石綿・じん肺最新課題検討 :第31回じん肺・アスベストプロジェクト/東京

2020年3月15日、東京で第31回じん肺・アスベストプロジェクトが、労働者住民医療機関連絡会議と全国安全センターの共催で開催され、医師、弁護士、活動家ら20名が参加した。新型コロナウイルスの流行があり、被災者や一部地方からの参加は見合わせた。

大気汚染防止法改正

建築物のずさんな解体による石綿飛散が問題になり、2013年6月に大気汚染防止法が改正されて5年が経ち2019年度の法改正に向けて、厚生労働省と環境省でそれぞれ検討会と小委員会が開かれ、2020年3月には大気汚染防止法改正案が決定された。この間、環境省の中央環境審議会石綿飛散防止小委員会の委員として参加した東京労働安全衛生センターの外山尚紀さんが改正案の問題点について報告した。これまでにない大きな改正で、規制の対象の拡大・強化が盛り込まれたが、石綿除去中の大気濃度測定の義務化は見送られるなど、多くの課題は残された。今後の現場での取り組みが重要である。

アスベストによる卵巣がん

ドイツでは、2016年に「職業病」に関する医療専門家諮問委員会がアスベストによる卵巣がんを新しい職業病として追加するよう勧告した。アスベストセンターの名取雄司さんの報告によると、①アスベスト粉じんによる肺疾患に関連、②アスベスト粉じんによって引き起こされた胸膜疾患に関連、または、③職場で少なくとも25繊維年のアスベスト繊維粉じん累積量に曝露したという証拠を有する卵巣がんは職業病とした。

じん肺診査へのCT導入問題

じん肺管理区分診査にCT写真を導入するための厚生労働省の委託研究である「じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究」(研究代表者・長崎大学芹澤教授)の2018年度の報告書について、亀戸ひまわり診療所の平野敏夫が報告した。じん肺標準写真集の症例を改めて検討しているが、標準写真の粒状影0/1が1/0、1/0が1/1、1/1は1/2と読影され、標準写真ではこれまで軽目に診断されていたことを認めている。
これまでじん肺1型として管理区分申請したにもかかわらず、PR0/1と診断され管理1とされていたのである。この検討結果は、厚生労働省の委託研究であることを考えると、重大な問題である。今後、標準写真の改訂が行われるが、芹澤研究班だけにその選定をまかせるわけにはいかない。産業衛生学会呼吸器疾患研究会でも何らかのかたちで検討できるようにすべきである。

石綿労災の特別調査班

亀戸ひまわり診療所の加藤浩次の報告では、東京労働局管内の石綿関連疾患の労災申請事案は2019年4月から労働局の労働基準部労災補償課「石綿班」が調査することになっている。その結果事務処理が早くなっていて、医師への医証の依頼も早くなっている。愛知や大阪でも同様のやり方をしているようだ。これはこの間労働基準監督署の事務官が減らされてきていることによる対応である。事務処理が迅速になっていることは確かだが、被災者にとって改善になるかどうか、注意して経過をみる必要がある。

タルク混入ベビーパウダー・タルク問題

全国安全センターの古谷杉郎事務局長からは、中皮腫サポートキャラバン隊の活動報告、ベビーパウダーの原料であるタルクに混入しているアスベストによる卵巣がん等についての情報提供があった。

じん肺合併ANCA関連血管炎

続いて、神奈川労災職業病センターから法務局の死亡診断書廃棄の問題、関西労働者安全センターからじん肺に関連した免疫疾患「ANCA関連血管炎」の労災認定の取り組み、名古屋労災職業病研究会から中皮腫患者の休業補償不支給に対する取り組みの報告があった。

記事:東京労働安全衛生センター

安全センター情報2020年8月号