職業がんをなくそう通信17/職業がん撲滅目指して・第8回なくそう集会

2019年1月7日
職業がんをなくす患者と家族の会https://ocupcanc.grupo.jp/

新年のご挨拶

職業がんをなくす患者と家族の会
代表 田中康博

昨年は一段と、患者と家族の会の重要性を感じた一年でした。

田中氏自宅周辺からの白山・荒島岳 

まず4 月に京都の大日本印刷で印刷業務に従事し退職後に発症した胆管がんが労災認定され、ご家族の方が「こういう事実があることを同じ職種の方や医療関係の方等に少しでも広められれば」と 10 月18 日に記者会見をされたこと。

また 8 月には新日本理化徳島工場にてオルト- トルイジンを製造する業務に従事し退職後の 2016 年2 月に発症した膀胱がんが労災認定されたこと。

そして静岡のイハラケミカルにおいてMOCAの製造に関わり膀胱がんを発症している人が 12 名に及んである問題について、9月 28 日いの健全国センターおよび全国労働安全衛生センター連絡会議と共に厚労省要請行動を行い、1 件の労災申請もされていないことを追求し「会社を通じて本人に説明している」との厚労省の態度を「直接本人に説明する方向で検討する」ように改めさせ、その後10 月 19 日には通達「MOCAによる健康障害の防止対策の徹底について」を出させるに至ったこと。

最後に10月 16日厚労省の専門検討会が、オルト-トルイジンを扱い膀胱がんを発症した場合、労災保険の対象疾病として本年年初の省令改正を経て「労働基準法施行規則第 35 条別表 1 の 2」に掲載することを確認したことです。

取り組まれてこられた諸団体・個人の皆様への敬意を表しかつ深く感謝を申し上げます。
今年はMOCAにより膀胱がんを発症された方々からの労災申請が確実にされるよう引き続き対厚労省行動に取り組みたいと思います。

また自身の問題では、三星化学工業に対する損害賠償裁判において、日本の企業経営者の方々が「三星化学工業のようにはなりたくない」と思っていただけるような判決を勝ち取り、職業がんを撲滅していくための一つの礎を築きたいとの思いを申し上げまして新年にあたってのご挨拶といたします。本年もよろしくお願いいたします。

第 8 回職業がんをなくそう集会
in 福井 報告

12 月 9 日 13 時より福井県教育センターにおいて第8 回職業がんをなくそう集会がありました。参加者は11 団体 37名でした。田中代表から開会あいさつがあり 2018 年に獲得できた成果の紹介があり今後も取組みを強化していこうと訴えました。

池田弁護士記念講演

記念講演では池田直樹弁護士(あすなろ法律事務所)から三星化学工業裁判の中間到達点の解説をされました。

三星化学工業膀胱がん裁判が目指すものとして

  1. 真相究明:なぜ原告らに対する発がん防止対策が不十分だったのか?
  2. 責任追及:企業による謝罪と適正な補償
  3. 再発防止:事件の方向、被害の掘り起こし、再発防止の運動と制度作り

があります。
原告らの業務とばく露の実態については一部争っていますがオルト – トルイジンへのばく露期間(15 ~ 27年)、ばく露の実態(半袖Tシャツ作業、マスクやゴム手袋の着用が不完全、局所排気装置の不完全など)は否定できません。

被告による安全衛生管理の実態については安全配慮義務違反に直結し裁判における主戦場と言えます。会社はがん物質としての規制は 2017 年 1 月からで「オルト – トルイジンの経皮ばく露による慢性健康障害については本件発生まで厚労省を含め日本中で誰も予見していなかった」ので「特別な経皮ばく露防護対策を取ることは不可能であった」と主張してますが、SDS(発がん情報が記載されている)の提出があり業界団体にも加入していたことが分かっており、会社の主張は根拠が希薄になっています。

H12 年 3 月 31 日基発 212 号の指針も化学物質のばく露を防止又は低減措置をするよう求めています。

原告らの被害の実態についてはまだまだこれからで被告は「手術で治癒」したと主張しますが、経尿道的膀胱腫瘍切除手術や定期的な内視鏡検査、BCG 治療などの損害を今後明らかにしていく必要があります。
被害の金銭的評価については原告が 880万を請求していますが、会社に対する運動や世論も反映するでしょう。

現在の到達度としては①真相究明:企業体質や姿勢が最大の原因、②責任追及:10 人もの労働者の集団発症という事実と膀胱がんという命に関わる病気発症の「被害」を今後裁判所にどう評価させるかが重要、③再発防止:オルト – トルイジンの新たな被害の発掘、MOCAによる集団発症という被害の発掘や遅ればせながら規制が広がりつつあり被災者による厚労省交渉が推進力となっている。

明日の裁判では被告からのばく露実態についての質問(求釈明)への回答、安全配慮義務の内容と化学物質管理体制についての質問(求釈明)、被告が「知っていたこと」「対策を取らなかったこと」のSDSでの実証、労基署からの原告らの労災資料の開示、今後の審理方針と日程などを確認していきます。

膀胱がん発生現場の実態 大久保氏

三星化学工業支部書記次長である大久保氏より職場実態報告がされました。

入社当時の埼玉工場の状況は、夏期はTシャツ作業、マスクは未着用の人もおり指導は徹底していなかったこと、製品(トルイダイドやアニライド等)へのばく露対策の指導は厳しくなかったこと、その後福井工場での作業やばく露の実態を解説しました。

そのようなばく露が継続する中 2014 年 2 月に最初の患者が発生し現在まで 12 名(福井 10、埼玉 1、福島 1)が発症している。
2011年に配置されたSDSに発がん情報があったが有効なばく露防止対策は取られず、膀胱がん多発後も真相究明がされていないばかりか様々な情報不開示が続いています。

化学物質の適正な管理とは 堀谷

本来あるべき化学物資の適正な管理とはどんなものなのかを示すため、製品開発から実生産に至るまでの有害情報調査やリスクマネジメントや入社以来取り扱った化学物質の個人記録も紹介しました。

福井集会へのメッセージ・会場発言など

京都で発生した胆管がん患者のご家族からのメッセージを読み上げて紹介しました。患者や家族でなければわからない苦労が綴られ記者会見の反響や本会の存在意義も確認できました。

今回は東京から純中立労組懇(民放労連、出版労連、全損保、航空連)からの参加もあり、質問もいつもと違った角度からのものがありました。また徳島OTの会川上代表も遥々駆けつけて下さり今後の規制強化への取組みの重要性も確認されました。
翌日早朝からの福井駅前宣伝行動にも多くの方の参加があり賑やかに行えました。