台風でも特殊雇用・プラットフォーム労働者はハンドルを握った 2023年08月11日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

史上初めての韓半島を縦断する台風6号北上の便りにも、特殊雇用労働者はハンドルを握った。働かなければ一日の日当を失う現実のためだ。事業主はどこにも所属していない不安定な雇用形態の労働者の安全を放棄する状況だ。大きな被害が心配される台風でも、プラットフォーム企業はプロモーションを進めて配達労働者を道路上に誘導し、宅配業者は労働者に自発的な安全の遵守を押し付けた。

台風で事故の危険が大きくなるのにプロモーションを掲げるプラットフォーム企業

<毎日労働ニュース>の取材を総合すれば、台風特報が出されたこの日、大型配達プラットフォーム三社は各々異なる対策を出した。「クパンイーツ」と「ヨギヨ」は一部地域で「プロモーション」を積極的に行った。

「配達の民族」はこの日午前、江原道・慶尚道・全羅道・済州道のライダーに、午前9時からのサービスを中止するとした。「台風6号の影響で運行が難しくなったことにより、ライダーの安全のために運営を中止する」というのが理由だった。

ソウル江南区で、「クパンイーツ」と「ヨギヨ」は『台風』という言葉でなく『気象悪化』という言葉を使い、ライダーたちにプロモーションを提案した。「クパンイーツ」はこの日、光州・釜山・大邱のライダーに、最大3万9千ウォンの「安全配達応援ミッション」の案内メールを送った。『気象悪化』によってライダーが足りなくなると、配達割増料金を、昼食と夕方の時間帯に付加した。似たようなプロモーションは、ソウルの江南地域でも実施された。「ヨギヨ」も、平時より約3千ウォン高いレベルのプロモーションイベントを開始した。「ヨギヨ」は「大邱の達西区と寿城区は、午前11時からサービスを中止した。」「気候悪条件時にライダーの安全のための段階的な対応策を用意し、運営している」と明らかにした。

この日、全国のほとんどの地域に台風特報が出されたが、複数の業者のプラットフォームで働く配達労働者のパク・ジュンソン(34)さんはハンドルを握った。「一日稼いで、一日食べて生きていくんですから休めないですよね。『仕事をしなければ良いんじゃないか』と 言う人がいますが、今すぐ食べて生きなければならないのに、それがどうしてできますか。」彼は「単価が変わり続けるので、単価が高い時に一件でも多くこなさなければ食べていけない」と付け加えた。

時々刻々変わる配達単価は、彼をアルゴリズムに滞在させ続けさせる。

雨風が吹く時は危険を覚悟して働くが、高い単価が必ずしも高い収益に直結するという保障はない。単価が高いからといって、仕事が多いという保障もないからだ。常にプロモーションが突然中止され、インセンティブ金額の変動も大きい。

クパンは「磨耗した靴を履くな」

この日の午前11時頃、クーパン・ロジスティクス・サービス(CLS)で、代理店と委託契約を結んで働く特殊雇用労働者「クイックプレッサー」として働くAさんは、ある物流センターで配送物品を積み込んでいる最中だった。彼は「(今日も)普通に作業する。」「危険な状況であればCLSが直接メールをくれると言っている。配送の締め切り時間を延ばすから、休んでから配送するように言った」と話した。彼はクイックプレッサーだ。配送一件当たりの手数料を受け取る。クパンが直接雇用した配送運転手の友人とは区分されている。働いた分だけ金を貰えるいう意味だ。

CLSは9日、クイックプレッサーに台風6号への対応に関する案内文を発送した。「運転手さんが所属している営業店に代わって案内します。風速の変化によって、配送運転手さんの安全のために、配送中止をキャンプから直ぐに要請することができるので参考にして、配送中止を要請した時には、直ちに配送を中止して欲しい」という内容だ。CLSは「配送が中止される時には、配送完了の終了時点を延長する予定」と付け加えた。クイックプレッサーは商品の種類によって配送時間が決まっている。昼間に働くクイックプレクサーの基準は、生鮮食品は午後8時まで、一般商品は午前0時までに配送しなければならない。

Aさんは公示に不満を表した。「今日中に何とか配送しろということ」で、「台風の影響は更に強くなり、実際の配送現場の状況は各々違うが、(CLSが)どのように(現場を)コントロールしようとするのか、現場の安全を担保するということなのか、疑問だ」と話した。彼は「配送時間を延ばすということは、結局労働時間が増えるということ」と付け加えた。

クパンの友人には、この日午後「下記事項を遵守して安全事故予防に努力」して欲しい、△磨耗した靴とクロックス、スリッパの着用禁止、△滑りやすい区間の大理石、エポキシ床に注意、△階段移動時の手摺りの使用、△雨道の運転時に車間距離を確保、などを勧告した。

クォン・ヨングク弁護士は「(安全規則を)遵守できるように、労働条件を先に作るべきだ。」「『雨道の運転時に車間距離を確保』せよということは、責任転嫁の根拠になり得る」と心配した。

最初から何の知らせも受けていないところもある。宅配労組のユン・ジュンヒョン郵便局宅配本部長は、「今日はなんの指針も出ていない状態だ。配送できなければ積極的に作業を中止せよ。その後は労組が責任を負うと話している状況」と説明した。

資料写真/チョン・ギフン記者

作業中止権を保障すべき、気候失業手当の提案も

職業環境医学専門医のイ・ヘウン韓国労働安全保健研究所長は、「厳しい猛暑の時や大きな被害が予想される災難状況では、業務を中止するのが正しい。」「色々な事業場で出退勤時の危険を憂慮して在宅勤務を勧告しているが、(外で)移動労働をする配達労働者の事故の危険は極めて高い」と説明した。イ・ヘウン所長は「作業中止に関する産業安全保健法の条項があるが、賃金に対する不安で、建設労働者であれ、配達労働者であれ、作業中止権を主張しにくい。」「作業中止権が保障されれば、実質的に労働者の生命を保護することができる。気候失業給付制度は開発するのに値するとても必要な制度」と強調した。

気候危機による大雨・大雪・猛暑のような異常気象現象が、しばしば予測できずに現れ、ライダーの安全も脅かされている。2020年に韓国交通研究院が発行した「2020配達代行運転者調査報告書」によると、2019年に続き、2020年にも、雪、雨、霧といった環境的な要因が運転者の交通事故原因の三位を占めた。

公共運輸労組ライダーユニオン支部は、気候失業給付の導入を提案したこともある。作業中止を一時的な失業状態と看なし、作業中止時間に通常の収入の70%程度を失業手当として支給しようという提案だ。

2023年8月11日 毎日労働ニュース カン・イェスル、チョン・ソヒ、オ・ゴウン、イ・ジェ記者

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