また日系ペルー人頸肩腕障害-佐川急便宅配集荷センター●東京

記事/お問合せ:東京労働安全衛生センター

日系ペルー人のPさんは、2007年11月頃から左肩の痛みを感じはじめていた。

Pさんは、頚肩腕障害、腰痛、頚椎症など、複数の人が作業関連の疾病を発症し、業務上認定を受けている江東区内の佐川急便の宅配集荷作業の現場で働いていた。年末年始、痛みは徐々に強くなり、兄弟から分けてもらったペルーの痛み止めの薬を飲んで仕事を続けていたが、肩だけでなく左手指から左前腕にしびれが広がり、3月には肩が上がらなくなってしまった。

仕方なく3か月ほど休職した後、夏に復職した。荷の仕分けは、左肩の負担の少ないラインに仕事を回してもらったものの、左をかばって右を使うので、間もなく右にも痛みは広がった。8月、トラックからの荷下ろし作業中に、トラックにかけた板上を滑り落ちてきた荷が痛めている左肩とあばらに当たってしまい、半月ほど休業。医者には今の仕事は止めた方がと言われたが、子どもの学費などの支払いなど、経済的な事情で9月に仕事に戻った。

トラックの荷下ろしは外してもらったもの、その後も痛みのため仕事をしばしば休むことが多くなった。痛みと痺れは、左右の指先から前腕、上腕へと広がって、特に左腕を使う作業はかなり難しくなってしまった。
2009年4月、イグナチオ教会で開かれたカトリック東京国際センター(CTIC)、下町ユニオン、東京労働安全衛生センターの緊急相談会に、たまたま群馬に住む弟と参加していたPさんは、後日、労災の後遺症に悩む弟とともに亀戸に相談にきた。

Pさんは、ひまわり診療所を受診し、頚肩腕障害と診断されたが、「できるだけ仕事を続けてくれ」と会社から言われているので、その後も治療だけは受けながら、仕事を無理して続けていた。6月、取り扱う荷の量が多くスピードも要求される集荷場に転属となり、9月、ついにこれ以上の痛みには耐えられないと休職した。

会社に労災請求に協力してくれるように頼みにいくたびに、「何を企んでいるんだ!」と2時間も3時間も責められた。Pさんは、「そんなに言うなら、一緒に先生に会いに行こう。病気のことを説明してくれるから」と言ったが、結局会社はPさんの言葉には応えず、労災に協力してくれなかった。

Pさんは、元々働き者で、ウォーキングやサイクリングが大好きだったが、それもあまりできなくなってしまった。

ここ数年の間に、同じ佐川の現場では作業関連筋骨格系の労災認定者が4名も出ている。いずれもセンターがサポートしており、Pさんの認定も明らかだった。

認定まで1年近くかかりその間、ずいぶん経済的に苦しい時期もあった。「もう故国に帰ってしまおうか」と思うこともしばしばあったようだが、今年6月、亀戸監督署が業務上疾病と認定。いまは、安心して鍼灸治療を受けるたび、金曜相談会の会場に顔を出しては、「ペルーは美しくていいところだよ」と、故郷の自慢を楽しそうに話してくれている。

安全センター情報2010年12月号