労災・職業病の申請・認定のための手引き/労災保険における通院費の取扱い

労災保険における「通院費」の位置づけ

労災保険法第13条の「療養補償給付」の中に「移送」という項目があり、通院費はこの「移送」費に含まれるものとして取り扱われます。

第十三条 療養補償給付は、療養の給付とする。

○2 前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。

一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送

○3 政府は、第一項の療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。

電子政府の総合窓口 労災保険法

現在の通院費の取扱い(2008(平成20)年11月1日以降の通院に適用)

労災保険を所管する厚生労働省は通達によって、通院費については次の基準によって支給するとしています。

支給対象となる通院は、住居地または勤務地から、原則、片道2キロ以上(※1)の通院であって、つぎの1.から3.のいずれかに該当するものです。

1. 同一市町村内の適切な医療機関(※2)へ通院したとき
2. 同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関に通院したとき(同一市町村内に適切な医療機関があっても、隣接する市町村内の医療機関の方が通院しやすいとき等も含まれます。)
3. 同一市町村内及び隣接する市町村内に適切な医療機関がないため、それらの市町村を越えて最寄りの医療機関へ通院したとき

※1 片道2キロ未満の通院であっても、通院費の支給対象になることがあります。
※2 適切な医療機関とは、傷病の診療に適した医療機関をいいます。

厚生労働省リーフレット「あなたは通院費を請求していますか?」より

より詳しい説明

上記の厚生労働省リーフレットは、2008年10月30日付で厚生労働省が出した、次の二つの行政文書(通達)を根拠としていますので、詳しい説明はこれらを参照ください。

1.「移送の取扱いについて」の 一部改正について / 2008年10月30日基発第1030001号

2.移送のうち通院を取り扱うに当たって留意すべき事項について / 2008年10月30日基労補発第1030001号

たとえば、
※1 片道2キロ未満の通院であっても、通院費の支給対象になることがあります。
ということについては、上記の通達1.に、
ニ 傷病労働者の住居地又は勤務地から片道2キロメートル未満の通院であっても、傷病労働者の傷病の症状の状態からみて、交通機関を利用しなければ通院することが著しく困難であると認められる場合における当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等への通院。 」と説明されています。

通院を含む「移送」についての基本通達

はじめに述べましたように、「通院費」は、療養補償給付のうちの「移送」に含まれます。この移送については、少し古いですが、基本通達である次の通達によります。

移送の取扱いについて/1962年09月18日基発第951号・改正1973年2月1日基発第48号

この通達では、通院費を含む移送費の支給する範囲について、次の通りとしています。

2 費用の範囲
移送費として支給する費用は、当該労働者の傷病の状況等からみて、一般に必要と認められるもので傷病労働者が現実に支出する費用とすること。
なお、傷病労働者の移送に従事する者の日当は次により算定すること。
(1) 付添看護人の日当は、当該地域において一般に看護人の日当として支払われている料金を基準として計算した額を限度とすること。
(2) 傷病労働者と同一事業所に勤務する労働者が移送に従事した場合の日当は、当該労働者の通常の労働日の賃金を基準として計算した額を限度とすること。
(3) 傷病労働者の配偶者及び、二親等内の血族が移送に従事する場合には、当該親族にかかわる費用のうち、日当は支給しないこと。

移送の取扱いについて/1962年09月18日基発第951号・改正1973年2月1日基発第48号

「 当該労働者の傷病の状況等からみて、一般に必要と認められるもの 」ですので、電車、バスといった公共交通機関だけではなく、場合によってはタクシー代などが認められることになります。
たとえば、医療上の必要性があるかどうか、などがポイントになります。同様に自家用車を使った場合についても、必要性が認められば一定の基準にもとづいて(労基署が決めたキロメートル当たりの算定額)請求に応じて支払われることがあります。

通院費の請求のしかた

要した費用について「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号、通勤災害の場合は様式第16号の5)を作成して、労働基準監督署に請求します。通院費についての明細や添付書類(領収書など)が必要になる場合がありますから、具体的な手続については、管轄の労働基準監督署に問い合わせてください。請求書は最寄りの労働局、労働基準監督署に常備してあります。こちらからダウンロードもできます。厚生労働省のリーフレットなども参考にしてください。

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以上が、労災保険における一般的説明になります。具体的事情については、個々人で異なりますので、不明なところや疑問がありましたら、当全国安全センター(全国労働安全衛生センター連絡会議)や各地域の安全衛生センターにご相談ください。

<重要>中皮腫についての通院費の取扱い

石綿関連疾患である中皮腫については、専門医療機関が限られていることから、上記の一般的取扱いよりも広い範囲で通院費がみとめられていますので、次をご参照ください。