職業がんをなくそう通信22/特定芳香族アミンとは・化学物質関連2月公表厚労省資料

2020年2月28日
職業がんをなくす患者と家族の会https://ocupcanc.grupo.jp/

新型コロナウイルスの感染が拡がっていますが、皆さまお元気でお過ごしでしょうか?2月は、東京の職業がん患者の対策会議、三星化学工業損害賠償事件の弁護団会議に参加しました。

目次

特定芳香族アミンとは

中国出張中に染料および特定芳香族アミンに曝露し帰国後に膀胱がんを発症した方の行政訴訟の準備を進めていることについてはNo.20 で触れました。

「特定芳香族アミン」とは、2016 年 4 月より家庭用品規制法の改正により新たに規制がされたもので、24 種類の芳香族アミン(全て発がん性が認められている又は疑いがあるもの)を指します。家庭用品の製造・輸入する業者はヒトに健康被害が生じないようにしなければならず(法第 3 条)、アゾ染料の中には身体に接触すると皮膚表面や腸内の細菌、肝臓などで分解され特定芳香族アミンを生成するものがあるため、そのような染料を使用した繊維製品や革製品の販売・授与が禁止されました(法第 5 条)。
アゾ染料は芳香族アミン(下図①)をジアゾ化しアゾ結合(下図②)により水溶性の化合物(下図③)と結合したもので、安価で鮮やかな色を示すため広く用いられています。

このアゾ染料が分解された時に生じる芳香族アミンが発がん性を有する特定芳香族アミンである場合、そのようなアゾ染料は消費者の発がんリスクを高めることになります。
規制の対象になる家庭用品は

  1. 繊維製品
    おしめ・おしめカバー、下着、寝衣、手袋、くつした、中衣、外衣、帽子、寝具、床敷物、テーブル掛け、えり飾り、ハンカチーフ、タオル・バスマットおよび関連製品
  2. 革製品
    下着、手袋、中衣、外衣、帽子、床敷物

となっています。

EUでは 2002 年に 22 種、中国では 2003年に24種が規制されており、日本では2012 年より繊維・皮革業界の自主規制が始まりますが、法規制は2016年とずいぶん遅れた対応となっています。

しかしながら、厚労省が発表した資料に記載された 2011 年の海外違反事例(EU)を見ますと、中国 17 件(様々な製品)、インド 9件(主にスカーフ)などからベンジジン、4-アミノアゾベンゼンなどが検出されており、2003 年に中国が規制をしたからといって実際に製造や販売がされていなかったわけではないことがわかります。

また、2009 年日本国内繊維製品の調査ではインド製ランチョンマットからベンジジンなどが検出され、2011 年調査ではインド製ショール・マルチカバー・シーツなどからベンジジンが検出されています。革製品についてはグローブ、ベルト、リストバンド、財布、キーホルダー、ベースネックホルダー、ヌバック風革ハギレ、端革ハギレなどを測定し、製造国不明のヌバック風革ハギレから、ベンジ
ジン、オルト-トルイジン、オルト-トリジンなどが検出されています。

化学物質に関連する2月の厚労省公表資料

2月4日 第5回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会資料

第 4 回検討会における意見の中で
「義務となっていることをやっていない企業に実効性を持たせるには罰を与えるということについても検討が必要」
「リスクアセスメントは自律的なシステムであり国が決めたことを守ればいいということではないので経営者の理解・覚悟が重要」
「30 年の長期保存させている健康診断結果等の情報について一元的に管理保存し例えば発がんとの関係などの分析に活用するべき」
などはその通りだと思いました。
また「人材の知識レベルを上げないと自主対応型の仕組みは難しい。いま中小でやれといっても困難」というのは確かに実態がそうなので人材育成や確保など制度上の仕組みをつくる必要がありそうで今後の検討の進め方(案)にも反映されていました。

2月4日 第1回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会議事録

2 月 7 日 化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)について

最近問題になったアクリル酸メチル及びアクロレインの追加。
「労働安全衛生法第 28 条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する件」等の周知について

2 月 10 日 令和元年度「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書

塩基性酸化マンガンと溶接ヒュームを特定化学物質に加え来年 4 月施行予定です。
溶接ヒュームはIARC が2017 年グループ 1(ヒトに対する発がん性あり)に分類したことを受けてと思いますが、10年以上前に滋賀医科大の西山勝夫教授から溶接ヒュームの曝露防止をするように言われました。
かつて工場の工務職場は溶接ヒュームで空気が青白く見えるほどでしたが現場の方々が色々と工夫を重ね局所排気装置を改善して溶接不良を起こさずにヒュームを排気できるようにできました。強い風があたると溶接不良が起こるので今回の改定もそこを配慮した内容になっていますが、ヒュームの拡散は後回しにされた感があります。

2 月 12 日 第 1 回建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策検討会 工作物に関するワーキンググループ議事次第・資料

日本では事前調査の不足やアスベスト飛散・曝露防止措置を講じる技術が浸透していないため十分な対策がされないまま解体工事がされるケースがままあります。この問題は喫緊の課題です。

2 月 14 日 第 6 回建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策検討会 議事次第・資料

2 月 14 日 第 2 回建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策検討会 船舶に関するワーキンググループ議事次第・資料

2 月 17日 「個人サンプリング法による作業環境測定及びその結果の評価に関するガイドライン」

2 月 19 日 第 2 回建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策検討会 工作物に関するワーキンググループ議事次第・資料

2月21日 2019年度第4回化学物質のリスク評価検討会(ばく露評価小検討会)議事録

2月25日 2019年第2回化学物質のリスク評価検討会(遺伝毒性評価ワーキンググループ)資料

第8回三星化学工業事件口頭弁論

3 月27日 13時30分 福井地裁 2号法廷
裁判に引き続き、AOSSA(アオッサ)601Aにて報告集会

職業がんをなくそう集会 in 福井

18 時より20 時予定AOSSA(アオッサ)601A

<お知らせ>
職業がんをなくそう集会in東京 新型コロナウイルスの影響の見通しがつかないため、当面延期いたします。