「犯罪行為の立証責任は勤労福祉公団に」最高裁が初の判決 2022年9月7日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

業務上災害と認められない『犯罪行為』を証明する責任は勤労福祉公団にあるという裁判所の初めての判決が出た。「労災補償保険法」(労災保険法)で定めた犯罪行為は、遺族給付支給の例外理由に該当するので、これを証明する責任は公団にあるという趣旨だ。

公団「犯罪行為で死亡」給付・葬祭料の支給を不承認

「毎日労働ニュース」取材によると、最高裁判所二部は、トレーラー運転手A(死亡当時56歳)さんの妻が公団に対して提起した遺族給付と葬祭料不支給処分取り消し訴訟の上告審で、原告勝訴とした原審を確定した。

Aさんは2018年7月、釜山新港湾の近くでトレーラーを運転中に中央線を侵犯し、反対側から来た車2台と衝突した。この事故でAさんは火傷と足の切断などの重傷を負い、病院に運ばれたが、約3時間後に亡くなった。

Aさんの配偶者は業務上の事故による死亡だとして、公団に遺族給付と葬祭料の支給を請求したが、認められなかった。中央線侵犯による事故は、労災保険法が定めた犯罪行為だという理由からだった。労災保険法(37条2項)によると、労働者の犯罪行為や故意・自害行為が原因で発生した死亡は、業務上災害とは見ない。

「公団、重過失証明の責任を果たしていない」

争点は犯罪行為の証明責任が誰にあるか、だった。法律は、抗告訴訟(行政庁の処分を取り消し・変更)の場合、原告(被災者)が、権限を行使する規定の要件を証明するとしている。逆に、権限を行使しない規定の要件は、被告(公団)が証明しなければならない。

一審のソウル行政裁判所はこれを基に、公団が「犯罪行為」を証明しなければならないと判断した。Aさんの妻に対して、「遺族給付を支給する権限を行使しない」という趣旨の処分なので、公団に『支給例外事由(犯罪行為)』を証明する責任があるということだ。

裁判所は「この事件で、故人の死亡が『犯罪行為』によって発生したという点は、遺族給付と葬祭料支給の例外理由に該当するので、公団がこれを証明しなければならない」と判示した。同時に、「遺族が故人の無過失を後押しする事情を明らかにできなかったからといって、反対に公団が故意または重過失に対する証明責任を全うしたとは言えない」と強調した。

Aさんの中央線侵犯が交通事故処理特例法(交通事故処理法)上の重過失に当たるという公団の主張も受け容れなかった。裁判所は「中央線侵犯によって交通事故を起こしたとしても、必ずしも重過失致傷罪が成立するわけではない」とし、「運転者が中央線を侵犯しなかったら交通事故が発生しなかったという点を挙げて、直ちに重過失があると推定する法律上の根拠はない」と指摘した。

「証明できない犯罪行為、労災不認定の理由にならない」

公団は「もっぱらAさんの不注意による事故」として控訴したが、結論は変わらなかった。裁判所は「車輌の累積走行距離が59万kmである点などから見て、故人が車を操縦できなかった事情があった可能性を完全に排除できない」とし、「操縦が可能だったとしても、中央線侵犯時に大きく傷害を負ったり死亡に至る可能性があることはよく解っていたと見られるが、そのような危険を侵してまで運転していたとは見られない」と判断した。最高裁も原審の判断を維持した。

法曹界は、犯罪行為の証明責任を明示的に判断した最初の判決という点に意義があると評価した。代理したキム・ヨンジュン弁護士は「最高裁は犯罪行為の具体的な判断基準として『故意・重過失』と『犯罪行為が事故の単独または主な原因』であることを要求している」とし、「裁判所は、公団がこれを全て証明しなければならず、証明できない以上、犯罪行為を理由として不承認としてはならないという法理を受け容れた」と説明した。

2022年9月7日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=210835