宅配労働者、28年間の『ただ働き』分類作業から解放された 2020年1月21日 韓国の労災・安全衛生
宅配労働者の過労死防止対策を議論してきた社会的合意機構が、分類作業の責任を会社が負担するように明文化することで最終合意した。分類作業はこの間『ただ働き』と呼ばれて、宅配運転手を働き過ぎに追い込む原因と指摘されてきた。合意が遅々として進まず、27日にストライキを予告していた全国宅配労組は、ストライキ計画を撤回した。
宅配労働者過労死防止対策のための社会的合意機構は21日、国会の共に民主党の会議室で『過労死対策一次合意文』を発表した。社会的合意機構は、労組側の宅配労働者過労死対策委員会と宅配社側の韓国統合物流協会、政府(国土交通部・雇用労働部など)、共に民主党・民生連席会議、消費者団体などが参加して、先月初めにスタートした。
分類作業に宅配社の責任を明示
合意文には、先ず、宅配運転手の業務を『集貨・配送』と決めて、分類作業は宅配社が責任を負うことを明示する内容が入れられた。分類作業の費用と責任を宅配運転技士に転嫁しないという内容も入れられた。8日に国会を通過した生活物流サービス産業発展法にも分類作業の責任の所在は明示されなかったが、これを補完する合意が成立した。
分類作業は、宅配労働者の業務強度を高める最も大きな原因に挙げられてきた。昨年末の雇用労働部の調査では、名節などで業務が増えるシーズンには、5時間以上も分類作業をする宅配労働者の比率が62.6%に達した。合意文には、自動化設備がないなどの理由で宅配労働者がやむを得ず分類作業を行った場合、宅配社と営業店から手数料を受け取れるという内容も入れられた。
分類作業のための人員の増員も約束した。昨年10月、CJ大韓通運は4千人、韓進・ロッテは1千人の分類人員を増員すると明らかにした。しかし労組は、現場ではこの約束が守られていないと何回も指摘した。このために、政府は内国人の求人努力にも拘わらず人材を求め難い事業場などに、訪問就職ビザ(H-2)を持った同胞の外国人労働者の採用を許容する方案を推進することにした。更に、宅配社は合意によって、分類作業設備の自動化にも取り組まなければならない。
分類作業 | 宅配事業者の責任で宅配技士への費用転嫁禁止措置の施行 設備の自動化推進計画を樹立しなければならない |
労働時間 | 週最大作業時間は60時間 月最大作業時間12時間を目標 |
深夜配送 | 午後9時以後の配送制限。物量の増加など不可避な場合は10時まで |
遅延配送 | 深夜配送の防止のため、配送予定日から最大2日間まで遅延賠償の責任を問わないことに |
名節での特別対策 | 1月25日~2月20日を『宅配従事者保護特別管理期間』に指定 |
標準契約書 | 分類作業の明確化、作業範囲などを入れて今年の上半期までに準備し、9月までにこれを根拠に運送委託契約を締結 |
深夜配送の制限、遅延配送の許容
社会的合意機構は、夜9時以後の深夜配送も制限することにした。宅配労働者の週当たり最大作業時間は60時間、一日最大作業時間は12時間以内を目標にすることにした。深夜配送を防止するために、配送予定日から最大2日後までは、遅延配送に対する責任を問わないことにした。公正取引委員会は宅配標準約款にこれを反映させる方案を検討することにした。
社会的合意機構は、宅配運転手の適正作業条件と不公正取り引き行為の禁止などを含む標準契約書を、今年上半期までに用意することにした。合意履行のためには追加の費用負担が伴うため、宅配運賃の現実化も推進する。これらを含む宅配費用・宅配料金の取り引き構造改善方案は、社会的合意機構の二次合意の中で議論することにした。旧正月の連休期間(2月11~14日)を含んで1月25日から2月20日までを『宅配従事者保護特別管理期間』として指定する方案にも合意した。
労働界「分類作業から完全に解放」
社会的合意機構に参加した宅配労働者過労死対策委のチン・ギョンホ執行委員長はこの日の記者会見で、「宅配導入から28年間『ただ働き』だった分類作業から、宅配労働者が完全に解放された」と評価した。
市民社会も意味のある進展だと評価した。参与連帯・労働社会委員会のイ・ジョウン専任幹事は「合意文は具体的で、問題になった部分に関する対策が相当部分入れられた。社会的合意機構がもう少し早く構成されていたら、一人でも死亡を防ぐことができた」とし、「宅配料金算定の時の『バックマージン』(リベート)などの問題は、二次合意の中で議論する必要がある」と話した。
27日に予定されたストライキのために前日から争議行為賛否投票を行っていた労組は、今回の合意導出の後で緊急中央執行部会議を開いて、ストライキ計画を撤回した。団体交渉が決裂してストライキを宣言した郵便局の宅配労使もこの日、社会的合意を遵守することを団体協約に明示して交渉を妥結した。全国宅配労組のキム・テワン委員長は「郵便局の宅配労使の団体協約に社会的合意の内容が明文化された。各宅配社が手本とすることを期待する」と話した。
2021年1月21日 ハンギョレ新聞 パク・ジュンヨン記者