ウーバーイーツユニオンが労災保険制度見直し-「労基法上の労働者」から対象拡大の法改正求め要望書提出 2020年8月13日

「運営主体の保険料負担」「適用対象拡大の法改正」求め

ウーバーイーツユニオンが労災保険制度の見直しを求めて、8月13日、加藤勝信厚生労働大臣に対して要望書を提出した。今回の要請は、厚労省が、労災保険の特別加入制度に関する意見募集を14日まで行っていたことに合わせたもの。

「労災保険制度における特別加入制度の対象範囲の拡大 」を検討するにあたり、国民の皆さまから提案・意見を募集します(厚生労働省)

同ユニオンは昨年10月に結成、配達員の労働環境の改善とそれを通して、全てのプラットフォームワーカーが安心して働ける社会の実現を求めている。

現在、厚生労働省は、労災保険の特別加入制度の対象拡大を視野に検討を行っている。ウーバーイーツユニオンはさきごろ、配達員の事故についての調査報告書をまとめ、同報告書を踏まえて今回の要望も行われた。

要望に同行した東京労働安全衛生センター事務局の天野理氏によると、急な申入れにもかかわらず、厚生労働省労災管理課の担当者と約1時間ほど話をすることができ、「今回の要請内容は省内で共有する。労政審の労災保険部会では、「現行の特別加入の対象拡大」について検討していく方向であり、9月以降も、労災制度に関する意見募集は継続していく」(厚労省担当者)とのことである。

今回の要望で特に注目されるところは、

よって、ウーバーイーツユニオンとしては、労災保険制度の見直しにおいては、「特別加入」の拡大で済ませるのでは なく、ウーバーのような労働力を確保して事業を行う企業が労災保険の保険料を事業主負担する形で、労災保険の適用拡大を行うよう要請いたします。
具体的には、現在の労働者災害補償保険法を改正し、労災保険の対象を定めた条文を新設して、「労務を提供し、 その対価を得ている者」など、現行のフリーランスの労働実態に即した対象の定義を行い、適用対象の拡大を行うこと を要請いたします。

2020年8月13日ウーバーイーツユニオン要望書より

と要望書にあるように、つまりは、現在、行われている議論が「特別加入制度の適用対象拡大」となっているが、そこにとどまらないで、労災保険法本体において法の対象を「労基法上の労働者」から拡大することを含めて検討するように要望するということなのである。

労災保険法では労基法上の労働者を対象とするとなっているため、形式的に委託契約や請負契約のもとで働いている場合、常に「労働者性」の問題が発生し、労災保険法の対象外とされることも多い。ウーバーイーツ配達員のようなプラットフォームワーカーはその典型だ。

この際、労災保険法の適用対象の定義を労基法上の労働者から「労務を提供し、 その対価を得ている者」などに拡大せよ、そして、対価を払っている会社に保険料負担をさせるべきだ、という要望=提起は、現代的で、理にかなっている。

ウーバーイーツユニオンは事故報告書で次のように明確に述べている。

6、提言
私たちウーバーイーツユニオンは、今回の事故事例調査を踏まえて、日本政府およびウーバーに対して、以下の点を提言・要請する。

(1)日本政府に対して
現在の労働者災害補償保険法を改正し、その対象範囲を拡大すること。具体的には、同法に労災保険の対象となる「労働者」を定めた条文を新設し、「労務を提供し、その対価を得ている者」など、現行のフリーランスの労働実態に即した対象の定義を行い、適用対象の拡大を行うこと。
なお、私たち配達員は、今の一定の自由がある働き方の下で、安心安全に働きたいと考えている。そのため、日本政府に対して、現在のプラットフォームワーカーやフリーランスの労働実態に適した形で、労災保険の対象を拡大する法改正を行うよう求める。

ウーバーイーツユニオン 事故調査プロジェクト報告書

労災保険制度の見直しに関する要望書
(2020年8月13日)
~プラットフォームワーカーのためのセーフティーネットの保障を求めます~
ウーバーイーツユニオン

2020年8月13日(木曜日) 【要望書】厚労省へ提出してきました(ウーバーイーツユニオンHP)

ウーバー労組「労災保険の適用拡大を」と厚労省に 配達中の事故31件 2020年8月13日 19時19分(東京新聞)