車両整備士の頸肩腕障害、労災認定-寒冷下の洗車作業で症状悪化●東京
記事/お問合せ:東京労働安全衛生センター)
東京・中央労働基準監督署は1999年5月、車両整備士のHさん(男性・30歳)が仕事が原因で発症した頸肩腕障害を業務上疾病と認定し、療養補償給付を支給した。
Hさんは、T自動車販売会社で2年前に、リストラ策による下請会社への出向強要を拒否し、東京管理職ユニオンに加盟した。団体交渉を通じて出向を撤回させたが、整備工の仕事から雑務職に転換され、車両の洗車だけを命じられた。
1997年12月、右肩の痛みを訴えて近くの医院を受診し、右肩腱鞘炎と診断されたが、手の冷えと肩の痛み、腕のだるさが治らないため東京労働安全衛生センターに相談に来られた。ひまわり診療所の三橋医師の診察で、両上肢の頸肩腕障害及び振動病の疑いで労災請求に取り組むことにした。
症状悪化は寒冷期の洗車によるものだが、以前に板金工場でHさん一人が整備士として車両の重整備を担当していたとき、振動工具を使用したり、上肢に過度の負担のかかる作業を行ったため、発症したものと考えられた。申立書を作成した後、作業内容と上肢への負担を詳しくまとめた自己意見書を中央労基署に提出し、交渉を続けてきた。
重整備には車両のエンジン脱着、足回り交換、インストルパネルの脱着、アライメントの点検調整等がある。車両の下に潜り、スパナやハンマーを保持して上肢を挙上する作業を続けたり、振動工具のインパクトレンチを使用した。とくに前の職場の板金工場には自動車修理の設備が不十分で,Hさんのみ重整備を担当させられていた。
中央労基署は、局医の意見をもとに、Hさんの頸肩腕障害の発症は、こうした上肢に過度の負担がかかる作業内容と業務量に原因があると認め、業務上認定した。初診の医院の転医後の傷病名が異なり、会社が非協力的だったことを理由に調査期間が長引き、認定まで発症から1年
6か月、請求から約1年3か月を要した。
安全センター情報1999年8月号