にインターロックが作動するようになっているため、事故当時に発生したインターロックエラーは作業者の責任ではないということだ。

治療費の支援も円滑ではないと言う。被害者は「労災認定は直ぐにはできないようなので、病院費用だけでもどうにかして欲しい」と要請した。しかし、会社は手続きを理由にこれを断わり、被害者の家族が被爆治療にかかる数百万ウォンの費用を支払うために、カードローンの融資まで受けた。その後、職員が何度も抗議をして、ようやく会社から治療費の支援が行われたと労組は説明した。

労組は被害者に対する心からの謝罪と全面的な支援、事故の責任者と虚偽報告書に関与した者に対する厳重な処罰、一ヶ月以内に放射線装備を扱った全職員に対する特殊検診の実施、放射線安全管理システムの全面再検討・改善などを要求した。

サムソン電子は病院移送の手続きに関して、「被害職員が最も迅速に治療を受けられる病院に移送した。」「病院移送の遅延と治療費の支援が円滑でなかったというのは被害者の主張だ。会社は被害職員の治療と回復に最善を尽くしている」と説明した。

2024年8月27日 ハンギョレ新聞 キム・サンボム記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202408270910001