アスベスト混入タルク・ベビーパウダー問題の原点1987年そして1975年 その4 大正・ダリヤ・鐘紡・持田・明治

1986年5月石綿混入は5社

「その3」で次の点は今の時点において、明らかになるべきだと述べた

  • 1975年調査で調査された7社7製品のメーカー名と商品名、石綿がみつかったという5社のメーカー名と商品名。
  • 1986年調査で調査された11社19製品のメーカー名と商品名、石綿がみつかったという5製品のメーカー名と商品名。

実は、1986年調査については、結局、石綿混入メーカー名は報道されることになった。当然と言えば当然だ。日本消費者連盟は申し入れを行うし、問合せは役所に殺到したはずだし、記者の突き上げもあったはずだ。

消費者連盟が製品回収など申入れ
聖教新聞 1987年7月3日

日本消費者連盟(竹内直一代表委員)は二日、厚生省に対しアスベストが検出された製品の回収と、混入していた製品、企業名などを公表するよう申し入れた。また、ベビーパウダーのメーカー各社に、アスベストが製品中に混入していないかどうかの回答を求める質問書を郵送した。
消費者連盟は「ごく微量の混入であっても、赤ちゃんが吸い込めば大人以上に深刻な影響を与える恐れがある」としている。

各社「回収中」/パウダー石綿混入
読売新聞 1987年7月3日夕刊

肺がんの原因物質とされるアスベスト(石綿)が混入していたと問題になったベビーパウダーを製造・販売していた五社は、三日、「混入が疑われる旧タイプを市場から回収している」など対応策を明らかにした。各社の回答は次の通り。

  • 大正製薬(商品名・大正ベビーパウダー)昨年12月からアスベスト量を極めて低くした新タイプを発売しており、二日、旧タイプの回収を指示した。
  • ダリヤ(ダリヤコドモ固形パウダー)昨年12月生産中止。三日、問屋などに残っている分の回収を指示。
  • 鐘紡(薬用ベビーパウダー)今年三月から純度の高い原料に変えた。48年からアメリカの基準で検査しているが、アスベストは検出されていない。三日、回収を指示。
  • 持田製薬(スキナケーク)アスベスト含有率は0.4%で米国の基準(0.5%)以下。しかも固形タイプで飛散しにくいので、安全性は高く、回収の予定はない。
  • 明治製菓(明治ベビーパウダーS)59年11月製造中止。昨年8月、業界に製造中止を通知。二日、流通在庫分の回収を指示した。

「自主改善進む」と厚生省、回収せず/石綿入りパウダー
毎日新聞 1987年7月4日

発がん性が指摘されている鉱物資源石綿(アスベスト)が国内ベビーパウダー製造会社5社の製品に混入、昨年春、市販されていた問題で、厚生省はこれらの製品について追跡調査していたが、各メーカーともすでに石綿を含まない上質の材料に切り替えるなど改善していることから三日、「安全上問題はない」と判断。製品回収には踏み切らず、業界指導を徹底することにした。

1975年石綿混入メーカーは?

1986年5月に神山宣彦らが調査した時点では、石綿混入があったのは、大正製薬、ダリヤ、鐘紡、持田製薬、明治製菓の5社だったことが、当時新聞報道されている。

1987年7月の報道時点までに、二人の研究者から、厚生省、業界、各社に情報提供され、善後策が講じられたのちの新聞発表だったことがみてとれる。

1975年にすでにベビーパウダーへの石綿混入が確認されている。1987年7月時点でのベビーパウダーの石綿混入メーカーの割合はぐんと下がっていた。 1987年7月までの間、それらの製品は販売が行われながら、メーカーや業界は内々に対策をとってきたのだろうか、その間どうなっていたのだろうか。

以上、1987年7月当時の報道記事を紹介してきたが、次に、そもそもの発端であった神山宣彦らの調査報告を紹介していく。