化粧品タルクと中皮腫の関係を確認したもうひとつの最新論文/アスベスト混入ベビーパウダー・タルク問題

2020年3月号で「化粧品タルクの健康影響に関する最新論文」として、中皮腫及び卵巣がんとの関係を確認した論文2本と、がんとの関係を確認できなかった論文2本を紹介したが、化粧品タルクに含有したアスベストによる健康影響を確認するもうひとつの最新論文が発表された。

化粧品タルクへの反復曝露による悪性中皮腫:75人の患者の症例シリーズ

Theresa S Emory, John C Maddox, Richard L Kradin
Am J Ind Med. 2020 June; 63(6): 484-489.

抄録

背景:アスベストは悪性中皮腫の既知の主要原因である。いくらかの化粧品タルク製品はアスベストを含有していることを示してきた。最近、化粧品タルクへの曝露が中皮腫の原因として示唆されている。

方法:知られているアスベストへの曝露が化粧品タルクへの反復曝露だけである75人の悪性中皮腫患者(女性64人、男性11人)を医学的及び法的協議によってレビューした。75例のうち11についてはアスベスト繊維を検査した。

結果:すべての対象は病理学的に悪性中皮腫が確認された。診断時の平均年齢は61+17歳。曝露から診断までの平均潜伏期間は+13年。平均曝露期間は33+16年だった。4件の中皮腫(4%)は、理髪師/美容師として働いていた者、または理髪店で清掃していた家族がいる者に生じたものだった。12件(16%)は45歳未満の者に生じていた(女性10人、男性2人)。48件の中皮腫は胸膜(女性40人、男性8人)、23件が腹膜(女性21人、男性2人)だった。2件は胸膜と腹膜の病気の併発を示していた。1件の心膜、及び別の1件の精巣中皮腫があった。大部分(51件)は類上皮組織型サブタイプで、二相型13件、肉腫型8件、リンパ組織球様2件、分化が不十分1件と続いた。アスベスチフォーム繊維の存在について非腫瘍細胞を分析した11人のうち、すべてがアンソフィライト及び/またはトレモライト・アスベストの存在を示した。

結論:中皮腫は化粧品タルクパウダーへの曝露によって発症し得る。これは化粧品タルクパウダーのアンソフィライト及びトレモライト汚染が原因であると思われる。

【反論と再反論】

これに対してStanley Geyerが、アスベスト曝露情報に関する「記憶バイアス」等を指摘して、因果関係を示す証拠はないと主張。筆者らは、当初140人の患者の症例シリーズからはじめたが、他のアスベスト曝露歴が確認されたものを除外した結果75人になった。因果関係は関連性の強さによって証明され、著者らの論文はその強さを高めるものだ等と反論している。

https://www.researchgate.net/publication/339952731_Malignant_mesothelioma_following_repeated_exposures_to_cosmetic_talc_A_case_series_of_75_patients