過労死した宅配運転手、一週間に60時間以上働いた 2020年8月31日/韓国の労災・安全衛生

宅配運転手の死が過労死と認定されるためには、どの程度の労働量が必要だろうか。昨年職場で倒れたある宅配運転手は、倒れる直前の12週間平均で週74時間働いて過労死と認められた。また他の宅配運転手は一日に平均600kg以上の品物を運んだことが明らかになり、過労死と認定された。これらには『週52時間勤務』は別世界の話で、一日に累積で250㎏を越える重量を運んではならないとした韓国産業安全保健公団の指針は、無用の長物だった。

31日、正義党労働本部はカン・ウンミ議員を介して、昨年職場で倒れた後に勤労福祉公団から産業災害を承認された宅配運転手5人の、業務上疾病判定委員会の判定書を入手して公開した。勤労福祉公団疾判委は、脳・心血管系疾患、筋骨格系疾患、精神疾患など、業務との関連性を評価しにくい疾病の業務上の可否を判断する機構だ。

判定書には、昨年職場で脳血管と心血管系疾患で死亡した宅配運転手5人の、疲れて辛い労働がそのまま書かれていた。5人中4人は倒れる前の1週間に60時間を超えて働いた。その中でも現代宅配で働いた労働者Aさんの労働時間は79時間30分で、最も長かった。週6日勤務だと仮定しても、一日平均13時間15分ずつ働いたことになる。

事故が起こった週だけに特別に仕事が集中したわけでもない。CJ大韓通運で働いて、昨年3月に倒れたBさんは、倒れる前の3ヶ月間に、毎週平均74時間16分働いた。毎日午前6時に家を出て、昼休みもほとんど休まず働いて、午後8~9時に帰宅した。勤労福祉公団は発病前3ヶ月間に、週当り60時間を超えて働いたり、発病前1ヶ月間に週当り64時間を超えて働いた場合に『過労死』と判断する。『週52時間制』が導入されたのに、過労死の認定基準は高いままにしている。

超長時間労働だけでなく、重い宅配物を休む暇もなく運ばなければならない労働環境も過労死の原因になった。郵便局の宅配員として働き、昨年5月に死亡したCさんが、死亡前3ヶ月間に運んだ宅配の累積重量は5万3935㎏だった。産業安全保健公団は、一日に250kg以上の重量物を扱う作業を筋骨格系負担作業に分類しているが、Cさんは一日平均642㎏の宅配物を積み卸ししていた。

この外に、宅配物の破損・紛失に対する責任を宅配労働者が負わなければならないことも、ストレスの一要因と認定された。実際Aさんの場合、死亡3日前に宅配物の破損問題で顧客と激しい言い争いをしたが、疾判委はこれも疾病に影響を与えたと判断した。

カン・ウンミ議員は「宅配物が暴走する秋夕を前に、宅配労働者の過労死を防止するためには、実質的な勤労時間短縮、宅配物の重量による労働強度の緩和対策、紛失の負担に対する対策まで、総合的に準備する必要がある」と話した。

2020年8月31日 京鄕新聞 イ・ヒョサン記者

http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=202008312119025&code=940702

日本語訳:中村猛