職業がんをなくそう通信12/第7回職業がんをなくそう集会 in 大阪&総会
2018年7月27日
職業がんをなくす患者と家族の会https://ocupcanc.grupo.jp/
目次
第 7 回職業がんをなくそう集会 in 大阪&総会が開催される
7 月 21日大阪・PLP 会館 4階中会議室で開催され、8 団体 18 名(うち専門家 4 名)の参加がありました。当日は大変な猛暑で参加予定者からも暑さで体調を崩されるなどの連絡があり例年に比べ参加が少なくなりました。一方で大阪・徳島・和歌山・京都・福井・韓国など多方面からの参加がありました。
【記念講演】三星化学膀胱がん裁判の意義
池田直樹弁護士(あすなろ法律事務所)
三星化学工業における損害賠償訴訟は、芳香族アミンによる職業がんに関する日本初の裁判。この裁判の重要な意義としては①一体何が起こったのか②この裁判で何を問おうとしているのかを広く皆さんに知っていただくことがあります。
会社はまともな衛生管理を怠り「全身真っ白」「素手で取り扱い」が横行しばく露があった労働者に 2015 年から2016 年にかけて相次いで膀胱がんが発症し労災認定されました。膀胱がんの多発は重い事実です。
会社はがん発生の予見可能性について日本中で誰も予見できなかったなどと主張しますが国の規制がなければ安全とするのであれば犠牲者が出ることが前提となってしまいます。今や国内外の潮流は予防的措置(毒性が分からないものはばく露させない)であり会社主張は時代錯誤と言わざるを得ません。また損害についての会社の考え方は単なる交通事故感覚であり再発への不安や生涯検査を続けること、検査伴う精神的肉体的苦痛を全く考慮していません。
次回は9 月3 日福井地裁となっていますが世論による包囲はまだまだ弱いです。運動の強化と皆さんの協力を期待します。
【基調報告】職場からの報告
1. 化学一般関西地本三星化学工業支部田中書記長
これまでの劣悪な労働環境と杜撰な衛生管理の実態が話されました。これらは環境改善を要求したりする従業員に対し「汚れ職場」である乾燥工場へ異動させられたり人事考課制度であからさまな賃下げをしたり等人権を無視した労務管理が一体となっていたことを指摘されました。
2000 年前後に従業員が膀胱炎や腎出血、メトヘモグロビン血症と診断されたり血尿が出るなどといった事態が複数発生した際も対策を講じることはなく、せめてあの時ばく露対策がされていればこんな事態(膀胱がん多発)を避けられたのではないかと思わざるを得ないことも訴えられました。
今年の 2 月 28 日福井地裁に提訴したのは、会社にこれまでの非を認めさせ「二度と安全配慮義務違反はいたしません」といわせ三星化学での「職業性膀胱がんを私たちで最後にする」強い思いがありますが、現在会社は発がんは全く予想できなかったというだけでなく「オルトトルイジンが原因で発がんしたという根拠はない」という驚くべき主張をしています。今後の運動に強い思いをぶつけたいと締めくくりました。
2. MOCA ばく露集団に膀胱がんの多発
熊谷信二前産業医科大学教授より本年5月日本産業衛生学会にてある事業場で 12 名の膀胱がんが発症していることが報告され、この事案についてレポートされました。三星化学の膀胱がん多発事案を受け厚労省が調査した結果 MOCA の取り扱いと思われる膀胱がんの多発について 2016 年 9 月公表されましたがその後の調査で発症者が増えていることや当該者が労災申請していないのではないか等の懸念があり今後厚労省への働きかけをしていく方向が示されました。職業がんは広く社会に認識させていく必要があり本事案に患者と家族の会も積極的にかかわっていきたいと思います。
3. 和歌山の化学会社より現場報告
当該事業場からは膀胱がんが2件発生し労災認定されていますが、原因物質としてはジアニシジンと MOCA ではないかと報告されました。ジアニシジンは数年前に製造中止をしているが MOCA は現在も製造しており②の報告を職場で紹介したい旨発言されました。
4. 徳島職業がんと闘うOT の会
かつてオルトトルイジンを直接製造し蒸留作業を実施していた従業員に 2016年膀胱がんが発症し現在も労災認定判断が出ていない。当初情報が得られず大変混乱したこと、会の結成から当時の職場環境や作業の様子を報告書にまとめたこと、判断が近づいているが密閉とは言え様々な部分からばく露があったことを訴えていく旨説明されました。
5. 京都大手印刷会社での胆管がん労災認定
京都大手印刷会社で印刷業務に従事した労働者が退職後に胆管がんに罹患し患者と家族の会及び京都職業病対策連絡会の協力を得て 2016 年末労災申請し本年 4 月労災認定されました。これは大きな前進です。総会では活動報告・決算報告を行い承認を受けました。会費の継続手続きが進まず財政強化が課題となりました。