労災・職業病の申請・認定のための手引き/中皮腫の通院費の取扱い(労災保険)

中皮腫通院費の現在の取扱い-基本「オールジャパン」ー

中皮腫はアスベスト(石綿)に特異的な「がん」であり、2017年の中皮腫による死亡者数は1555名であって、いわゆる希少がんの一つとされています。

希少がんであることとそのために治療方法の開発が進んでいないことから、経験のある医療機関が全国的に限られます。がんの中でも予後不良とされ、唯一の根治術とされる外科手術の適用となる患者は少なく、その外科手術について経験豊富な医師のいる医療機関はさらに非常に限られるというのが実情です。

そのため、中皮腫については、労災保険における通院費の通常の取扱い(「労災・職業病の申請・認定のための手引き/労災保険における通院費の取扱い」参照)とは違って、より広い範囲の通院が認められていますので、中皮腫患者の方には通院費の請求を積極的の行われるのがいいと思われます。

労災保険における中皮腫通院費の取扱いをかいつまんでいいますと、次のようになります。

  1. (通常、まず近くの主治医に通院していますが)その診察した医師の紹介等に基づく受診・通院である
  2. 「医師の紹介等に基づく通院」とは、その通院が専門的な診療の必要性が認められるものであり、その判断にあたっては、当該傷病労働者の診察を行った医師の意見等を尊重する

この二つの点が認められる場合は、通常の労災保険における通院費の取扱いよりも遠い医療機関への通院費が認められています。

具体的には、たとえば、北海道や静岡県の方が山口県・国立病院機構山口宇部医療センターや兵庫県・兵庫医科大学病院で外科手術を受けた場合などです。ほかにも中皮腫治療の専門能力のある経験豊富な医療機関は外科、内科とも全国的にはごく限られる状況ですので、そうした経験豊富な中皮腫医療機関への通院については、現在は、基本的に「オールジャパン」的に通院費が認められることになっています。

以上の取扱いは行政文書で示されています。現状の取扱いの詳しい内容は次の通達、事務連絡をご覧ください。最も重要なものは、ひとつめの2017年10月31日付事務連絡になります。この事務連絡の参照関係を確認するために、ふたつめ、みっつめの文書を紹介しました。

中皮腫の診療のための通院費の支給に当たって留意すべき事項の徹底について/ 2017年10月31日事務連絡

中皮腫の診療のための通院費の支給に当たって留意すべき事項について/ 2009年1月20日事務連絡

「移送の取扱いについて」の 一部改正について / 2008年10月30日基発第1030001号

中皮腫通院費の請求のしかた

中皮腫通院費の請求方法は、通常の通院費の請求方法と変わりません。 「労災・職業病の申請・認定のための手引き/労災保険における通院費の取扱い」などをご参照ください。

ただし、請求を受理した労働基準監督署は決定前に必ず厚生労働省本省に連絡して本省のチェックを受けることになっていますので、少し時間がかかるケースがあります。

ご相談は中皮腫通院費に詳しい、全国労働安全衛生センター連絡会議(当センター)または中皮腫サポートキャラバン隊まで。

ケースによっては、やむをえず紹介状をもたずに遠隔の中皮腫専門医療機関に受診することもあると思いますが、紹介状がない受診であっても通院費が認められたケースがあります。労働基準監督署に中皮腫通院費を請求して、労基署から「難しい」と言われた場合でもまずは相談してみてください。

中皮腫通院費の請求をして経験豊富な中皮腫医療機関の活用を

中皮腫の特殊性を踏まえて、セカンドピニオンを含めて経験豊富な中皮腫医療機関への受診が役に立つことがありますので、中皮腫通院費を活用されることを勧めます。

中皮腫通院費をめぐる経過について

中皮腫という特殊な希少がんについて、労災保険において特段の措置がとられるようになったのは、いわゆるクボタショック(2017年6月以降)ほどない2017年10月以降です。この点については本サイトの以下の記事をご覧ください。