アスベスト混入タルク問題:J&J社(ジョンソンエンドジョンソン)社から石綿対策全国連に回答来信、要請と質問を送付 2020年5月25日現在

J&J社「日本での対応予定なし、安全です」に対してBANJANが「ダブルスタンダード指摘、販売中止と徹底した情報開示」求める

カナダとアメリカでのタルクを原料とする製品の販売中止を決めたJ&J社に対して、石綿対策全国連絡会議(BANJAN)が5月22日、同社Webサイト以下の問い合わせしていた。

これに対して、5月25日午前中、J&J社から回答がきたとのことだ。

その中で、J&J社は日本で同様の対応をとる予定はなく、従来から同社のタルク製品の安全性は証明されているという説明を行っている。
しかし、そうであるならば、販売中止をする理由はないはずではなかろうか。

BANJANは改めてJ&J社に対して、あらためて要請と質問を行ったということである。
以下が、J&J社の回答とBANJANの再質問である。
もっとも重要なことは、情報開示の質と姿勢だ。その点でJ&J社の回答はとても及第とはいえない。

J&J回答 2020 / 5 / 25

石綿対策全国連絡会議 事務局長
古谷杉郎様

平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
この度は弊社ウェブフォームより製品に関するお問い合わせをお寄せいただき誠にありがとうございました。
お問い合わせいただきましたジョンソン®ベビーパウダー製品につきまして、北米で製造販売される製品と日本で製造販売される製品は異なるものですが、私どもが全世界で販売している製品に使用されております原料のタルクは、厳選選されたもので、品質、純度、そして規制水準において最も高い基準を満たすものです。
弊社が使用するタルクの安全性は様々な機関における研究や試験結果でも確認されております。
今回の発表は、北米(米国/カナダ)におけるもので、日本を含む他の国に及ぶものではございません。その為、日本では、ジョンソン®ベビーパウダー製品はこれまでどおり販売されます。
尚、弊社ベビーパウダー製品、成分(タルク)等に関する詳しい情報を下記の弊社米国ウェブサイト上(一部英語)に掲載しておりますのでご参照いただければと存じます。
https://ja.factsabouttalc.com/
万一ご不明な点やその他のご質問がございましたら、こちらのメールにご返信いただければと存じます。
この度は製品についてのお問い合わせを賜り誠にありがとうございました。
今後ともご指導ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
コンシューマー カンパニー
お客様相談室
〒113-0021東京都文京区本駒込2-28-8
文京グリーンコートセンターオフィス10F
フリーダイヤル:0120-101-110(月~金 9:00~17:00 土日祝除く)
https://www.jnj.co.jp/consumer」

BANJAN再質問 2020/5/25

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
コンシューマー カンパニーお客様相談室御中

お返事ありがとうございました。
私たちはそれでもなおタルクを原料とした製品の安全性に懸念を抱かざるを得ません。また、今回の措置が北米のみに限定されることは、国際的にダブルスタンダードとみなされざるを得ないと考えています。
貴社が日本でコーンスターチを原料とした製品を「すこやかナチュラルローション」という商品名で販売していることを知っています。私たちが求めているのも、より「すこやかでナチュラル」な商品です。
したがって私たちは、タルクを原料とした製品の販売を中止するという措置を、北米のみならず、日本を含めた世界の他の部分でも実施するよう求めます。

なお、以下をご教示並びに情報提供いただければ幸いです。
-「北米で製造販売される製品と日本で製造販売される製品は異なるもの」の意味
-日本で販売したタルク及びコーンスターチを原料とした貴社のすべての製品について、年(度)ごとの販売量、原料供給地・供給会社、製造地・製造会社
-日本で販売した製品に使用されたタルクのアスベスト含有について過去行われた検査結果(検査手法・ラボラトリーに関する情報含む)
-インドでは貴社はタルクを原料とした製品しか販売していないとの報道がありましたが、タルクを原料とした製品しか販売していない国

石綿対策全国連絡会議
事務局長 古谷杉郎

参考

2020年5月19日、米ジョンソンエンドジョンソン(J&J)社はアメリカとカナダでのタルクを原料とするベビーパウダーの販売を中止すると発表した。J&J、米・カナダでタルク使ったベビーパウダー販売中止へ
(ロイター 2020年5月20日)
https://jp.reuters.com/article/johnson-johnson-babypowder-idJPKBN22V37U

問題の中心にある「ベビーパウダー」をはじめ、実にさまざな用途に原料として使用されるタルク(滑石)アスベストが混入することがあることは、知られている事実だ。(産業現場でタルクに職業的にばく露して、混入していたアスベストが原因だとして労災認定された中皮腫事例は現在までに相当数にのぼっている。)
いまから33年前の1987年、ベビーパウダーへのアスベスト混入が大きくメディアが取り上げられ、厚生省が通知を出すに至っている。

「さらに1987年7月にはベビーパウダーに石綿が混入しているという分析結果が、ショッキングなニュースとして大々的に伝えられた。分析を行った産業医学研究所・神山宣彦氏が1975年に行った分析結果ですでに確認されていたにも関わらず、石綿に汚染されていたベビーパウダーが流通し続けていたという事実も関心を煽ることとなった。厚生省(薬務局審査第2課長)は「ベビーパウダーの品質確保のための検討会」を設け、11月に、今後輸入、製造にあたって原料に石綿が含まれていないことをメーカー側に確認させるよう、各都道府県に通知した。また、学校で使用される石綿金網や石綿含有水道管のことなども問題になった。」

「アスベスト問題の過去と現在 石綿対策全国連絡会議の20年」(アットワークス社)

一方、日本におけるアスベスト混入タルクベビーパウダー問題のこれまでの経緯や現在の中皮腫発生状況との関連についても検討が必要ではないのか、といった疑問も禁じ得ない、そのような今回のJ&Jタルク・ベビーパウダー事件をめぐる状況である。

まずは、石綿全国連へのJ&J社の回答が注目される。