時間当たりの配達件数を制限すれば、事故は防げるか 2022年1月26日 韓国の労災・安全衛生

配達の民族、クパンなど、配達プラットホームの労働者の二人に一人が、この一年間に事故を経験していたという実態調査が発表された。安全運転は、取り締まりの強化ではなく、適正配達料を前提に、一時間当たりの配達件数を制限すれば可能だということに、現場の労働者が共感を示した。

2021年8月、宣陵駅のバイク配達員の死亡事故現場を訪れて弔問する配達員と市民の様子。/サービス一般労働組合

26日、民主労総・全国サービス産業労組連盟は、進歩党と共催した「配達プラットフォームの安全配達制導入のための討論会」で、配達プラットフォーム労働者の安全意識調査の結果を発表した。

  今回の調査は、配達労働者の安全のために、速度競争を最小化する案として提示された『安全配達制』を検討するために、昨年12月、配達プラットフォーム労働者614人にアンケートを取る方式で行われた。サービス連盟・配達プラットフォーム労組は、発足を前にした18日に、安全配達制の導入を提案した。具体的な内容は、①適正な配達料を前提に、一時間当たりの配達件数の制限、②総合保険加入の義務化、③安全教育の義務化、④オートバイ保険の共済組合などだ。

  調査によると、回答者の半数以上の53.3%が、この一年間にオートバイ事故を経験した。更に、事故を経験した労働者の半分近くは、年に二回以上の事故を経験している。

  常時危険に曝されているが、有償の総合保険に加入しているのは48.77%で、半分に満たなかった。有償の総合保険に加入していない理由として、89.4%が保険料の負担を挙げた。労災保険の加入率は高くなってはいるが、依然として22.59%が労災保険に加入していないか、加入しているかどうかが判っていなかった。

  韓国労働安全保健研究所のリュ・ヒョンジン所長は、今回の調査が配達労働者が直面している『危険の悪循環の構造』をよく表わしていると評価した。労働者二人のうち一人が事故に遭うほど危険なため、民間保険市場では保険料が騰がるのが普通で、保険料の負担によって労働者は保険に加入できないため、事故による物的・身体的損害と損傷による負担が大きくなるということだ。

サービス一般労組・配達の民族ライダーズ支会。/キム・チョルス記者

回答者は安全運転に影響を与える要因として、『配達が集中する時間帯』(4点満点で3.36点)、『運転者の安全認識』(3.16点)、『業者のプロモーション』(3.09)、『道路と交通信号システム』(2.98)、『警察の取り締まり』(2.91)、『業務教育・安全教育』(2.64)の順で挙げた。

時間当たりの適当な配達件数は3~4件という回答が73.9%で最も多かった。配達アプリで配達の民族の労働者二人、クパン労働者二人の一週間の労働実態を深層調査したところ、注文が殺到する昼11時から2時、夜6時から10時までの配達件数は、平均3~4件だった。5件以上の時間帯は週に1、2回だった。  調査を行ったサービス連盟のイ・ヒジョン政策室長は「配達手数料を上げただけで事故が解決するわけではない」と指摘した。

時間当たりの配達件数制限、有効か?

民主労総・サービス連盟の配達フラットフォーム労組が18日、配達フラットフォーム労組発足の記者会見を終えた後、パフォーマンスを行っている。/2022.01.18.

この日の討論会で最も争点となったのは、一時間当たりの配達件数制限だった。配達フラットフォーム労組のホン・チャンイ準備委員長は、労組でも扱いやすい部分だったが、無理な運転を止めるためには必ず必要だと、提案の背景を説明した。  ホン委員長は『配達料さえ上がれば安全に働ける環境が保障されるのか』という質問から始まったと話した。「配達労働者は件当たりの配達料を受け取るため、時給を最大限引き上げるために多くの件数を配達しなければならない。配達物量が多い昼・夜に無理な運転をせざるを得ない状況だ」 と説明した。

続けて「最低限の受け取るべき時給2万5千ウォンを基準に、件当たりの配達費が平均4千ウォンなら、一時間に6件以上配達しなければならない。配達量が少ない時間帯があるため、ピーク時の昼・夜には7~8件は配達しなければならない」と付け加えた。

そして「安全配達のためには、無理な運転ができないように時間当たりの配達件数を制限し、適正配達料を支給して、最小時給を保障する方向に向うべきだ」と強調した。

民主労総・サービス連盟の配達フラットフォーム労組が18日、配達フラットフォーム労組発足の記者会見を行っている。2022.01.18. /ニューシス

心配な声も出た。コリアスタートアップフォーラムのキム・ヨンギュ室長は、配達労働者がプラットホームを3~4ヶ所利用する場合、件数制限に意味があるのか疑問だと指摘した。ホン・チャンイ委員長は、「一回に一件配達する『単件配達』が導入されて、より高い収益のために複数のアカウントを使ったり、他業者のアカウントを同時に使ったりするケースが一部登場した」と話した。

イ・ヒジョン室長は「時間当たりの配達件数制限は(配達の民族・クーパンなどが施行中の)単件配達の中心ではないかもしれない。配達代行会社の一括配送(一度に複数件を配送するシステム)を、どの程度にすべきかというのも争点になる」と話した。

今でもピーク時にはライダーが足りない状況で、キム・ヨンギュ室長は「配達件数を制限すれば、企業はプロモーションを進め、再び速度戦が続いて、配達労働者の安全を更に脅かす」と指摘した。

配達件数の制限では根本的な問題を解決できないという指摘も提起された。配達競争をあおるアルゴリズムを改善するなど、プラットフォーム企業の責任を高めるべきだという趣旨だ。

リュ・ヒョンジン所長は「安全配達料と配達件数の算定は、単純な公式や協議だけで算定できるものではなく、結局、プラットホーム労働を媒介するプラットホーム自体のアルゴリズムを利用して介入すべきだ。」「利潤のために配達期間の上限管理だけが行われたとすれば、安全のための配達時間の下限管理が必要だ」と話した。

例えば、現在は15分までに配達しなければならないなどの上限があるが、15分かかる距離であれば、15分を過ぎてからは別の配達ができるように、アルゴリズムの仕組みを変えるべきだということだ。

さまざまな意見はあったが、専門家は『労働者の安全は結局、労働条件と費用の問題』という点から、取り締まりではなく、労働環境の改善によって事故を減らすべきだという点に全員が同意した。

2022年1月26日 民衆の声 カン・ソクヨン記者

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