タルク中アスベストの検査法-パネルの勧告とFDA公聴会 US:Asbestos.com, 2020.1.21/Reuters, 2020.2.5

FDAパネルがアスベストについての
タルク標準検査を勧告
US Asbestos.com, 2020.1.21

8つの連邦機関による専門家チームは連邦食品医薬品局(FDA)に対して、アスベスト及び他の潜在的に有害な鉱物製品の存在についてのタルクの検査方法を標準化するためのいくつかの予備的勧告を提出した(タルク・タルク含有化粧品中のアスベスト検査方法に関する予備的勧告)。
そのいくつかは長年にわたるタルク産業の立場を否定したこの勧告は、タルク製品ががんを引き起こす物質に汚染されているかどうかについての食い違いを終わらせることを目的としたものである。
この予備的勧告は2月4日のFDAの公聴会の一部として議論され、ジョンソンのベビーパウダーなどのタルクを材料にした製品中のアスベストの検査方法に関する情報を入手する。
ジョンソン&ジョンソンは現在、そのタルク製品が悪性中皮腫を含む病気を引き起こしたと主張する消費者によって起こされた15,000件以上の訴訟に直面している。
FDAは2018年に消費者製品におけるアスベストに関するワーキンググループ(IWGAC)を設置し、それはメリーランド州シルバースプリングでの丸一日かけた行事の一部として作業結果を報告する予定である。
「消費者製品中の成分として使用する原料としての適切性を確保するためには、タルク中のアスベストを検出する適切な監視方法が利用可能であることが不可欠である」。

様々な機関からの勧告

パネルは、アスベスト曝露の既知の安全レベルは存在しないという世界保健機関(WHO)の仮定に同意している。
勧告を作成したIWGACのメンバーには以下が含まれる-国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、国立衛生研究所(NIH)、国立環境保健科学研究所(NIEHA)、労働安全衛生庁(OSHA)、環境保護庁(EPA)、消費者製品安全委員会(CPSC)、国立標準技術研究所(NIST)、連邦地質調査所(USGS)。
地球の表面で採掘されるタルク鉱床の近隣でしばしばみつかる自然生成鉱物であるアスベストの存在のゆえに、2017年以降小売業者らが何度かの自主的リコールを行ってきた。直近のリコールは、FDAがジョソンのベビーパウダーボトルがアスベスト検査でポジティブだったと発表した後の2019年10月だった。FDAがこの象徴的ブランド中のアスベストの検出を発表して、ジョンソン&ジョンソンにそのベビーパウダーの初めてのリコールを促したのは、それが最初のことだった。汚染されたタルクはこれまでにメーキャップ製品や子供用クレヨンで検出されたことがある。

ラボラトリーの結果は異なる可能性あり

ジョンソンのベビーパウダーについてのFDAの発表後、ジョンソン&ジョンソンは外部のラボラトリーを雇って検査を実施し、製品中にアスベストは検出されなかった。
「検査手法は業界の標準を超えたものであり、つい最近FDAによって概述されたものを含め最新の手法を用いた第三者ラボラトリーによる155の検査結果は、われわれのタルクにアスベストは入っていないことを示した」とJ&Jのスポークスパーソンはロイター・ニュースサービスに話した。
今月初めにジョンソン&ジョンソンは、FDAの最新の知見に関する証言を陪審団が聞いた後で、ある中皮腫訴訟を和解した。
アスベスト検出の食い違いはしばしば異なる検査手法によって生じ、それには赤外線・光学顕微鏡と電子顕微鏡が含まれる。いくつかの民間調査ラボラトリーがタルク中のアスベストの微視的量を検出できる一方で、他のラボラトリーはできない。

FDAはタルク産業を規制していない

アメリカ医師会誌(JAMA)は最近、4つの政府調査をプールし252,000人を超す女性を含めた報告を出版した。研究者らは、タルクを材料としたベビーパウダーの使用が卵巣がんの発症を著しく増加させなかったことを見出した。
別の研究はまさに反対の結果を示し、訴訟の猛攻に火をつけている。 (化粧品タルクの健康影響に関する最新論文JOEM & JAMA, 2019.11~2020.1
問題のひとつは、FDAが化粧品の製造業者にタルク中のアスベストについて標準化された検査方法の使用を要求していないことである。企業にはタルクを調べるのにどの検査方法を用いるか決定する自由があった。
FDAは標準化された検査方法に進むかどうか決定する際に最新の勧告を考慮するだろうが、同機関がすぐに何らかの決定をするとは見込まれていない。
FDAは来月のフォーラムをタルク中のアスベストを含む有害な鉱物の存在に対処するための情報収集ステップとして活用することを望んでいる。
より重要な勧告のひとつには、アスベストと同様の組成と構造をもつタルク中の他の鉱物の確認と定量化がある。
いくつかのラボラトリーは現在こうした物質-伸長性鉱物粒子[elongate mineral particle]として知られる-をアスベストと同一視しているだろう。他はそうではなく、矛盾した分析につながっている。
「アスベストが存在するかもしれないとした最初の報告以来、何を『アスベスト』と呼ぶべきかに関するコンセンサスの欠如が続いている」と筆者は書いている。「この区分は重要ではない」。

FDAがタルク中のアスベスト検査方法に
関する稀な公聴会開催
Reuters, 2020.2.5

ジョンソン&ジョンソンのベビーパウダーを含めいくつかの製品中にこの既知の発がん物質の痕跡がみつかったことから、50年近くの間ではじめて連邦食品医薬品局[FDA]は、火曜日[2月4日]の公聴会でタルクパウダー・化粧品中のアスベスト検査方法を検討した。
こうしたFDAによる知見を引用してアメリカの立法府議員や消費者保護運動は公衆衛生を守るための安全規制の強化を要求してきた。
タルクパウダーの市場リーダーであるJ&Jはそのタルクの安全性を擁護してきた。同社は、自らが雇ったラボラトリーによる検査結果ではFDAが検査したものと同じボトルから-同社がラボラトリーのエアコンからの汚染によるものとしたいくつかを除いて-アスベストは見つからなかったと言う。火曜日の声明で同社は、FDAによる「化粧品タルク中のアスベストを検査するもっとも効果的かつ信頼できる方法の徹底的検討」を期待していると述べた。
1971年以来FDA初のタルク中のアスベスト検査方法に関する公聴会は諸政府機関専門家パネルによって勧告された標準検査方法に焦点をあてた。先月公表された勧告は、公衆衛生諸機関と汚染されたタルクががんを引き起こしたと裁判で主張している原告側専門家のとっている立場を受け入れたものである。
ある業界貿易団体は、製品の安全性を改善しないと言ってこの勧告を批判した。
何十年間も化粧品タルク業界はFDAのわずかな監督だけで自らを取り締まることをひろく許されてきた。タルクとアスベストは地中でしばしば一緒に見つかる同様の鉱物であるにもかかわらず、FDAは製造業者にこの発がん物質について検査することを要求したことがない。
専門家パネルによるもっとも重要な勧告のひとつは、肺に吸入されるのに十分なほど小さいタルク製品中にみつかる鉱物粒子は、業界が技術的にアスベストと認めないものであっても、潜在的に有害なものとして計数されるべきだということである。
パネルはその報告書のなかで、アスベストと似たような鉱物の両方とも「同様の病理学的結果」をもたらすものと疑われることからこの「区別は重要でない」とした。火曜日の公聴会である政府の毒物学者は、アスベストを含め、しかしそれに限られるものではない-やり状の鉱物粒子はがん発症を引き起こし得、新しい検査方法の何らかの一部であるべきであると言った。

「これは受け入れられない」

国立環境保健科学研究所[NIEHS]の上級アドバイザー、クリストファー・ウエイスは、調査研究結果は従来の検査方法では伸張性鉱物粒子[elon-gated mineral particles]またはEMPsとして知られる有害な繊維を完全には検出できないことを示していると述べた。タルクをパウダー・製品に精製するプロセスはあらゆる汚染物質を小さなEMPsに分解することが知られている。がんその他の疾病の発症を「引き起こす能力をすべてのEMPsがもっている」とウエイスは公聴会で話した。「短いEMPsは従来計数されず、ラボの報告書にも含められていない。毒物学者としてこれは受け入れがたい」。
パーソナルケア製品評議会の最高執行責任者マーク・ポラックは、より多くの鉱物粒子を潜在的に有害なものとして計数するという勧告は科学によって支えられていないと言う。この化粧品業界団体は約600の企業を代表している。「すべて(の伸張性鉱物粒子)を計数することは報告書の誤解、存在しない場合にもアスベストの存在を示唆することにつながる」とポラックは公聴会で述べた。「効果的な検査にとっての鍵はアスベストの確認であって、無害な鉱物ではない」。
エンバイロメンタル・ワーキング・グループ[EWG]の対政府問題上級副代表スコット・ファーバーは、FDAにより厳格な検査方法を承認するよう求め、同局は消費者がアスベストを含有しているかもしれないことに気づくようにタルク製品に警告ラベルを追加すべきであると言う。「あまりにも長い間消費者を失望させてきた自主管理制度を終わらせるべきときである」とファーバーは公聴会で述べた。「最終的に消費者を守るのにもう50年待つべきではない」。
連邦労働安全衛生庁[OSHA]と環境保護庁[EPA]は、その有害性が十分に確立された1970年代以来がんを提言するために、仕事上のまた大気中のアスベストへの曝露を制限してきた。ロイターの[2019年]12月[3日]の記事は、その同じ期間にFDAはタルクパウダー・化粧品中のアスベスト汚染の可能性を含めた健康上の懸念を軽視し、繰り返し製造業者まかせにしてきたことを示している。
FDAの化粧品・着色料事務所[OCAC]の医師リンダ・カッツは、FDAその他機関の政府専門家によるパネルはこの問題の検討を続け、いずれかの時点で白書を公表する計画でいると述べた。FDAは検査方法に関する新たなルールを追求するかどうか決定するためのタイムテーブルを示していない。
この問題に関する監視の強化は、J&Jが何十年間もその原料タルク・パウダーの結果がときどきアスベストについてポジティブであったことを知っていながら、同社がそのことをFDAに報告しなかったことを示した2018年[12月14日]のロイターの報道を受けたものである。

安全センター情報2020年4月

(翻訳:全国安全センター)