半導体工場で21年間働き、希少疾患・・・疾病判定委「労災不承認」/韓国の労災・安全衛生2025年7月27日

サムソン電子の器興工場で1994年から2015年まで勤務したチョン・ヒャンスクさん(49)は、2022年に骨にできる希少疾患である『巨大細胞腫』の診断を受けた。左あごの関節付近の骨にできた腫瘍を三回の手術の結果に除去したが、左の聴力と顔面の一部の感覚を失った。
チョン・ヒャンスクさんは労働災害だと思って、勤労福祉公団傘下のソウル南部業務上疾病判定委員会(疾判委)に療養給付を申請したが、先月27日に不承認の判定を受けた。チョン・ヒャンスクさんは作業中に放射線の一種である『電離放射線』等、危害物質に持続的にばく露したことが原因だと主張したが、受け容れられなかった。
チョン・ヒャンスクさんは21年間の記憶をたどり、なぜこのような病気になったのかを証明しなければならなかった。半導体工場で、どのような種類の放射性物質がどれだけ発生し、作業中にどれだけばく露し、この放射線と希少疾患である巨大細胞腫がどのような相関関係があるのかを、直接明らかにしなければならなかった。しかし、半導体製造に使われる物質の大部分は営業秘密なので、労働者は解らない。
疾判委は「電離放射線にばく露したという事実が明確に確認されておらず、電離放射線が巨大細胞腫の発病に影響を及ぼすという科学的な根拠が不足している」とし、チョン・ヒャンスクさんの巨大細胞腫を業務上疾病として認めなかった。
チョン・ヒャンスクさんは「労災を申請すると、今になって『どんな物質にばく露されたことがあるのか?』『証拠があるのか?』と尋ねてくる。」「100万人当たり1人の割合で発生する希少疾患の巨大細胞腫の患者が同じ工場で二人発生し、一人は既に亡くなっている。これは偶然の一致か」と話した。
疾判委が構造的に、医学的な証拠だけに過度に依存するように構成されているという主張が出ている。疾病と労働環境の因果関係を幅広く調べなければならないのに、委員が偏重されているということだ。
三月現在で勤労福祉公団が公開した委員名簿によれば、地域別の疾判委に、医師・弁護士・労務士・労災の専門家など、計789人いるが、この内、医師が490人で半数を越える。
半導体労働者人権団体の「パノリム」のイ・ジョンラン労務士は、「労災保険制度の趣旨から外れる判断にならないために、法制度と疾判委の整備が必要だ。」「多くの社会的議論によって業務上疾病の認定基準については、医学的基準という物差しだけで狭く見ないように、社会通念上の基準に従う、規範的相当因果関係というものを導入しなければならない」と指摘した。
チョン・ヒャンスクさんは「疾病管理本部が『因果関係なし』と通知した6文字に無力感を感じた。」「希少病という理由で、原因を見付けるのが更に難しいというが、発病原因を説明できなければ、ただ個人の『運』と見做されるべきなのかを聞きたい」と話した。チョン・ヒャンスクさんは、勤労福祉公団に不承認取り消し訴訟を提起する計画だ。
2025年7月27日 京郷新聞 ペク・ミンジョン記者