一日15時間働いても夜10時を超えなければ良いのか 2020年11月12日 韓国の労災・安全衛生
12日、政府が『宅配運転手過労防止対策』を出したが、労働界は宅配労働者の長時間・高強度の劣悪な労働環境を改善するには不十分だと評価した。労働環境改善の責任を負うべき義務のある宅配会社には免罪符を与え、宅配労働者を当面する過労から保護するには力不足ということだ。
宅配労働者過労死対策委員会(対策委)はこの日声明を出し、「長時間労働問題解消のための事業主の措置義務強化、週5日勤務(土曜日休業制)の推進、標準契約書の導入、不公正な慣行の改善、適正手数料の提供のための宅配価格構造の改善などは、肯定的に評価する」とした。
しかし残念な課題も多い。特に、政府が午後10時以後の深夜配送を制限するとした労働時間短縮案については、ほとんど否定的に評価した。キム・テワン宅配連帯労働組合委員長は「夜10時に勤労時間を制限することは、むしろその時間までは働いても良いということ」とし、「相変らず一日15時間、週90時間働いてもかまわないと、労働部が教えたようなもの」と話した。政府の資料によれば、宅配労働者の一日の平均作業時間は12.1時間、一日平均の作業量は約250件(配送177件、集貨73件)にも達している。
勤労者でなく事業者に分類される宅配労働者の特性上、生計費を稼ぐために昼夜を走るほかはない状況で、勤労時間短縮がどれくらい実効性あるかという疑問も提起された。パク・ソグン対策委共同代表は「食べていくために働くので、誰が死にたくて働くだろうか。」「今回の対策が有効に作動するためには『最低配送料』のような、生計費保障のための制度が必要だ」と話した。現在の配送手数料は1件当り800ウォン内外だ。2002年には1件当り配送手数料が1200ウォンだった。コロナ19で物量が増加すれば所得も増えなければならないが、手数料の下落によって、一定の収入を維持するためにはより多くの配送物量をこなさなければならないということだ。
労働界はこの日イ・ジェガプ雇用労働部長官が分類作業に関して「労使の意見をまとめて、標準契約書に反映するなど、合理的に改善する」と話したことについて「後退した対策」と口をそろえた。分類作業はこの間、宅配労働者の過労死の核心要因と指摘されてきた事案だ。パク代表は「宅配会社が既に分類作業に追加人員を投入するとしている状況で、労使間の意見の取りまとめに再び言及した」として「政府は法的に配送業務と分類業務を分離するなど、制度的な装置を準備すべきだ」と話した。韓国労総も「分類作業の人員を直ちに投入するなど、明確な対策を用意すべきだ」とした。
これらは、事実上元請けの宅配会社が、各種義務から免れた点も指摘した。パク代表は、宅配労働者の健康診断実施義務を代理店の責任にしたことについて、「代理店は形式上の使用者に過ぎず、実際の使用者は後にいる(宅配会社)」とし、「産業安全保健法上、建設現場や社内下請けと同じような場合には、産業災害が発生すれば元請けにも責任を取らせる特例を、宅配労働にも適用すべきだ」と話した。
政府が産災保険適用除外申請を廃止でなく、一定の事由で許容したことに関しても批判が多かった。対策委は「使用者に悪用の余地を残した」として「宅配労働者の産災保険適用率が低い根本の理由である産災保険料の負担問題について、何らの言及もなかったことは残念」とした。韓国労総も「宅配労働者を含む特殊雇用労働者の産災保険加入率が低調なのは、専属性(特定の会社に所属する)と適用除外などのため」とし、「専属性の廃止を前提条件に、産災保険料の100%事業主負担など、特殊雇用労働者のための産災保険制度を作らなければならない」と話した。
2020年11月12 日 京鄕新聞 イ・チャンジュン記者
http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=202011122104005&code=940702